霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「10割だいじょばないです」

 

【7月某日 霊山同盟支部 支部長室 電話中】

 

 

「こんにちは、新潟の碧神殿ですね?はい、はい……霊山同盟支部支部長の鷹村です」

 

「士村さんの連絡回線をお借りしまして、はい。本人は今頃H根の温泉巡りしてるので」

 

「いえ、正確にはその代理といいますか……ああ、神主殿の分身や式神をイメージしていただければ」

 

「え、『神主みたいな事ができる人がほかにもいるんだ』?いや、色々と格が違いますから」

 

「アレと私を比べるのはゼウスの雷霆と乾電池を比べるようなモノですから。とりあえずこうして交渉できる程度の権限と信用はありますが」

 

「というわけで、本体が今日の午前中から所用で行方不明になっておりますので、今後は『私』が対応いたします。お気軽に『二号』とおよび下さい」

 

「とりあえず例の【霊基改造コシヒカリ】については、S県自衛隊の食堂から取り入れていく事になりました」

 

「その後は量を増やして、霊山同盟の巫女や傘下組織の食事、およびS県の備蓄米にしていく予定です」

 

「いきなりドーンと輸入すると既にある米の消費が追いつきませんからね。古米・古古米から順に消費して、空いた倉庫に順次運び込んで『備える』方向で行こうかと」

 

「S県の稲作ってホントに下火なんですよ、新潟と比べると約9分の1なんですよ?収穫量。富士山が過去にバラまいた火山灰が土台になってるせいで稲作に向かないんです」

 

「しかも隣り合ってるA県もK県もこんな状態のS県よりさらに下、なんなら山梨支部がある山梨県もそんな状態です。下手すると終末後はS県側から米の供給しなきゃいけないレベルです」

 

「というわけでヒノエ米一辺倒は沖縄ほどじゃないにしろ危険オブ危険なんですよ、トラブルでヒノエ米がとれなくなったら主食がパンになってしまう。『私たち』の朝は納豆ご飯とみそ汁から始まるので」

 

「ちなみにネギは青ネギを細かく刻んだものを入れる派で、ひきわり納豆の方が好み……失礼、脱線しました」

 

「G3MILDや各種対悪魔弾の販売・輸送については、ええ、ええ。自衛隊の方や普段の交渉窓口である九重家の方と、ええ。細かい数量の調整もありますし」

 

「あくまでトップ……まあ片方代理人ですが……同士でもこうして意見交換しておかないと、そのうち下の判断と上の判断が食い違ったりするものですから」

 

「もう一人の分身……『三号』が外回り担当ですので、そのうち新潟の方にもお邪魔すると思います」

 

「本体の方も早ければ一週間ぐらいで戻ってくるはずですから、より重要な案件はその後に……」

 

「え、『聞きそびれたけど所用で行方不明ってどういうこと』?」

 

「まあ、その、『私達』にとっては10歳の時からよくあることなんですが、師匠にいきなり拉致られて危険地帯に放り込まれることが頻繁にあったというか……」

 

「今回の居場所?その、あくまで『私』もあのガチホモクソ野郎から聞いただけですけどね……」

 

 

「『影の国(ダン・スカー)』だそうです。はい、ええ、ケルト神話に伝わるアレですアレ」

 

「え、そんな危険地帯に飛び込まされて大丈夫なのかって?はっはっはっはっは」

 

「まあとりあえず『私』が消えてないってことは死んでないんでしょうが、まあ、うーん。大丈夫か否かっていうと」

 

 

 

「10割だいじょばないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【7月某日 影の国(ダン・スカー)】

 

 

 

「ひとつ、これから貴様に教えを与える者として講義をしてやろう。

 

 儂が思うに、戦術や意志力、咄嗟の機転や幸運でひっくり返せる盤面には【限度】がある」

 

 

ヒュン、と血に濡れた朱槍を振るう。そう簡単に血錆が浮く武器ではないが、もはやクセのようなモノなのだろう。

 

血液が強酸でできた魔獣だの、体内に呪詛を仕込んで武器を劣化させる魔女だの、そういった厄介な相手と彼女は戦いすぎた。

 

