「「調子に乗るなぁ!イキりのチート野郎共!!」」
「僕はギルス・アバターを抑える!イチロウ、ニャルラトホテプは任せた!
レムナントとギルスレイダーは僕らを支援しつつムーンビーストを殲滅!」
「わかりました!」「任せろ!」
(ニャルラトホテプ陣営はギルス対策に物理・火炎耐性を重視して強化してきてる。
だったらそれ以外の属性で攻めるか、力業で押し切るッ!!!)
ギルス・アバターの爪をいなし、反撃の前蹴りがギルス・アバターの腹部をとらえた。
うめきながら前かがみになったギルス・アバターの頭を抱え込み、そのまま鼻っ面に膝蹴り。
二度、三度と膝をねじ込んだ後に、本家本元ギルスクロウで袈裟懸けに切り裂く。
「「ぎっ、があ!?」」
「まだまだァー!!!」
ダメ押しとばかりに右拳を振るうが、突き出した拳から『雷電』が迸った。
続けて振るわれた左拳からも電流が弾け、火炎耐性はともかく電撃耐性がやや甘かったせいか、ギルス・アバターの血肉が焦げる音がする。
図らずしも、ギルスクロウで生体装甲を切り裂いてから電撃を流し込むという形になったのも大きいだろう。
「なんだ、電撃!? ……そっか、士さんから貰ったカードを元に作った、『クウガ』のスキルカード!」
前回のクウガ・ディケイド絡みの一件の後、ディケイドから貰った『クウガのライダーカード』。
これを元に作られたスキルカードは、詳細不明ということもあって作成者であるシノは使用を推奨しなかった。
元々カードという形に加工されていたせいか、最低限の加工でスキルカードにできてしまった事もあり、はっきり言って解析も不十分なままでブッ刺したのである。
……一応データだけはガイア連合技術部のありとあらゆる方法でスキャンして保存してあるが、大ショッカーの技術を一朝一夕で解析するのは流石に無茶というものであった。
なお、一部の技術部特撮俺達はこのデータをもとに仮面ライダーの再現ができないか挑戦しているようだが、それはともかく。
『クウガ』のスキルカードの影響か、ギルスは自由自在に体から電撃を出す力が備わっていた。
よぉし、と気合を入れて、今度は意識して電撃を放出。右腕にまとわせてギルス・アバターに叩きつける。
「「がっはぁ!?」」
「お、おおぉ!『変わった』!ならもう一発!!」
右腕の手首に『金色の腕輪のような装飾』が現れ、続けて振るった左腕の手首にも同じものが。
元から緑、黒、赤、そして金というカラーリングだったギルスに金の装飾が追加され、より原始的で生々しく、ワイルドなイメージが湧きたつ。
さらによろめいたギルス・アバターに右のハイキックを叩き込むと、黄金の足甲のような装飾品まで右足に追加された。
この世界に存在しない古代文字を読み解けば、下記のような言葉が浮かび上がる。
『炎の技よ 雷の力を加えて 邪悪を鎮めよ』
「ゴールド、じゃ成金みたいだな。バーニングに合わせてライトニング……ちょっと長いか?
アメイジング……だと狙いすぎかな。スパイダーマンが好きな黒札に怒られそうだし」
「「お、お前!俺/私をナメるのもいい加減にっ……」」
「よし決めたァ!!」「「ぐほぁ!?」」
新しい力のネーミングに悩むようなそぶりを見せるギルス、既に先程までの精神的に追い詰められた気配は微塵もない。
そんなギルスに何本目かの堪忍袋の緒が切れたのか、激高しながら食って掛かったギルス・アバターに反撃の裏拳。
一回転しながら床に転がったギルス・アバターを見下ろしつつ、まとめ上げた思考のままにギルスは宣言する。
「【ライジング】……これが僕の新しい力だ。悪いが君たちで試させてもらうよ。
まあ、今まで誕生日プレゼントもロクにくれなかったんだ、このぐらいはいいだろう?
とりあえずは一発……もうネーミング考えるのめんどくさいからシンプルに【電パンチ】*1!!」
「「ぐ、が、がああああああっ!!!」」
スタンガンも真っ青の高圧電流を纏ったパンチがギルス・アバターを吹っ飛ばし、残っていたテーブルやイスを粉砕しながら壁に激突させる。
ムーンビーストの援護もなく、ギルスを再現した再生能力・HP自動回復も追い付かなくなってきたギルス・アバター。
一方で、憧れのヒーローから託された新しい力と友に与えられた闘志の燃料を得たギルス。
このマッチアップの勝敗は決しつつあった。
一方、イチロウとニャルラトホテプの方は……。
「後衛型の私に一対一でぶつけるのなら、多少レベルが低くても何とかなると思いましたかァ?
