霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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『(ぽかーん)』

 

 

「では問題です。今回何が悪かったでしょうか?」

 

「はい、初手で敵を轢かなかったことです!」

 

「正解!」

 

「正解じゃないですが!?見てくださいよ酒呑童子ぽかーんとしてますよ!?」

 

『(ぽかーん)』

 

 

盛大に阿部をひき殺した直後、とりあえず阿部が持ってた金丹で阿部(ついでにイッタンモメンも)を蘇生。

 

そして蘇生して5秒後の光景がコレである。

 

ギルスレイダーのディアラハンでHPも回復済みなので、いろんな意味でこの師弟はいつものノリであった。

 

 

「運転スキルもありますし、ギルスレイダーはAI搭載ですけど、空はさすがに飛べませんからね」

 

「まあ空中で方向転換できないってのは分かったが……次からは安全運転でな?」

 

「無免許運転については?」

 

「それはいいや」

 

(いいんだ……)

 

 

阿部的にはそもそも仮面ライダーのマシンは無免許運転とかハナで笑える違反車ばっかりなので、意外と

その辺の基準は緩かった。

 

もっというとアマゾンとか免許明らかに取れないだろってライダーもいるのでやっぱりその辺も緩かった。

 

自分が事故死した件についても、そもそも修行の中でハルカをサマリカームまで追い込んだ事がごまんとあるのでお相子だと考えている。

 

 

『……(ハッ?!)フン、どうやら弟子とやらが助けに来たようだが……

 その程度でどうにかなるもんじゃねぇぞ?さあ、おっぱじめようや!』

 

(すっごい気を使ってくれてる!いい鬼(ひと)だ!)

 

「交渉ターイム!!」

 

『認める!!』

 

(ホントにいい鬼(ひと)だ!?)

 

 

逆に段々いたたまれなくなってきたレムナントだった。

 

一方のハルカの方も若干やりづらくはある。基本的に相手の事情も知らずに殴りかかってハイ解決、できるタイプでもないのだ。

 

少なくとも会話ができると判断した相手を一方的に害することができるタイプではない。

 

え、先日真っ二つにしたエンジェル? 頭メシアは例外。

 

 

「そも、貴方の目的は何ですか。封印が解除されたら速攻で暴れだして……」

 

『数百年もロクに動けなかったから暴れて殺して食って犯して楽しみてぇ』

 

「すごくシンプル!ありがとうございました! ……妥協は不可能で?」

 

『無理だな。第一俺より弱い連中と妥協する必要がどこにある。

 

 怪物だの神だの、お前らが言う人外ってーのはすべからくそういうモンなんだよ。

 

 人間ってやつの都合を推し量る方が少ないんだ』

 

「うん、徹頭徹尾その通りですね。強いんなら自分の意見を押し通せる、遠慮なんて必要ない」

 

 

実にガイア連合的にも理解できる価値観だ。

 

基本的にガイア連合(特に黒札組)は『力』で押し通しがちだ、暴力・霊力・財力・技術力と様々だが。

 

中途半端に妥協点を探すのではなく、パワープレイで押し通るのがガイア連合のやり口である。

 

……結果的に本来のガイア教を人助け集団にしたような組織になりつつある。

 

 

「じゃあ、貴方ブチのめして諦めさせればいいんですね?」

 

『おぉ、話が早いじゃねぇか。顔のわりに話せるしな』

 

「異形顔はお互い様でしょう?どうしても戦いたくない相手以外とは戦うようにしてるんです。

 

 ……戦わなければ生き残れない。僕らはそういう世界に生きている。

 

 だからこそ、闘うのならスッキリした戦いがいい」

 

『ソコは同意だ、毒盛られて不意打ちなんざごめん被る』

 

 

軽く腕を回してから、再度ギルスレイダーに乗り込むギルス。

 

阿部も最低限の回復が終わったのか立ち上がり、もう一度アベノセイメイを呼び出した。

 

四神が阿部の周囲で陣を組み、レムナントも支援の為に後衛につく。

 

 

『さぁ、最後の1勝負……楽しんで殺し合おうかァ!!!』

 

 

開始のゴングは酒呑童子の『ファイアブレス』から始まった。

 

