【霊山同盟支部 終末案件対策本部 多目的ホール】
帝都にて緊急事態警報が発せられ、S県にある霊山同盟支部もまた、襲い来る『終末』への対処に出撃する一時間前。
霊山同盟支部の広いホール内に集められたのは、【終末】に対応するための主な戦力……その代表者たちであった。
霊山同盟幹部、G3ユニット精鋭部隊、スマートブレイン幹部、S県警オカルト科代表、自衛隊各部隊隊長、S県各地の寺社の祭神、支部傘下霊能組織の長、県外から援軍に来た黒札、多種多様な式神たち、エトセトラエトセトラ……。
流石に全員を集めるわけにはいかなかったので代表者のみだが、それでも結構な人数である。
人も神も転生者も関係なく、ホールの先にある舞台に現れた『少年』を見上げていた。
「今回、S県の……いや、日本の、そして世界の危機を前に集まってくれたことを、心よりうれしく思う」
壇上に上がった少年……『鷹村ハルカ』が、この場に集った戦力、否、『勇士』たちをぐるりと見まわす。
少年ながらも、ここに集まった戦力の中では頭1つ以上抜けている強さを持ち、霊山同盟支部のトップとして組織を率い続けてきた彼の言葉には、既に子供とは思えない重さがあった。
「だが、そんな諸君らに問いたい。 諸君らは、なぜここで戦おうと思った?」
「自らの正義と信念に準じてか?素晴らしいな、人間の輝きの象徴だ」
「故郷の土地を守るためか?これもいい、多くの無辜の民を守る道だ」
「先祖代々受け継いだ誇りのためか?いいじゃないか、家族は大事にしろよ」
「単純に報酬目当てか?悪くない、自らの生活もまた守るべきものだ」
「あるいは力を得るためか?アリだな、ストイックな求道者もまたいいものだ」
「家族や仲間の安全か?それなら君は優しい人だ、その優しさを無くさないでくれ」
「……だが、その上で。君たちを立派な勇士たちだと確信した上で、言わねばならない」
「『世界のために命懸けで戦え、と』」
ぐるり、と集まった面々を見まわし、そこに一切の『躊躇』の色が見られないのを確認してから言葉を続ける。
「……人でなし、と蔑まれる覚悟はしてきたが、ソレを言うものもいないことを感謝する」
「諸君らの後ろには、今も災害と悪魔に怯える数多の人々が犇めいている」
「彼ら/彼女らは未だに何が起こったのかも知らず、不安に心を犯されている」
「諸君らは、そんな人々に未来と希望を届ける『最後の希望』であらねばならない」
「各々に役目もあるだろう、危険なものから、地味なものまで」
「前線に出て、武器を手に取り、凶悪な悪魔と殺し合い続ける者も」
「物資を背負い、この長く続く終末戦線を駆け回り補給する者も」
「食料やオカルトアイテムを製造し、飢え乾かぬよう供給し続ける者も」
「暗中を進み続ける勇士たちに、何が起きているかを伝達する者も」
「この異色なる軍勢を指揮し、有効な策を模索し続ける者も」
「ただ市民の前に立ち、誘導し。一時の安心と安全を与える者も」
「皆が一様に、どれ一つ欠けてもこの戦局を乗り切ることはできないと確信している!」
「だからこそ、皆が粉骨砕身の決意をもって職務に当たってほしい!!」
「若造が何をバカなと思うだろう、20にもなっていない子供が偉そうにと思うだろう」
「だが! ……必要なんだ、今は!」
少しずつ語気が荒くなり、声が大きくなるにつれて、周囲を『覇気』が飲み込んでゆく。
レベルアップによって得られる『人並み外れた存在感と魅力』、そして『生まれ持った扇動の才』。
言ってしまえば、一部の英雄が持つカリスマ性……衆愚どころか、並みの英雄ですら跪かせる器の発露。
といっても、これは別に魅了や洗脳の類ではない。もっとシンプルで熱いモノだ。
『この男についていきたい』
『この男の行く先が見たい』
