霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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死の安らぎは 等しく訪れよう

 

鷹村ハルカは知っている、この世には努力してもどうしようもない事があると。

 

ギルスへと改造される前の彼は、十把一絡にされる程度の霊能力者だった。

 

仮にあの頃のハルカが今と同じ努力をしようとしても、どこかで死ぬのが関の山だ。

 

この世界においては、無茶な努力をこなせることも『才能』が絡む。

 

どれだけ必死に修行して、毎日自分に倒せるレベルの悪魔を倒しても、天才は容易くレベルを上げて凡才の努力を追い抜いていく。

 

改造によって『追い抜く側』に回ったからこそ、ハルカは努力の価値というものを正しく理解していた。

 

努力が無駄にならない『ギルス』という体を手に入れて、ハルカは『強くなる権利を貰った』のだ、と。

 

 

……だからこそ、ハルカはあれほど厳しい修行を終えて、強くなれたと思っていた。

 

 

「が、ふっ……ぉ、ぁ……!」

 

『ここまでのようだな、異形の守護者よ』

 

 

山道の一角で、目の前に立ちふさがる『骸骨の騎士』に対し、ギルスは満身創痍で地に伏せている。

 

深々と体を切り裂かれ、なんとか起き上がろうとする体は力がロクに入らず、呻きながらもがくことしかできない。

 

普段は悪魔を引き裂き潰す手足は、まるで自分のモノではなくなったように自由に動かない。

 

内蔵全てが腐り落ちているような苦痛が腹の奥から生まれ続け、全身の欠陥にヘドロが流れている錯覚すら受けるほど感覚が狂い続ける。

 

意思で苦痛をねじ伏せようが、脳から届く信号は肉体を動かしてはくれない。体内のMAGも乱れに乱れ、あらゆる力が使えない。

 

 

【魔人 ペイルライダー LV99】

 

 

圧倒的なその『力』の前に、ギルスの命は風前の灯火と化していた。

 

手のひらから己の命が零れ落ちていく感覚を覚えながら、ハルカの意識もまた、闇の中へと落ちていく。

 

その最中、走馬灯のように『ここに至るまでの思い出』が駆け巡っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【某月某日 S県某所 霊山同盟支部 終末案件緊急対策本部】

 

 

「GPの上昇が加速中、S県全土の異界発生率が急上昇!」

 

「『魔人 ヘルズエンジェル』が出現!LV42!対応できる霊能力者は!?」

 

「援軍に来た鬼灯氏が急行中!『オートバジン』も込みです、行けます!」

 

「新たな異界がS県西部で発生、これで今日何件目よ!?」

 

「簡易式神による偵察によればLV5未満の低位異界です、【ラッキークローバー】に委託しましょう!」

 

「海岸線にて『妖獣 クラーケン LV51』が出現……LV51ぃ!?」

 

「大丈夫です、そちらは【巨大シキオウジ】を投入して叩きます!」

 

 

ガイア連合の、そして世界の命運をかけた『最後の作戦』の開始を目の前にして、S県も盛大に修羅場に突入していた。

 

既に一般人にも『なんかおかしい』と思う者は増えつつあり、外を出歩けばネズミに襲われて入院とかいつの時代だよ、なんて言う者までいる始末。

 

悪魔による災害の隠蔽は限界値をぶっちぎっており、このままいけば遠からず『いざという時の準備』を使う時が来ると判断するには十分だった。

 

 

「ギリギリだった……【東海道霊道化計画】、ホンットにギリギリだった……!」

 

 

緊急対策本部にて指揮をとるのは、事ここにいたっては学業もなんもかんも投げ捨てて【支部長】としての義に準ずる覚悟を決めた鷹村ハルカ。

 

今までにかき集めた戦力を適切に投入し、どれだけ異界を潰してもGPが上がり続ける無間地獄を突き進む。

 

霊山同盟、ニノウエ家、自衛隊、ラッキークローバー、地方霊能組織、そして支部にいる黒札。

 

数が多い霊山同盟の巫女と自衛隊は、とにかく広範囲に情報網を張り巡らせるのを最優先させた。

 

現在、S県のドコに大悪魔クラスや新たな異界が出現しても、数分以内にはこの緊急対策本部に連絡が届く。

 

そうして集まった情報を整理し、対応できる戦力をトラポートやターミナルで派遣して叩く。

 