血糊を一振りで弾き飛ばし、カツ、カツ、と石造りの床を一歩一歩歩いてゆく。

 

 

「百に1つ、千に1つ、万に1つ……億、兆、京、垓、杼、穰、溝、澗、正、載、極。

 

 恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数に1つであろうと、1があるなら引き寄せられる。

 

 それが【逆転劇】というものであり……貴様のような【英雄】が掴みとる奇跡の総称だ」

 

 

影の国の女王【スカサハ】にとって、この世界は完全に己の庭だ。

 

その中でも特に、己の生涯の殆どを過ごした【影の女王の城】は、もはや庭を通り越して手足の先に等しい。

 

そんな彼女の居城は、壁にヒビが入り、床に穴が開き、絨毯やタペストリーはあちこちで破れ。

 

まさしく地震や台風でも過ぎ去ったかのような風体を見せつけていた。

 

 

「ならば、この【結果】はどういうことかと言われれば、まあ、分かりやすく言うと……」

 

 

朱槍の穂先が、緩やかにスカサハの歩む先にいる【獲物】へと突き付けられる。

 

影の国では嗅ぎ慣れすぎて新鮮味すら無い血の匂い、千切れとんだ血肉は床一面にブチまけられている。

 

再生するたびに貫き、潰し、砕き、斬り、穿ち、刺し……多種多様な方法で【解体】した。

 

それでもなお立ち向かってきた根性だけは彼女も認めるが、しかし。

 

 

1つもないほど【戦力】が違う。それだけだ

 

 【女神 スカサハ LV83】

 

 

(やばい、勝ち目が微塵も見えない)

 

 

ギリッギリ即死を避けて再生させたものの、既に十七分割どころじゃない回数だけギルスは肉体を破損している。

 

反面、スカサハの方は綺麗なままだ。なにせ全身どこをみても掠り傷すらついていない、良くて返り血で服が汚れている程度。

 

……対峙しているハルカ/ギルスが、MAGの薄い元の世界なら何十回・何百回ぶっ殺されたかもわからないほどバラバラにされているのに、である。

 

MAGが魔界並みに濃い影の国だからこそ、ギルスの再生能力は最大限に発揮され、今の今まで戦い続けてられるのだ。

 

 

あの正門破りの直後、阿部とスカサハの共謀にバチクソにキレていたハルカは当然スカサハにもキレ散らかした。

 

通学路歩いてたら影の国に拉致されて怪物だらけのトライアスロンである、そりゃキレないほうがおかしい。

 

……が、スカサハからすれば脳天に常時【?】マークが浮かんでいる。

 

阿部からも「本人の同意が取れたら合図する」と聞いているし、実際スカサハも阿部を経由して千里眼を繋ぎ、ハルカが【修行することに同意をした】タイミングで扉を設置した。

 

寧ろ世界中メシアン大暴れなこのご時世に影の国に一番近い【スカイ島】まで来い!と言わないだけ感謝してほしいとすら思ってるのがスカサハである。

 

この辺も「人間と悪魔って相容れないんだなぁ」という実例に使えなくもないが、それはともかく。

 

 

なんにせよ、城門をブチ破ってきた時点でスカサハからすればハルカの扱いは【侵入者】。

 

オマケに久方ぶりの弟子候補なので比較的優しく出迎えるつもりが、砕けた城門で顔面に一撃である。

 

これそのものは流れ弾だったのだが、スカサハの方も(現代人的には盛大な逆ギレとはいえ)それなりにキレた。

 

後の流れは簡単だ、とりあえず細かい事は一度殴り合ってから決めよう、というスカサハの提案にハルカが同意。

 

朱槍を振るう影の国の女王と、異形の肉体を持つネフィリムの戦士が激突したのだが……。

 

 

(クソ、思いつく限りの手は試したのに……!)

