本編の『救えぬ者/救われぬ者』編&改造人間短編集の『PROJECT G4』 page3 の後ぐらいのお話。
「というわけで!突然ですがどーん!!
終末時とか終末後ににどこの支部で過ごそう?と悩んでいるそこの黒札君!
山梨支部でもいいけど、子供の成長とか考えたらあんまり健全じゃないよね!」*1
『8888888888』
『お、配信始まった』
『いつもながらノーブラかってぐらい揺れるなシノさん』
「うんうん、視聴者も続々来てるねー!あとちゃんとブラはしてるから!」
突如、ガイア連合会員向けの動画サイトで開始された生配信(当然アーカイブ化もされている)。
霊山同盟支部が動画配信を行っている『霊山チャンネル』の新作動画であり、動画に写っているのはいつもの兎山シノだ。
霊山同盟支部技術部のトップであり、株式会社スマートブレインの社長。
かつては山梨支部技術部でも特に高い技術を保有していた黒札の一人である。
技術系の才能を持っている黒札が真面目にレベリングして研究開発もガチでやってる
&
国立大学主席卒業クラスの一般教養
&
覚醒前から高IQというトリプルコンボ持ちのチートキャラだ。
なんならハルカや阿部よりも総合的なポテンシャルは上かもしれない。
ついでにこの動画チャンネルの開設者であり、霊山同盟支部やスマートブレインで販売している商品の紹介動画等をメインに投稿している配信者でもある。
そして、今日もいつもの商品紹介スタジオにて、ハイテンションな彼女が登場したのだが……。
「今回は霊山同盟支部の案件でねー、しがらみ案件というか、企業案件というか。
霊山同盟支部に移籍してくれる人が出るよう、PR配信をすることになりました!
特撮ガチ勢俺達はガンドコ移住希望来てるんだけどねー」
『ガイア連合技術部でライダー系のデモニカ作ってたヤツから何人か移籍してたもんな』
『元ロボ部もいるもんなぁ、工学系にめっちゃ強い支部になってるし』
『あちこちの支部に工場立てさせてッて交渉しまくってるってマジ?』
動画に流れてくるコメントは、ガイア連合に所属している特権階級……『黒札』のモノだ。
普段投稿している動画も、視聴者のアカウントによっては見れるモノ・見れないモノが区分けされている。
当然一般に流通しているガイアポイントカードでは殆どの動画は見る事が出来ず、ブラックカードでは全ての動画や生配信を見る事ができる。
今回の生配信も、ブラックカードを保有している『黒札』のアカウントのみが視聴できる配信であった。
「マジだよー?何より、まだまだ役所も日本政府一応生きてるしネ!
スマートブレインで新しい工場作ります、って申請を出せば手続きも代行できるし。
中身は地方で技術系俺達やってる黒札の工房にすればいいってワケ!
……まあついでにね?G3系のパーツもね?お仕事で作ってもらうけどね?」
『自分で作りたくないんだな』
『そりゃ技術部出身者は他に作りたいモノいっぱいあるしな』
『リース式でG3系の量産を他に任せてるのはそういう……』
「いいんだよー!というか寧ろ、それがシノさんの最終目標なんだからさ!
G3シリーズも含めて、ある程度の技術は外部でも運用できるようになって貰わないと。
独占技術って響きはいいけど、それ永遠にその技術の面倒見るハメになるって事なんだよ!?」
当然、整備にパーツ生産に改良案の作成に……新発明なんぞしてる時間は確実に無くなる。
シノの理想は『1人の天才が支えるのではなく、100人の凡才が支える組織』。
シノが生きてる内に、G3MILDぐらいは黒札抜きに製造・管理・運用できるようになって貰わないと困るのだ。*2
「というわけで本題!霊山同盟支部の魅力紹介のお時間でーす!
