霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。   作:ボンコッツ

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「そんな事、僕が知るか!」

 

【S県某所 沿岸部】

 

 

 

東京にて唯一神の力の一端である『神霊 エンシェントデイ』が降臨した直後、S県の海に『ソレら』は現れた。

 

 

ヨハネの黙示録に記された『黙示録の獣』とは三体存在し、それら三体を差して『邪悪なる三位一体』と称される。

 

最初に現れるのは、サタンの化身たる『赤い竜』。

 

しかし、その竜は聖書に記述されたような『まだ理解できる外見』をたやすく超越していた。

 

S県の沖合に出現したそれは、この悪魔の基準からすれば目と鼻の先にある日本を無視し、そのまま天へと駆けあがる。

 

人間と竜と昆虫をいびつに融合させたような巨体を持ち、ウロコの生えた尾と骨のような尾をもち、六枚の翼で空を舞う。

 

腕、羽、指、乳房が6つずつ生えた、黙示録に記されし獣数字『666』を全身で体現した凶悪な姿。*1

 

 

『神霊 サタン LV135』

 

 

そのレベルと凶悪な姿に恐れを抱くかもしれないが、最も恐ろしいのはソレではない。

 

レベルだけで言えば、ガイア連合基準で200を超えている神主等が全力で当たれば十分倒せる範疇。

 

運命愛され勢と呼ばれるガイア連合でも上澄みも上澄みな者たちであれば、少なくとも『戦闘』が成立する相手だ。

 

……逆に言えば、それらと『戦闘』など成立させず、一方的に『裁き』を下すのにはどうすればいいか。

 

このサタンの高位分霊は、そのリソースの殆どを『移動』と『とある魔法』に注ぎ込んでいる。

 

前者の『移動』につぎ込んだリソースを使い、神霊 サタンは地球の重力すら振り切って大気圏外にたどり着いた。

 

人間の尺度で言えば『中軌道』と呼ばれる場所の入り口、人工衛星や国際宇宙ステーションがある場所よりもさらに外側。

 

そこで、この分霊はありったけのMAGを一発のメギドアーク*2に注ぎ込むためのチャージを始める。

 

『地球』という『敵単体』を丸ごと焼き払うために。

 

それ以外の戦闘能力や人格は最低限に絞った、本当に『人類を粛清する』事に特化した分霊こそ、裁きと挑戦の化身たるサタンが人類に下した裁定だ。

 

挑戦する事すら許さない、ただ罪科のままに焼き尽くされろ、と。*3

 

 

 

 

そして何より、人類の危機はこれで終わりではない。

 

 

 

 

 

 

『私はまた、一匹の獣が海から上って来るのを見た』

 

『それには角が十本、頭が七つあり、それらの角には十の冠があって、頭には神を汚す名がついていた』

 

『わたしの見たこの獣は豹に似ており、その足は熊の足のようで、その口は獅子の口のようであった』

 

『龍(サタン)は自分の力と位と大いなる権威とを、この獣に与えた』

 

『その頭の一つが、死ぬほどの傷を受けたが、その致命的な傷もなおってしまった』

 

『そこで、全地の人々は驚きおそれて、その獣に従った』

 

『また、龍がその権威を獣に与えたので、人々は龍を拝み、さらに、その獣を拝んで言った』

 

『だれが、この獣に匹敵し得ようか。だれが、これと戦うことができようか』

 

 

ヨハネの黙示録に記された『第一の獣』。

 

 

『私は、そこで一人の女が赤い獣に乗っているのを見た』

 

『その獣は神を汚す数々の名で覆われ、また、それに七つの頭と十の角とがあった』

 

 

『この女は紫と赤の衣を纏い、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものと自分の姦淫の汚れとで満ちている金の杯を手に持ち』

 

『その額には、一つの名がしるされていた』

 

『それは奥義であって、「大いなるバビロン、淫婦どもと地の憎むべきものらとの母」というのであった』

 

 

それに跨る大淫婦バビロン、あるいは『マザーハーロット』。

 

 

『わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た』

 

『それには小羊のような角が二つあって、龍のように物を言った』

 

『そして、先の獣の持つすべての権力をその前で働かせた』

 

『また、地と地に住む人々に、致命的な傷がいやされた先の獣を拝ませた』

 

 

そして、それらの後に現れる『第二の獣』。

 

それらが1つの悪魔として融合し、【魔人 ホア・オブ・バビロン LV100】となって上陸しようとしている。

 

最初にアジアにて出現した『魔人 マザーハーロット』は、メシア過激派が支配領域を広げるにつれて当然のように過激派と激突。

 

