霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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今作でのDLV(デモニカスタンダード)は、LV×3.3で計算しております。

LV30をLV100として計算らしいので、3.3にすれば30×3.3で99。

端数は切り上げたり切り下げたり適当にしてヤーポン感を出しつつ(

滅びろヤードポンド法!!


「なんで参考資料がた〇ごクラブ通り越してひ〇こクラブに突入してんのよ!」

 

依頼はシンプル、野犬が取り壊し予定の廃墟に住み着いており、作業員が追い払おうとしたところ負傷。

 

どうやら動物同士の縄張り争いで覚醒するか『魔獣』等に変異しているようで、保健所職員だろうが猟友会だろうが一般人ではどうしようもなくなった。

 

土建屋絡みのヤクザ配下のチンピラ(DLV3~4らしい)が数名押し入ったものの返り討ちにされ、負傷者を出しながらも伝えてきた情報がこれだった。

 

 

(遭遇した悪魔のDLVは低くて4、高くて7、ただし数が多すぎる、と)

 

 

といっても、覚醒こそしたがスキルも魔法も無いチンピラでは殴り合いしかできないので、魔獣に囲まれてしまえばほぼ詰みだ。

 

魔獣とはいえ獣の性質は中途半端に残っているようで、この廃墟の中にそれなりの数が群れを成してる。

 

どうやら腹をすかせた悪魔による死者も出たようで、これ以上地価を下げたくない連中も出てきた。

 

特にワケアリ物件を取り壊してコンビニにでも建て替えたいヤクザその他からすれば目の上のタンコブだったのだろう。

 

 

(……まあいいや。今のアタシなら油断しなければいける)

 

スカウターのエネミーサーチを起動、臨戦態勢を整える。

 

 

「いくよ、グリゴリ」

 

 

装甲に見合った耐久力で吶喊し、裏口の扉を蹴破りながら突入するグリゴリと梨花。

 

早速とびかかってきた『魔獣 ノライヌ』や『屍鬼 ゾンビドッグ』をグリゴリで殴り殺す。

 

近寄られた場合は護身用警棒を引き抜き撲殺、ペルソナを出している間、梨花の身体能力は人知を超えた粋に到達する。

 

普段から人間離れした動きができる他の覚醒者より少々面倒だが、その分数の有利を補えるのは大きい。

 

狭い通路に合えて陣取り、2~3匹で襲ってきたところをグリゴリで受けとめ、まとめて『体当たり』に巻き込んで吹き飛ばす。

 

あくまで保険に保険をかけた戦術であり力押しでもなんとでもなるが、この世界で『油断・慢心』は死につながると梨花は十分に学んでいた。

 

次の階層に踏み込んだ瞬間、エネミーサーチに複数の反応。どうやら戦闘音につられて階段に駆けつけてきたらしい。

 

『記憶から』経験を引っ張り出し、『DLV7』と表示された大型犬ゾンビドッグと、ソイツが引き連れてきたゾンビドッグ数匹に右手を向ける。

 

 

「『マハラギ』!」

 

 

先週覚えたばかりのとっておきである『広範囲火炎魔法』を放って、一切合切焼き払った。

 

最初はボヤ騒ぎを起こしかけていたこの魔法も、試行回数を増やせば力加減がわかってくる。

 

目の前をふさいでいたゾンビドッグの群れが灰と消える。DLV7以下、それも火炎に弱い屍鬼ではこんなものだろう。

 

そこから先は流れ作業だ、引き付けて、マハラギで焼いて、奥へ進む。

 

この群れのボスだった『魔獣 ガルム DLV9』も片づけた。

 

……梨花のDLVは既に『18』を記録している。『あの一件』から表の仕事を減らし、短時間で高額を稼げる裏の仕事を増やした影響であろう。

 

広範囲を焼き払える『マハラギ』を覚えたことで、格下の悪魔を一気に殲滅できるようになったのも大きい。

 

