ちなみに影の国での修行→四騎士出現の間には結構間が空いてます。
某月某日で表記されているのはそのため。
その合間に起きたアレコレは番外編とか短編でちまちま書いていきます。
『無駄に苦しませる趣味はない、一瞬で……終わりだッ!』
風を切り裂き、ペイルライダーの鎌が横一文字に振るわれる。
疫病の権能を込めた鎌、周囲にまき散らしている疫病と合わせ、対策しなければ一撃で相手を病死に追いこむ武装だ。
だが、今回はその権能も必要ない。ただ刃をもってギルスの首をハネればそれで終わりである。
……今にも振り下ろすその瞬間に、ペイルライダー目掛けて多数のミサイルが降り注がなければ、それで終わっていた。
『むうっ!?』
「イッタンモメン、ハルカを封印しつつ回収!」
しかしペイルライダーもひとかどの大悪魔。不意打ちの一撃をとっさに腕でガード。
追撃として放たれた多数のミサイルを感知し、青ざめた馬を走らせる。
一瞬だけ倒れたギルスにトドメを刺そうか迷ったが、そのギルスが『布のような悪魔』に包まれて猛スピードで遠ざかっていくのを見て思考を切り替えた。
五感をミサイルが放たれた方向……自身の上方、木々よりもさらに上の上空に向ける。
黒と銀のボディ、青い瞳、腕に抱えた大型ミサイルランチャー。
明らかに近未来的……というよりSFに半歩突っ込んだ装備に、ペイルライダーが困惑と警戒を同時に向ける。
「いいじゃないか『G4』。シノのやつが量産型まで作るわけだ」
『……何者だ、貴様』
「お前の目の前で死にかけた男の師匠さ……いや、死に『かけた』じゃないか」
イッタンモメンが巻き付き、ハルカごと疫病を封印したままミイラ男状態のハルカをG4……阿部の足元へ運んできた。
ちらりと視線を向ければ、既にハルカの心臓は停止し『死亡』状態になっているのを確認。
シノから借りてきた『G4』にもアナライズ機能は備わっているが、そのぐらいは機械無しでもできる阿部にとって、病人の診察などその目で『観る』だけで終わる。
……当然だが、そんな風にいつまでも冷静に行動できるほど余裕がある状況ではない。
『【マハブフダイン】!!』
「【マハジオダイン】!!」
ペイルライダーが放ったマハブフダインを、得意のジオ系魔法で迎撃。
吹雪と雷鳴が相殺し、一瞬で蒸発した氷が周囲に蒸気となって立ち込める。
そのスキを逃さず、周辺一帯目掛けて【疫病の権能】を使用し、病原菌をバラまくペイルライダー。
たとえ蒸気によって視界がふさがれていようが、感染さえしてしまえばほとんど勝ちは決まるのだから。
「あっぶな、【トラフーリ】!」
(! 逃げた、いや違う、これは!)
G4の姿が描き消える。【トラフーリ】によって安全地帯まで転移・離脱したのだろう。
同時に、ペイルライダーの進路を制限していた結界がより強度を増していく。
最短距離で人里を目指さなかったのは、この曲がりくねった山道にそって展開された結界があったためだ。
複雑かつ強靭、そして多重に展開された阿部特性の【対悪魔結界】。
ハルカが阿部に依頼を出し、悪魔が召喚されやすいように作ったエリアの周囲に張り巡らせた結界の迷宮だ。
レベルによるゴリ押しで無理に突き破ろうとすれば、ペイルライダーですらどんな悪影響がでるのか計り知れず。
かといって素直に山道を走ろうとすれば、空間がゆがまされているのかとんでもない長さの【一本道の迷宮】となってゆく手を阻む。
仮に対処困難な高レベル悪魔が出現した場合、この結界を用いて時間を稼ぐのが霊山同盟支部の対処策であった。
「イッタンモメンの体に使われてる呪符でハルカを封印して……あとはシノに任せるしかないか。
アイツなら『メッセージ』にも気が付くはず。予言通りなら、ここまでは順調極まりない。
……問題ない、はずだ。ハルカには『あのスキルカード』を刺してあるんだからな」
予言が外れる『前例』を、よりにもよって脇に抱えた己の弟子が達成してしまったこともあり、不確定要素がちらつく阿部なのであった。