大天使クラスが総動員され、メシア過激派に多大な被害を与えながらも致命傷を負い、己の半身である第一の獣と共に敗走を余儀なくされた。

 

しかし、その逃亡中に『第二の獣』と遭遇。ここにきて過激派がマザーハーロットと第一の獣に致命傷を負わせていた事が事態を悪化させた。

 

ヨハネの黙示録には『第二の獣は人々を傅かせ、致命傷を負った第一の獣を崇めさせた』とある。

 

つまり、マザーハーロットを追いこんだことで黙示録の再現が可能になってしまい、第二の獣を取り込んで完全体へと再誕。

 

過激派の追っ手を逆に殲滅し、邪悪なる三位一体の最後の一角である『赤い竜』の気配を感じ取ってS県の沿岸部から上陸しようとしている。

 

 

邪悪なる三位一体の完成による黙示録の再現。それこそが、阿部の予知した『災厄』の正体であった。

 

 

『なんとも……無粋な歓待もあったものだ。結界だらけで見るべき所もない。

 

 せめて真紅の絨毯と、余にひれ伏す裸の愚民の群れ程度は用意できないものか』

 

 

阿部の設置した防衛結界だらけの海岸を見て、『彼女』は芳醇なワインよりも甘い香りを混ぜ込んだ声を発する。

 

S県某所の砂浜に降り立ったその『女』は、まさしく人の意識が認識する『女』を凝縮し拡大したような外見をしていた。

 

豊満すぎる肢体、文字通りに人外じみた美貌、鮮血をぶちまけたような衣服に、下品な黄金の装飾。

 

6m級の長身を持ち、獣のような耳と角、禍々しくも艶やかなブロンドの髪を靡かせている。

 

黒札の一部ならば、彼女を見た時に【ソドムズビースト】という名称を口にするはずだ。

 

【第二の獣】と融合すると共に再生された【第一の獣】に騎乗し、眼前の全てを見下す淫靡なる絶対者。

 

【大淫婦バビロン(ホア・オブ・バビロン)】。黙示録の四騎士が警告していた【終末】の片割れである。

 

その細長い指を結界へと向けると、邪魔な障害を取り払おうと、戯れのように魔法を放った。

 

 

『【メギドラオン】』

 

 

甘い声色で紡がれたソレは、しかし甘さのかけらも感じさせない効果を引き起こす。

 

完全なる無色のMAGの暴威が爆発となって吹き荒れて、結界を割り砕きながら直進。

 

しかし、結界の内側に更なる結界、その内側にも……という多重結界構造の防衛ラインは、大淫婦バビロンのメギドラオンを耐えきった。

 

 

『ほう、余の一撃で割れたのは5割にも満たぬか……中々の術師が設置したと見える』

 

(しかし、今しがた空けたばかりの穴が急速に塞がっておるな……余の進軍にこのような手間をかけさせるとは)

 

 

面倒だ、万死に値する。それがホア・オブ・バビロンの抱いた感想の全てだった。

 

高位悪魔らしく感知能力も群を抜いているようで、優れた霊的感覚を広げていけば、結界の『基点』も手に取るようにわかる。

 

海岸線を大きく迂回した先の陸地から、点在するように結界の基点の反応を感知した。

 

 

『一つ、二つ……『七つ』か。丁度いい、完全体の力を試すとしよう』

 

 

ぐぱぁ、とホア・オブ・バビロンが腰かけている【第一の獣】が口を開くと、7つの首から1つずつ、毛玉のようなモノが吐き出される。

 

その毛玉はぐにゅぐにゅとグロテスクに形状を変えると、異形の獣へと姿を変える。

 

黄金の冠、老爺のような人面、第一の獣の権利の象徴である『鉄の杖』を尾で抱えている。

 

ホア・オブ・バビロンは仲間を呼んだ

 

『魔獣 マスターテリオン LV54』 が 七体 現れた

 

そこらの霊能組織など鎧袖一触にできる戦力、すなわち『第二の獣』の分霊が七体。

 

しかし、ホア・オブ・バビロンからすれば『ちょっと高級な兵士』に過ぎない。

 

トラポートを用いてそれぞれの基点目掛けて7匹のマスターテリオンが向かっていく。

 

あとは基点を潰して強度を落としつつ自動再生を止め、それからメギドラオンで結界を破壊すればいい。

 

 

……都合よくホア・オブ・バビロンが生み出せるマスターテリオンの数である『七体』と同じ基点が設置されているという、あからさまな『作為の匂い』には気づけなかった。

 