 

 

ハルカもLVが上の相手にやみくもに突っ込むほどバカではない。

 

最初は迷わずエクシードという手札を切っていき、ギルススティンガーとギルスフィーラーで拘束してから格闘戦に持ち込もうとした。

 

が、ギルスフィーラーは弾かれ、ギルススティンガーに至っては穂先で【寸断】。

 

すぐさま生えてきたとはいえ、武器式神ではなく肉体の機能であったギルススティンガーではたやすく切断されてしまうことが判明。

 

その後もスペックそのものの高さを活かして渡り合うものの、こちらの爪・牙はかすりもせず、向こうの朱槍は毎秒ごとにこちらの肉体に穴をあけてくる。

 

技術・速度共にハルカの基準から二回り以上先を行っているのだ。

 

 

ならばと火炎/高火力/範囲攻撃のバーニングと、電撃/高機動/封印エネルギーのライジングを切り替えて応戦。

 

バーニングの【シナイの神火】でスカサハが飛び回れないよう炎の壁を作り、一瞬でも足が止まればライジングに切り替えて一気に突貫。

 

封印エネルギーを用いてスカサハの力さえ封じてしまえば、という作戦だったが、これもたやすく破られた。

 

スカサハは【電撃弱点】……なのだが、体内のMAGを調整して耐性を細かく変えてくるせいで電撃無効どころか反射・吸収にされてる事も多くダメージにならない。

 

貫通属性持ちの技で攻撃しても、しっかりソレだけを見切っていなし、逆に強烈なカウンターが飛んでくる。

 

かといって攻め手を緩めてまごまごしていれば、こちらの手の届かない距離から多種多様な魔法を雨あられと叩き込んでくるせいで距離を取るわけにもいかない。

 

バーニングフォームでの火炎/万能属性を使った火力ゴリ押しも、互いにバフ/デバフ抜きのはずなのに基本速度が違いすぎてついていけない。

 

バーニングフォームの弱点である【機動力が他フォームより劣る】がモロに出た形である。疾風のように駆けるスカサハに追いつけないのだ。

 

 

(いや、重要なのは単純な機動力だけじゃない、これは……)

 

「気づいているとは思うが、お主と儂では【一手目】が違う。 このように!」

 

「ッづぉ!?」

 

 

眼前に迫ってきた槍の先、感じ取った死の予感に咄嗟に首をひねって回避する。

 

しかし直後に足元が光り、吹きあがってきた【ザンバリオン】がギルスの体を跳ね飛ばした。

 

床にたたきつけられ、がは、と小さく息を吐きながらも素早く受け身をとって立ち上がる。

 

 

「今のが悪手だ、小僧」

 

「ッ……が、ォ……!?」

 

 

そして、気が付けば首の後ろから何かを【突き刺される】感覚。

 

喉を貫通し、脊髄をへし砕きながら突き破ってきた朱槍……スカサハが背後から突き出したモノだった。

 

 

「儂の殺気を感じ取り、回避した『一手目』。それ自体はいい。

 だが『回避する』という行動に出るのが遅い、お主はとにかく初速と初動が遅い。

 殺気を感じ取るまではいい、だが貴様の行動が早ければ寸前での回避にはならなかった。

 察知→思考→行動、この中の『思考』にタイムラグがありすぎる。考えすぎだ、貴様は。

 

 一手目の【内容】は問題ではない、一手目を打つ【速度】の問題だ」

 

 

喉を貫かれ、槍を抜こうともがいているギルスに、しったことかと講義を続けるスカサハ。

 

そこから槍を抜くのを断念し、カカトから『ギルスヒールクロウ』を生やして背後のスカサハに蹴りを放った。

 

だが、薙ぐような回し蹴りの先には、やはりというべきかスカサハはいない。

 

それどころか、気が付いた時には喉を貫いていた朱槍ごといなくなっている。

 

 

「貴様と儂の速度そのものは、そこまで絶望的な差ではない。儂の方が速いのは確かだがな。

 だが、貴様はとにかく無駄が多い。最低限の技術を身に着け、良き戦場に恵まれた。

 その2つ……技術と経験がコンクリフトを起こしておる。悪運に愛されすぎた弊害だろう。

 二流の武術家が超一流の経験を積んでしまったせいでアンバランスになっておるのだ」

 

 

喉を再生させながら立ち上がったギルスに、いつのまにやら右方へ回り込んでいたスカサハ。

 

