霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「あの二人は心臓に毛がアフロみたいに生えてる人種だから……」

 

 

「 とおりゃんせ とおりゃんせ 」

 

 

厳かな声で歌う一団が、異界の山道を登っていく。

 

 

「 ここはどこの ほそみちじゃ 」

 

 

着物や巫女装束等、様々な格好だが、共通して古風な和装だ。

 

 

「 てんじんさまの ほそみちじゃ 」

 

 

集団の中心には目隠しをされた少年少女がおり、震える脚で歩いている。

 

 

「 ちっととおして くだしゃんせ 」

 

 

すすり泣きや弱音も聞こえるが、周囲の面々は淡々と歩みを急かし、進ませる。

 

 

「 ごようのないもの とおしゃせぬ 」

 

 

たどり着いた場所には、古ぼけた社(やしろ)が1つ。

 

 

「 このこのななつの おいわいに 」

 

 

鳥居や灯篭、来歴を刻んだ石碑も破壊され、残るは社とその中の首塚1つ。

 

 

「 おふだをおさめに まいります 」 

 

 

社の前に少年少女を並ばせ、その後ろに彼ら/彼女らと大差ない年齢の巫女が立つ。

 

 

「 いきはよいよい かえりはこわい 」

 

 

無地の目隠しをした面々と違い、瞳を模した模様が描かれてた目隠しをして。

 

 

「 こわいながらも 」

 

 

薄く笑みを浮かべたまま大幣をひと振り、そして……。

 

 

「 とおりゃんせ とおりゃんせ 」

 

 

何かが潰れる音。

 

 

悲鳴と絶叫。

 

 

最後に残るのは大幣を振る音だけ。

 

 

巫女装束の少女は、血の海と化した地面に一歩踏み出して、

 

 

自分の体を濡らす暖かな血の感触に、酔いしれるように舞いを踊った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実の所、今回の仕事はそう単純じゃあない」

 

「シリアスな話はせめて駅弁食うのやめてから始めてください」

 

「断る」

 

 

メシア教穏健派による内部粛清露呈事件から数か月。

 

あの事件の直後にテンプルナイト・サチコが見事な土下座でギリギリ首の皮一枚を繋げ、

 

さらに過激派のクリスマスICBM666発事件もあってなんだかんだうやむやになり、現在3月。

 

春の芽吹きがそこかしこに見えてきた頃であった。

 

 

 

異界のある日本某所の『古都』に向かう電車の中で、駅弁を食べながら阿部が語る。

 

この車両だけちょっとした貸し切り状態になっており、ボックス席で駅弁を食べながらオカルトの話をしていようと問題はない。

 

阿部いわく『ちょっとした人避けの結界』らしく、他の客はなんとなくこの車両を避けて乗りたくなるんだそうだ。

 

そんなガランと空いた車両の中で、これから行く異界についての簡単な打ち合わせが行われていた。

 

じっくりと作戦を立てようにも、調査に向かったサスガブラザーズの手によって様々な情報が集まったのが二日前。

 

緊急性が高いと判断され、阿部を含めて質・量ともに十分と判断された面々が現地に移動を始めたのが昨日であった。

 

阿部のトラポートを使って各地のガチ勢を集めることも考えた、が……。

 

 

「ちょっとアメリカ行ってくる」

 

「嫁さんがハワイで拉致されかけたんだが……」

 

「タルタロスソロアタックつらいんゴオオオオオオオオ!」

 

「またあの這い寄る混沌がクソギミック組んできてる……」

 

「電脳異界の調整で頭がパーになっちゃう!!!」

 

 

などなど、阿部と集めた面々だけでもギリなんとかなる(推定)異界に誘うには、今の世の中がカオス極まりすぎていた。

 

それでもなんとか縁のある戦闘系黒札を含めた戦力を確保できたのは阿部の交友関係の広さを物語っている。

 

4人が座れるボックス席には、阿部、鬼灯、レムナント、そしてハルカが腰かけている。

 

今回集めた戦力の中では下限が『黒札ガチ勢』クラスというガイア連合の精鋭たちだ。

 

 

「HUNTER×HUNTERで言えば陰獣ぐらいの戦力ってことだな」

 

「師匠、それだとすんっごい噛ませ犬っぽく聞こえるからやめてくれません?」

 

 

彼ら以外にもシノが『G3ユニット』を率いて現地で合流予定。ついでにテンノスケも持ってきている。

 

さらにサスガブラザーズも各地を飛び回って少しでも戦力をかき集めている。

 

 

「……あれ、すいません。(質はともかく)現地の霊能力者組織はいないんですか?