彼女はあくまで篭絡し蹂躙する者、策謀ではなく己の色香によって堕とし蕩けさせる者。

 

故に、この場所が【ホア・オブ・バビロン対策の防衛ライン】であることに思い至らない。

 

 

結界破壊までの算段をつけて、マスターテリオンを放った直後、ホア・オブ・バビロンの耳に【エンジン音】が届く。

 

響き渡る重低音、大型二輪バイク特有のハードな音程を響かせながら、結界の向こう側からこちらへ走ってくる影。

 

どうやら『外から中に』入るのには制限があるが、逆は抜け道があるらしく……坂を利用して大跳躍したその影は、結界を突き抜け、ホア・オブ・バビロンの前に着地した。

 

生物と機械を混ぜたような大型二輪車、跨っているのは……。

 

 

『……そこな小童、余はその結界が邪魔で邪魔で仕方ない。そのせいで不機嫌だ。

 

 だが、余は決して短気ではない……そなたのような美少年は中々に好みだ。

 

 疾く首を垂れ、その肢体を余に捧げよ。至高の快楽をくれてやるぞ?』

 

 

現れた【美少女と見まごう美少年】の顔を見て、一転してホア・オブ・バビロンは上機嫌になる。

 

元より淫蕩かつ享楽的な性質だ、大局的な観点よりも、その瞬間の快楽を求めるのが常。

 

自身が常に振りまいている、精神異常耐性を貫通し精神異常を発揮させる【大淫婦の権能】*4に染まっているであろう少年を、己の肢体へと手招きする。

 

まずは己の肉体に埋めて感触と匂いを覚えこませ、それから指と口で……などと考えていたところで。

 

 

「断る」

 

『……どうやら融合の不具合で聴覚が狂ったらしい。 なんと?』

 

「断る。男日照りなら一人で慰めてろ阿婆擦れ」

 

『あばっ……!? 

 

 その通りだがもっと言い方があろう!?』

 

 

断られるとは思っていなかった上に、帰って来たのはジャパニーズ・ビッチへの罵倒とくればいい返したくもなるらしい。

 

だが、少し冷静になれば現状の異常にも気づく。目の前の少年は、彼女の放つ【大淫婦の権能】に全く動じていない。

 

人間であれば、否、生物であれば容易く正気を失い己の虜になるはずの色香を受けてもなお、そのまなざしに一切の陰りはない。

 

彼女の嫌う【強い正義の意思】をもってして、ホア・オブ・バビロンを射抜いている。

 

 

『……解せぬ、いったいどのようなカラクリで……』

 

「気合と根性」

 

『ふざけるな貴様ぁ!!』

 

「そんな事、僕が知るか!」*5

 

『開き直るな!!』

 

 

クソビッチかつアバズレかつ盛大にdark属性であること以外は結構マトモな感覚をしていたようで、すっかり大淫婦バビロンは流れに乗せられていた。

 

はっ、と正気を取り戻し、一つ咳ばらいをしてから再度目の前の少年……『鷹村ハルカ』を見下ろす。

 

 

『むしろ、ここで余に媚びを売っておかなくてよいのか?

 

 まもなくこの海岸を覆う結界は砕け散る。そうなればこの地は第二のソドムとゴモラとなろう。

 

 余に傅き足を舐めよ、そうすれば余が飽きた人間程度は好きにさせてやってもよい。

 

 お主の顔と心は美しい、淫靡に堕落すれば至高の芸術となろう……』

 

 

「何度も言わせるな、断る」

 

『……そうか。まあ、愚鈍なる人間を『偽りの信仰』にて堕落させるのも、余の務めか』

 

 

叩きのめしてから染め上げてやろう、と笑みを深めたホア・オブ・バビロンに対し、ハルカはゆっくりと両腕を交差させる。

 

彼の腰に現れた【メタファクター】が、その中央にはめられた【賢者の石】から光を放つ。

 

ホア・オブ・バビロンの表情が歪む。

 

彼女が殺してきたメシアンや大天使よりも、さらに純度の高い【光の力】を感じ取ったのだ。

 

 

「……そもそもさ、結界がもうすぐ砕け散る、ってこと自体、確定じゃないんじゃない?」

 

『何……?』

 

 

僅かな違和感を覚えたホア・オブ・バビロンは、再度己の感覚を遠くまで広げる。

 

そう、既にマスターテリオンを放ってからそれなりの時間が経っている。

 

妨害が無ければ、結界の基点は既に七つとも壊れていなければおかしい。

 

 