あの巨体はすべての攻撃がデカくて広い。吐き出す火炎の息すら火砕流に匹敵する。

 

先ほどのように自分に当たりそうな余波を火炎ブロック等で防ぐのならともかく、

 

直撃してしまえば周囲の酸素が燃やし尽くされてるせいで窒息死もありうる、非常に面倒な攻撃だ。

 

 

羽を展開したレムナントと、空が飛べるセイリュウやスザク、イッタンモメンは空中に退避。阿部もイッタンモメンの背に乗り空をかける。

 

ビャッコとゲンブは管に戻して緊急回避、ギルスはギルスレイダーのアクセルを踏み込み、一気に到達した最高速度でファイアブレスを横切るように回避。

 

 

(ファイアブレスのおかげで、足元に転がってた木々が燃え上がってちょっとした山火事か野焼きだな……煙に紛れて近づく!!)

 

 

空中で阿部たちの攻撃が始まったのを確認してからルートを変え、ファイアブレスによって燃え上がった木々が生み出す煙を目くらましに使い接近。

 

酒呑童子の足元に潜り込めば攻撃が届く、と考えた所で……。

 

 

『フンッ!!そぉりゃあ!!』

 

 

先ほど阿部に対してはなった『大地投げ』を再度発動。

 

MAGによって固めたのだろうか、ギルスがいるあたりの地面まで巻き込まれかけて慌てて退避。

 

 

(ウッソだろぉ!?これじゃあ下手に近づけないぞ?!)

 

『ん?そんなところにいたか、緑のヤツ!!』

 

「やばっ!!」

 

 

地面と一緒に持ち上げられることを回避するために煙から出たのがアダとなり、酒呑童子が目ざとくギルスを発見。

 

振り下ろされた『マッスルパンチ』を急ハンドルを切って回避。

 

しかしマッスルパンチによって砕かれた大地が散弾のように迫ってくる。

 

素早くギルスレイダーをAIに任せて走行させ、自分は腕の鞭『ギルスフィーラー』を伸ばし、それをヌンチャクのように振り回す。

 

 

「はぁっ!せいっ!!オラァッ!」

 

 

飛んでくる土塊や岩片を撃ち落とし、踏みつぶそうとしてくる酒呑童子の足を避け、そのまま股の間を通って後方に抜ける。

 

 

『ええい、ちょこまかと……』

 

「今だ、同時に撃て!!」

 

 

追撃するために振り向こうとした酒呑童子の隙だらけの体に、地上に再召喚されたゲンブとビャッコを加えた四神の攻撃が直撃。

 

さらに阿部の号令で阿部の『ジオダイン』に合わせてアベノセイメイとレムナントからも魔法が飛ぶ。

 

 

(もうマハジオバリオンやマハジオダインを連発する余裕はない!

 かといって燃費のいいザン系じゃ威力が足りない!

 ジオダインで少しでも足を止めさせて、一撃を狙う!

 

 ……これ以上の弱体化は期待できないんだからな!!)

 

レベルが下がれば、当然燃費もよくなり維持するためのMAGの負担も減る。

 

この異界のMAG濃度や諸々の条件を加味すると、阿部の計算ではぎりっぎり『LV70~80』の酒呑童子は維持できてしまう。

 

無論本当にギリギリ、それも過去に貯めこんだMAGを切り崩しながらの自転車操業だが。

 

つまり、ここから先はレベルダウンの期待できない酒呑童子を相手に攻撃を続け、MAGかHPのどちらかが切れるまで削り続ける『いつものボスバトル』に突入したのである。

 

 

(だが、向こうも自分のレベルまで削ってMAGの問題を何とかしないと戦えないぐらいの枯渇具合。

 

 大技を使う余裕もないはず、あとはどこまで俺たちが粘れるか……)

 

『しょうがねぇ、だったら1匹ずつ仕留めてやらぁ!!』

 

 

酒呑童子が右手を地面に突き刺し、たっぷりと土塊と岩塊を握りしめる。

 

この時点で盛大にイヤな予感がした阿部が「避けろ!」と叫んだ直後、酒呑童子が掴んでいたソレを全力投球。

 

