霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

21 / 85
「なんてところからとんでもないモノもってきちゃってんのアナタ!?!?」

 

黒塗りの高級車から、数名の黒服に囲まれた紅葉が降りてくる。

 

誰一人として言葉を話すことはない、もはや彼らにすることは決まっているからだ。

 

現れる悪魔も護衛である一族の面々にとっては大した相手ではない。

 

最近は『少し』数と質が上がっているようだが、その程度ならば誤差の範疇だ。

 

ダークサマナーらしき集団に本邸が襲撃されたという連絡もある、素早く儀式を終え、本邸の確認に戻らなければならない。

 

 

「人柱は?」

 

「既に祠の方に運び込んであります」

 

「よし、鬼子の準備も済んでいる。儀式を行うとしよう。 紅葉殿?」

 

「……はい」

 

 

車の中で着替えを終えていたのだろう、巫女服に着替えた紅葉が外に出てきた。

 

その表情はさっきまでの紅葉と違い冷え切っており、これで『四度目』故か諦念も混じっている。

 

この儀式は『鬼子』の人間性を削り落とす。3歳で殺人に手を染めるハメになるのだから当然だが。

 

それに加えて『鬼の力』を取り込む事による悪魔化の悪影響もある。

 

後天的なデビルシフター能力の付与に近い、覚醒ではなく、付与。

 

文字通り心身が鬼と化していくのだ。

 

儀式の精度が中途半端な事が逆に幸いしており、あえて中途半端な鬼化に収めることで人間性が保たれている。

 

スパゲッティコードの雑な運用が、ギリギリでバランスを保っていたに過ぎない。

 

そして、半終末によってそのバランスは崩れ去った。

 

そうとも知らず、護衛に囲まれたまま『歌』を奏で、山を登る。

 

 

 

「 とおりゃんせ とおりゃんせ 」

 

 

「 ここはどこの ほそみちじゃ 」

 

 

「 てんじんさまの ほそみちじゃ 」

 

 

「 ちっととおして くだしゃんせ 」

 

 

「 ごようのないもの とおしゃせぬ 」

 

 

「 このこのななつの おいわいに 」

 

 

「 おふだをおさめに まいります 」 

 

 

「 いきはよいよい かえりはこわい 」

 

 

「 こわいながらも 」

 

 

「 とおりゃんせ とおりゃんせ 」

 

 

 

『七五三の区切りが7歳であること』を歌詞と合わせ、わらべ歌である『とおりゃんせ』を儀式に組み込みMAGの集中を助ける。

 

『とおりゃんせ』自体が様々な憶測や陰謀説を向けられる比較的古い歌というのもあり、意外なほどにこの2つは相性が良かったようだ。

 

MAGは精神と情報に反応する。多くの人々の認識にオカルトとの繋がりがあるこの2つを組み合わせた儀式は、

 

作成者にも詳細不明なスパゲッティコード儀式である事と、人道的にアウト極まる事に目を瞑れば完成度は高い。

 

 

(……ごめんね、ハルカ君。ボク……君と遊んでいいような子じゃ、ないんだ……)

 

 

山に入る前に、『鬼子』専用の目隠しを巻く。

 

ここからさきは護衛に守られつつ、鬼化によって得た視覚以外の感覚に頼って山を登らないといけない。

 

だからこそ、鬼子だけは特別製の目隠しを巻く。

 

 

 

 

 

『真っ赤に燃える三つ眼』が描かれた、目隠しを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで毎回僕たちは現地に着くと余裕がなくなるんですか!?」

 

「そーいう運命に愛されとる人間が稀にいるんよ、たっちゃんは明らかにその系譜やぁ」

 

「うれしくねぇ!!」

 

 

公園から民宿に徒歩で移動したところで鬼灯が合流、手早く事情説明し、全力疾走で大江山に走っていた。

 

走りながらハルカも公園で出会った紅葉の事を話せば、鬼灯が「それやぁー!」と若干キャラ崩しながら絶叫。

 

公園から大江山へ向かうルートの1つを人外の脚力で突っ走っているのである。

 

阿部から預かっている認識阻害の護符のおかげで人に見つかることもなく、サラブレッド顔負けの速度で走り抜ける3人は大江山へ近づきつつあった。

 

 

「G3ユニットとシノ殿は!?」

 

「トラック数台まとまってうちらと同じ道は走れへん、別ルートで急行しとる!

