霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「ごうらむっ!?」

 

(……私は一体何を見せられているのだろう?)

 

黄金の戦士が流麗な動きで悪魔を打倒し、紅蓮の戦士が荒々しい動きで悪魔を吹き飛ばす。

 

自分も邪魔にならない程度に対悪魔銃で援護しているが、無いよりはまし程度だろう。

 

未確認生命体の正体、となりにいた少年の変身、自分より格上の悪魔がバカスカ吹っ飛ばされる状況。

 

アオイの脳は「頭がフットーしそうだよぉ!」と悲鳴を上げている。

 

シキガミやイヌガミ、アガシオンによる支援と合わせて有利を通り越してヌルゲーの難易度でなければケガの1つでもしていそうな混乱具合。

 

幸いこのレギオンは悪霊としての面が強いので銀弾がよく効くが、それでも彼らのような規格外の前衛がいなければ安定して援護射撃など考えられない。

 

考えられないのだが……。

 

 

「これで何体目だっけ!?」

 

「た、多分14体目です!」

 

「おかしいだろ!?何体出てくるんだよ!?」

 

「…………」

 

「このアギトは一言もしゃべらなくて怖いし!」

 

 

未確認生命体……アナライズで『クウガ』と表記された赤い戦士が愚痴を漏らす。

 

それでも迫ってくるレギオンに蹴りを叩き込んで撃破してるあたり、戦闘力はアオイの比ではない。

 

アギトの方も詳細なレベルは不明だが、動きを見る限りクウガほどでないにしろ格上だ。

 

 

(うん、邪魔にならないよう離れて援護してよう!クウガさんも悪い人……人?じゃなさそうだし!)

 

 

アギトについても詳細不明だが、イチロウのイヌガミやシキガミが引き続き支援していることから同一人物なのは間違いない。

 

対悪魔銃をリロードしつつ、物陰に隠れながらの援護射撃。

 

15体目のレギオンが倒れた所で、ようやく悪魔の波が一時的に途切れた。

 

 

「な、なあ!確かこういう怪物って、このヘンな世界のボス倒せばまとめて消えるんだよな?!」

 

「え、あ、はい!多少のタイムラグはありますけど消えます!」

(『異界』と『異界の主』の事、だよね……? え、待ってその辺りの知識も無いの!?どういう出自で現れたのこの人!?まだ人かどうかわかんないけど!)

 

 

なにせ登録ネームが『未確認生命体』である。人でも動物でも悪魔でもないナニカぐらいの扱いをされている。

 

あのガイア連合がそのような分類分けをしたのだ、間違いなく『何か』ある。そう判断する材料には十分だろう。

 

……実態は特撮クラスタ俺達による盛大な悪乗りの結果であると誰が思おうか。

 

同じクラスタって名前なのにメタルクラスタホッパーもびっくりの大暴走である。迷惑っぷりで言えば互角くらいかもしれないが。

 

 

「ボスの場所、分かる!?」

 

「ええっと、地下室か、館の二階のどこかです!建物の端の方、ここまで通ってきたとき地下室につながる階段でもエネミーサーチがそこまで悪化しなかったので……多分二階!」

 

「よし!二階なら何とかなる!」

 

 

駆け寄ってきたクウガが追ってきたレギオンと戦いながら「それ貸して!」とアオイの握っていた対悪魔銃を指さす。

 

思わず「あ、はい!」とクウガ目掛けて放り投げてしまったソレを、クウガは戦っていたレギオンをキックで引きはがしながらキャッチ。

 

横合いからアギトが追撃をすることで手が空いたスキに……。

 

 

「 超 変 身 ! 」

 

 

クウガの体が、赤から緑に変化する。

 

さらに受け取った対悪魔銃がクウガの専用武器『ペガサスボウガン』*1に変化した。

 

【邪悪なるものあらば その姿を彼方より知りて 疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり】

 

これこそ、古代人『リント』の作り出した戦士・クウガの力の一つ。

 

 

「か、変わった……!?」

 

 

説明しよう!