……阿部の予知を元に、基点をわざわざ『七つ』設置。

 

ホア・オブ・バビロンが呼び出せるマスターテリオンの数に合わせることで、七匹のマスターテリオンを別々の基点に向かわせるよう誘導した。

 

そして、相手が戦力を分散させたところを、感知結界で居場所を特定。

 

トラポートにより『防衛戦力』を送り込んで割り込み、迎撃する。すなわち……。

 

 

 

「黙示録の獣、相手に不足はありませんね」

 

【5 5 5 ENTER】

 

「変身!」『complete』

 

【第一基点 防衛担当 レムナント(天使ドミニオン) LV65】*6

 

 

「獣狩り等、影の国で飽きるほどやっている。 最速でカタをつけてやろう、666の獣よ」

 

【第二基点 防衛担当 女神 スカサハ LV68】

 

 

「お、俺一人担当かァ……くそ、こうなりゃ腹くくるしかない! 

 

 変 身 ! !

 

 

【第三基点 防衛担当 超人 イチロウ/アギト LV62】

 

 

 

 

「こちら鋒山、これよりマスターテリオンを迎撃します!」

 

「同じく七海、マスターテリオンを迎撃するわ!」

 

 

【第四基点 防衛担当 超人 ツツジINシキオウジ LV60 ペルソナ使い ナナミ LV40】*7

 

 

「まさか援軍にきたそんあいやで前線とは。

 

 久々の出番が鉄火場……まあ、これもめぐり合わせやろなぁ。

 

 まあ、ええ加減に頑張らせてもらいまっしゃろか」

 

【第五基点 防衛担当 鬼灯 焔 LV67】

 

 

「各所の戦力配置完了、こちらもシキオウジ二号機で出ます!」

 

「アタシがバフと回復担当だ、思いっきり暴れてこい、巫女長!」

 

「はい!」

 

 

【第六基点 防衛担当 巫女 アジサイINシキオウジ LV60 女神 イワナガヒメ LV47】

 

 

「まーさか大一番でウチらがここにいるとはなぁ」

 

「言っておくけどお姉ちゃん、私ができるの援護だけだからね!?」

 

「わーっとるわーっとる、シキオウジから出たらあかんよー?」

 

【第七基点 防衛担当 超人 アカネ LV53 超人 アオイINシキオウジ LV60】

 

 

 

 

 

『……マスターテリオンを迎撃できるだけの戦力を、これほどそろえるとは……。

 

 なにものだ、お主は?』

 

 

ようやっと目の前の対象を【敵】と認識したのか、ホア・オブ・バビロンが臨戦態勢を取る。

 

威圧感は尋常のソレではなく、並みの霊能力者ならそのプレッシャーだけで絶命するほど。

 

しかし、彼は、ハルカは……【仮面ライダー】は折れない、ひるまない。

 

逆に一歩前に出て、己を戦士に変える言葉を言い放った。

 

 

 

「僕は……『仮面ライダー』だ! 変身ッ!!

 

ベルトから放たれた光が、あたりの景色を真っ白に染める。

 

眩い光の中で、走り出したハルカの隣に『異形』が出現し、ハルカの体が光の中に解けていく。

 

後に残ったのは、眩い光の中を臨戦態勢で駆け抜けてくる、緑と黒の体に赤い瞳の異形だけ。

 

 

『この気配……ネフィリムだとッ!?』

 

「ヴォアアアアアアアアァアアアァアァアアァァァァッッッ!!」

 

 

今ここに、世界の命運を決める一戦が始まった。

 

 

*1
ざっくりいえばメガテニストにとっては慣れ親しんだ『真・女神転生Ⅱ』の姿。

*2
敵単体に万能属性で特大威力の攻撃を1回行う。サタンの固有スキルであり、真・女神転生Ⅱでは兵器の名前。

*3
なお罪科の9割は唯一神強制降臨なので、悪いのはだいたいメシア過激派である。

*4
毎ターン、敵全体に魅了・幻惑・混乱をランダムで付与。自身に状態異常耐性を貫通する効果を付与。

*5
大先輩である仮面ライダーストロンガーのセリフ。『ストロンガー用に開発された』催眠ガスを食らっても何故か自我を保ったままだったのを『そんな事、俺が知るか!』で押し切った。仮面ライダーはこういった精神状態異常を割とデフォでキャンセルしてくる。W(ライアーメモリ)とかオーズ(ラブコンボ)とか盛大に引っかかった例もあるけど。

*6
デモニカ強化込み

*7
LVはシキオウジに準拠&デモニカ・デルタによるレベル補正アリ

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