霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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『それでも、生きていくしかない。終わりが来るまではな』

 

【Eフィールド 総合作戦本部】

 

 

 

『各自、状況知らせ』

 

 

Gトレーラー内部の大型通信設備が、各フィールドの通信機による連絡網を構築。

 

異界内部でも繋がる技術部特製の無線機から、各戦線の戦況がリアルタイムで共有されるのだ。

 

 

『こちら鬼灯、Eフィールドのケリはついたで。

 

 【金童子】討伐完了。はぁ、キツい相手やった。

 

 まあ、満足いくまでしばき合えたさかいええけど』

 

 

『えーっと、これに話しかければいいんだよね?

 

 Wフィールドの佐倉です!【虎熊童子】の討伐、成功しました!』

 

 

『Sフィールド突入班、班長のマキマです。

 

 【熊童子】の討伐完了、重傷者はいません。

 

 こちらで手当てしてから下山します』

 

 

「……Wフィールドの流石弟者です、【星熊童子】の討伐完了。

 兄者と銀さんがボッコボコのボッロボロなんで宝玉プリーズ」

 

『了解した、こちらで可能な限り退避ルートを掃討し、安全に下山できるよう支援する。

 Wフィールドには回復魔法持ちの黒札が向かえるよう手配しよう』

 

 

届いた内容は双方にとって吉報であった。

 

大江山の防衛線を左右する、大江山四天王討伐の正否。

 

各戦線で内部に突入した黒札からの討伐報告は、まさに指揮官にとって値千金の情報なのだ。

 

 

(まーさか俺たちで【四天王】討伐するハメになるとはなぁ)

 

 

ガチ勢を最低一人割り振るはずが、来る予定のガチ勢の地元で別のトラブルが発生。

 

それらに手を取られた結果、現地にいる黒札によって対処するのが最適……となってしまった。

 

結果としてガチ勢の半歩下ぐらいの強さである【白夜叉】と【サスガブラザーズ】が突入班に移動。

 

兄者と銀時が白目むいてるが、なんとか討伐に成功したのである。

 

……ただし、予定外の援軍もあったのだが。

 

 

「まさかアンタらが助太刀に来るとはなぁ。

 阿部さんの呪詛で縛られてるとは聞いてたけど、士気も妙に高いし」

 

「……もとより、この大江山は我ら『蔵土師家』の管理する異界ぞ。参戦せずしてどうする。

 といっても、肉壁と露払い程度にしか役に立てんかったがな」

 

 

そう、この山で血なまぐさい儀式を行い、それが理由で阿部に一掃&拘束されていた蔵土師家。

 

その後阿部が呪詛契約を押し付け、いざというときは予備戦力として突っ込ませる手筈だった。

 

ところが自ら最前線、それも危険地帯を望む者が続出。

 

蘇生された一族の長と共にWフィールドに突入し、星熊童子相手に散っていったのである。

 

弟者の目の前にいるのは、阿部にネクロマで操られたりもしていた一族の長老である。

 

 

「……我らはどんな手を使ってでもこの国を守りたかった。たとえ死後、地獄に落ちるとしても。

 

 どのような裁きでも受けるつもりだった。先の世を、悪魔やメシアに汚されないために」

 

「まあ、その覚悟だけは買うけどさ……」

 

「構わんよ、我らも認められるとも、受け入れられるとも思っていない。所詮鬼と同じ外道だ。

 だが、この古都を守る一族は我らも含め8つ……そのうち半数は既に途絶えた。

 諸君らの言う『行儀のいい』方法にこだわっていた一族から順にな」

 

 

それしかなかった、それ以外になかった、だからそうした。

 

蔵土師家はつまるところたったそれだけの一族だ。外道であることは確かにそうだが……。

 

 

「外道になる必要があった。そうでなければ、持たなかった。

 すべての家が途絶えれば、古都の人々はまとめて悪魔の餌場に堕とされる」

 

「……それは、そうだが……」

 

 

やりきれない、という表情の弟者に、長がボロボロの体を引きずって言葉を続ける。

 

 

「だからこそ、諸君らに言えることがある。

 

 ……君たちは『こちら側』に来るな」

 

「!?」

 

 

うつむいていた弟者がはっと顔を上げると、憑き物が落ちたような長の顔があった。

 

 

「犠牲を当然と思うな、殺す事を当たり前と思うな、人の死を仕方ないと割り切るな。

 その果てが我らの末路、鬼を討つために鬼になり果てた愚者の集団ぞ。

 君はまだ若い、色々と道を探すといい。それだけの力と時間はあろう。

 ……すまんな、このような老いぼれの戯言を、さも説教のように」

 

「いや……金言にする、じゃなくて、します。

 

 少なくとも、ここにいる面々の力が欠けてたら星熊童子には届かなかった。」

 

「……そうか。なら、無駄に長生きした価値もあったらしい」

 

 

(そうだ、根性出せば届いたじゃねーか、俺たちは……あとは、酒呑童子)

 

 

このままいけば朝まででも防衛ラインは堪えられる。

 

しかし、すべては山頂にいる面々があの規格外の鬼を討ち取ることが前提の作戦だ。

 

もはや彼らにできるのは祈る事だけ。

 

(あとは任せたぜ、仮面ライダー)

 

神でも仏でもなく、仮面ライダーに祈りを捧げ、弟者は自分にできる事に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い流星となって酒呑童子に突撃したハルカは、炎の中で過去のことを思い出していた。

 

 

(確か……ギルスになって半年くらい経ったときだっけ?)