 あの『古都』ならそういう組織の1つや2つ……」

 

「それがさっき言った面倒な問題でな……流石兄弟の調査報告書を読んだんだが、

 どうも異界周辺の霊能組織が大江山の主に取り込まれてる可能性が出てきた」

 

「うーわぁ……」

 

 

古来から、鬼というのは人と近しい種族だ。無論、近いと言っても化生と人では壁があるのだが。

 

とはいえ人が鬼に変じた逸話は多く、悪魔の中でも比較的人間が『化けやすい』種類ではある。

 

混血等の『人との亜種』も誕生しやすく、今回の荒魂のように神の側面があれば加護も授けられる。

 

すなわち霊能組織が鬼の誘いに乗って何かしらの共生関係なり支配関係にある、というのは十分ありえるのだ。

 

 

「実際、根願寺の名前を出しても霊能組織とのアポがとれなかったらしい。

 ガイア連合の名前はこっちにも届いてるはずなのに霊能組織が非協力的。

 仕方ないから流石兄弟がちょっとしたスニーキングミッションした結果、

 異界の拡大や内蔵MAGの濃度上昇といった危険兆候が判明したからな」

 

「あの二人本当に色々と器用にこなしますね」

 

「うちも隠密は得意やけど調査となるとそこまで得意やないからなぁ……あ、駅見えてきたわぁ」

 

 

空になった駅弁を阿部が片付け終えた頃に、目的地である古都の一角にある駅に到着した。

 

改札を通り、古い町並みが今も残る都の中を進んでいく。

 

といっても、観光名所になってるようなあれやこれやからは若干外れていくのだが。

 

 

「いくつかダミー含めて宿を確保してある。今日は今から渡すメモに書かれた民宿に泊まってくれ」

 

「用意周到な上に念には念を入れてますね師匠」

 

「とりあえず本格的な調査、戦闘までは2~3日あるはずだ。古都の観光でもしながら英気を養っておけ」

 

「入れてたはずの念どこにいったんですか師匠」

 

「ま、まあまあ。主殿。私も古都には興味があります。ぶらりと歩くのもいいじゃないですか」

 

「あ、うちは先に民宿行っとるよ。さっき駅で買った地酒で一杯……」

 

「まだ昼過ぎなんですけど!?」

 

 

シリアスになり切れない阿部に、昼間っから酒盛りする気マンマンの鬼灯。

 

こんなんで大丈夫かなぁ、とため息を吐くハルカは小学生ながら一番の苦労人であった。

 

レムナントも理解者ではあるが、良くも悪くも控えめな性格なのでストッパーになれないのである。

 

 

「俺はサスガブラザーズの情報を元に現地霊能組織にもう少し探りを入れる。

 何かわかったら連絡を入れるさ。シノとG3チームも明日には到着するしな。

 決戦は早くても明後日だ、それまで気を張りっぱなしじゃ疲れるぞ?」

 

「まあ、言いたいことはわかりますけど」

 

「それだけじゃない。お前の吉兆に『一人散策するとよし』と出た。

 詳細までは占わなかったが、こうして別行動してお前が動くのに意味があるんだろうさ」

 

むう、とハルカも押し黙るしかない。

 

阿部の占いは本物だ。吉兆・凶兆のドンピシャリ具合は気持ち悪くなるほど。

 

 

「……了解しました、休息を取っておきます」

 

「うん、それでよし」

 

「それと師匠、芸者遊びは禁止ですからね。舞妓さんナンパするのもです」

 

「うん、それはよろしくない」

 

 

『よろしくないってなんだコラァー!』というハルカのツッコミキックをさらりと避け、舞妓さん目当てに古都へと繰り出していく阿部。

 

あのアホは……と嘆息をもう一度。若干12歳で背負う苦労ではない。

 

苦笑しながらまあまあと宥めてくるレムナントに癒されつつ、愛用の胃薬をペットボトルの麦茶で流し込んで歩き出した。

 

 

「といってもお寺だのなんだの見ながらヒマ潰すのもアレだし……。

 僕らお昼まだだから、公園でも探して駅弁たべよっか」

 

「阿部殿と鬼灯殿は平然と電車で食べてましたからね……」

 

「あの二人は心臓に毛がアフロみたいに生えてる人種だから……」

 

 

というわけで、スマートフォンの地図アプリを開き公演を探す。

 

どんどん古都らしくない風景な方に歩いて行ってるのはまあ、仕方ない。

 

途中で小さな公園を見つけ、ベンチに腰掛け駅弁を開く。

 

 

「……オスシ、でしたっけ?私が知っている形と違いますが」

 

「手鞠寿司ってやつだね。あ、生魚大丈夫だっけ」

 

「好き嫌い以前に食事の経験自体ほとんどありませんので……」

 

「お、おう。 まあ、悪くなるまえに食べようか」

 

 

たわいもない話をしながら、手鞠寿司をもぐもぐと食べる二人。

 

レムナントの外見は20代半ば程度に見えるので、年齢差を考えれば姉弟か従妹に見える。

 

『師匠が美味いっていうだけあっていけるなー』とかぼんやりと考えていると、少し公園の一部が騒がしくなった。

 