『DLV10』の壁は元々突破していたが、これによって効率的に依頼をまわすことができるようになり、資金・時間共にだいぶ余裕が出てきたのである。

 

が、そんな余裕を一切感じさせることもなく、エネミーサーチで残党がいない事を確認したら速攻で報酬を受け取り帰路につく。

 

 

 

 

……帰りにスーパーで半額コーナーのお惣菜とおにぎり、そして『紙おむつと粉ミルク』を買ってから。

 

 

 

 

「ただいまー!チビスケの様子どうだったー?」

 

「あ、ナナのアネゴー!おかえりッス」

 

梨花の使っている拠点では現在、彼女が拾ってきた赤ん坊……通称『チビスケ』が匿われていた。

 

現在はゆるい繋がりのあった非行少女たちが持ち回りで世話をしており、なんとかどうにか今までやれている。

 

その分生活費などは梨花がハイペースで依頼をまわして出しており、

なおかつ梨花とのつながりが深くなれば下手に手を出してくる不良も減るためお互い様な関係であった。

 

現在世話を頼んでいるのは『アカネ』と名乗っている少女だ、女子高生ぐらいに見えるけど、具体的な年齢も本名も梨花は知らない。

 

というか、ここの少女たちはみな同じようなモノであり、梨花も本名を縮めて『ナナ』とだけ名乗っている。

 

 

あの時、梨花はどうしてもこの赤ん坊を見捨てられなかった。

 

面倒になるのが分かり切っていようと、人に胸を張れるような人生送ってなかったとしても、

この無垢な赤ん坊を見捨てたらその瞬間自分の中の『ナニカ』が折れるような気がしたのだ。

 

かといって警察に届けようにも、色々とワケアリだらけな彼女たちでは面倒な騒ぎになりかねない。

 

この辺りには赤ちゃんポストのある病院もない、児童養護施設だって街の治安を考えれば裏に何がいるかわからない、アウトだ。

 

(※ちなみにメシアがバックについてる施設ならある。カルト全開なのでちょっとネットに潜ってるとオ〇ムと同じ扱いされてるけど)

 

市役所に関しては……まあ、ここに堕ちてくるような少女たちからすれば、頼りにならない相手第一位である。

 

 

なので、この市を出て信頼できる児童養護施設に入れるまでの間だけ世話をする……という理由で持ち回りをして育てているのだ。

 

風邪の1つでも引いたら病院に駆け込まないといけない(=預けに行った人間が面倒な事になる)状態なので、はっきり言って薄氷の上の平穏だが……。

 

それでも、梨花が命がけで資金を稼いできてるおかげでなんとか成立していた。

 

 

「オムツとミルクはこれでよし、と。 はあ、まさかインスタントコーヒーの代わりに粉ミルク飲む生活になるとは……」

 

「味ほとんど無いっスけど、高カロリーで栄養あるッスから、半額の食パンをこれでふやかしてミルク粥っぽくして食うと腹も膨らむッス!」

 

「アタシらはファンタジー世界のシスターか!子育てにしても段階が欲しかったわよ!

 なんで参考資料がた〇ごクラブ通り越してひ〇こクラブに突入してんのよ!

 ……つーかまずこんなアタシを養ってくれるスパダリが欲しいわよー!!」

 

「アネゴ、チビスケが起きちゃうッス」

 

「おっと……」

 

 

すやすやと隣の部屋で眠っているチビスケが起きないように声を抑える梨花。

 

ちなみに叫んでいるように見えて、声を一定以上出さないクセはチビスケを拾ってから身に着けたので、意外と声量は出ていない。

 

 

「市内で行ける範囲だといい感じの児童養護施設ってないなぁ……明らかにメシアかヤクザのひも付き……」

 

「かといって市外となるとチビスケの移動が心配、なんスよね?」

 

「車がつかえればいいんだけど、免許持ってる知り合い一人もいないしね。

 チビスケ、体重はかった感じ生後三か月ぐらいだからもうそろそろ首が座るはず。

 そしたら電車で移動もできるから、なんとか……」

 