甘いですねぇ、あまあまです。ギルスと接近戦になった時のための対策ぐらいとってますよ!」
ぐずり……と二代目無亜居士としての姿が溶けたアイスクリームのように崩れ、頭部から赤い触手を伸ばした姿へ変貌する。
【月に吠える者】【血塗られた舌】【闇に咆哮する者】。
主にそのような名前で呼ばれるニャルラトホテプの化身であった。
【邪神 月に吠えるもの LV53】。ニャルラトホテプが肉弾戦を見越して用意しておいた手札である。
「へっ……寧ろ女の子の姿じゃなくなってやりやすいぐらいだ!」
「そうですか?それは結構……」
そして、人間としての表情が無くなったからこそニャルラトホテプは口元を笑みに歪める。
自身の変身でアギトの視線を自分にひきつけ、初手で使ったのは眷属招来……つまり、ムーンビーストの召喚だ。
ただし、先程までのように自分の背後に召喚するのではない。
この会場の絨毯の裏に仕込んだ召喚陣を起動、アギトの背後に二体が出現し、背中目掛けて襲い掛かる。
いかにも真正面からの殴り合いをします!というセリフを言って、さらに派手な変身で視線を引き付けてから配下を呼び出しての不意打ち。
これでイニシアチブをとって一気に押し込む……はずだった。
アギトがオルタリングの【右のスイッチ】を押すまでは。
瞬間、背後から音もなく襲い掛かったはずのムーンビーストが横薙ぎに両断される。
いつのまにやらアギトの両手には炎を纏った長剣【フレイムセイバー】が出現しており、それを用いて【カウンター】*2を発動。
手に槍を生成してとびかかってきたムーンビーストの物理攻撃に対し、振り向きざまの一閃で二体纏めて両断したのだ。
「ッ……な……!?」
「なるほど……ちょっとこの力の使い方が分かってきた!」
【超越感覚の赤(フレイムフォーム)】
炎の力を持ち、超人的な五感をもって対象を切り裂く朱い戦士である。
一瞬たじろいだニャルラトホテプも、アギトの新たな力が【火炎】属性だと気づいて思考を冷静に戻す。
ギルス対策で【物理・火炎】属性についてはガッチリと対策を組んでいる。
仮に【貫通】を持っていようと、レベルが上のニャルラトホテプを削り切るのは厳しいハズ。
「【ザンダイン】ッ!」
「っとぉ、魔法か!?くっそ、こういう時この力はちょっと不便だよな!?」
イチロウ=アギトの遠距離攻撃の手段はかなり限られる、なんとかして肉弾戦に持ち込まなければ勝機はない。
ニャルラトホテプは取り戻した余裕のまま、再び口元をゆがめた。
『なんのことはない、どうやらあの赤い姿はスピードが落ちるようだ』
『距離を保って魔法で削り、あとはレベル差と耐性で押し込めばいい』
……ヒーローの前で悪役が調子に乗るというのがどういう結果を生むのか、中々学習しないのがニャルラトホテプの悪癖だ。
何度用意したシナリオをカヲル君に粉砕されても反省しないあたり、ニャルラトホテプには『痛い目を見て学ぶ』という能力が決定的に欠如している。
そして、そのツケを払うのもニャルラトホテプ自身なのである。
「だったら、こっちだ!」
アギトが今度は【オルタリングの左のスイッチ】を押し込む。
放たれたザンダインが直撃すると思った瞬間、アギトの姿が掻き消えた。
「ッ……消えた、どこに!?」
なんのことはない、スポーツで使われるチェンジオブペースという技術と同じだ。
一度フレイムフォームという普段より遅い姿に目が慣れたせいで、いきなり速度が上がったアギトの姿を見失ったのである。
「だああぁぁぁー!【妖花烈風】*3!!」
「ッ上!?ぐああああぁあっ!?」
素早く跳躍してザンダインを飛び越えたアギトが、風を纏った槍【ストームハルバード】を振り上げ、ニャルラトホテプの体に全力で振り下ろす。
斬撃と共に【風】が吹き荒れ、疾風属性への対策は火炎・打撃ほど積んでいなかったニャルラトホテプをズタズタに切り裂いた。