 一応、ウチらよりは早く到着して準備出来次第突入っていうとった!」

 

「流石兄弟さんは!?」

 

「予定通りガイア連合繋がりで手の空いてそうなヤツに声かけとるわ!

 ……ちひろちゃんの方からも依頼出しとるから、ある程度は集まるはずやけど」

 

 

危険度、という意味では同時期に『這い寄る混沌』やら『メシア過激派』やらが色々起こしてるせいでそっちにも手が取られている。

 

自衛隊ゴトウ派も即応で京都に動けるほどの対応力はなく、

メシア穏健派は先日の騒動からの内部引き締め&海外支援のために主力テンプルナイトを派遣中。

 

流石兄弟ならトラポートで大江山に直行できるが、それをやったら各地からの黒札招集が間に合わない。

 

ギリギリで異変に気付いたはいいが、本当にギリギリすぎた。

 

ガイア連合最大の弱点である『マンパワー不足』がここにきて響いている。

 

 

(くそ、せめて僕らだけでも大江山に急行しないといけないのに……!!)

 

 

焦りばかりが募る中、三人の背後でクラクションが鳴る。

 

認識阻害してるのに!?と驚いた3人が振り向くと、こちらを追ってくる巨大な影が一台。

 

パンクとは無縁のチューブレスタイヤ、対悪魔用加工がされた強化ジェラルミン製ボディ。

 

青を中心としたカラーリング、『G3』と『ガイアカンパニー』のロゴが描かれている大型トラック。

 

G3ユニットの移動基地『G3トレーラー』一号機であった。

 

 

「たっちゃん!こっちこっち、3人とも一旦荷台の方に乗って!アムロ君スピードおとして!」

 

「アムロじゃないです!尾室(オムロ)です!尾室 怜(おむろ れい)!」

 

「いいからとっととスピードおとして連邦の白い悪魔!」

 

「だからアムロ・レイじゃないです!!」

 

 

助手席の窓を開け、運転手であるオムロとコントしながらこちらに叫んでいるのは……。

 

 

「よっしゃー!追い付いた!我ながら最高の判断だったね!!」

 

「シノさん!?なんでこっちに……G3ユニットは!?」

 

「そーちゃん(ソフィア)に指揮取ってもらって別ルートで向かってる!

 私達より早く、あと数分で到着するよ!それより早く!!」

 

「は、はい!」

 

 

全力走行しているG3トレーラーの後部ハッチが開き、そこから乗り込め、と言われているようだ。

 

3人が飛び込むように中に乗り込めば、運転席から荷台の移動基地へ続くドアを開けてシノが入ってきた。

 

 

「とりあえず、時間が無いから手短に言うね!G3ユニットはしらみつぶしに探すことはできる。

 だけど、集団行動になるから目的地と思われる『首塚大明神の祠』までは間に合わない!!」

 

「それはっ……そうですが!」

 

「だから、到着したら麓だけでも周辺の悪魔を叩いて突入可能にしておく!

 ハルカ君は単独でシノさんたちより早く先行、大江山に突入して儀式を妨害!」

 

「は、はあ!?いや、単純な移動速度なら僕と後ろの二人そんなに変わらないんじゃ……」

 

「せやな、寧ろ空飛べるレムナントちゃんやレベル高いウチの方が早いかもしれへん」

 

「そのための『新兵器』を持ってきたんだよ、シノさんは!」

 

 

新兵器?とハルカたちが首を傾げた所で、シノが「じゃんじゃかじゃーん!」と言いながら荷台に積んであったシートをひっぺがす。

 

その下から現れた『モノ』に、一同が『新兵器』をここに運んできた理由を理解した。

 

 

「……バイク?」「バイクやなぁ」「バイクですね」

 

 

緑と黒と金、ギルスそっくりのカラーリングが特徴的な大型二輪車。

 

全体的にどこか生物的なフォルムを思わせる。甲虫や昆虫が二輪になったようなデザイン。

 

同時に、この車体から『それなりの強さ』を感じる時点で異常事態だ。

 

 

「タダのバイクじゃないよ!デモニカ専用支援バイク『トライチェイサー』の調整モデル!