槍を構えなおすこともなく、これも講義の続きだとばかりに話し込んでいる。

 

そう、ハルカの武術は霊山同盟にかかわる前の二年間に学んだモノがほとんど。

 

当時は阿部の紹介で神主の式神であるスイキ達に引き合わされ、低レベルながら色々と身につけた。

 

……そう、色々な武術を『身につけた』だけだ。当然、達人のように極めたわけではない。

 

そも、当時はLV25未満だったハルカがいくら鍛えようと、ここで通じるような達人には程遠かっただろう。

 

だからこそ阿部も武術はLV相応の技術に達した時点で切り上げ、LV上げを重視したのだが……。

 

つまりは、LVを上げた『程度』では、無量大数に1つの勝ち目すら作れない相手が、女神スカサハということだ、

 

 

「なまじ数多くの技術と経験を身に着けすぎたな、選択肢は多ければいいというものではない。

 とはいえ、1つの技を極めて押し切れる天才でもあるまい……ならばとにかく思考を回せ。

 回す速度が問題なのだ、次の一手を決めるまでの速度と考える手の量・質を100倍に上げろ。

 だが、その前に貴様を教えたくなるだけの素質を示せ。儂も無能を鍛えるほど酔狂ではない。

 

 でなければ……」

 

 

「ッ……ヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 

槍先を地面スレスレに構え、ネコ科の動物を思わせる低姿勢でギルスを見据える。

 

一方のギルスは最後の力を絞り出し、両腕のギルスクロウを伸ばして前に出た。

 

 

「元の世界には戻れず、死ぬだけだッ!!」

 

「ヴォアアァッ!!!」

 

 

互いの武器が交差し、一瞬の激突音の後に突き抜ける。

 

スカサハの放つ穂先はさきほど穴をあけたギルスの喉を捕らえ、今度は穴どころか首の肉の大半を抉り飛ばしていった。

 

今にもぶちりと千切れ堕ちそうなギルスの首だが、皮一枚繋がっているせいか今も高速で再生されている。

 

『再生しきる前に脳髄も砕いてみるか……もう10度は砕いたんだが』とスカサハが振り向いた瞬間。

 

自分の右肩に走る『痛み』に気づいた。

 

 

「……何?」

 

 

ギルスを警戒したまま右肩をちらりと見てみれば、黒い戦装束ごと肩の肉が抉られている。

 

この程度ならディアラハンどころかディアラマで治る、治るが……それ以上に不可解だった。

 

ギルスが構えていた両腕の武器は常に警戒していた。槍でいなし、穂先で首の肉を抉るところまでしっかりと見えていたのだから。

 

だがしかし、振り向いたギルスの『顔』を見て、どうやったのか一瞬でたどり着いた。

 

 

……なるほど、儂を『食った』か

 

「ヴヴヴヴヴ……ッ!!」

 

 

ギルスの口内で、ぐちゅりぐちゅりと咀嚼されるナニカの肉。

 

【丸かじり】……対象に物理ダメージを与えつつHPを回復する技だ。

 

ギルスクロウを囮にして肩に噛みつき、おそらくは交差する一瞬を使って食いちぎったのだ。

 

強靭なのは見た通りの顎だが、どうやら歯の鋭さもそこらの魔剣に負けず劣らずのようだ。

 

でなければ噛まれた時点でスカサハも気づいている。あまりにキレイに食いちぎられたせいで痛みが後から来たのだろう。

 

そして、スカサハはこれに「及第点としよう」という一言で応えた。

 

 

「なればこそ……『合格点』に至れるかどうか、試してやる」

 

 

そしてそれじゃ終わらないのがケルト流、頭ケルトな女王の神髄である。

 

全身のMAGを燃焼させる、酒呑童子やレムナントがやっていたMAGのオーバーロード。

 

だがしかし、卓越したMAGの操作技術を持つスカサハにとって、これは瞬間的に火力を出すためのテクニックの1つでしかない。

 

現状からさらにマシマシ……『LV110』というスカサハの分霊の約二倍の数字。

 

女神スカサハにとって、本拠地である影の国の居城で『無理なく引き出せる』限界値である。

 

 

