霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「こいよ理不尽(オカルト)、真正面から迎え撃ってやる」

 

【霊山同盟支部 対オカルト診療所】

 

 

「まあつまり、おおよその原因はシノさんが作った『スキルカード』なんだよね」

 

 

対オカルト診療所の隔離病棟にて、シノは砂糖を過剰なほどブチこんだコーヒーを飲みながら語り始めた。

 

 

「ディケイド事件の時に、たっちゃんはディケイドから『クウガのカード』を受け取っていた。

 前世で見た設定どおりなら、アレは仮面ライダーとしての力を凝縮したカードだったはず。

 それこそ、使用すればそのライダーに変身できちゃうぐらいのね」

 

「……それで、その『クウガのカード』をスキルカードに加工して、ハルカの肉体に刺したんだったよな?」

 

「そそ。ちなみに既存の情報媒体だとどう考えても容量オーバーだったから、

 シノさんの脳細胞を使ったスキルカード用触媒を試作してみたりもしたね!

 今AIチップに使ってる脳細胞シートの試作品みたいなモノかなー、アレは」

 

 

そして作ったのはいいが『量産化した際の問題点』が10や20どころじゃない量噴出したので試作品数個だけ生産して終わった模様。

 

とはいえ、クウガのカードの情報を叩き込める情報媒体はソレぐらいだったので、試作品の中で最も質が良いモノを使ってギルスの体に投与したのだ。

 

 

「そして、クウガには『命に関わるほどの重傷を負った時に、仮死状態になって時間経過で回復する』能力があった。 おそらくカードの中のクウガの力から、その機能を引き出したんじゃないかな?」

 

「……それは、毒や病気にも有効なのか?」

 

「原作で使った時も敵の毒胞子にやられて瀕死だったからだし、有効なんじゃないかな!

 ついでに復活した時に毒胞子の効果が出てなかったから、なんらかの耐性も獲得するみたい。*1

 あの毒胞子ほっとくと増殖していく上に体も崩壊させるやべー胞子だったから」

 

「どんな胞子だ」

 

 

特撮の毒って凶悪すぎやしないか?と額を抑えるサクラだが、なにはともあれ状況は変わった。

 

肉体が活性化するまでのプロセスは全て記録されている。電脳異界も使ったシュミレーションを使えば、ワクチンや特効薬も高速で開発できる。

 

生成するための機材も材料も、支部の倉庫をひっくり返せば山と積まれている。

 

隔離病棟内部の疫病も、『浄化の炎』で全体を焙ることで滅菌済。修理の手間はかかるだろうが、パンデミックが広がるよりはマシだ。

 

 

「さぁー……ここからは私達の挑戦(せんそう)だ」

 

 

にぃ、と口元を三日月のように歪めながら、兎山シノは集められたデータと向かい合う。

 

ワクチンの量産化、特効薬の開発、オートバジンの修理とやることはごまんとある。

 

 

……人類の発展の歴史は『工夫』と『積み重ね』、そして『発想』と『実験』にあるとシノは常々思っている。

 

兎山シノの尊敬する偉人……『トーマス・アルバ・エジソン』は、決して新しいモノを発明する『開発』の天才ではなかった。

 

実験室の中でしか再現出来ないモノを効率化し、量産し、新たなライフスタイルを探り出す……『普遍化』の天才であった。

 

だからこそ……兎山シノは誰よりも彼を尊敬する。アルキメデスよりも、レオナルド・ダヴィンチよりも、ニコラ・テスラよりも。

 

エジソンは偉い人、そんなモノは誰だって知っている常識なのだから。

 

 

「こいよ理不尽(オカルト)、真正面から迎え撃ってやる」

 

 

弾丸の一発も放たれないが、間違いなく人類の命運にかかわる戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【S県某所 山中 結界内部】

 

 

 

「ぅ、ぐ……(なんだ、なにがどうなった……!?)」

 

 

メギドラオンが放たれてから数分後、横たわっていたイチロウはようやく目を覚ました。

 

しかし、全身を襲う激痛と虚脱感が、体を起こすどころか言葉を発することを許さない。

 

気絶している間に変身も解除されてしまったようで、生身のまま地面に横たわっていた。

 

じゃり、と指先に土の感触を感じる。さっきまでオートバジンに乗って走っていた山道のアスファルトの感触ではない。

 

かすむ目をどうにか開き、耳鳴りのする耳で無理やり周囲の様子を探ってみれば、なにか硬質で重いモノが地面を走り回る音がした。

 

 

(あ、れは……ロボット……?)