 G3X用のハイエンド機である『ビートチェイサー』にギルスと同じ生体装甲を採用!

 

 式神搭載型試作二輪戦闘車両……『ギルスレイダー』さ!」

 

「……え、これ式神なんですか!?」

 

 

 

「自衛隊に納入予定の多脚戦車なんかのデータをフィードバックしてるけどね!

 

 一般的なバイクを戦闘用にブラッシュアップした操縦系統、しかも脳波コントロールできる!

 

 同調機能と各種センサーつきだから、ギルスレイダーの入手したデータはギルスも感知!

 

 ギルスと同調することでオフロードバイクすら軽く超える走破能力を獲得!

 

 『80度の急斜面』までは粘着して駆け上がることも可能で、パンクとも無縁!

 

 『全門耐性フィールド』を形成して障害物でも炎でも吹雪でもブチぬいて突撃突破!

 

 機械部分も式神だから回復魔法や回復アイテムで再生・修理可能!メンテナンスフリー!

 

 っていうかHP自動回復とディアラハン持ってるから破壊されても36時間以内には元通り!

 

 ハイエンド式神相当のAIも積んであるから自分で走って駆け付ける!!

 

 おまけに周囲に寄ってきた相手に『衝撃刃(万能属性)』で迎撃する機能付きー!!」

 

 

 

「説明なげーよ!あと盛りすぎでしょ!!これいくらコストかかってるんですか!?」

 

「ショタオジ特性拠点防衛用巨大式神として配備予定の『シキオウジ』3機分ぐらい」

 

「バカじゃねーの?!」

 

 

しかもハルカが式神アイでアナライズしたら『LV35』と出た。

 

シキオウジのLVが『60』と考えると、恐らく初期LVではなく成長性と機能拡張、そしてAIに振っている。

 

あとはシキオウジは地脈のMAGを利用して維持できるが、こいつはハルカのMAGと本体の貯蔵MAG次第なので初期レベルを絞ったのだろう。

 

エンジェルチルドレン編から数か月経過し、今のハルカのLVが『36』。エクシードギルスで『46』と考えるとこの辺りが妥当と判断されたらしい。

 

 

「……あれ、でもシノさん。つまり僕がコレにのって大江山に突っ込めってことですよね?」

 

「そうだね!異界の山道ぐらいは余裕で突っ切れるスペックはあるよ!」

 

「いやそうじゃなくて、僕小学生!バイクの運転なんてできません!!」

 

「無免許運転はいいんですか主殿……」

 

「そ、そこはギルスになる前から銃刀法違反してたし……」

 

 

話が脱線しかけたところでシノが「だいじょーぶい!」と胸を張る。

 

豊満バストがたゆんと揺れるがそれで取り乱す者はこの場にはいない。

 

阿部なら1揉みぐらいはしてたかもしれないし兄者ならまた弟者に突っ込まれる発言してただろうけど。

 

 

「先月の調整の時に、ギルスのボディに『運転』のスキルカード差しといたから!」

 

「いつのまにぃ!?ってうわホントだ!一般スキルの方に増えてる!?」

 

「完成までは自己アナライズで見えないようにしてたからね!サプライズのために!」

 

「やっぱしこの人ほどほどにマッドサイエンティストどすなぁ……」

 

 

が、やっぱりそれでも不安は付きまとう。

 

運転スキルは確かに便利だが、所詮は『一般スキル』。

 

スキルカードはフォルマの一種、人間や悪魔から抽出した概念をマグネタイトで物質化したモノ。

 

一般スキル(食事、性行、釣り等)は記憶の転写に近く、そこまで概念として重くない。

 

そんなスキルでこんなモンスターマシンの操縦とかできるのか?という疑問が浮かぶが……。

 

 

「大丈夫!少なくとも廃材だらけのビルの中ぐらいは走れるから!」

 

「えーっと、それは何を根拠に?」

 

「だってこのスキルカード、記憶元を提供してくれたのが成〇兄弟だから」

 

「なんてところからとんでもないモノもってきちゃってんのアナタ!?!?」

 

 

まさかの〇田兄弟、仮面ライダークウガとゴ・バダー・バの中の人である。

 