【二時間後 霊山同盟支部 対オカルト診療所】
最新鋭の医療設備と、ガイア連合山梨支部で開発されたオカルト医療機器。
それらを惜しげもなく投入した【対オカルト診療所】は、魔法による怪我から神々の呪詛まで対応できるスーパードクターの領域だ。
式神移植等の特殊な治療法も十分に実践可能であり、パーツ移植者や専用式神の定期メンテナンス等もここで行われている。
流石に山梨支部技術科には劣るものの、距離の近さとマネーパワーにあかせてガンガン設備を整えているだけあって、大抵のオカルト症例には対応可能であった。
……そう、対応可能【であった】。
そんな対オカルト診療所の奥にある【緊急隔離病棟】。
ここには、疾患しただけで周囲に被害を及ぼすタイプの呪詛等を食らった患者が個別に収容されている。
一室一室に徹底的な結界による隔離処理が施され、医療系黒札と技術系黒札の立ち合い無しには踏み込むことすらできない超危険区域だ。
その中でも特に隔離が厳しい一室に、鷹村ハルカは寝かされていた。
結界処理済のアクリルガラス越しに見えるのは、全身を呪符でぐるぐる巻きにされたハルカの人型のみ。
完全隔離状態で、医療用の式神を遠隔操作して治療行為が行えるのがこの施設のキモなのだが……。
『下手に手を出すと式神にすら感染する』という理由で、遠隔でアナライズによるバイタルチェックを続けるのが唯一の治療法、という有り様。
コロナウイルスに対して解熱鎮痛剤を処方し、あとは熱が上手く下がるのを祈るしかないのと同レベル。
つまりは『疫病の権能に対する特効薬無し』。それがガイア連合霊山同盟支部技術科及び医療科の結論であった。
そして、当然だが隔離病棟だからこそ見舞いの一つすらできない。
ハルカ/ギルスの敗北を聞いて駆け付けた面々は、隔離病棟の外で沈痛な顔で待つ以外の選択肢を取れない。
『疫病がさらに体を蝕む可能性があるから下手に蘇生魔法すら使えない』……そこまで言われてしまえば、希望が潰えるのも無理はないだろう。
「……なあ、ホントにどうしようもないのか?!」
「そうよ、いつもみたいにガイア連合のトンデモ技術でさ……!」
ぼそり、とイチロウが声を漏らす。同調するように七海が続いた。
太宰イチロウにとって、鷹村ハルカは生まれて初めての『親友』であった。
七海リカにとって、鷹村ハルカは絵本の中の王子様だった。
なにかとやる気が空回りしがちなイチロウにとって、しっかりと自分と向かい合って、あるべき背中を見せ続けたハルカに抱く感情は『憧憬』に近い。
自分と同じぐらいの年なのにこんな大きな組織を率いて、ひとたび前線に出れば『仮面ライダー』として特撮のヒーローのように大暴れする。
それでいて力に溺れることはなく、困った人に手を差し伸べて、どんな試練も克服し、巨悪に対して真っ向から立ちはだかる。
一人の人間として『あんなふうになりたい/あいつの隣に立ちたい』と思ってしまうのは当然だった。
「……厳しいな、蘇生そのものは儂らでも可能だ。だが、疫病の権能は……」
「今、兎山博士や阿部殿が解析を進めています……病原菌の除去さえできれば」
「感染を予防する『ワクチン』ならばなんとか作れたそうですが、既に感染した者への対処は……」
スカサハとレムナントも同様に、ハルカの背中に『心』を救われ、前を向かせてもらった女性たちだ
鋒山ツツジや、ここにくる時間もすべて使って指揮を執っている巫女長は、先祖代々の宿願を果たしてもらった恩がある。
人里に降りる前に県議や市議に働きかけ、土砂崩れをでっちあげて人々を避難させているニノウエ生徒会長もそうだ。
鷹村ハルカはいつだって、『誰かのために』戦い続けてここにいる。
その『誰かのために』が、これだけの人を集めて、黙示録の四騎士のうち三騎士を堕とすほどの成果をたたき出した。
「……『ワクチン』はある、って言ってたよな。ツツジさん」
「あ、ああ。さきほどサクラさんが生成できたと……といっても、マウス実験すらしていないシロモノだが」