 

 

二足歩行の、オートバジンよりだいぶ大きいロボットがイチロウをかばうように立ちふさがり、青い疫病の騎士と打ち合っている。

 

赤熱化した4本の爪……【ヒートピント】を備えた右腕【グランドマニピュレーター】を振り回し、時折バルカン砲やミサイルを放ちながらペイルライダーを攻撃。

 

【サイドバッシャー バトルモード】。レムナントとスカサハが乗っていたサイドバッシャーの二足歩行戦車型戦闘形態である。

 

乗り込んでいるのは、やはりというべきか【デモニカ・デルタ】を身にまとったレムナント。

 

デモニカの戦闘補助AIと本人が習得している操縦スキルを利用し、どうにかペイルライダーを食い止めていた。

 

 

「目覚めたか……遅かったな、未熟者」

 

「! スカサハさん!?その怪我は!?いづっ……!」

 

「まだ起きるな、もうすぐ傷は塞がる……流石に貴様ら二人を助けつつ、無傷で切り抜けるのは無理があっただけだ」

 

 

メギドラオンが放たれるその瞬間、スカサハはサイドバッシャーからオートバジンに飛び移った。

 

そのままイチロウの首根っこを掴みつつ、鮭跳びの妙技でメギドラオンの回避を狙ったのである。

 

しかし無茶が過ぎたようで、かすめたメギドラオンがスカサハの左腕と左足、胴体の3割程度をえぐり取っていった。

 

さらに余波だけでスカサハとイチロウに十分なダメージを与え、回避が間に合ったレムナントとサイドバッシャー以外は一時的に戦闘不能に陥ってしまったのだ。

 

……とはいえオートバジンがギリギリでバトルモードへ変形し、二人の盾になってくれなければスカサハの全身が消し飛んでる。

 

 

「メギドラオンを放たれる直前に、レムナントの【ディアラハン】が儂に届いていなければ、

 どちらにせよこの負傷で死んでいたがな。とはいえ戦力の取引としては悪くない、

 貴様とオートバジンを失う所を、儂の手足にオートバジンで済んだ」

 

「そんな数学の宿題みたいに手足を換算するんですか……!?」

 

「当たり前だ。それがケルト流だぞ未熟者……が、流石にあそこまでの強者相手に文字通り片手落ちは自殺行為に等しい」

 

 

スカサハは頭蛮族で全身ケルトだが、決して脳筋でもバカでもない。

 

しっかりと勝算を練り上げて、針の一穴のような勝機に一刺しをねじ込んでくるからこそ、影の国の女王として数多の英雄の師範をやってこれたのだ。

 

イチロウに手持ちの回復アイテムを注ぎ込み、なにはともあれ無理やりにでも戦える状態に持っていく。

 

 

「儂の手足はレムナントのディアラハンでなければ再生しない。儂が前線にでなければじり貧だ。

 生命力(HP)は宝玉や魔石で何とかなるが……ここまで式神ボディを破壊されてはな。*2

 貴様に回復アイテムを注ぎ込んだのはそのためだ、回復したらレムナントの代わりに時間を稼いで来い」

 

(とはいえ、それでもじり貧だがな……)

 

 

元より時間稼ぎに加えて手傷の1つでも、という心算で始めた戦闘だ。

 

無茶に無理を重ねて、それでどうにか持たせていたモノに限界が来ている。

 

疫病の進行はさらに進み、ワクチンによるデバフの軽減でもごまかしきれなくなってくる頃だ。

 

応援が来るで持つかは賭けだな、とスカサハが呟いた瞬間、轟音と共にサイドバッシャーのグランドマニピュレーターが宙を舞った。

 

ペイルライダーの鎌による一撃が、サイドバッシャーの右腕をすっ飛ばしたらしい。

 

 

「くっ……?!」

 

『ここまでだな、機械の騎馬よ……【 霞駆け】*3!!』

 

 

放たれた鎌の連撃に、咄嗟にサイドバッシャーから飛びのくレムナント。

 

サイドバッシャーを盾にして回避するはずが、鎌の4連撃のうち3撃でサイドバッシャーが大破。

 

4撃目が下から救い上げるようにレムナントを捕らえ、真上に打ち上げた。

 

 

「がはっ!!?」

 

『容易い……所詮はからくり頼りの天使か』

 

「レムナントさんッ!やめろお前っ……変身ッ!!

