霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「いってきます」

 

大江山全体を見渡すことができる上空で、二つの人影が祝福される『仮面ライダー』達を見下ろしていた。

 

一人は、マゼンダと黒のバーコード状の『仮面』を被った『仮面ライダー』。

 

もう一人は、首から足元まで真っ黒な衣服を着こんだ中性的な青年。

 

 

「この世界のギルスは随分気合入ってるな……中身がオッサンじゃないし」

 

「僕の世界のギルスは中々に覚悟が決まっていたが、君の世界のギルスは違うのかい?」

 

「一人で全部背負い込もうとするタイプではあったな」

(まあそもそも俺が見たのは『エクシードギルス』だけなんだが)

 

 

随分仲良さげに会話しているようにみえるが、互いに互いへの警戒は一切怠っていない。

 

どちらも目的の為に一時協力しただけであって、本来は交わることのない相手だからだ。

 

バーコード顔の仮面ライダーは『この世界であるものを探すために』。

 

黒い衣服の青年は『この世界のある者から依頼を受けたために』。

 

酒呑童子とギルスの戦いに介入できなかったのも、目の前の相手が酒呑童子以上の脅威になりかねないとお互いに考えているからだ。

 

 

「……『この世界の僕』からの依頼も済んだ。僕は元居た場所に戻るとしよう」

 

「この世界に来る前にも聞いたが、この世界にもアンタみたいなのがいるのか?」

 

「ああ。僕よりずっと早く『世界を見守る』選択肢を選んだようだし、名前も違うが同じものだ。

 ……といっても、ちょくちょく人に力を貸している形跡があるが。

 寧ろ、君は帰らないのかい?」

 

「ああ、探し物がまだ見つかってないからな」

 

 

見下ろす先には、人々に囲まれてもみくちゃにされているハルカの姿。

 

少々複雑そうな顔をしながらも、かつて彼が『アギト』に向けていたソレより視線は柔らかい。

 

 

「彼のもつバーニングフォーム……あれは『シナイの神火』。

 

 僕の世界では光の力……『プロメス』が司っていたモノだ。

 

 恐らく『この世界の私』か『プロメス』、それに近しい者が加護として与えたのだろう」

 

「なるほど、だいたい分かった」

 

 

銀色のオーロラが謎の青年……『オーヴァーロード・テオス』の背後に現れる。

 

居酒屋の暖簾でもくぐるような気楽さでそれをくぐりながら、彼は小さく微笑んだ。

 

 

(神火はまだ使いこなせてはいないようだが、アギトの力が馴染んでくれば、あるいは。

 

 ……皮肉なものだね、僕が、別の世界とはいえ人がアギトになるのを望むようになるとは。

 

 いまだに『答え』は出ていない。アギトが人に受け入れられるのか、排除されるのか)

 

 

『ああ……きっと俺が、勝つさ!』

 

 

(……まだしばらく、君の勝ちは決まらないらしいよ)

 

 

オーヴァーロード・テオスはオーロラの向こうに消えた。また、人の結末を見守るために去っていったのだろう。

 

そして、銀色のオーロラが消えた後も、マゼンダと黒の戦士……『仮面ライダーディケイド』はこの世界に残っていた。

 

もう一度時空を越えた旅に戻る前に、することが残っている。

 

 

「どこいったんだ、ユウスケのやつ……!!」

 

 

……この世界で(何度目かの)ソロプレイになっていると思わしき仲間の捜索であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって、時間も変わって、古都の某所。蔵土師家の屋敷。

 

阿部と鬼灯の大暴れによって破壊されていた個所も修復が終わり、今では古めかしくも立派な屋敷に戻っていた。

 

その客間で、数名の男女が向かい合っている。

 

「それで……結局両脚は戻さなくていいの?ガイア連合なら高性能な義足だってあるんだよ?」

 

脚を崩し、女の子座りで座っているのはシノ。

 

テーブルをはさんだ向かい側に座っているのは、紅葉であった。

 

「はい。 この手足は可能な限り、無くなったままがいいと思ってるんです」

 

「うーん、でもこれから蔵土師家とガイア連合の間に立って霊地の管理もするんでしょ。五体満足じゃないとキツくない?」

 

そう、あれからガイア連合と蔵土師家で改めて話し合いの席が設けられ、引き続き大江山については蔵土師家が管理することに決まったのだ。

 

血なまぐさい儀式があったとはいえいままで管理してきたことは確か。

 

なおかつ古都の特性上ジュネスを立てるのも難しく、ガイア連合は出張所を建てて対応することに決定したのだ。

 

 

「それに、阿部殿が古都の大結界を修復してくださりましたから。今後はアレ頼りでなんとかなりそうですし」

 

「我ら蔵土師家でも維持可能な指南書までまとめてくださり、なんと感謝を述べればいいのか……」

 

「あー、まあねえ。帝都の結界ほどじゃないけどトンデモバリアだもんね、アレ」

 

紅葉に続くように、彼の周囲に控えている蔵土師家の術者達も頭を下げる。

 

古都及び周辺の霊地に強力に作用し、人の住んでいる区画への侵入を防止。

 

さらに古都から他の土地へつながる道も保護、近隣までなら異界化による地形改変の影響すらシャットアウト。

 

今は悪魔退治による修行場として使うためにあえて出力先を限定しているが、やろうと思えば大江山を含む霊地・異界の悪魔を大幅に弱体化可能。

 

最低限の管理の方法は蔵土師家でも理解・実行可能なマニュアルにまとめられ、出張所にいるガイア連合の人間抜きでもメンテナンス程度はできる。

 

 

「あっくんが一晩でやってくれました。いやー、ほんとチートに片足突っ込んでるよね」

 

(ちいと?)