それだけ聞いたイチロウが立ち上がろうとして、その肩をいつの間にか回り込んでいたスカサハが掴んだ。
「何をする気だ、未熟者」
「(ッは、早……!?) だ、誰かがペイルライダーの足止めしなきゃならねぇだろ!結界だっていつまでも持つわけじゃない!」
一応、イチロウの言っている事にも一理はある。
対オカルト診療所にハルカを届けた阿部は、そのままの足で結界の基部へと取って返した。
術者本人が補強・補修しつづけることで結界を強化するのは、はっきりいって錆だらけで穴の開きまくる水道管を修理工がひたすら穴埋めし続けるような遅延行為に過ぎない。
いずれ限界は来る上に、限界が来た時には阿部も疲労困憊で動けなくなっている……というその場しのぎでしかないのだ。
故に時間稼ぎとしては成り立っているが、それ以外の時間稼ぎの方法があれば阿部がフリーで動ける。
「そ……それに、あれが神話の疫病なら、俺に『対処策』がある!それが有効なら、ハルカが復活した後に託せるはずだ!」
「そのために死ぬ気か、阿呆」
「ち、違う!いや、死ぬかもしれないけど、そうじゃなくて!……恩返しなんだよ、これは」
オカルト動画の撮影、何て理由で異界に踏み込み、ギリギリで命を救われて。
その時に目覚めた力のイロハまで教わって、不仲だった両親もハルカの手助けのおかげでギリギリ丸く収まった。*1
その恩を、どれもこれもイチロウは返せていない……そう思っているのだ、ずっと、ずっと。
「なら、アタシも同じよ。貸し借りで言えば借りっぱなしじゃない」
「私もだ。左目への式神移植も、彼の手引き無しではどうしようもなかったからな」
「……恩返し、か」
「何か言う権利は無さそうですね、私達には」
七海とツツジが続く、スカサハとレムナントは言うまでもない。
イチロウの肩から手が離れ、一人一人が立ち上がる。
先ほどまでの俯いていた気配は微塵も感じられない。
全員の意思が『恩返し』と『報復』で1つになった。
「とはいえ全員で現地に向かうわけにはいかん。
ツツジとナナミは超巨大シキオウジの修理が済み次第持ってこい。
儂とレムナント、イチロウで現地へ向かう」
「ちょ、ちょっとまった!」
「なんだ、ナナミ。言っておくが貴様の実力では「そうじゃなくて!」む……」
ちょっと待ってなさい、と言いながら、彼女にとって最も因縁深い相手……レムナントを睨みつける。
かつて殺しに来た者と、殺されそうになった者。
今では同じ陣営とはいえ、幹部の会合でもほとんど会話どころか視線すら合わせようとしない二人組だ。
「今でもね、アンタの事は嫌いよ、クソ天使。元メシアンで、アタシや満やアカネを殺しにきて、そのくせ誰よりハルカのそばにいて……!」
「……ええ、その罪は許されることでは……」
懺悔の言葉を口にしようとするレムナントを「だけど!」と遮る。
驚愕しているレムナントの手に、七海が担いでいた【アタッシュケース】が押し付けられた。
「……今、ハルカのために働けるのは……アタシよりも、アンタなのよ。『レムナント』」
「ッ! な、ナナミさん。このアタッシュケースは、しかし!」
「いいのよ!あ、いっとくけど貸すだけよ!終わったら返しに来なさい!!」
【アタッシュケース】の中身は言うまでもない、七海が愛用している装着型デモニカスーツ『デルタギア』だ。
七海の手により相応のレベルまで育っており、スキル・耐性等もガイア連合から手に入れたスキルカードで補強されている。
元々『G4』の余剰パーツで作られたハイエンドデモニカ級の試作機なので、今のレムナントでも十二分に扱える性能だろう。
寧ろ、スカサハやイチロウより一歩劣るレベルのレムナントにとっては心強い装備だ。
「使い方は分かるわね?……今回必要なコードは、『9821』よ。
結界のせいでトラポートじゃ侵入できないから、近くまで飛んだあとの足がいるわ」
「……はい……はい! 必ず、返しに来ます!!」