霊山同盟支部は【古都】の例を見ても分かるが、傘下となる派出所を各地に配置した組織構成となっている。

 

S県とK県の県境にある霊山同盟支部がトップとなり、各地の派出所を采配する、という形になっているのだ。

 

だからこそ、【東海道霊道化計画】は工事予定地に近い派出所を中心に活動させることで各地で一気に進めることができ、現在は他県の支部が霊道にした部分との接続も終わっている。

 

各地のシェルターや主要な地方都市部の結界による保護、管理異界の設置、終末後を見越した食料生産も進めていたし、ターミナルやシキオウジといった高級設備も誘致した。

 

 

そう、ハルカは【12歳で支部長に就任し、中学生のうちにこれらの計画を進めてきた】のだ。

 

黒札じゃないという理由で優先して設備投資が反映されない事などザラ、子供という理由で思いっきり侮る黒札の人間も一人や二人ではない。

 

前者は阿部やシノを通じて申請することで何とか間に合わせた。

 

後者は阿部が物陰に引きずっていったらなんとかなったし何をしたのかは知らないし知りたくない。

 

それでもなお、準備してきたモノをフル活用して何とかしのげる……そういうレベルの修羅場が始まっていた。

 

ラッキークローバーや自衛隊は独自の裁量で動きつつ、霊山同盟支部から回された情報を元に出撃先を調整。

 

地方霊能組織にもデモニカを中心に対悪魔装備は配布しており、LV5未満の低レベル悪魔程度なら対処できるように育て続けた。

 

それでもなおどうしようもない高レベル悪魔には、霊山同盟支部の幹部クラスが出撃して殲滅。

 

古都の方はVS酒呑童子の際に阿部が修復した大結界があり、異界【大江山】も首塚大明神が管理している。

 

S県とその周辺だけに霊山同盟支部の全戦力を使えるのが唯一の希望であった。

 

 

……問題は、ここにきてガイア連合最大の問題点である『支部の最高戦力が支部長な事が多い』が爆発したことである。

 

各地から届く遠隔アナライズデータを解析していた巫女が、悲鳴のような報告を上げる。

 

 

「ま、【魔人ホワイトライダー】が出現!LV52!!」

 

「クソ、ついに黙示録の騎士まで……」

 

「続いて【レッドライダー】【ブラックライダー】【ペイルライダー】が出現!それぞれ別々のルートからS県山中を移動中!!」

 

 

【黙示録の騎士】……ヨハネの黙示録に記されている終末の使者であり、それそれが司る災厄によって人類を滅ぼすとされる4つの災厄だ。

 

 

支配を司る【魔人 ホワイトライダー LV52】

 

戦争を司る【魔人 レッドライダー  LV55】

 

飢餓を司る【魔人 ブラックライダー LV61】

 

疫病を司る【魔人 ペイルライダー LV63】

 

 

この四騎士の出現は、紛れもなく【終末の前触れ】であった。

 

一体一体がこの国を滅ぼしかねない力を持ち、しかも馬に乗って高速移動しているために補足も難しい。

 

自立稼働する【数百機の量産型オートバジン】をあちこちにばらまき、自衛隊やG3ユニットとも協力して作り上げた索敵網がなければ取り逃していた。

 

さらに人口密集地を覆うように結界を生成、こういった強力な悪魔が現れた際に、『こちらが戦いやすい場所』へと誘導するように道を作り上げた。

 

人里離れた山中に『あえて』不安定な異界を設置。ここにMAGを集中させ、悪魔が出現しやすいエリアを設定しておく。

 

こうすれば、ある程度目ざとく強力な悪魔は『そのエリアにしか出現しない』。わざわざ出たとたんに飢え死に寸前になる人里から出てくるバカはいないのだから。

 

 

 

「各地の結界強度を最大限に上げろ!人里に近づく前に迎撃する!!」

 

 

だからこそ、ここからは霊能力者の仕事だ。

 

魔界からこちらに這い出してきた凶悪な悪魔を、指定エリアから出る前に殲滅する。

 

S県の対オカルト防衛思想は基本的にソレを軸に構成されたのだから。

 

【悪魔が出てきやすい場所をわざと作って結界で囲み、そこへ出てきたところを袋叩きにする】。

 

寧ろ、どうしても海岸線に結界を張って守るしかできない海生悪魔のほうが厄介な状態だ。

 

 

(四騎士はバラバラに移動してるって話だな……となると、戦力を分散させて当たるしかない。

 速度を考えれば、これを放置してたら山中の結界地帯を抜けて麓まで下りてくる。

 そうなったら人口の多い場所まで一直線だ、皆殺しどころじゃ済まないぞ……!)