 

 

走馬灯にしてはピンポイントだな、なんて頭の中で呟いていると、記憶が倍速映像のようによみがえってくる。

 

あの頃のハルカは山梨支部での修行をひと段落させて、阿部と共に日本各地の霊能一族や霊能組織を巡り、異界の調伏等を行い始めた頃だった。

 

大抵の場所ではあまり期待されないが、悪魔を倒し、異界を潰せば感謝感激雨嵐と称賛の言葉が降ってくる。

 

毎回のように自分の貯金通帳に増えていく金と、彼の住んでいる場所に増えていく魔石やマッカ。

 

……それに耐えきれず、一人宿を抜けだし、泣いていた事があった。

 

 

『どうかしたのか?』

 

『……師匠、追ってきたんですか?』

 

『まぁな。こういうのは得意でね……で、何があった。感謝されてる間も沈んだ顔しやがって。

 おかげで夜這いに来る女を待ってたのに飛び出してくるハメになったぞ。ハメてねーのに』

 

『最低ですよ師匠。 ……耐えきれなく、なったんですよ。誉め言葉に』

 

 

涙をぬぐう事もせず、誤魔化す事もせず、鷹村ハルカは生まれて初めて誰かに弱音を吐いた。

 

 

『この力は……僕のモノじゃない。ただ貰っただけだ、なんにも努力せず、苦労せず。

 褒められるんなら、それは僕じゃない。ギルスを作った皆であるべきなんだ。

 自分の誇れる力でもないのに褒められる、それこそ恥以外の何物でもない!』

 

『……まあ、お前の美意識にはとやかく言わんが』

 

『それだけじゃない!僕は……僕は称賛の言葉を聞いて……嬉しいと思ってしまった!』

 

『? それの何が悪い』

 

『何もかもです!さっきも言ったでしょう、あれは僕の『力』への称賛だ!

 僕が受け取っていいものじゃない!それなのに僕は……喜んでしまった!

 生き恥にもほどがある!僕だけの体じゃなければ、今すぐ腹を掻っ捌きたいほどに!』

 

 

余りにも低い自己肯定感、ある意味彼の母親の真逆だ。

 

弟に母の愛を独占され、一族の皆から存在そのものを否定され続け。

 

己の命に、人生に、そのすべてに価値を感じられなくなった少年がそこにいた。

 

 

『僕は……礼を言われるような人間なんかじゃ、ないんだ。

 僕は、人に褒められる人間なんかじゃ、ないんだ。

 

 だって殺した、母さんをこの手で!必要だからって生贄にされた一族の皆も見捨てて!

 弟を放逐して、家を乗っ取って……こんなの、鬼だ!外道だ!鬼畜の所業だ!

 今でもあの時の……首を跳ねた感触が取れなくて……僕は……』

 

 

鷹村ハルカは必要なら己の手を汚せる男だ。

 

しかし、汚したことを受けいれ飲み込むには、あまりに彼は幼すぎた。

 

すこしばかり早熟な所もあるが、その在り方は純粋で清廉な子供そのもの。

 

悪を悪として見ることができる瞳は、己を悪と断じる事すらできてしまった。

 

 

『僕は最低だ……多くの人を幸せにするために、一部を切り捨てて……。

 ダークサマナーなら殺してもいい、メシアンなら罪悪感も抱かない、って人もいる。

 でも僕は……僕が殺したのは……家族なんです。たとえ、ダークサマナーでも』

 

『なら、それは悪いことなのか?』

 

『……悪いに、決まってるじゃないですか。でも、その悪いことを僕はしなきゃいけないんだ。

 そうじゃなきゃ……やらなきゃ生きていけないんだ……いいや。

 

 生きてちゃ、いけないんだ。やらなきゃなんの価値もないんだから……』

 

 

彼の本質は【価値】にある。価値こそがすべてを決めると思っている。

 

自分はなんの価値もなかった、だから生まれてからあのような扱いをされてきた。

 

今は力という価値がある、皆自分の価値である力を褒めてるのだ、と。

 

 

『なら、お前は死にたかったのか?あの時の生きたいって言葉は嘘か?』

 