「よろしい。 ツツジさん、サクラさんとシノさんからワクチン貰ってきて!アタシは回復アイテムかき集めてくる!」
ツツジとナナミが急ピッチで準備を終えてから、イチロウとスカサハ、そしてレムナントは対オカルト診療所の出口へと向かう。
ワクチンは医療系俺達の手によって三人に投与されたが、効果は長く見積もっても『接敵してから30分』。
なおかつ【疫病系の技】で病原菌を上乗せされてしまえばさらに効果は短くなる……だが、これが今できる最大限の対処法だ。
既に、ペイルライダーに挑む三人の眼に迷いや恐れはなかった。
あるのはシンプルな……『仲間を傷つけられた怒り』だけである。
トラポートで可能な限り現地に接近し、山道の入り口に到達したところでレムナントはベルト……【デルタドライバー】を腰に巻いた。
ピストルグリップ型携帯電話【デルタフォン】を握りしめ、トリガーを引きながら口元に持っていく。
同時にイチロウが手を掲げると、彼の腰にもベルト……【オルタリング】が現れた。
キレの良い動きから、ゆっくりと手を突き出すような動きに切り替え、『その言葉』を叫ぶ。
「「 【 変 身 】 ッ!!!」」
銀色のMAGのラインがレムナントを覆い、神のごとき光がイチロウを包む。
光が収まったその後に、『デモニカ・デルタ』と『アギト・グランドフォーム』が降臨した。
「うむ、ハルカもそうだが何度見てもケルトの変身とは違うな。クー・フーリンのようなモノかと思っていたが*2」
「言わない約束ですよ、それは……『9821』」
もう一度トリガーを引いて、音声入力でコマンドを入れる。
どこからともなく表れたのは、金と黒のサイドカー付き大型バイク。
デモニカ用支援戦闘機械『サイドバッシャー』……オートバジンとのコンペディションに敗れた試作機だ。
ちなみにコストや性能等は合格ラインだったものの、やはり自立戦闘が可能か否かは大きかったらしい。
イチロウは自分にまかされているオートバジンに乗り込み、レムナントとスカサハはサイドバッシャーに跨った。
【15分後 結界の迷宮内部】
夜の帳もとっくに落ちて、それなりに長い時間、結界の破壊や突破を試みているペイルライダー。
結界の迷宮も侵入阻止の防護結界も、ほんの少し、ほんの僅かにだが『修復速度』が落ちている……流石にペイルライダーの眼はごまかせなかった。
阿部とて人間、ペイルライダーが行うレベルの破壊を結界で抑え込み続ければ、いずれ心身の限界が訪れる。
そもそもペルソナ『アベノセイメイ』も使い、四神を呼び出して包囲し結界を補強しているのだ。燃費は決して軽くない。
このままいけば夜明けよりは早く突破できる……そんな皮算用をたてたペイルライダーの耳に、『バイクのエンジン音』が届いた。
何事かと振り向いたペイルライダーの背を目掛け、二台のバイクが追従してくる。
赤いラインに銀のボディの『オートバジン』、黒いボディに金のラインの『サイドバッシャー』。
乗っている面々もまた、先ほど戦った異形の戦士(ギルス)や黒い戦士(G4&阿部)には劣るものの強者である。
それを感じ取った瞬間、ペイルライダーは十分な警戒をもってその二台を睨みつけた。
「よう、ペイルライダーさん?ちょっと言いたいことがあってきたんだよ」
『……何用だ、忌々しい光の気配を漂わせる戦士よ』
「いや、俺だけじゃなくてさ。ここにいる三人とも同じこと言いに来たんだ」
「うむ、儂らの言いたいことはシンプルに1つ」
「……夜更けのドライブが、一人と一頭では寂しいでしょう?」
バイクの放つ重低音が一層濃くなると、一時的に二台がペイルライダーの愛馬を追い越す。
ドリフトターンの要領で、結界の突破を目指すペイルライダーの前に二台と三人が立ちふさがった。
その体に、溢れんばかりの『闘志』を乗せて言い放つ。
「「「ひとっ走り付き合えよ!」」」
【魔人 ペイルライダー LV99】
VS
【超人 アギト LV59】
【女神 スカサハ LV64】
【天使 ドミニオン LV60】*3
開戦。