そりゃこんなモンスターマシンでも乗りこなせる、寧ろこの兄弟以上とか世界に何人いるかもわからない。

 

ギルスの超人的な身体能力や動体視力と合わせれば、特撮の世界が現実になる。

 

なお、記憶入手に関してはガイアカンパニーが主催するトライアル競技の大会で、健康診断のついでにさくっと入手してきたとのこと。

 

お礼にCM撮影の仕事が出演料超マシマシで依頼されたのでセーフ!とシノは笑顔で言い切った。

 

 

「というわけで!条件は全てクリアされた!」

 

「それ単独戦力で状況をひっくり返される側が言うセリフちゃうの?」

 

「ゆけいギルス!いいや……『仮面ライダー』!!」

 

「カメン……仮面ライダー?いやまあ確かに今からバイクのるから『ライダー』だけど……?」

 

 

疑問符を浮かべつつ、ギルスレイダーにまたがるハルカ。

 

同調機能と人類最高峰の運転スキルが起動し、身長140㎝ぐらいのハルカに合わせて一時的に車体が変形。

 

0.1秒未満でこれらの変形が行われるため、乗っている最中に変身・変身解除しても問題なく対応できるのだ。

 

説明の為に一度閉じられていた後部ハッチがもう一度開き、マシンタラップが展開。

 

 

「ギルスレイダー、発進!」

 

 

カタパルトに設置されたギルスレイダーが車G3トレーラー後方へと投下される。

 

非常に危険かつ難易度の高い作業だが、極まった運転スキルによってあっさりと成功。

 

(※G3系デモニカも運転サポートAIによって同様の投下が可能)

 

本来バイクは加速に従ってクラッチレバーとチェンジペダルを使いギアを上げていくのだが、

 

ギルスレイダーはハルカ/ギルスの思考と同調してタイヤの回転数を操作できるのでそういった作業も不要。

 

全速力で走れ、というハルカの意思そのままに、ギルスレイダーはG3トレーラーを追い抜き駆けていった。

 

 

「……よぉし、それじゃあほーちゃんとれーちゃんはこのままG3トレーラーでついていこっか!」

 

「まあ、全力疾走でスタミナ使うのもアホらしいしなぁ」

 

「わかりました。では少しでも早く主殿に追走を!」

 

「オッケー!アムロ君アクセル全開!」

 

「オムロです!了解!」

 

 

G3トレーラーのハッチが閉じ、トラックとは思えない速度で大江山へ向けて駆け抜けていく。

 

一応は覚醒者かつ、技術部とはいえ黒札である尾室の知覚能力なら事故とも無縁だ。

 

 

(……しっかし、シノさんがあんなの作ることになるとはねー)

 

 

元来、ギルスレイダーのようなワンオフ機はシノの趣味ではない。

 

シノのモットーは『多くの人に使える技術こそ発明の理想』。

 

F1カーも嫌いじゃないが、高性能高燃費な軽自動車こそ自分の理想だった。

 

だからこそ『G3MILD』を完成させたし、あれこそ自分の理想の体現だと思っている。

 

G3シリーズ共通規格によるパーツの融通、G3やG3Xにも換装可能な拡張性の高さ。

 

重量も(雀の涙程度だが)軽量化、それでいてデモニカに必要な機能は最低限搭載されている。

 

コストはG3から3割軽減、製造工程もだいぶ短縮できるし製造難易度も下げてある。

 

ブラックボックスと一部重要パーツ以外はシノ特性の『式神マザーマシン』での生産も可能。

 

細かいバージョンアップこそ今後も必要だが、基礎設計は既に完成といってよかった。

 

そんな彼女がなぜ、このようなワンオフ機極まりないバイクを作ったのか。

 

 

(やっぱさ……仮面ライダーには乗っててほしいじゃない、バイク)

 

 

電王はいいとして、と例外は置いといて、それでも『前世のヒーロー』にはよりヒーローらしくいてほしかった。

 

ただそれだけだ。阿部からの協力の願いを受け、ギルスレイダーを作ったのは。

 

こんな救いもクソもない世界で、ヒーローにヒーローらしくいてほしい。

 

たったそれだけの願いを込めて作られたマシンが、ギルスレイダーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兎山司令から連絡、3分後に『特記戦力』であるギルスが到着予定!」

 

「よし、各部隊に通達!眼前の敵に『GG-02』を使用!