「絶技、発動……影の国の妙技、その秘奥が1つ。乗り越えて見せよ」

 

 

次の瞬間、さっきまでギリギリ目でとらえられていたはずのスカサハの姿を、ギルスは完全に見失った。

 

直後にアゴの下から突き上げるような衝撃。

 

いつの間にやら足元に潜り込んでいたスカサハが、昇り龍がごとき蹴り上げでギルスを宙に打ち上げたのである。

 

空中に投げ出されたギルスはしかし、それでも即座に体制を整えて真下を睨んだものの……。

 

 

明らかにヤバい呪詛の気配をプンプンさせている朱槍に、自分の死を予感した。

 

 

「呪いの朱槍を馳走してやろう……会心の覇気*1、そして。

 

 『ゲイ・ボルグ』ッ!!!」*2

 

 

弾丸、いや砲弾、いやICBMのように放たれた朱槍が、大気を粉砕しながらギルスに迫る。

 

真下から放たれた朱槍の狙いは、推定ギルスの胸部か腹部。とっさに全身全霊を防御に回し、交差させた両腕で受けようとしたギルスもひとかどの英雄であった。

 

無理に回避などしようとすれば、体勢が崩れたところへ追尾してきた朱槍が直撃、全身を粉々に粉砕して即死させていただろう。

 

だがしかし、『受け』を選んだところでその先も別の地獄である。

 

 

(これっ、なんっ、止まらなッ!?!!?)

 

 

バキャアッ!という音が響き渡り、ギルスが盾に使っていたギルスクロウより先に、支えていた肘が破損。

 

千切れとんだ両肘から先はゲイ・ボルグの放つ魔力の本流に吹っ飛ばされ、穂先はついにギルスの胴体に直撃。

 

頑強な生体装甲を障子紙のように突き破り、体内に潜り込んだ朱槍が致死性の呪詛を炸裂させながらさらに奥深くへと潜り込んでいく。

 

ギルスの肉体はその朱槍ごと真上にすっ飛んでいき、スカサハの居城の天井に大穴をあけながら影の国の上空へ放り出された。

 

最後に、ギルスの背中から脊髄と背筋、内蔵の大半をブチ抜いた朱槍が突き抜け……その肉体を『上下』に分割。

 

 

下半身は風にあおられて城のバルコニーに落下し、上半身はきりもみ回転しながらスカサハの元へと落ちてきた。

 

両腕は肘から先を損失、胴体で残っているのは鳩尾から上のみ、

 

ギルスへの変身を維持する力すら失ったのか、人間形態になってしまったせいで少年の惨殺バラバラ死体にしか見えない。

 

さらに全身に流し込んだ致死の呪詛によって再生能力が阻害されているのか、先ほどまでは生えたりくっついたりしていた肉体が再生の予兆すら見えなかった。

 

 

(……ふむ、少し興が乗ってやりすぎたか。アベのヤツに死体ぐらいは返してやろう)

 

 

うっかり殺してしまった、と全く反省していない影の国の女王。

 

手元へ飛んできた朱槍を慣れた手つきでつかみ取り、さて、日本は土葬と火葬どっちだったか……と思い出しながらハルカに近づいていく。

 

が、ハルカの元まで歩いてきたところで、かすかな息遣いをその肉塊から感じたのだ。

 

 

「ァ……ォ……ッ」

 

「……これで生きている、か。完全に死んだと思ったが……式神ボディの性能だけではないな。

 

 意思力か、運命力か、あるいは奇跡か。なんにせよ見込みはある」

 

 

肺も潰れているせいでマトモに声も出せない『ハルカだった肉塊』の髪をむんずとつかみ、ずるずると城の奥へ引きずっていく。

 

確か蘇生の薬草と肉体再生の霊薬がまだ残っていたはず……と在庫を思い出しているスカサハに対し、薄れゆく意識でハルカは思った。

 

 

 

 

分かっていたつもりだったが、世の中、まだまだ上には上がいる、と。

 

 

 

 

*1
自身に次に行う力依存攻撃が必中になり、必ずクリティカルになるチャージ効果を付与。

*2
敵ランダムに4~6回の物理ダメージ

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