所詮は素人かつ子供である彼女たちに、いつまでも赤ん坊の世話ができるとは本人たちも思っていない。

 

だからこそ信頼できる施設に預けたいが、市内の施設はどれもこれも信用できず、市外に出るにはチビスケの首が座っていないのがネックだ。

 

いくら覚醒者であろうとペルソナを出していなければ身体能力はそれほど高くないし、周りにいる面々もほとんどが未覚醒者。

 

目の前のアカネは一応『DLV2』あるが、悪魔と戦えるような強さではない。

 

 

(だからこそ、この無茶な自転車操業を少しでも長く続けて、外に出る準備が整ったら……お別れだ)

 

だが、もしそれをやりきることができれば。

 

長くて一か月程度だろうが、この奇妙な同居生活をやりきることができれば。

 

自分の中の何かが変わるかもしれない……そんな予感があったのだ。

 

 

『う、ぅー、おぎゃあ!おぎゃあ……!』

 

「っとぉ、起きたみたいだね。ミルクかな?」

 

「さっきおしめは変えたッスから、多分そうッスね。ウチが作ってくるッス」

 

「お願いね、お湯は沸かしてあるから。アタシはあの子なだめてくるよ」

 

 

隣の部屋に移動する、中古の暖房器具を移動させ、低体温症等にならないよう少しでも断熱を工夫した即席のベビールームだ。

 

泣いているチビスケの頭を撫でて、しばらくあやしていれば泣き止んでくれた。

 

アカネがもってきたミルクをゆっくりと上げて、ゲップもさせて……。

 

古本屋で買ってきた何冊かの育児本を必死になって覚えたのは、どうやら無駄じゃなかったらしい。

 

 

(でも、この生活ももうすぐ終わる)

 

 

窓の外の曇り空になんとなく視線を向けながら、落ち着いてきたチビスケをあやしつつ思案を巡らせる。

 

チビスケはちょっとずつ首を動かせるようになりはじめた。首が座って、抱いたまま長距離の移動ができるようになる日も近い。

 

市内では見つからないってことは、逆に言えば市外でいいならいくつか候補は絞ってある。

 

 

(なあ、チビスケ。アンタはアタシみたいにやらかさずに、幸せに生きなよ?)

 

 

腕の中の小さな命を愛でていると、窓ガラスに雨粒が当たる。

 

 

「……あ、そういえば予報だと雨か……アカネー、洗濯物取り込んであったっけ?」

 

「アネゴが帰ってくるちょっと前に取り込んだッスよー」

 

「ありがと、それじゃあチビスケが寝たら畳んでおこっか。夕飯はお惣菜買ってきたから一緒に食べよ?」

 

「わーい!アネゴのオゴリだー!」

 

「いやまあオゴるけどさ……あと年下をアネゴって呼ぶのはいい加減……」

 

 

ピピッ、とポーチの中から音がする。

 

寝ている間に迷い込んだ悪魔に襲われないよう、スカウターの『エネミーサーチ』は数秒に一回更新され、反応があるとアラームが鳴るようにセットしてあった。

 

それが鳴った、ということは……。

 

瞬間、アカネに「伏せて!!」と叫びつつ、チビスケを抱えこんでポーチの上に覆いかぶさった梨花の判断は最適だった。

 

窓ガラスが勢いよく砕け、即席ベビールームの中にガラス片と折れ曲がったサッシが飛び込んでくる。

 

吹き込んでくる雨と冷たい風、そして今の音でチビスケが泣きだすが、梨花からすればそれどころではない。

 

『今窓から飛び込んできた存在』を全力で警戒しながら、チビスケをかばったままスカウターを取り出し、スイッチを押す。

 

(DLV……20、30、40、50……まだ上がる!? …………『DLV92』?!!)