 一気に悪魔を殲滅してから道を開ける!」

 

『GG-02 サラマンダー』……GM-01 スコーピオンに連結して使うグレネードランチャーである。

 

対戦車榴弾も発射可能であり、自衛隊の最新式戦車ですら貫通・撃破可能な超火力装備だ。

 

当然スコーピオン以上の反動があるため、生身での使用は超人以外厳禁。

 

だが、現在G3シリーズに標準搭載されている武装の中では最高火力の切り札である。

 

 

「『GG-02』、アクティブ!いけます!」

 

「よぉし、撃てェ!!」

 

 

放たれた対戦車榴弾が悪魔の肉体を貫通し、体内で炸裂。

 

異界の出口付近で戦闘中だった『妖鬼 オニ』が次々と討ち取られる。

 

どれもこれもLV10以下だが、阿部やシノの予測では『儀式』が進むとさらに強化・増殖する。

 

その前になるべく数を減らし、後からくる『黒札』級の戦力の突入を補佐。

 

さらに比較的低レベルの悪魔が異界の外に出ないよう殲滅するのがG3ユニットの役目であった。

 

 

「『ギルス』、来ます!」

 

「総員退避、退避ーッ!道を開けろー!!」

 

 

前線で指揮をとっていたタティアナの号令で、G3MILDたちが慌てて道を開ける。

 

タティアナの『G3』やソフィアがこの任務の為に強化した『G3X』も横にどいた。

 

そうしてできた空白に、生物的なシルエットの二輪車が突っ込んでくる。

 

 

「……ご武運を、『仮面ライダー』!」

 

「はい、ソフィアさん! ……変身ッ!!」

 

 

赤絨毯ばりに整えられた舞台に突っ込み、車上で変身。

 

『相棒』とそっくりの深緑の生体装甲、赤い瞳に黒いボディ。

 

ギルスレイダーが『ギルス』との同調にさらなる唸りを上げ、衝撃刃で木々を切り裂きながら山道を駆け上がっていく。

 

G3ユニットの面々があまりの速度とアナライズ結果にざわつく中、ソフィアだけが仮面の下で薄く笑みを浮かべていた。

 

 

『師匠、こっちですこっち!ほんとに人が倒れてます!』

 

『おお、俺の美女アンテナはやはり現役だな! ……ちいと年上だが!』

 

『言ってる場合ですか!運びましょう!!』

 

 

海棲悪魔から死ぬ気で逃げ回り、稚内のどこかに漂着したソフィアたち。

 

身元も知れない死にかけの人間をその背に背負い、自分たちの拙い日本語を理解して。

 

凍傷寸前の体の治療どころか、自腹を切ってこの火傷跡まで直そうとしてくれた二人。

 

その片割れであり、あの小さな体で自分を背負って雪原を歩いていたハルカを、ソフィアは今でも敬愛している。

 

もう一人の恩人である阿部が言っていた、彼女にとってのヒーローの称号が脳裏をよぎった。

 

 

「タティアナ」

 

「? どうしました、隊長」

 

「メシアの連中が言うような神を、私は信じていない。ジャパンで信じられているホトケとやらもな」

 

 

神や仏を名乗る悪魔はいても、本物の神仏はこの世にいない。

 

自分達を救ってくれるような神も仏もいるはずがない、それはG3ユニットの共通認識だ。

 

タティアナも「何故急にそんな話を?」と思いつつ、発言には同意した。

 

 

「それでもな、私は信じてみたいことがある。お前も信じてみないか?」

 

「……何をですか?」

 

「決まっている」

 

 

火傷と傷だらけの体、威圧感満載の強面のはずなのに、どこか少女のような笑みを仮面の下に隠して。

 

トライチェイサーやビートチェイサーのテストドライバーをした際に見せられた、ギルスレイダーにシノが残した言葉を思い出す。

 

あのマシンは『仮面ライダー』というヒーローのための相棒なのだ、と。

 

 

 

「たとえ神も仏もいなかったとしても……『仮面ライダー』はいる、ってな」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。