 

仮面ライダークウガは『超変身』という能力により、その時の戦況に応じて自在に己の姿と戦闘スタイルを変化させる事ができるのだ!

 

さっきまでの赤い姿は『マイティフォーム』。バランスの良い能力を持ち、素手での格闘に長けた姿である。

 

そしてまさに今!変身した緑の姿こそ『ペガサスフォーム』!

 

格闘戦こと不得手だが、代わりに超人的な五感を持ち、手にしたペガサスボウガンを用いた『狙撃』に特化した形態である!

 

 

 

空気の流れや僅かな息遣い、さらにこの世界に来てから感じるようになった『妙な力』。

 

悪魔やMAGの可視化ができる『霊視』にも当たり前のように目覚めており、ペガサスフォームになればその感覚すら拡張が可能だった。

 

館の内部まで手に取るように察知できる超感覚が、その中に蠢く『MAGの濃い存在』を感知。

 

その方向へペガサスボウガンの銃口を向けた。

 

 

「そこだッ!!」

 

 

ペガサスボウガンの後部についた引き金を引き絞り、クウガの使う力の1つである『封印エネルギー』を込めた空気弾……『ブラストペガサス』を放つ。

 

本来はクウガが戦う相手である『未確認生命体』を撃破・封印するための技だが、単純な高速空気弾と言うだけでもこの世界では『疾風(ガル)』属性として扱われる。

 

……『高度数千mを時速200㎞以上で飛行する人型サイズの怪物を狙撃・殺害できる』というとんでもない精度と威力を持っているだけで。

 

館の窓と壁を貫通し、中へ飛び込んだブラストペガサスがいまだに姿すら見せていない異界の主を直撃。

 

障害物に阻まれてくぐもった悲鳴のようなナニカが聞こえたが、詳細不明のまま謎の爆発が起きて窓ガラスが何枚か内側から吹っ飛んだ。

 

 

「異界の主を……狙撃で倒した……!?」

 

 

湧いてくる悪魔を切り払いつつ、白兵戦で撃破する……それが常識だったアオイにとっては割とショッキングな光景である。

 

無論、低位(悪魔のLVが1~3、高くても8)とはいえ異界調伏の経験すらあるアオイは現地人の中では上澄みも上澄みなのだが。

 

そして撃ち終えたクウガが「超変身!」の掛け声と共に赤のクウガに戻るが、アオイの目には随分と疲弊しているように見えた。

 

 

「ぷはぁ……!(15秒ぐらいで解除したからもう少しは行けるけど、やっぱりだいぶ消耗してるな……休憩入れないと『究極の闇』は使えそうにない……)」

 

 

……ペガサスフォームには『40秒』という光の巨人もびっくりな制限時間があり、それを過ぎれば大幅に弱体化、最悪変身が解除されてしまう。

 

オマケにこの形態を使うと『変身解除後は6時間ほど変身できなくなる』という制限までついた、まさに狙撃による一撃必殺特化の姿なのだ。

 

 

「ありがとう、助かったよ……はいこれ」

 

「ア、ハイ」

 

 

衝撃の光景連発すぎてそんな返答しかできないアオイちゃん。

 

クウガが手に持っていたペガサスボウガンが元の対悪魔銃に戻り、ひょいと手渡されたソレを受け取る。

 

レギオンを撃破したアギトもこちらに駆け寄ってきた。そして……。

 

 

「その、すいません。正直何が何やら……」

 

「それは俺もなんだけどなぁ……あ、そっちのアギトも助かっ、があっ!?」

 

 

バキィ、という重々しい打撃音。

 

駆け寄ってきたアギトの拳が、そのままクウガの顔面にめり込んだ音だ。

 

 

「はぇっ!?」

 

「う、ぐっ……一体なにを、うおっ!?」

 

 

アオイが驚愕のせいか裏返った声を漏らし、アギトはそれに構わず続けて拳を振るい、疲弊したクウガが必死に捌く。

 

実力と経験で言えばクウガの方が一歩も二歩も上をいくようだが、やはりペガサスフォームを使った疲労が大きい。

 

