霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「しいて言えば、希望さ」

 

……黒羽市の一件から数年前、ガイア連合山梨支部にて……。

 

 

「それで、『ネフィリム』と『アレ』のフォルマを中心に式神を改造するのかい?」

 

「ああ。『ギルス』の戦闘スタイルを考えれば、『邪鬼 ネフィリム』が最も相性がいい。

 他の式神も魔王やら鬼神やら高レベル悪魔のフォルマ使ってるんだし、

 このぐらいなら式神の安全装置の許容範囲だろうさ」

 

「まさか原作再現重視のためにネフィリムに加えて『あの悪魔のフォルマ』まで集めてくるとはね。

 相当貴重なフォルマだろう?これ」

 

「まあ、そこは俺お得意の占星術で、な?」

 

「……他の術はあと50年は負けるつもりはないけど、本当に占いだけは意味不明の領域だね、君」

 

 

『いったいどこまで、いや、何が見えてるんだい?』という神主の言葉に、阿部は苦笑いで答えた。

 

 

 

「しいて言えば、希望さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なるほど、ガイア連合はすでに……ネフィリムの対処法を生み出しているのですね)

 

少なくとも目の前の『異形』から感じる力はネフィリムのソレ。

 

しかも、過激派の実験で作られた赤子と比べれば雲泥の差を感じるほどの濃い気配。

 

アレを許容範囲とするのなら、既にガイア連合はあの赤子を問題視などしないだろう。

 

……まあ実際の所、問題視しない、までは合っている、合っているが。その内実は……。

 

 

『そういえば神主、ギルス製造によるネフィリムの大洪水の件だが』

『これで四文字が大洪水するならネフィリムが出現する山梨支部異界深層の時点でアウトだよね?』

『せやな!フォルマかき集めるために狩りまくってたしな!!』

『それにこの手の神話上アウト事案ありまくりだしね』

『魔王やら魔神やらのフォルマ使った式神がそこそこいる時点でな、うん』

 

 

こんなノリなのだが。

 

そんなもん言い出したら世界が滅びそうな要素としてこじつけられるモノをガイア連合はいっくらでも抱えている。

 

一応は終末をなんとかするための組織のはずだが、いつのまにかアトラス院みたいになってるガイア連合であった。

 

なにはともあれ、アークエンジェルからすれば既に赤子を殺す理由はなくなった。

 

残るは『後始末』である。

 

(一部の天使の暴走……そういう形で片づけないといけない)

 

メシア教穏健派支部にまで、あるいはその上にまで迷惑をかけるわけにはいかない。

 

『ならば自分は可能な限り全ての責任を背負い、死ななければならない』

 

……アークエンジェルの覚悟は一瞬で決まった。

 

誰かの命を奪う事にくらべて、自分の命1つで済むだけの試練のなんと気楽なことか。

 

 

(ああ、きっと私は天使に向いてないんだろうなぁ)

 

 

最後なのだ、内心でぐらい素を出すことも我らが父も許してくれるだろう。

 

他の天使がやっているように、天の父が敷いた秩序の敵に対して躊躇なく力を振るうことができない。

 

自分の持つ力に自信を持つことができず鍛錬を積み重ねてしまうほどに、己に自信が持てない。

 

天使の身でありながら、力任せに武器を振るうのではなく、剣術まで学び修めたのはそのせいだ。

 

さて、目下の問題は。

 

 

(……どうやってこのややこしい問題を説明しよう……?)

 

 

自分があんまり口が回る方じゃないという自覚のあるアークエンジェル。

 

『言葉で説明して納得してもらう』というのはひじょーに頭の痛い問題であった。

 

誠実さと実直さは自信があるが、過激派の天使がよくやるペ天使プレイとの相性は最悪である。

 

では、一方のギルス(ハルカ)の方はどうか。

 

 

(……ノリで飛び込んでしまったけど、現状どうなっているんだ……!!)