 

「ホワイトライダーにはシキオウジ二号機を向かわせてくれ!レッドライダーにはイチロウを!

 ブラックライダーはスカサハとレムナント!ペイルライダーは僕が相手をする!

 巫女長、ここの指揮を引き継いで!そして撃破した者は回復済ませたらほかの四騎士を迎撃!」

 

「鷹村支部長、ですが!?」

 

「現状集めてる戦力で四騎士を迎撃するにはこれしかないだろう!?

 シキオウジ二号機は鋒山さんに任せる、イワナガヒメ神も援護をお願いします!

 僕の分身もレッドライダーとブラックライダーに当てる!」

 

いざという時は全体の指揮を巫女長が取れるようにしておいたのはこのためだ。

 

元々霊山同盟という組織を指揮し、悪魔と戦っていたのが巫女長である。

 

戦術レベルの指揮ならばG3ユニットの指揮官二人のほうが適任だが、人材配置と全体指揮なら彼女の方が適任だ。

 

寧ろ分身で三人分働いている&レベルの暴力による高い『知』と『速』による高速思考&生来の才能でゴリ押しが利くハルカがちょっとおかしいのだ。

 

無論、そのゴリ押しができないときでも巫女長&G3ユニット&ニノウエ家の上層部という、それぞれの分野の専門家に分担作業させることで運用できる準備は整えてある。

 

トップが前線に出る可能性を見越して、組織レベルでイチから作り上げてきた甲斐があったというものだ。

 

最低限の時間で引継ぎを終えると、本部を飛び出しギルスレイダーを呼び出す。

 

ペイルライダーの現在地は、ギルスレイダーに搭載した異界内部でも使える無線機を通じて連絡が入る。

 

 

最高速度に乗ったギルスレイダーが山中に踏み込み、沸いてきた悪魔をひき殺しながら突き進む。

 

スキルカードで追加したドライビングテクニックは健在なのか、木々の隙間を抜け、細い山道を最高速度のまま駆け抜けていく。

 

他の三騎士とは既に戦闘に入ったようで、選挙区はおおむね霊山同盟支部の面々が優勢。

 

一番遠い場所にいて、もっともレベルが高く、それゆえに人里に到着するまで余裕があるペイルライダーの担当がハルカになったのも当然だろう。

 

回復・補助を重視した能力になっているギルスレイダーとともに、速攻で倒すよりも確実に凌ぎ、得意な削り合いに持ち込もうとしたのも正しい。

 

三騎士を倒しさえすれば、分身を解除して再度発動。3対1に持ち込みつつほかの面々が駆けつけるのを待てばいいのだから。

 

 

そう、ここまでの判断に大きな間違いはなかった。

 

アナライズでわかる限りのデータをもとに立てられた、非常に精度の高い作戦【だった】。

 

 

「見つけたぞ、ペイルライダーッ!!」

 

『ム……人間か、私の告げる終末の先触れを阻止しに来たな?』

 

「話が速いな、お前に大暴れされて、疫病をばらまかれるわけにはいかないッ!!

 

 ここで倒れてもらうぞ……変身ッ!!

 

 

ハルカの姿が光に包まれ、ギルスレイダーと共にその光を駆け抜ければ、正義の異形『ギルス』の姿が露になる。

 

ほう?とペイルライダーが興味深そうにギルスの姿を観察していたが、直後にギルスレイダーが速度を上げた。

 

今のギルスレイダーのレベルは『61』。ペイルライダーの騎馬とも十分に張り合える速度と耐久性を獲得している。

 

峠道をとんでもない速度で駆け抜けながら、ギルスの触手鞭『ギルスフィーラー』とペイルライダーの鎌が幾度となく打ち合う。

 

アスファルトを粉砕し、木々を木っ端のように消し飛ばし、時にはウィリーじみた動きで引き潰す攻撃を『互いに』繰り返しながら駆け抜けていく。

 

ペイルライダーは騎乗能力で上回り、ギルスはレベルと基礎スペックで上回る。

 

こればかりはキャリアの差だろう、スキルカードで技能を習得し、騎乗戦闘の訓練も積んでいるが……相手は文字通りの人馬一体だ。

 

 

「だが……ここまでだッ!!」

 