力の源であるベルトの霊石『アマダム』も疲弊しており、変身を維持するだけでも精いっぱいだ。

 

今にも倒れそうな彼が戦っていられるのは、やはり『世界の破壊者』と共に様々な戦場を渡り歩いた結果だろう。

 

あと、ボッコボコにされる事が割とちょくちょくあったので戦況が不利に進むのに慣れているという悲しい事情もある。

 

しかし、それもあくまで『凌げる』だけだ。巻き返すには色々と厳しい。

 

……『普通』ならば。

 

 

(だけど……『俺の知ってる』アギトほどじゃない、いける!)

 

 

普通じゃなかったのは、クウガは『より完成度の高いアギト』と遭遇した経験があった事。

 

さらに、アギトが『超越肉体の金』を用いた肉弾戦以外の手札を持っていなかったことが大きい。

 

仕切り直し目的でアギトの腹に膝蹴りを入れて、よろめいたスキに後ろ回し蹴り。

 

そして残る力をかき集め、疲弊している霊石に活を入れるように力を籠める。

 

 

「 超 変 身 ! ]

(『敵の戦い方に付き合うな』、だよな、あねさん!)

 

 

尊敬していた女刑事の事を思い出しながら、距離が空いた一瞬のスキをついて再度超変身。

 

【邪悪な者あらば その技を無に帰し 流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり】

 

赤でも緑でもない『青』……俊敏性と跳躍力に優れた『ドラゴンフォーム』に変身した。

 

アギトが体勢を立て直す前に素早く飛びのき、先程の異界の主で壊れた建物から落ちてきた建材の一部を掴む。

 

棒状のソレを軽く一振りすれば、ドラゴンフォーム用の専用武器『ドラゴンロッド』に変化した。

 

 

(今の弱り切った俺じゃ、アギトとのパワー勝負は『紫』を使っても分が悪い!なら!)

 

 

追ってきたアギトをリーチのある棒術で牽制し、細かく移動しながら攻撃を積み重ねていく。

 

シャラン、という独特の涼やかな音がドラゴンロッドから鳴るたびに、アギトに蓄積されるダメージが増える。

 

いかにアギトが膂力で上回っていても、機動力とリーチで常に優位を取られ続ける現状は如何ともしがたい。

 

「はぁっ!」というクウガの気合と共に脚を払われ、そのまま地を這うような軌道で振るわれたドラゴンロッドに追撃を食らう。

 

 

「ウッ……!?」

 

「い、イチロウ君!?」

 

「大丈夫だ、殺さないように手加減する! ……気絶は、してもらうけどさ!」

 

 

限界が近い霊石から絞り出せる封印エネルギーでは、どちらにせよアギトを仕留めるなんていうのは厳しい……とは情けないので言わなかった。

 

ドラゴンロッドを数度ほど振るう。シャラン、シャラン、と音を鳴らしてから、起き上がろうとするアギトめがけて跳躍。

 

 

「おりゃああああああっ!!」

 

 

封印エネルギーを込めた突き……『スプラッシュドラゴン』がアギトの胸に直撃。

 

吹っ飛んだアギトは館の壁に衝突し、「うぐっ」と声を漏らして地面に転がる。

 

ゆっくりと金色の肉体が霧のように解け、その下にあった変身者……太宰イチロウの姿に戻った。

 

 

「イチロウ君! ……はー、よかった。気絶してるだけみたい……魔石使っておこう」

 

「チラって変身する前が見えてたけどやっぱり子供か……よかった、このぐらいで済んで」

 

 

アナライズでイチロウが死んでいないことを確認し安堵するアオイ。

 

一方のクウガも、流石に精魂尽き果てたのか大きく息を吐きつつ戦闘態勢を解く。

 

ドラゴンロッドが廃材に戻り、青かった体が白……不完全形体『グローイングフォーム』に変化した。

 

戦意が不足していたり、極端にクウガが消耗・負傷した時に変化する形態であり、能力も当然のように低い。

 

 

「アギトは子供でG3は女の子、こんな世界今まで……いやワタルがいた世界がそんな感じか」

 

「えーっとそのー、それでちょっと……いいですか?」

 

「へ?ああ、何?」

 

「いやその、ウチの組織の偉い人が未確認生命体……クウガさんを探してまして。できれば会って欲しいなー、と」

 

 

(……『クウガ』を知ってる?それに俺が『未確認生命体4号』ってことも?)