山ごと両腕で抱えてぶん投げてたときより大きく量は減ったが、代わりに速度は目で見切れる範囲ではなくなっていた。

 

 

「【テトラカーン】!!」

 

 

咄嗟に阿部はテトラカーンを使ったが、守りきれたのは近くにいたレムナントとセイリュウ、乗っていたイッタンモメンのみ。

 

酒呑童子が集中的に狙ったスザクは穴だらけにされて死亡、ビャッコと共に脚に攻撃を仕掛けて投擲を中断させようとしていたゲンブは踏みつぶされた。

 

蘇生アイテムの数も限られる上、蘇生のための時間稼ぎも厳しい。

 

幸い、地上戦を指揮していたアベノセイメイはビャッコに乗って素早く離脱していたが……。

 

 

『逃がすかァ!』

 

『むうっ!?』

 

 

次の狙いをアベノセイメイとビャッコに絞った酒呑童子の拳が振り下ろされる。

 

一か八かでアベノセイメイはビャッコから飛び降り、ビャッコもアベノセイメイと逆側に跳躍。

 

全速力で正反対の方向に動けば、あの巨体でも巻き込める可能性が高いのは片方のみ。どちらかが生き残ることに賭けたのだ。

 

結果から言えば賭けは成功、しかし、狙いを片方に絞ったことでビャッコは抵抗もできず粉砕された。

 

 

『ペルソナの方、もうMPもロクに残ってねぇだろう?さっきから魔法の頻度が落ちてるぜ!!』

 

『……見抜かれていましたか』

 

 

阿部とアベノセイメイは別々のMPを使用している。

 

供給源は阿部のMAGだが、そこから魔法のもとになるMPの貯蔵を別にできる。

 

イメージとしては影分身の術の貯蔵チャクラとか風の偏在の貯蔵魔力に近い。

 

満身創痍の酒呑童子を削り切ることを優先するという作戦を立てたので、

支援魔法の多いアベノセイメイではなく攻撃魔法の多い阿部が多くのMPを割り振られたのだ。

 

ちなみにHPも別管理であり、そのためアベノセイメイがやられても阿部に影響はない。

 

さすがにペルソナ使いが倒れたらアベノセイメイも消えるが、かなり融通の利く存在なのだ。

 

(トラ系の魔法で逃げてもいいですが、そうなれば私は下位の魔法すらロクに使えないお荷物になる。

 ……殴り潰される前にアギかハマでも撃っておきますか)

 

自分が潰される前に抵抗しておこう、と思った瞬間。

 

 

「ヴォオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

『何ッ!?』

 

 

マッスルパンチを放つために振り下ろしていた腕を、ギルスレイダーに乗ったギルスが駆け上がってくる。

 

デコボコした人体に近い、急な坂道通り越して絶壁のようなソレを勢いよく突っ走る。

 

咄嗟に虫でも払いのけるように酒呑童子が右腕を振るが、べったりとタイヤが腕に吸着して離れず、そのまま二の腕のあたりまで突っ込んできた。

 

 

『この、アリかキサマ?!』

 

「カミキリムシかカマキリと言え!それはともかくゥ……ふんっ!!」

 

 

左手で蚊でも叩くように右腕のギルスを叩き潰そうとした瞬間、ギルスが全力で跳躍。

 

酒呑童子の眼前まで一気に迫る。

 

驚愕、という感情を表情に浮かべた酒呑童子の眉間に、ギルスの一撃が突き刺さった。

 

 

「『ライダーキック』ッ!!」

 

『ぬぐおっ!?』

 

 

覚えたばかりの新技、どうやら『飛び蹴り』の上位互換である物理技らしい。

 

綺麗なフォームで蹴りを叩き込み、ギルスヒールクロウの要領で顔面を蹴って跳躍。

 

地面に落ちる前にギルスフィーラーをギルスレイダー目掛けて伸ばし、巻き付けて自分を引き寄せ、再度乗り込み離脱。

 

流れるようなヒットアンドアウェイであった。

 

 

「くそ、あの一撃でもあんなもんか……かとってギルスクロウの攻撃じゃ蚊が刺したようなもんだし」

 

「……いや、いい一撃だった」

 

「! 師匠!」

 

 