『むうっ!?』

 

 

しかし、騎乗で半歩劣ろうと、戦闘においてはハルカが二歩・三歩先を行っている。

 

振るわれた鎌にギルスフィーラーを巻き付け、互いの距離を無理やり一定に固定した時点で形勢逆転。

 

人馬一体による繊細な『間合いの調整』は完全に崩され、ギルスの得意な接近戦へと持ち込まれる。

 

ギルスフィーラーではなくギルスクロウが鎌と打ち合った瞬間、ペイルライダーの態勢が崩れた。

 

 

『ぬっ!?』

 

「貰ったァ!!」

 

 

すかさずギルスフィーラーを引くことでさらに態勢を崩し、ペイルライダーの喉元目掛けてギルスクロウを突き出す。

 

入った、と確信する一撃。馬から振り落としてさえしまえば、ペイルライダーはハルカの敵ではない。

 

それでも油断はせず、ペイルライダーに一撃を叩き込んだ後は組み付いて引きずりおろして……と考えた所で。

 

ガギャインッ!という金属音。

 

ペイルライダーがとっさに鎌の柄を翳し、ギルスクロウの切っ先を防いだ音である。

 

 

(っ!あそこから防御を間に合わせた?!いや、驚いてるヒマはない、動きはこっちの方が速いんだ。もう一撃ッ……)

 

 

一瞬驚愕したものの、すぐさまギルスクロウを構えなおす。

 

冷静に、確実に、しかし闘志だけはマグマより熱く燃やす。スカサハの鍛錬の成果は大きかった。

 

だからこそハルカ/ギルスは、構えなおしたギルスクロウで淀みなく追撃を放ち……。

 

 

『後から降りぬかれた』ペイルライダーの鎌が『先に突き出されていたギルスクロウ』を追い抜いた。

 

ギルスが驚愕する間もなく、ペイルライダーの鎌はギルスクロウごとギルスの腕を両断。

 

片腕を喪失した激痛に襲われるギルスが、それでもギルスフィーラーを引き絞って鎌の自由を奪い取りにいった。

 

が、しかし。そんな抵抗を『腕力だけで』振りほどき、そのまま鎌の切っ先がギルスの胴を深々と捕らえ……。

 

 

「あガッ……!?」

 

 

その勢いのままま、ギルスレイダーまで刃が到達。

 

ボディをほぼ半分に引き裂かれたギルスレイダーがたまらず転倒し、ギルスと共に峠道へと放り出された。

 

 

「がはっ、おっ、ご……!!??」

 

『ほう、あれでまだ息があるか。予想以上のタフさだな』

 

 

片腕を失い、胴体を内蔵まで深々と切り裂かれ、相棒であるギルスレイダーを破壊され……。

 

それでも、ハルカ/ギルスはギリギリのところで命を保っていた。

 

しかしその脳内は『どうなっている?』という疑問形で埋め尽くされている。

 

 

なぜ、ナゼ、何故、WHY。

 

 

死にかけの体と脳みそで、それでも必死に思考だけは止めない。

 

せめて『なぜこうなったのか』だけは探り出して、後から来る味方に託さなければいけないからだ。

 

かすむ視界をなんとか首ごと持ち上げて、もう一度ペイルライダーをアナライズする。

 

 

【魔人 ペイルライダー LV99】

 

 

「なっ、れ、レベルが……?!」

 

『気づいたか、異形の戦士』

 

 

表情も分からないはずの骸骨の騎士が、ギルスを見下ろしながら近づいてくる。

 

その手に握られた鎌で、治療・蘇生される前にトドメを刺すつもりなのだろう。

 

 

『貴様の部下達は優秀なようだな、我以外の四騎士は全て、終末の先触れとなること叶わぬままに倒されたらしい』

 

(ぐっ……ギルスレイダーは、まだ生きてる。通信も、届いてる。よし、これは本当だ。あとはコイツを倒せば……)

 

『だが、少々急ぎすぎたな。ほかの三騎士を『ほぼ同時に』倒してしまうとは。

 

 おかげで奴らの持っていた『権威』が私に集中した、もはや敵はない』

 

(……『権威』?それに三騎士……まさか!?)