 

「この手の作業やらせたら明確に上なのってショタオジぐらいじゃないかな!」

 

(((逆に言えばこれ以上の術者がいるのか、ガイア連合……!?)))

 

 

改めて自分達ではどうにもならない質と数をそろえた組織だった、と明確に認識した一同。

 

元々古都の大結界に加えて大江山の激闘でその認識には十分だったのだが、上には上がいる発言はそこへの追撃には十分だった。

 

だいたいの一族の認識は「こんなことならもっと手広く情報収集して土下座して足舐めておけばよかった」である。

 

まあ、情報に鋭くないと死ぬはずのフリーのダークサマナーだったクレマンティーヌですらガイア連合の詳細まではつかめてない時期もあったので、

古都周辺で引きこもりやってた蔵土師家が蜘蛛の糸を掴めた可能性は皆無に等しいのだが。

 

 

「ま、かわりにガイア連合特製車椅子を持ってきたからさ!悪魔とも戦える特別製!」

 

「それは果たして車椅子なんですか……?」

 

「技術部のスティ……S氏特製!」

 

「なんで本名出さないんですか……?」

 

「シノさん以外の黒札に知られたらシノさんがゲンコツ貰う相手だから」

 

(いったいボクはどんな車椅子に乗せられるんだろう……)

 

 

あははー、というのーてんきな笑い声のシノに冷や汗を流しつつ、そういえばと呟いて。

 

 

「その、今日はハルカは来てないんですか?普段皆さんが来るときはついてきてくれてたんですが……」

 

「え?あー。ほら、そろそろ『アレ』だからさ。そっちの準備に掛かり切りなんじゃない?」

 

「アレ?」

 

シノの指さした先にあったのは、部屋に飾られていたカレンダー。

 

それを見て紅葉も「ああ」と納得の声を出す。

 

「ボクは足がコレなので遅らせる予定ですけど、そうですよね。もうすぐ『アレ』ですもんね」

 

「そうそう。やー、あっくんもたっちゃんも妙に張り切ってたよ!」

 

 

そこから先は、事務的な会話混じりの雑談がにこやかに進んでいく。

 

『仮面ライダー』の繋いだ縁は、確かにこの土地を救った。

 

守ったのではない、救ったのだ。

 

『悪事』の『渦中』にいた『鬼子』が笑えるようになるまで。

 

もう、この街に泣くだけの『悪渦鬼』はいない。

 

鷹村ハルカ……仮面ライダーギルスは、『街の涙を拭う、二色のハンカチ』になってみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山梨某所、黒札・金札向け対オカルト対策万全のマンションにて。

 

 

「ティッシュは持ったか?」

 

「持ちましたよ」

 

「主殿、ハンカチは?」

 

「持ったってば」

 

「折りたたみ傘は?」

 

「持ってるってば!アンタら僕の世話係か!?」

 

 

「かーちゃんではなく?」「母親がそんな丁寧に世話してくれるわけないでしょ」という闇深トークを交えつつ、ハルカが阿部とレムナントを振り切る。

 

今日からこのマンションの一室を借り、ハルカはレムナントと二人暮らしすることになった。

 

家事などのスキルも習得したレムナントのおかげで生活面は問題なく、諸々の手続きも阿部を含めた黒札ならコネと金でどうとでもなる。

 

ちなみに二人暮らしとはいえ割と頻繁に阿部がやってくるし泊っていくので、4LDKの無駄に広い部屋を借りるハメになった。

 

 

「午後からは小雨が降るかもしれんから気をつけろよ」

 

「ニュースの天気予報ですか?それとも占い?」

 

「両方だ」

 

 

おろしたてのスニーカーを履きながら、リビングのテーブルで食後のコーヒーブレイクを楽しんでいる阿部と会話する。

 

レムナントは既に食器を片付け始めており、風景だけ見れば穏やかな朝の一幕だ。

 

1名天使、1名変態、1名改造人間というアレすぎる内情に目を向けなければ、だが。

 

そしてドアノブにてをかけたところで「それからハルカ」ともう一度声がかかり。

 

 

「もー!朝っぱらから何なんですか!?余裕はあるけど一応いそいで……」

 

「制服、似合ってるぞ」

 

「はい、よくお似合いですよ、主殿」

 

「……ん、な……」

 

 

ハルカの顔にわずかに朱が差す。不意打ちでくらった誉め言葉マキシマムドライブは効きすぎた。

 

褒められ慣れてないハルカの性格は、大江山の激闘から三週間後の今も変わっていないらしい。

 

ブレザータイプの制服に身を包んだハルカはなるほど、ちょっとだけ以前より大人びて見えた。

 

 

「……不意打ちは卑怯ですよ」

 

「素直な感想さ、女を口説くときも、口説き文句が回り道すぎると飽きられるんだぜ?」

 

「知る気も無かった情報ありがとうございます」

 

「男を口説くときもそうだ」

 

「そっちは知りたくなかったです」

 

 

あーもう、と額に手を当てるが、いつものやりとりが挟まったおかげか緊張は解けた。

 

こんこん、とつま先を床に当て、スニーカーの履き心地を確かめてからドアノブを握りなおす。

 

僅かに開けたドアから朝日が差し込み、ハルカの顔を微かに照らした。

 

 

 

 

「いってきます」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 

 

 

20XX年 4月某日

 

鷹村ハルカは中学生になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『泣いた悪渦鬼』編

& 

第一部『AWAKING THE SOUL』 END

 

 

 

 

 

 NEXT STAGE

 

 

 

 

 

『第二部プロローグ』編

&

第二部『A NEW HERO A NEW LEGEND』 

 

 

 

 to be continued……

 

 

 





第一部、完結!

しばらくは感想返信とか充電期間に当てまーす!
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