『……それが、分からなくなったんです。あの時はどうしてもいきたかった。

 生きて、自分の価値を証明するまでは死ねないって。どうしても死にたくないって。

 僕が死ぬときに誰かが泣いてくれるようになるまで、死ぬわけにはいかないんです』

 

『ああ、そうだ。

 それでも、生きていくしかない。終わりが来るまではな』

 

 

こくん、とハルカが頷く。涙は止まらないが、言葉は少しずつ落ち着いてきた。

 

 

『……褒められて、うれしいって思って、そんな自分が本当に嫌いで、でも……。

 褒められることができた、ってことは、それだけは……無意味でも、無価値でもないから。

 だから、もうちょっとだけ生きたいって……もうちょっとだけ、褒められたいって。

 

 褒められて……認められてる内は、僕みたいな命でも、生きてもいいんじゃないかって。

 

 業突く張りで、強欲な欲張りで、足るを知るを知らないって言われそうだけど。

 

 僕は生きたい。生きることを素晴らしいと思えるまで生きたい。

 そう思っても、いいんでしょうか』

 

 

あまりにもあんまりな、「自分は生きててもいいのか」という質問

 

しかし、阿部はまっすぐにそれを受け止めた。答えはずっと1つだった。

 

 

 

『ああ、お前は生きていてもいい。

 

 お前が自分の価値を見つけるまで、生き続けろ。

 

 そしてお前が見つけたお前の価値を、俺に見せてくれ』

 

 

そういって笑う阿部に、泣き笑いのような表情で返すハルカ。

 

不器用極まる師弟の一幕……それが、今もハルカを支える1つであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

一瞬が何時間にも感じる回想を経て、場面は鬼の王と赤い流星の激突に戻る。

 

腕を交差させ、ドラゴンライダーキックを受け止めている酒呑童子。

 

ありったけの力を脚に込めて、その防御を貫こうとするエクシードギルス。

 

両者の力は完全に拮抗していた。

 

 

(師匠……僕は、まだ自分に自信が持てません)

 

 

それでもこの場に立っているのは、来るときに受けた声援が背中を押すからだろう。

 

仮面ライダーという英雄を称える声、それを自分が背負っているという自負。

 

自分を仮面ライダーと呼んでくれる人々のために、仮面ライダーであり続ける。

 

その誇りが彼の新たな支えとなった。

 

 

(少しだけ……力が足りない!なら!!)

 

 

体の中の新たな力、バーニングフォームに感覚を伸ばす。

 

まだほとんど制御できていない莫大なエネルギー、疲弊している今では数秒も持たない。

 

だが、シノからの忠告を理解したうえで対策があった。

 

 

(僕の肉体を再生する分と、バーニングフォームを生み出す分でMAGを浪費するのなら!

 

 再生能力を切って、僕の体全部を薪にすればいい!

 

 僕の体が燃え尽きるまでの時間は、バーニングフォームを維持できる!)

 

 

酒呑童子を撃ち抜くまで持てばいい、そんな投げやりにすら見える判断。

 

しかしギルスに、いやハルカにとっては当然なのだ。

 

茨木童子との戦いで確信した『自分にできるのは体を張ることだけ』という真実。

 

張りこむ体を惜しむ、なんて思考は彼の中に存在しない。

 

 

「超変身ッ!!」

 

 

高速再生をカットし、自分の全てを燃料として投入。

 

体中が内も外も絶え間なく焼かれ、絶叫しそうなほどの痛みが襲う。

 

それら全てを根性と気合で抑え込んで、エクシードギルスの脚に炎を集中。

 

バーニングライダーパンチの時に掴んだ要領で全ての力を注ぎ込む。

 

 

「ブチ抜けええぇぇぇええええぇぇぇっ!!」

 

 

自分の全てを炎に変え、酒呑童子にぶつけようとしたその瞬間。

 

 

瞬きの内に、鷹村ハルカは真っ白な空間に放り出されていた。

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

さっきまで全身を苛んでいた熱と痛みが消えている。

 

それどころか、ギルスへの変身まで解除されていた。

 

人間モードのまま、上下前後左右になにもない白い空間に放り出されている。

 

 

「なんだ、酒呑童子の幻術か……?」

 

「幻術じゃない、こっちを見ろ」

 

 

さっきまで何もいなかったはずの背後から声がかけられる。

 

思わず飛びのきつつ振り向いたハルカの眼に映るのは、見慣れた異形。

 

二本の角に、朱い眼。黒と緑の昆虫を思わせる肉体。

 

ハルカからすれば何度も見てきたその姿は……。

 

 

「……ギル、ス……?」

 

 

「ああ、ようやく会えたな。しかし、そうか。

 

 『あの男』も俺をその名前で呼んでいたが……。

 

 俺のこの姿は『ギルス』と言うんだな」

 

 

鷹村ハルカの持つ力、ギルス。

 

それと瓜二つの何者かが、ハルカと向かい合っていた。

 

 

 

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