 

「またいるぜ」「あっちいこうよ」「ママに怒られちゃう……」

 

 

口々になにかしらを話しながら走り去っていく子供たち、年齢はハルカと同じぐらいに見える。

 

つまり月末に春休みを控えている、小学生ぐらいの子供たちのはずだ。

 

それらが遊び場を離れ、公園から出ていく素振りすら見せている。今日は日曜日、遊ぶ時間はたっぷりあるはずだが……。

 

手鞠寿司の最後の1つを口にほうりこみ、麦茶で流し込んでから立ち上がる。

 

 

遠目に見えたのは、着物姿の子供。

 

手にボールのようなモノを抱え、纏う雰囲気は泣きそうな幼児のソレだ。

 

 

(明らかに避けられてるな……イジメか?)

 

 

いやまあ現代で着物姿で公園来たらさけられるか?と周囲に割とアレな恰好(※鬼灯の露出強和装+コート)なのがいたせいでズレた感覚を微調整。

 

レムナントに荷物を見ててもらい、着物姿のその子に歩み寄り声をかける。

 

可能な限りフランクに、今の一連の流れは見ていないフリをして。

 

 

「よっ、ヒマしてるのか?」

 

「! …………(こくん)」

 

 

衣服のせいもあるだろうが、色白で小柄な子供だ。

 

切りそろえられたぱっつん前髪、髪は綺麗な黒髪のセミロング。

 

出来の良いひな人形を子供ぐらいの大きさにして命を与えたような整った顔をしている。

 

手には綺麗な模様が印刷された小さめのゴム鞠を持っており、

どうやらこれを手にさっきの子供たちの仲間に入れてもらおうとしたらしい。

 

(古都って未だにこういう遊び流行ってんのかな……?)

 

鞠遊びって昭和以前の遊びじゃないか?と首をひねりつつ、よし!と思考を切り替える。

 

「ちょうど食後の運動もしたかったし、僕で良ければ付き合うけどどうする?」

 

「……いいの?ボク……」

 

「まあ、ヒマだったし。 というかボクっ子か、師匠なら喜びそうだな。

 いやだめだ、会わせたらまたろくでもなことに……」

 

「……どうしたの?」

 

ん、ああ、いや。こっちの話。と会話を切り上げ、とりあえず広場に出る。

 

さっきいた少年少女は別の遊具のところにいったか家に帰ったようだ。

 

小さな公園にいるのは、着物姿の子供とハルカ、ベンチに座ってるレムナントの3人だけだ。

 

 

「といっても手鞠遊び詳しくないけど、何して遊ぶ?」

 

「……キャッチボール」

 

「それ手鞠遊びか……?まあいいや」

 

 

少し距離を開け、いつでもいいぞー!と声を上げる。

 

いくよー、という声の後。綺麗なフォームで投げたゴム鞠が飛んできた。

 

ちょっとしたドッジボールばりの勢いだったソレをハルカは「うおっと!?」と声を上げつつキャッチ。

 

 

「しょっぱなから豪速球だなぁ!?よし、こっちも……」

 

高レベル故のとんでもない腕力をうまく制御、普通の子供の範疇で投擲。

 

「わ、ぁ、と、と……」

 

「うおっと、強すぎたか?」

 

「……ん、だいじょう、ぶ」

 

キャッチングになれていないのか、小さな手のひらからゴム鞠がこぼれていった。

 

ぽんぽんと跳ねていったゴム鞠を追いかけていき、拾って戻ってくる。

 

その顔は最初の落ち込みきった子供のソレではなく、ただ友達との遊戯に興ずる子供であった。

 

またも勢いよくかえってきたゴム鞠をキャッチしつつ、ハルカがふと気になったことを聞く。

 

 

「あ、そうだ。名前聞いてなかったっけ。なんて呼べばいい?」

 

「……なま、え?」

 

「ああ。僕はハルカ……鷹村ハルカ。君は?」

 

「……蔵土師。 蔵土師 紅葉(くらはし もみじ)」

 

 

それじゃあモミジって呼ぶね、と会話しつつ、ハルカは表情に違和感を出さないように苦心していた。

 

彼の肉体は式神だ、アナライズやエネミーソナーは道具を使わなくても五感と同じように行える。

 

 

(……『人間 モミジ LV7』……明らかに覚醒してるんだよなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古都の一角、古く大きな屋敷の前に立つ阿部と鬼灯。

 

 

 

「ここか、例の霊能組織」

 

「真昼間から酒盛りするフリまでしてから合流したんや、なんも無かったら怒るで?」

 

「何かあると読んだからこそお前に声をかけたのさ。

 

 今の古都で大江山の次に穢れが見える場所だからな」

 

 

 

『蔵土師家』の屋敷の前で、錫杖を突きながら阿部はにやりと好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

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