 

 

自分が知らない相手が自分を知ってる、という状況に少々の不気味さを覚えるクウガ。

 

が、よく考えてみれば自分の事を自分以上に知ってそうな謎のおのれディケイドオジサンとか、

だいたい分かったで危険に突っ込んでホントにだいたい何とかしてる親友がいたのですぐに疑念が吹っ飛んだ。

 

こういう楽天的でお人よしなところも彼の特徴である。*2

 

なにはともあれその『組織の偉い人』とやらについて一応聞いてみようかな、と思ったところで、異界が完全に消え去ったことで『外の音』が聞こえ始めた。

 

具体的には、遠くから轟音を立てて迫ってくるエンジン音が。

 

……それも彼らの『上』から。

 

 

「え、上?」

 

 

横なら分かるけどなんで上から?とクウガとアオイが視線をゆっくりと上に向けていく。

 

オンボロだが大きな屋敷の上、天井をバキバキ砕きながら突っ込んでくるナニカ。

 

エンジン音の発生源……『ギルスレイダー』は天井を滑走路にして大跳躍し……。

 

 

「ライダアアアアァァァァァァ……ブレェイクッ!!」

 

「ごうらむっ!?」

 

「クウガさーんッ!?」

 

 

完全に戦闘終了モードで気が抜けていたクウガを跳ね飛ばした。

 

ちょっとくすぐったくなりそうな悲鳴と共に吹っ飛んでいったクウガが、渡り廊下の二階部分の壁にブチ当たって跳ね返り、茂みの中に落下する。

 

 

「まさかアギト……イチロウでも手に負えない強さとはね。僕が前に出るべきだったよ」

 

「いや誰!?というか仮面の戦士3人目!?」

 

 

変身後なので『葦原 涼』ボイスになってるせいか、突然現れた異形……『仮面ライダーギルス』の正体に、アオイはピンと来ていないらしい。

 

ギルスレイダーを降り、臨戦態勢MAXでクウガに歩み寄っていく。

 

 

「イチロウには調査が終わり次第連絡するように言っておいたからね。

 異界突破の予定時刻を過ぎた時点で、念のためにココに向ってよかったよ。

 

 さあ、立ちなよ。色が白いってことは同種の2体目……『未確認生命体二号』でいいのかな?

 

 ここの異界の主やアギトを倒せる君が、不意打ちの一撃程度で倒せるとは到底……」

 

 

……前述通り、グローイングフォームはクウガが極端に消耗した時に強制的に変身する姿である。

 

つまりこの姿になった時点で、理由は多数あれどクウガは『戦闘不能寸前』なのだ。

 

今回の場合は……

 

 

『ペガサスフォームを使った事による霊石の消耗』

 

『悪魔からの攻撃&アギトとの戦闘によるダメージ』

 

『それらを押して無理やりアギトを鎮圧した事による反動』

 

『そこから全速力で突っ込んできたギルスレイダーによるライダーブレイク』

 

 

……という要因が重なっており、結論から言うと。

 

 

「もう、ダメ……」

 

「……あれ?」

 

「く、クウガさーん!?」

 

 

変身が解除され、荒れ放題の庭の中に横たわる仮面ライダークウガ……もとい、世界レベルの迷子『小野寺ユウスケ』。

 

彼は腹の底から絞り出す根性まで出しきったせいで、精魂尽き果てながらその意識を手放すのであった。

 

 

 

*1
射撃武器を『モーフィングパワー』という原子・分子に働きかける力を用いて作り変えて生み出した専用武器。

*2
なお、長所でもあり短所でもある模様。

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