 

 

こっちも盛大に混乱していた。

 

式神ボディの優れた聴覚で、雨の中でもこの面々の会話は聞こえていた。

 

が、彼にとっても理解できたのは後ろにかばっている赤子が厄ネタである、という事ぐらい。

 

対メシア知識のために聖書各種(日本語訳)は読まされたのでネフィリムは知っている。

 

なのだが、目の前の天使から『まったく殺気を感じない』理由がさっぱりわからない。

 

 

アークエンジェルの方は「あとは私が死ねば解決なんだけどどう説明しよう……?」と悩んでいて

 

ハルカの方は「なんでコイツ僕の立場じゃなくて『ギルスの姿』で安堵してるの……?」で悩んでいる。

 

ハルカが介入してギルスを見せた時点で戦う理由が無くなってしまったのである!

 

そのせいで二人とも次の行動が宙ぶらりんなのだ!

 

 

「……とりあえずそっちの要求を聞きたい。戦おうって気配を感じなくなった理由も含めて」

 

「……そうですね、まずはそこから説明するべきでしょうか」

 

 

最初に言葉を発したのはハルカであった。

 

悩んでいたアークエンジェルと違い、とりあえず『次』の行動は決まってたのが大きい。

 

後ろの3人をかばいつつ、説得でも戦闘でもいいから落としどころを探る。それは正しい。

 

(※ちなみにギルス形態だと盛大に声が低くなるが、普通に発音・会話は可能)

 

問題は……。

 

 

「とりあえず、私の首をハネてからこの一件は私の暴走ですとガイア連合に言っていただけると」

 

「いやどういう事!?」

 

 

このアークエンジェルは前述通り実直であり、腹の探り合いとかさっぱりできないという事である。

 

一足飛びに結論に至られてもわからないので、1つ1つをかいつまんでアークエンジェルから聞き出す。

 

梨花とアカネはチビスケを連れて近くの廃墟の中へ避難したが、背を向けて逃げるには状況が混沌としすぎていた。

 

万が一背を向けて逃げた瞬間に二人そろって梨花たちを追ってきたら『完全に詰み』になるからだ。

 

つまりこの状況で、4人(+チビスケ)は情報が出そろうまで派手な動きができないのである。

 

 

「……あー、つまり、あの赤ん坊に仕込まれてる厄ネタよりヤバいのが僕の肉体で、

 それを抱え込んでるガイア連合は対処法も確立してるだろうから追う理由がなくなった、と?」

 

「はい……というより、知らなかったんですか?」

 

「僕をこの体にした師匠からは、この体のスペックしか聞いてないよ。

 ただ、この体になってから二年は経過してる。製造時期を考えればもっとだ。

 ……少なくともその間、大洪水とやらの兆候はない」

 

「ええ、そのようです。 あとはどう落とし前をつけるか……そういう段階ですよ。

 ですので私の首を……」

 

「構えろ、その武器」

 

 

は?とアークエンジェルが声を漏らした瞬間、ギルスが一瞬で眼前まで接近。

 

とんでもない速度で放たれた後ろ回し蹴りを、反射的に剣の腹で受け止める。

 

勢いに逆らわず後ろに跳び、吹っ飛んだ体を翼でブレーキをかけ着地する。

 

 

(ッ……打撃が重いっ!さすがはネフィリムの怪力ッ!!)

 

(不意を打ったのに反応された、それに『自分から後ろに跳んで』威力を殺したな?)

 

(ほ、ほとんど影しか見えなかった……これがDLV90超え、バケモノ同士の戦い……!)

 

(なにがなんだかさっぱりッス!?)

 

 

観戦者である梨花とアカネにはさっぱり、いや、梨花には多少見えていたがどっちにしろついていけない。

 

そういうレベルの一撃だった、と全てが証明していた。

 

 

「うん、いい腕だ。『咄嗟に』防御できるぐらい練り上げてある」

 

「ッ、いや、これは……!?」

 

「あー、違う違う。死ぬ気が無いとかそういう事を言いたいんじゃないんです。

 それだけ練り上げた力が、振るうべき鉄火場じゃなく、ただ自裁の為に消える。

 それはなんていうか……すっきりしない」

 

 

アークエンジェルは何かの理解に至ったような表情をして、梨花とアカネはクエスチョンマークを頭に浮かべる

 

その様子を見たハルカが、少しだけ長く言葉を繋げる。

 

 

「貴方は僕に自分の後始末を任せたいみたいだけど、それじゃあ僕に何の得もない。

 それどころかスッキリしない殺しをするハメになる分、マイナスまである。

 もちろんそういうモノを背負う覚悟もしてここにきた、きましたけども……

 

  ……どうせなら全力でやりあって気持ちよく倒したい!!」

 

 

(何いってんスかコイツ!?)