 

 

跳ね上げられたレムナントの変身がダメージ超過で解除され、落ちてきた彼女の首をペイルライダーが掴んでぶら下げる。

 

イチロウが回復も待たずに飛び出し、素早く『アギト グランドフォーム』に変身して割り込もうとするが、ペイルライダーの馬が跳ねまわってそれをはじき返した。

 

普段ならばこの反撃も避けて割り込めたかもしれないが、疫病によって動きの鈍ったイチロウにとってはあまりにも厳しい。

 

がはっ、と肺の中から空気を吐き出し、なんとかフレイムフォームに変身しようとするも、その前に蹄に蹴り飛ばされた。

 

 

メギドラオンによって一変した周囲の景色、道路は抉られ、木々は倒れ、薄暗い闇が広がっている戦場。

 

跳ね飛ばされたイチロウは倒れた木々に突っ込み、木片をばらまきながら転がり、止まる。

 

スカサハの魔法による援護射撃も、瀕死の彼女が放った魔法では大した効果もなく、反撃で放たれたマハブフダインでスカサハが『凍結』状態となる。

 

 

「ぐっ……イチロウ君、スカサハ……!ぐあっ!?」

 

『他人を心配している余裕などないだろう、貴様には?これから一太刀で死ぬのだからな』

 

 

首根っこを掴んだままさらに力を籠める。首の骨がみしみしといやな音を上げ始めた。

 

そしてレムナントの見ている前で、疫病の鎌が大きく振り上げられる。

 

 

(……申し訳ございません、主殿……私はあまりにも、無力でした……)

 

 

自分への怒りと情けなさ、そしてなによりも自分の主への申し訳なさで目を閉じる。

 

しかし、いつまでたっても痛みが訪れない。

 

やるのなら一思いにやれ!という意思を籠め、ギリギリ途切れていなかった意識を総動員して瞼を開く。

 

 

ペイルライダーは、レムナントを見ていなかった。

 

レムナントの背後、メギドラオンによって様変わりした景色の先。

 

夜の闇の中を切り裂いては知ってくる、一筋の『光』に目を奪われていた。

 

 

『……生きてたのか、貴様…!?』

 

「えっ……!?」

 

 

どさり、とレムナントの体が地面に落ちる。

 

げほっ、ごほっ……と思わずせき込みながらも、くらくらする視界を無理矢理後ろへ向けた。

 

夜の闇を切り裂く光は、既に闇が押し返されるほどに強くなっている。まるで車のヘッドライトをゼロ距離で浴びせられているような眩さだ。

 

 

……その聖なる光の中を何かが走ってくる。

 

 

凍結が解けたスカサハも、どうにか木々をのけて戻って来たイチロウも、その光の方へ振り向いた。

 

余りにも身にまとった光が強すぎて、ざっくりとした輪郭程度しか見えてこない。

 

短いツノ、肉を食いちぎるようなうめき声、筋骨隆々とした手足を持った人型。

 

その瞬間、3人の横を光り輝く何かが駆け抜けて、ペイルライダーにとびかかった。

 

 

『ぬがっ!?ぐううっ!』

 

「ヴォオオオオオォォッ!!」

 

「……新手の悪魔か!?」

 

 

スカサハが思わず叫んだが、イチロウとレムナントには正体がわかった。

 

修行中に『ソレ』を禁止していたせいで、スカサハはあまり見慣れていなかったが……この二人は目に焼き付いている。

 

赤子や少女を庇って戦う姿と、自分を助けるために光を纏って現れた姿が。

 

 

……ツノの短いギルスですッ!!

 

 

イチロウが叫んだ直後、光が収まり姿が見えた。

 

緑の装甲、黒い肉体、とげとげしいフォルム、真紅の瞳……そして、『緑色の短いツノ』。

 

『不完全形態(グローイングフォーム)』ともいうべき姿になったギルスがそこにいた。

 

ギルスの機能の1つに、本体のパフォーマンスが非常に低下するとツノが短くなる、というモノがある。

 

状態異常の重ね掛けやMAGの枯渇、HP・MPの減少による瀕死状態などがこれに該当する。

 

つまり、あのギルスは本調子には程遠いのだ。当然、万全なペイルライダーと戦って勝てるはずもない。

 

このままいけばあっさりと振り落とされ、そして乗騎を失っている面々は機動力の差でまとめて蹂躙されるだけだろう。

 

 

だが、しかし。

 

 

「どりゃあああっ!!!」「ぐぬっ!このっ、大人しくしなさい!!」

 

『な、貴様ら!我が愛馬に何を……』

 

「ヴォアアアアアァァァァァアアアァアァッ!!!」

 