 

 

黙示録の騎士は、それぞれが【世界の四分の一を支配し、人間を殺害する権威】を持つという。

 

そして、基本的にこの四騎士は4体1組で扱われる存在だ。

 

四騎士が順に世界に現れ、己の持つ力でもって人類に災厄をもたらす。それこそがヨハネの黙示録に記された【黙示録の騎士】の役割だ。

 

 

「お、お前たちは……【黙示録の騎士】という概念を、四騎士に分散しているのかっ……!?」

 

 

『! ハハハッ、今の言葉だけで気づいたか。そうだ、そのとおり!

 

 我らは四騎士全て揃って【黙示録の騎士】。

 

 ならば一騎が欠ければ黙示録の騎士は不完全になるのか?否!

 

 そうなれば三騎士のみで黙示録の騎士を構成できるよう、欠けた騎士の『権威』が譲渡される!

 

 貴様らは四騎士のうち三騎士を纏めて排除した。よって、全ての権威が我に集中したのだ!』

 

 

一体を倒すごとに残る四騎士が強化される、三体を倒せば、当然最後の騎士は最も強い状態になる。

 

純粋な行動速度や腕力では上回っていたはずなのに、突然ギルスが押され始めた理由がソレだ。

 

ギルスがギルスクロウをもって攻撃したその瞬間、他の三騎士が倒され、【権威の譲渡】が発生。

 

反応速度も膂力もハネ上がったペイルライダーが、たやすくギルスの攻撃をさばききったのである。

 

 

(だ、だが、それでもおかしい!アナライズを見た限り、僕とこいつのステータスにそこまで隔絶した差はないはず!)

 

 

『超人 ギルス LV84』と『魔人 ペイルライダー LV99』。

 

レベル差は15、だが、ここまで高レベルになればどちらも相応に高いステータスを持っている。

 

いきなりレベルが上がったからといって、一方的にギルスを叩きのめせるほどの強さになったとは思えないのだ。

 

四肢に活を入れて立ち上がろうとしているギルスへと、ペイルライダーがフンと鼻を鳴らしてから言い放つ。

 

 

『逆だ。我が強くなったのではない……貴様が弱くなったのだ、異形の戦士』

 

「な……僕が、弱くなった?」

 

『いい加減気づかないのか?貴様の肉体が言うことを聞かないのは、負傷の影響だけではない。

 

 貴様の肉体は、我が『疫病の権能』によって既に病に犯されている!

 

 健康な状態と程遠いその体では、満足に戦う事もできまいて!』

 

 

立ち上がろうとしていた四肢が、ぐらり、と力を失い地面に崩れ落ちる。

 

目がかすみ、舌がもつれ、息が詰まり、四肢に力が入らない。

 

血を流しすぎたせいかと思っていたそれらの症状は、ペイルライダーの能力である『疫病の権能』によるモノ。

 

スキルではなく、高位の悪魔が持つ特殊な能力。ペイルライダーのソレは『疫病』を操る力だ。

 

当然、ギルスはもはや地球上のウィルスなど何もしなくても跳ねのけられる。インフルエンザもペストもコロナもギルスの免疫系を突破することは不可能だ。

 

 

だがしかし、ペイルライダーの持つ『疫病の概念』は違う。

 

それが生物でさえあれば、相手がどんな対策を取っていようと重度の疫病に感染させ、その五体の自由を奪い、命の灯をかき消していくのだ。

 

生物により近づけたパーツを作ってしまったからこそ、ガイア連合の専用式神も同様に『疫病』に感染してしまう。

 

例えLV99のキャラクターで固めたパーティを操作していようが、操作するプレイヤーが40度の熱を出していれば勝てるものも勝てない。

 

強制的に感染し、あっという間に自由を失い、命すら容易く奪っていく『病』こそがペイルライダーの力であった。

 

精神力が強くても関係ない、脳や神経の信号がバグってしまえば、精神の強さがあろうと肉体にソレが反映されない。

 

身に着けた技術も、繊細かつ高度であればあるほどこの状況では役に立たない。

 

原初の疫病という概念に犯されたギルスの肉体は、ありとあらゆる抵抗の事由を失っていた。

 

そして、ついにギルスの元へ歩を進めたペイルライダーの鎌が振り上げられる。

 

 

「が、ふっ……ぉ、ぁ……!」

 

『ここまでのようだな、異形の守護者よ』

 

 

 

死の安らぎは 等しく訪れよう

 

 

人に非ずとも 悪魔に非ずとも

 

 

大いなる意思の導きにて

 

 

 





修行回の後は無双タイム?

この世界はメガテンだからね、ちかたないね。
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