 

 

「な、なるほど!」

 

 

(なるほど!?この天使今なるほどって言った!?)

 

 

比較的一般人な思考回路が残っている梨花とアカネからすれば、トンチキ同士の会話にしか聞こえない。

 

が、いろいろと修羅場もくぐってきてる二人にはなにかしら通じる所もあったらしい。

 

端的に言えば『どうせなら気持ちよく死地にいこうぜ』で終わってしまう程度のやり取りだ。

 

もうついていけねー、とアギで焚火作ってあったまってる二人と、

空間を満たす殺意がなくなったのを感じたのかお昼寝タイムに入りつつあるチビスケをよそに、

段々と弱くなっていく雨の中、天使と異形が向かい合った。

 

 

「確かに、貴方からすれば私の自殺の手伝い等迷惑千万、思慮不足でした」

 

「教義での自殺禁止っていうのもこういう時面倒だな、と思うよ僕は。

 そして天使はそれに逆らえない……とりあえず、終わった後の後始末はしておきます」

 

「ええ……だからこそ過激派の連中は何をやっているんだ、となりますが。

 それはまあ、今はいいでしょう。抵抗したほうが私の首を取りやすいというなら是非もなし。

 なにより『後の事』まで任せながら、鍛錬の成果を出しきって逝ける……ところで」

 

「なんです?」

 

「私が勝ってしまったらどうします?」

 

「…………そういうのはさぁ」

 

 

水たまりが飛沫を通り越し、霧になるほどの勢いで弾け飛ぶ。

 

足元のコンクリートすら踏み込みの勢いでヒビが入り、直後に強烈な接触音。

 

右腕から出現させたギルスクロウと、アークエンジェルの剣が打ち合った音だ。

 

 

「勝ってから言えやァ!!」

 

「……なるほど、一理あるッ!!」

 

 

右のギルスクローでアークエンジェルの剣を抑え込みつつ、左腕を突き出しつつギルスクローで追撃を狙うギルス。

 

咄嗟に左のギルスクローで刺されないように左手首を掴んで反らすアークエンジェル。

 

組み合うような姿勢の状態から、アークエンジェルが『マハラギ』を唱えた。

 

至近距離での広範囲火炎魔法はそのままギルスの上半身を飲み込む。

 

が、その状態でも炎の中を突き進んでくるが、アークエンジェルもここまでは織り込み済み。

 

本命は火炎の勢いでギルスの不意を突き……。

 

「ふんっ!」「ぐおっ!?」

 

ギルスの腹目掛けて膝蹴り、同時に組み合いを解き仕切りなおす。

 

互いにダメージは小さい、しかし、この時点でおおよそ互いに手札が見えつつあった。

 

 

(剣術は守り主体、魔法も絡めた近~中距離型。手堅くまとまってるしスキがない)

 

(とんでもない膂力とタフさ、さらにそれが最適と判断すれば火炎の中を突っ切る決断力)

 

 

((こいつ、手ごわい!そして……))

 

 

「『ヒートウェイブ』!」

 

「ヴォアアアアアアアアアアアァァァァァッッ!!」

 

 

((…… 凄いッ!!))