『ぬぐあっ!?』

 

 

イチロウ/アギトとレムナントが青い馬にとびかかり、組み付き、無理矢理動きを封じ込めた。

 

この場にいるのはギルス一人ではない、今まで彼が戦い続けた中で作り上げた仲間たちがいる。

 

ハルカ/ギルスがペイルライダーを羽交い絞めにして引きずり落としにかかるが、それでもなおペイルライダーは手綱を離さない。

 

千日手に陥りかけた所で……ペイルライダーが握っている手綱を、飛んできた朱槍が断ち切った。

 

 

「いまだ、ハルカ!引きずり落とせッ!!」

 

「応ッ!!」『こ、この阿婆擦れがああぁぁぁぁ!!』

 

 

左手で鎌を保持したままだったのがマズかった。

 

右手だけでつかんでいた手綱を切られ、バランスを崩したペイルライダーはそのまま地面に引きずり降ろされる。

 

そこから先はもみ合いだ、ペイルライダーが一度鎌を消し、咄嗟に握りこんだ拳でギルスを殴りつける。

 

一方のギルスも一切引かず、マウントポジションを取ってペイルライダーを顔面を連打。

 

互いに上下を入れ替えながら転がっていき、ついに山道だった場所から斜面へと転がり落ちていく。

 

 

「主殿!この馬は我々が抑えます!!そちらは任せました!!」

 

『ぐうぉっ!?』

 

「ああ、任せろッ!」

 

 

殴り合いながら斜面を転がっていき、ついに崖状になってる場所から空中へ放り出された。

 

「「うおおおおおおおおぉぉぉっ!?」」とまとめて悲鳴を上げてから、下にあった川に落下する。

 

大きな水しぶきが上がり、しかし直後に二人そろって水上へと飛びだす。

 

ハルカ/ギルスは鮭跳びの妙技で、ペイルライダーは氷結魔法で足場を作り、川の上で戦い始めた。

 

 

『おのれしぶといッ、いつまで終末に抗うかッ!!』

 

「いつまでもだ、バカ野郎ッ!」

 

 

横なぎの鎌の一撃を潜り抜けるが、石突による追撃で顔面を殴り飛ばされる。

 

ギルスフィーラーを取り出し、ヌンチャクのように振るって鎌をからめとるが、そのまま膂力差で振り回された。

 

そう、戦いにしては泥臭すぎる。今のハルカがやっているのは『悪あがき』に近い。

 

 

『貴様……一体何を芯として終末に抗う!人間など所詮、皮一枚向けば獣と同じ!追い込まれれば容易く畜生に堕ちる、それが真の姿よ!』

 

 

ギルスクロウと鎌が打ち合う、MAG不足で威力が出ないギルスクロウはしかし、疫病の鎌を受けとめて見せた。

 

間合いの差から踏み込めないが、それでも必死に食らいつき、互いに岸めがけて走りながら打ち合い続ける。

 

 

『貴様のような英傑が、態々庇って救うような価値など無いわァ!!』

 

「その『皮一枚』が大事なんだろうが!」

 

 

鎌を跳ね上げ、柄に蹴りをいれて距離を取る。

 

 

「皮一枚が人間性なら、それでいいじゃないか!皮一枚を保つために皆必死にやってんだ!

 

 追い詰められた姿が真の姿?それこそ偏見ってもんだろうが!

 

 追い詰められて出てくるのは『追い詰められた姿』でしかねぇんだよ!!」

 

 

燃え上がる闘志が、尽きたはずの戦う力を呼び起こす。

 

短くなっていたツノが勇壮に伸び、同時にツノと生体装甲が赤く染まる。

 

神聖なる炎の力が内から体に満ちていき、首元に巻かれるのは神火で編まれたマフラーだ。

 

岸にたどり着いたのと同時に、ギルス・バーニングフォームへと変身したハルカがペイルライダーと向かい合う。

 

 

「何故戦うかって?その『皮一枚』を守り続けるためだ!

 

 人間を……そんな人間を愛しているから!戦ってるんだ!未来を守るために!

 

 ようやくわかった、僕が戦う理由!僕の夢、目標!僕は……!!」

 

 

ハルカの背中で朝日が上る。彼の放つ光に負けないほどの、この星を照らす暖かな光。

 

暗い闇に染まった空が、少しずつ青く染まっていく。その空目掛けて、ハルカは右の手のひらを突きあげた。

 

 

僕は……僕は青空になるんだ!!

 

 長い夜も、冷たい雨も、いずれは明けて朝日が差す!