いつの間にやら、退避中のギルスレイダーの近くまで阿部とイッタンモメン、そしてセイリュウが飛んできていた。

 

他の面々は酒呑童子の注意を引いているようで、アベノセイメイもレムナントがもってきたチャクラドロップを齧っている。

 

そして阿部が口を開き、今の攻防を見て思いついた『作戦』を説明し始めた。

 

 

「それで、だ。 ちょいと1つ、賭けに乗る気はないか?」

 

「ベットするのは?」

 

「全員の命」

 

「リターンは?」

 

「酒呑童子の命」

 

「やりましょう」

 

 

即答、0.1秒も開けずに決断。

 

元より阿部の教えで『可能な限り早く決断して動け、ただし足元をおろそかになするな』と学んでいたのもある。

 

しかし、霊山同盟の一件で『長々と考え込む時間が無い場合もある』と経験した事も大きかった。

 

経験は人を成長させる、訓練や学問だけでは得られない生の体験が重要なのだ。

 

決断力……その一点において、ハルカは師に追いつきつつあった。

 

 

【あるもの】を手渡し、作戦の詳細を手早く説明。

 

酒呑童子の側面に回り込みつつ、ギルスのやや前をイッタンモメンとセイリュウが飛んでいく。

 

先ほどからの大暴れで、小高い丘のようになった地形を選択。 

 

 

「いけっ、ギルスレイダー!!駆け抜けろ!!」

 

 

ギルスレイダーのエンジン音が唸りを上げて、その丘をジャンプ台替わりに大跳躍。

 

さらにイッタンモメンが跳躍したギルスへ追い付き、その前方で『滑り台のような形になる』。

 

最大限体を長く伸ばしたイッタンモメンを足場に、滑り台を下から上に逆走する要領でギルスが疾走。

 

真上に飛びのいた阿部の下を潜り抜け、イッタンモメンのジャンプ台を使い、もう一度跳躍。

 

酒呑童子の首ぐらいの高さまでギルスレイダーは飛び上がってきた。

 

さらにセイリュウもこれを追走、2つの影が酒呑童子に迫る。

 

 

『何ッ!?』

 

『総員、ギルスとセイリュウに支援を集中!仕掛けるぞ!』

 

 

アベノセイメイの号令で、タルカジャやスクカジャがギルスとセイリュウに集中。

 

飛んできた2つの影を咄嗟に迎撃しようとした酒呑童子だが、不意を打ったギルスとセイリュウの方が一手早い。

 

 

「 超 変 身 ッ ! ! 」

 

 

ギルスレイダーを足場に、『エクシードギルス』が跳ぶ。

 

さらにとぐろを巻きながら上昇していくセイリュウが、まさしく『昇竜』という言葉にぴったりの軌跡で追随。

 

空中で体をひねって体制を整えるギルスへと、阿部が用意した最後の一手が起動する。

 

 

「【発信機】起動!ありったけのアギラオの力をギルスに!!」

 

 

転移用コンテナに詰め込んだ、10万個を超えるアギラオストーンを『発動しつつ転移』。

 

ギルスに手渡した【発信機】目掛けてアギラオストーンが飛んでいき、起動。

 

ただし敵にぶつけるためではなく『合体魔法・合体スキルのリソース』として注ぎ込む。

 

ライダーキックの構えを取ったギルスの後ろにセイリュウが回り込み、アギラオと同時にウィンドブレスを発動。

 

暴風の吐息が炎を纏ったギルスを押し出し、酒呑童子目掛けて迫ってくる。

 

 

 

 

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

 

~~~中略~~~

 

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『アギラオ』

『ウィンドブレス』

『ライダーキック』

 

 

 

 

『こ、これは……!?』

 

 

酒呑童子の肌でもビリビリと感じる威圧感。

 

これは自分を殺しうる一撃だと判断した時点で、即座に受け止めることを選択。

 

元より巨体のせいで避けるという選択肢はない、ならば歯を食いしばって耐える方が『自分らしい』。

 

徹頭徹尾、外道はあっても横道はなし。そんな鬼の王目掛け……。

 

 

「これが僕たちの最後の一撃!!

 

『ドラゴンライダーキック』だああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

炎を纏ったギルスが、朱き流星となって着弾した。

 

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