 

 

基本スペック、特に身体能力では劣ると判断したアークエンジェルが牽制を挟む戦闘スタイルに切り替える。

 

広範囲を巻き込む衝撃波、本来は複数の敵をまとめて巻き込むための技を躊躇なく切る。

 

単体向けの直線的な攻撃は、ただ放つだけでは避けられると判断したからだ。

 

避けきれないと判断したギルスは速攻を選択、両腕を交差してガードしたまま衝撃波を突っ切っていく。

 

 

「(足止めにしかならないか!) 会心撃ッ!!」

 

「ヴォオオオオオアアアアアアアアッ!ヴアアアアアァァァァァァッ!!」

 

本来は精度を引き換えに破壊力を上げた技を、無理やり衝撃波を突破したギルスへの迎撃に使用。

 

ギルスも破壊力を手数で相殺するためにアクセルクローを発動、距離を詰めながらラッシュで追い込む。

 

アークエンジェルの鎧が砕け、ギルスの生体装甲が切り裂かれる。

 

エナジードレインによってソレを回復する前にアークエンジェルの追撃が来た。

 

相殺で『力が抜けた』時点で何らかのドレイン系の攻撃を受けていると判断。

 

さらに吸われている感覚がするのは『切りあったときだけ』なので、射程距離等の制限があると仮定。

 

 

(中距離から削りつつ、向かって来た所を迎え撃ちながら隙を見て空を飛ぶッ!)

 

 

常に後退を頭に置き、密着することだけは避けながらマハラギ・アギラオ・ヒートウェイブで削っていく。

 

下がりすぎれば迎撃の手が緩み、逆に捨て身の特攻を食らう危険性が増える。

 

時折動きを止めた所に、左腕から生えた触手のような鞭(ギルスフィーラー)が飛んでくるが……。

 

 

(早い上に不規則に動くが、見切れないほどではない!)

 

(クソ、なんとか削り合いに持ち込みたいのにッ……!)

 

 

剣でギルスフィーラーを素早くいなし、カウンターのようにアギラオを放つ。

 

敵本体を捉えなければ麻痺・拘束の効果は発動せず、

こうして最小限の接触でいなしてしまえば武器の劣化も遅くすることができる。

 

アギラオで体制を崩したところで、空中へのがれ引き撃ちに徹する算段だった。

 

 

「(甘いッ!)ヴォラァァ!!」

 

「ッ!?(今いなした鞭がもう一本……?!)」

 

 

が、相手の計算をそのまま通すほどギルスも甘くない。

 

右腕のギルスクロウをギルスフィーラーに変形、アギラオを『突き抜けさせて』突破。

 

当然アギラオは直撃するが、気合で意識を維持しつつギルスフィーラーを操作。

 

アギラオを放つために突き出していたアークエンジェルの左腕に巻き付いた。

 

 

(込められている魔力は……拘束に、麻痺か!ぐ、なんとか抵抗できるが、動きが鈍る!)

 

「ヴォルアアアアアアアアアアァァァァァ!!」

 

(そして『待った』を受け入れてくれるほど甘くはないかッ!当たり前だな!)

 

(ギルスフィーラーだけで完全に止まってくれるほど容易くないッ!当然ッ!!)

 

 

((なら答えは一つ!正面から押し切る!!))

 

 

右腕の拳撃、食らったフリをして首ひねり(スリッピングアウェー)の要領でいなす。

 

反撃の突き、喉狙いなので体をかがめて潜り込むように下へ避ける。

 

ギルスクロウを展開している左腕でアゴの下から脳天への突き上げ、上半身を仰け反って回避。

 

先ほどのように上半身のやり取りに集中させている間に足技で不意打ち……

よりも早く、仕掛けようとしていた脚のつま先を踏み抜いてカット。

 

 

ガンッ!!という衝撃音。互いにほぼ同時に選んだ次の手が『ヘッドバット』だった。

 

アークエンジェルの額から一筋の血が流れ、ギルスの角(ギルスアントラー)にヒビが入った。

 

流石にアナライズ等の機能がある中央の宝石(ワイズマンオーヴ)は無事だったようだが、伝わった衝撃で角の方が耐えられなかったらしい。

 

 

(さっきからマトモに攻撃が当たってない!ドレインでじわじわ吸い上げるぐらいしか削れてないぞ!)

 

(この巻き付いた触手からも吸われている感触がする、長期戦はこちらに不利!切り札を切る!)