 

 そうして広がった青空を見上げて、誰かが穏やかな心を、『皮一枚』を取り戻せるように!

 

 悲しみのない未来にたどり着けるまで!僕は戦うッ!!

 

 

その手に『青空と日の光』を掴むように握りしめると、炎のマフラーが腕を伝って握りこぶしに集まっていく。

 

炎と光が棒状に伸びていき、途中でS字に曲がって形を形成。

 

棒状の部分が柄となり、S字の部分が刃となり、ジャキン!と音を立てて展開された。

 

【シャイニングカリバー】……神の炎と光の力を持つ双刃刀であり、シングルモードと呼ばれるこの形状はバーニングフォームの専用武器だ。

 

一度大きくそれを振るえば、刃に秘められた光焔が巻き上がり、ハルカ/ギルスを明るく照らす。

 

 

『その愚直さ……ここでへし折ってくれる!この一太刀でッ!!』

 

「……来いっ!!」

 

 

ほとんど同時に地面を蹴り、互いにありったけの力をこの一撃に込める。

 

外せばどうなるとか、仕留められなければとか、そんなことは一切考えない。

 

全身全霊を一刀に注ぎ込み、己が持つ最強の一撃でもって相手の命を奪い取る。

 

 

「【バーニングボンバー】ッ!!」

 

『【ペストクロップ】ッ!!』

 

 

大きく薙ぎ払うようなペイルライダーの一撃と、それを迎え撃つように放たれる炎の渦が二閃。

 

瞬きするよりも短い時間で交差を終え、互いが背を向けた状態で河原に佇む。

 

数秒の間をあけてから、ペイルライダーが口を開いた。

 

 

『貴様、青空になる、といったな。それは人間の守護者という意味か?』

 

 

「……それだけじゃないさ。弱い悪魔を虐げる人間がいるなら、悪魔の味方にもなる。

 

 僕は人間の自由と未来の味方だけど……無条件で人間を庇う気にはなれない。

 

 『皮一枚』を無くした人間も、見てきたからね」

 

 

『……もう一つだけ聞いておこう。  いつまで、そんな無謀な戦いを続ける?』

 

 

……答えは一つ、いつまでもだ

 

 

そうか、とペイルライダーが納得したようにつぶやいた瞬間、その体にナナメ一閃の赤い線が走る。

 

ペイルライダーの薙ぎを一撃目でいなし、ついで放たれた二撃目が胴体を切り裂いていたのだ。

 

その赤い線がヒビとなり、ペイルライダーの全身に炎のひび割れが広がっていく。

 

体の内側を天の業火と裁きの光に焼かれてなお、ペイルライダーは声を上げた。

 

 

『ならば、その愚直さ、無くすなよッ!』

 

『我ら終末の四騎士は、所詮この後に来る終末の先触れに過ぎん!』

 

『だが、貴様らは4つの死を打ち払ったのだ、その責任がある!』

 

『来るべき終末に抗い……最後の審判を乗り越えて見せよ!』

 

『『『『我らが全身全霊、破れたりッ!!!』』』』

 

 

ペイルライダーから『4つの声』が聞こえた次の瞬間、その体は内側から炎を吹き出しはじけ飛んだ。

 

罪も罰も浄化する清めの焔、終末の先触れである四騎士の抱える4つの死は、今完全に焼き払われた。

 

朝日に照らされたギルスが、ゆっくりと太陽の方に顔を向ける。

 

乗り越えた試練がまた1つ、今回も死と苦痛に満ちた戦いだったが、しかし。

 

 

「……守りきれた、それだけでも上出来さ、きっと……」

 

 

変身を解除したハルカの顔は、夜が明けるまで続いた激戦の後だというのに晴れやかで。

 

何かが近づいてくる気配を感じ取れば、崖状の斜面をずるずる降りてくるイチロウと、四肢を再生して駆け下りてくるスカサハ。

 

そして、久々に翼を展開して飛んでくるレムナントが見えた。

 

 

そう、ハルカにとっては何よりも、これが最大の報酬だ。

 

駆け寄ってくる仲間たちが、笑顔でこちらを見ている。

 

たったそれだけで、彼の心は青空のように晴れやかになれるのだから。

 

 

*1
35~40度でしか活動できない胞子なので、死亡&体温低下と共に死滅しただけの可能性もある。

*2
オリジナル設定。欠損がアイテムで一発なら式神移植で欠損補ったりとか必要ないしネ。

*3
敵全体ランダムに2〜4回中威力の物理属性攻撃。確率で幻惑を付加。

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