 

ふざけんな、という声が上がりかかる。

 

梨花の知る限り、この街でトップクラスの異能者ですらDLV30超えがせいぜい、DLV40すら見たことが無い。

 

それがいきなりDLV90オーバー、それもスカウターに表示されたこの悪魔の名前は……。

 

 

「『天使 アークエンジェル』……!?」

 

 

白と茶色の鳥のような翼に、藍色の鎧を身にまとった中性的な美女。

 

清廉な気配を纏った剣を携え、背後には『天使 エンジェル DLV33』を二人従えている。

 

さきほど窓を破ったのはエンジェルの放った『ザン』であろう。

 

 

「……人の子よ、部下が先走ったことは謝罪しよう。あとで部屋の修復もする。

 だがその前に、その赤子を渡してもらいたい」

 

「……わ、渡せない、と、いったら?」

 

「貴様、アークエンジェル様に口答えなど!」

「アークエンジェル様、この人の子からは堕天使の気配も感じます。今のうちに始末を……」

 

「よい、下がっていろ。 ……あまり手荒なマネはしたくはない、わかってくれ」

 

 

ごくり、と生唾を飲み込む音がやけに響く。

 

後ろで腰を抜かしているアカネと、手の中にいるチビスケ。両方を庇いつつコイツらを倒す……。

当然不可能だ、なんなら真っ向から戦えたとしても手下らしきエンジェル一体すら厳しい。

 

「もう一度聞くわ……この子を渡したら、どうする?」

 

「その子は国内に残っていた『メシア教過激派』の実験で生まれた赤子だ。

 既に過激派は対処したが、実験内容を考えれば、明らかに見え透いた地雷。

 ……私の責任をもって、始末する」

 

「……あっそう、なら、答えは決まったわ」

 

 

 

梨花がポーチの中に手を突っ込むのと、アークエンジェルが不穏な空気を感じて腰の剣に手をかけるのはほぼ同時。

 

アークエンジェルが『一瞬剣を抜くのを迷う』ことがなければ、ここで二人そろって切り捨てられていただろう。

 

瞬間、梨花が投げた『電球のようなモノ』が破裂、強烈な閃光を生み出す。

 

梨花が取り出したのは、とあるアニメを参考にマグネシウムと電球で作った『閃光弾』だ。

 

いくつも失敗し、なんとかマトモに作れたのはほんの2~3個だが、悪魔相手の咄嗟の目つぶしには最適であった。

 

 

「ぐあっ!?」「くっ?!」「ぬうっ!?」「目が、目がぁー!?」

 

「アカネアンタはふざけてないで走る!!」

 

緊張のあまりついムスカごっこに走ったアカネを急かし、チビスケを抱いたまま外に飛び出す。

 

装備は仕事帰りなのでコートの下に着こんだまま、警棒等もポーチの中なので持ったまま。

 

それでも、あの天使3匹を不意を突いた程度で倒せるとは到底思えなかった。

 

なんとかチビスケが雨にうたれないようかがんだまま、外へ飛び出した。

 

 

手の中のちいさな命をしっかりと抱きしめたまま、雨に打たれる廃墟の街を駆け抜ける。

 

路地を通り抜け、時には侵入できる廃墟を通って後続を攪乱しながら走り続ける。

 

肺が痛い、それでも手放すという選択肢だけはない。

 

 

 

『アタシは『正しい』と思えることをやっている。

 

 大勢から糾弾されるかもしれない道をたどってきたが、

 

 それでも、今やっていることは正しいはずだ』

 

 

 

たったそれだけの小さな誇りが、今の自分を支えている。

 

コートの裾が地面に擦れる、それでも脚は止めない、止められない。

 

歩きなれた廃墟の街を駆け抜けて、袋小路を避けながら逃げ続ける。

 

自分たちを救ってくれなかったモノが追ってくる。自分たちの命と、手の中の温もりを奪うために。

 

 

 

 

(……それでも、これは間違ったことじゃ、ないんだから……!)

 

 

 

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