 

 

「グルアァ!!」「そこだぁ!!」

 

互いに半歩だけ距離を取り、もう一度左腕のギルスクロウを突き出す。

 

それをスレスレで回避、わずかに側頭部を削られながら胸元へ飛び込んだ。

 

 

「この距離なら、回避はできないな!」

 

「グァ、なにっ!?」

 

「ネフィリムの弱点、それは……『ハンマ』!!」

 

 

ネフィリムはかつて、この世に生れ落ちた後、しばらくは人と共存しバベルの塔建設にも大いに役立った。

 

 

しかし大食漢に過ぎたネフィリムは地上のありとあらゆるモノを食い尽くし、やがて共食いを始めた。

 

 

それを穢れと断じた神によって大洪水が起き、箱舟に乗った命以外の地上の全ては押し流された。

 

 

つまり、ネフィリムは『神に存在を許されなかった穢れた命』なのである。

 

 

ハマ系魔法、それもメシア教などの一神教が使うタイプは天敵だ。

 

 

「ぐっ……な、なぜ……?!」

 

 

天敵の、ハズだった。

 

 

(ハンマが……『跳ね返ってきた』!?)

 

 

ハマ系に高い耐性のあるアークエンジェルには、ダメージも25%程度しか通らないので痛みはほとんどない。

 

ギルスが咄嗟に回避しようとギルスフィーラーを解いており、

跳ね返ったハンマが当たってさらに距離が開いただけだが、精神的な動揺は大きかった。

 

装備の効果で跳ね返されたのならまだわかる。

 

しかしギルスの装備はベルト等のごく少数。あの中に破魔反射の効果を持つ神聖な気配の防具はない。

 

おかげで少し冷静になって『仮に今のが効いて殺してしまってたらマズかったんじゃ?』という考えも浮かんできたが、それはそれ。

 

なんにせよギルスは『ハマ反射』の耐性を持っているのが確定……『ではない』。

 

 

(な、なんでだ?スカウターで見たデータだと確か、アイツのハマ耐性は『普通』だったはず)

 

 

途中から両者の動きにヤムチャ視点になっていた梨花でも、ハンマが跳ね返った異常さは理解できる。

 

そう、ギルス本人に一般的なハマ耐性はない。だからこそハルカも至近距離でハンマを食らうのを警戒したのだ。

 

今までも日本神話系の悪魔等からハマを食らった事が何度かあり、そのたびにヒヤヒヤしていたのである。

 

彼は種族的には『式神』、全適正装備であるギルスのベルト等を装備していてもハマとムドは突発的に飛んで来たら警戒対象だ。

 

……ところで、この世界には物理耐性に複数の種類があるのはご存じだろうか。

 

ガイア連合の高級式神についている物理全般への耐性以外に、剣耐性、銃耐性、刺突耐性に打撃耐性と細かく分割できるのである。

 

そして神主から習ったアギは物理的な破壊力は低く、悪魔には良く効くが焚火を起こすのにも苦労する……というのもご存じの通り。

 

つまり『耐性』は細かく分割でき、『魔法の効果』も分類可能なのだ。

 

故に、阿部と神主の手で細かく調整されたギルスの『耐性』も盛大に尖らせてあった。

 

具体的には……とある『仕込み』を行うことでハマ系への耐性を変化。

 

 

『一神教系のハマのみ反射』とかいう、製作者の意図が丸見えの耐性に。

 

 

(過激派メシアへの尖兵にしか思えない耐性ッ?! ……いや、それよりも……)

 

 

「ヴ、ヴヴ、ヴヴヴアアアアァァァ……!!ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァ……!?」

 

 

(苦しんでいる?いや、違う……悶えている……?)