『この男のようになりたい』
そんな、人々の中に燻っている青い衝動を刺激するだけの、単なる『演説』なのだから。
「諸君らが今、やらねばならないのは!」
「正面に悪魔と言う暗がりを見据え、その背にある暖かな世界を守り続ける事である!」
「誰かが黄昏の中に立ち、宵闇が人々を飲み込まぬよう踏ん張り続けなければならない!」
「……結構なことだと思う!立派な事だと思う!」
「十分な恩賞は用意しよう、必要な機材も、物資も……あるだけだ!出し惜しみはしない!」
「それを差し引いても、我らが挑むのは鉄火場を超えた修羅場だ」
「……だからこそ、最も危険な場所には、私がいの一番に駆け付ける」
「器も、有り様も、私は決して伝承に語られる英雄や歴史を作る偉人には遠く及ばない」
「だというのに、君達に挑ませるのは、そういった英雄や偉人にでも仕えてなければやってられない困難だ」
舞台を降り、集まった人々の前へと歩いていく。
途端に、まるで古の聖者が海を割ったかのように群衆が二つに割れた。
中にはS県にて祭られている神の化身や、立場で言えば彼より上を主張してもおかしくない黒札がいるのに、だ。
それらの面々すらも、一切のよどみなくハルカの歩む道を開けていた。
「理想を言えば、このような試練に挑み、痛みを知るのは私一人でいいとすら思っている」
「しかし残念ながら、私一人では何をどうやってもこの土地を守り切ることはできない」
「だからこそ、せめて君達に見せるのは私の『背』でありたい」
「私の……僕の背を見て、それに続く価値があるかどうかを見てほしい」
割れた人ごみのなかを一歩一歩歩いていく。その後ろから、彼の放つ『熱』と『光』に当てられた者が続いていく。
一度は折れていた巫女長が。
人に信仰されるべき神仏が。
本来は無茶や無謀を避け、安寧に生きる黒札が。
正義の味方を嘲笑するべき悲観論者(ペシミスト)達が。
明らかに死地へと飛び込もうとしている彼に、確かな足取りで続いていくのだ。
行く先にあるのは、世界を滅ぼす終末の渦の中。黙示録の怪物たちのボスラッシュ。
だがしかし、そこで戦う者がいるからこそ、渦の外側の人々は明日を信じることができる。
「非現実的な綺麗事だろうが、青臭い理想論だろうが、ひねくれた事を言いたいヤツには言わせておけばいい」
「……綺麗事に挑み続けるバカがいて、そのバカに続いた立派な人たちがいたことを、『僕』は誇りに思いたい」
「無駄死になんてさせない、僕たちの戦いの先に、終末を超えた未来があると信じてる」
彼の放った熱は、新たな熱を伴って伝番する。
彼の放った光は、見た者の眼を焼きひた走らせる。
人は希望無くしては生きられない、いつまでも暗闇を進み続けられるほど、人は強くない。
一度は中庸や混沌の結末を迎えた人類が、長い時を経て怠惰と安寧の秩序に流れるように、だ。
ならばそんな人々の心の熱を、燻らせることなく燃やし続けられる男がいたとしたら、どうか。
ヒーローとして……『仮面ライダー』として戦う男が、暗闇を進む灯台となって道を照らしていたとしたら、どうか。
……きっと、今よりほんの少し良い明日が待っている。そう信じて進んでいける。
理想に満ちた千年王国なんてモノはないけれど、今日と地続きの『明日』が来ることを信じられる。
そして、中にはより良い明日を創ろうと立ち上がる者だってでてくるだろう。
「シキオウジ全機、起動準備完了!パイロットは中へ!」
「デモニカ各機のリンク開始……完了!いつでもいけます!」
「オートバジン全機出撃、二輪形態を使う者はこちらへ!」
「各所の結界のチェック、オールグリーン!」
「……征くぞ、諸君!!」
「「「「「「応ッ!!!」」」」」」
そして、役者たちは戦場(ぶたい)に上がったのだった。
※中学生です