【超越精神の青(ストームフォーム)】
風の力を持ち、跳躍と疾走に優れた青い戦士である。
そして、ギルス・アバターとニャルラトホテプが会場の床に転がされた。
どうやらギルスの方ではギルス・アバターの首根っこを掴んでぶん投げたらしい。
「併せろ、イチロウ!」「おう!」
上半身をなんとか起こしたギルス・アバターとニャルラトホテプへ、跳躍したライジングギルスとアギト・ストームフォームが迫る。
空中で右足に雷の力を集中させたライジングギルスと、素早くグランドフォームに戻ってクロスホーンを展開したアギト。
鏡合わせのような飛び蹴りの構えを取って、渾身の一撃が同時に炸裂した。
「【ライジングライダーキック】!!」
「【フルパワーライダーキック】!!」
「「「ぐわああああああああぁぁぁぁぁっ!?!?」」」
雷電の蹴りは、ギルス・アバターに。
大地の蹴りは、ニャルラトホテプに。
これは決まったか!?とムーンビーストを殲滅していた一同は期待に胸躍らせた、が……。
「はあ、はあ、ぐ、うっ! ……まさか、この手を使わないといけないなんて……!!」
「! まだ立つか、しぶとい!」
胸に大穴が開いた両者だが、ニャルラトホテプの方はえづきながらも起き上がる。
一方のギルス・アバターの方は、MAGへと体が分解されつつあった。
「「いだいいぃ、いだいいいいぃぃ!?なんで、なんで俺/私が負けるんだ……あぎっ!?」」
「決まってるでしょう、貴方は私の非常食兼盾として作ったからですよ。あとはまあ……趣味?」
「!? アイツ、仲間を!?」
どすり、とニャルラトホテプの右腕にあたる触手がギルス・アバターの腹を貫く。
ずぎゅん!ずぎゅん!とナニカを吸い上げる音がするたびに、ギルス・アバターの血肉がしぼんでいき、ニャルラトホテプの穴がふさがっていく。
そしてギルス・アバターの全てを吸い尽くした後、ニャルラトホテプは【月に吠えるもの】から更なる変身を遂げようとしていた。
「チッ、回収できたMAGは5割ってところですか……まあ、コイツらを始末するには十分でしょう」
触手で構成されていた肉体が、ギルス・アバターに近い硬質的かつ生物的なフォルムへと変貌していく。
しかし、ギルスと瓜二つだったギルス・アバターと違い、全体的なイメージがより歪でおぞましい。
触手や突起が増えたデザインはエクシードギルスに見えなくもないが……これではまるで、仮面ライダーではなく【怪人】のそれだ。
「切り札でもダメな時のために奥の手を持つ……当然ですよねぇ?
しかしギルス・アバターという名前は負け犬なので縁起が悪い……うん、いい名前を思いつきました。
【アナザーギルス】。これでいきましょう」
【魔人 アナザーギルス LV80】
これ以降もこれ以前も誕生しえない、ニャルラトホテプの作り出した正真正銘の奥の手であった。
「……まだいけるな、イチロウ?」
「……ああ!まだまだいけるぜ!」
だが、それに絶望するハルカとイチロウでは……いや、【仮面ライダー】ではない。
ハルカは【ライジング】の力を一度鎮め、代わりに肉体のリミッターを完全に外す。
一方のイチロウは、オルタリングの両側についたスイッチを【同時に】押し込んだ。
ギルスの各所から刃が生まれ、触手が生え、金色が血のような赤に染まる。
超越肉体の金、超越精神の青、超越感覚の赤、3つの力が三位一体となってアギトに宿る。
【エクシードギルス】と【アギト トリニティフォーム】が並び立ち、全力の闘志をもってアナザーギルスをにらみつけた。
ムーンビーストもタネが切れたのだろう、アカネや東北姉妹、レムナントやギルスレイダーも後に続く。
「さあ、最終ラウンドだッ!!ヒーロー気取り共ッ!!」
「……行くぞ、ニャルラトホテプッ!!!」
今ここに……二年前の【鷹村家での事件】から続くハルカとニャルラトホテプの因縁。
その清算となる戦いの、最終決戦が始まろうとしていた。