 

 

目の前の異形から感じる威圧感が恐ろしい勢いで増している。

 

殺意ではなく、単に『力』が恐ろしい勢いで膨れ上がっているのだ。

 

ハルカ/ギルスの意図ではない、本人も自身の変化に混乱極まっている。

 

そしてついに彼の内蔵MAGだけでなく、式神ボディの変化という形でも現れ始めた。

 

 

ミキミキメキメキと生々しい音をたて、ギルスの体が『変身』する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、この機能本気でつけるのかい?』

 

 

『本気だよ、神主。コイツはメシア穏健派の暴走や、過激派の上陸に投入する可能性も高い。対メシアンや対天使を考えた調整をしないとな』

 

 

『それもわかるけど、リミッターの解除条件が

【自分とレベルが近い、あるいは自分以上の一神教系の属性を持った相手】

 と戦う場合……これはまた、なんでさ?』

 

 

『意思の問題さ。コイツが本気でメシア教や天使と戦うことになった場合のみ解放される。

 

 その後はある程度使えるようにするが、最初から開放されてたら性能頼りになりすぎる。

 

 今の国内の悪魔相手に、リミッター全開放のスペックは成長の邪魔にしかならない』

 

 

『……解せないな、式神の行動は契約者である君の意思1つだ。

 君がメシアンに襲いかかれ、って思った瞬間に解除されるリミッターになんの意味がある?』

 

 

『ふふ……まあ、ソコは秘密だ。一応、いち特撮好きとして『強化フォーム』は温存したいってのもある。だから2つ目の条件に『LV30を超える』を設定したんだぜ?』

 

 

『……前にした質問をもう一度するよ。 君に何が見えてるのかな?』

 

 

『ならもう一度同じ答えを返す。 希望さ。だからこそ手間暇かけて作って、つけたんだ』

 

 

 

 

『ただ一人ノアの箱舟に乗ることを許されたネフィリム。

 

 即ち聖書の神の基準でも穢れ無きネフィリム『オグ』のフォルマを核にした式神。

 

 普段は『ネフィリム』の力のみ、条件を満たした後だけ『オグ』の力が開放される。

 

 そして最後のリミッター……【超変身】システムをな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体内に埋没し、リミッターとなっていたパーツ『ワイズマン・モノリス』が胸部に浮上、リミッターではなく強化パーツとして起動開始。

 

手足の武装型式神は、MAGの追加投入によって強化され真っ赤に染まった『ギルスクロウ』を展開。

 

背中には生体装甲の一部、紅の触手武装『ギルススティンガー』が生え、今にも襲い掛かろうと蠢いている。

 

余剰エネルギーが全身からMAGによる爪牙を形成し、全体的なフォルムがより『凶悪な異形』として完成する。

 

 

「……ね、ネフィリムの真の姿……なのか、これが……!?」

 

「なんだよ、あれ……?」

 

「ば、バケモノ極まってるじゃねーっスか……」

 

 

三者三様の反応を見せる中、唯一『自分と同じ気配』を感じ取ったチビスケだけがきゃっきゃと笑う。

 

 

 

 

 

「ウ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ ッ ッ ! ! ! 」

 

 

 

 

それに呼応したのか、あるいは有り余る力を抑えきれない事を示すための咆哮か。

 

 

この世で最も純粋なネフィリムの戦士……『エクシードギルス』が誕生した。

 

 




ギルス→エクシードギルス

LV31→33→43

※エンジェルチルドレン編までに+2LV成長

式神『ギルス』の全てのリミッターを解除した形態であり、対メシア用強化フォーム。

一神教(特にメシア)系の魔法・スキルを無効・反射する固有パッシブスキル『純粋なるオグ』を獲得。

武装も一時的にMAGの供給量が大幅に増えることで破壊力を増しており、通常攻撃でギルス時のスキル攻撃並みの威力が出る。

レベル・ステータスの上昇も含めて、基本的にはギルスの強化形態と言える。

ただしネフィリムの『暴食』の概念も強く、燃費は最悪。

常に相手にドレインスキルを使い続けてMAGを吸い上げ喰らい続けなければ強制的に変身が解除されてしまう。

本来は式神AI&安全装置がなければ強烈な『飢餓』によってところかまわず食い荒らしかねないが、ハルカの場合は安定のド根性+安全装置で一応制御が可能。

その代わり『頭の中がキレた時の100倍カっとなる』と例えるぐらいに戦闘意欲が活性化される。


阿部は元々ギルスを対メシア用に投入する強力な式神兵器として運用するつもりだったので、ここまで尖った性能となった。

とはいえ元が高レベルフォルマを使ったハイエンド式神なので、普通に前衛としても強力。
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