今回は特別ゲストとしてー……支部長の【鷹村ハルカ】君に来てもらいましたー!!」
「ど、どうもー……よろしくお願いします」
シノに促され、舞台袖からいそいそとカメラの前に出てくるハルカ。
男の娘寄りな少年と侮るなかれ、ほとんど全身をハイエンドな式神パーツに移植し、現在も修羅勢クラスの特訓を積み。
さらに運命愛され勢クラスに様々な事件に巻き込まれまくる、霊山同盟支部の【仮面ライダー】である。
「ってうわ、スパチャがすんごい事になってる!赤スパ連打されまくってる!?」
「ちょ、皆無理しないでくださいね!?というか僕画面に出ただけでなんもしてないんですけど!?」
『出演料じゃー!』つ10000マッカ
『ファンブック買いました』つ1000MAG*3
『この前は撮影ありがとう』つ5000ガイアポイント*4
『グリスブリザード助かってます』つ10000円*5
「黒札限定配信なせいかコメントにすんっごい見覚えしかない!?
え、えーっと……まず!霊山同盟支部は食料供給に関して安定しています!
ターミナルシステムに加え、東海道霊道を用いた陸路での輸送も可能。
農耕に関しても、イワナガヒメ神に父親であるオオヤマツミ神を紹介して貰いまして。
そこから親族である『ウカノミタマ神』を招いておりますので……」
相変わらずよくキレるツッコミを披露しつつ、無理やりにでも流れを元に戻す。
元々箱根山脈を中心に規模を拡大していき、ショタオジの管理している霊山である富士山の周辺まで管理下に置いている霊山同盟支部。
何気にS県側とはいえ、山梨支部の隣県なだけあって富士山周辺というガイア連合にとってのアキレス腱まで握っている。
え、なんでそんな重要立地なのに黒札が支部長やってないのかって?
S県在住の黒札がそういう責任押し付けられるのを嫌って大半山梨支部に移籍したせいです。*6
「港に関しては、悪魔に任せた管理異界ではなく、ガイア連合特製の結界で覆ってます。
東海道霊道とも接続してますから、近海でとれるレベルの魚なら終末後も水揚げできますね」
「もっと海神を招きたかったんだけどねー、オオヤマツミ神の縁者には水関係の神様少ないから。
一応『伊古奈比咩命』神は関係がある上にそういう属性持ちだからまだマシかな!」
「伊豆諸島の具現化とも言われてるおかげで、伊豆諸島含めたS県付近の島を全部管理してもらってますからね……」
「あとは『引手力命(ひきたぢからのみこと)』もいるけど、すんっごいマイナー神だからね!」
「信仰してるのS県の神社1つだけですし……。
まあ、この2柱の神様に港や島の結界・異界管理を任せてるわけです」
全国各地での日本神の解放は、当然S県においても行われている。
黒札だけでなくハルカも参加し、この2柱の神を封じていた結界はハルカが自分で破壊してきたのだ。
その後はイワナガヒメの関係者ということもあって交渉はスムーズに進み、現在S県の海はこの2柱の神が分担して管理している。
「ヒノエ米やキクリ米の作付けも安定してますから、終末後もお米が食べられます!
川や湖での淡水魚の養殖も進んでますし……高原では牧畜も盛んですからね。
元々いた品種に加えて、『フード』系悪魔も生産ラインに乗り始めました」
「いいよねオンモラキ。タマネギと鶏肉がまとめてとれて」
「カタキラウワも、子豚サイズ限定ですけど上質な豚肉ですよ。
S県のブランド豚のノウハウを生かしてるので、柔らかくて美味しいです」
『S県の豚……ヨーグル豚(トン)か!』
『なにそれ?』『ダジャレかよ』
『ヨーグルト状のエサ食わせてるブランド豚。ちなみにちゃんとヨーグルトも食わせてる』
『腸内環境整ってそうだなその豚……』
新潟支部やサクナヒメの異界のように、これ一本で戦える!という食材は流石に無い。
が、米・肉・野菜・魚のそれぞれを安定して生産できるのが霊山同盟支部の強みだ。
終末後も食生活が大きく変わらないというのは大きなメリットになるだろう。
「治安に関しては、皆さんが移住することになる『親藩シェルター』に関しては問題ないですよ。
山梨支部と比べるとアレですけど、安全性も利便性もかなり高いと思います」
「極論、シェルターの利便性っていうのは規模と流通がどれだけ整ってるかが命だからね!
陸路は東海道霊道があって、海路はロボ部と協力すればオカルト加工した輸送船が出せる。
ターミナルもあるし、空路は……他の支部が色々*7やってるからさー」
「焦って先駆者にならなくても、データ揃ってから二番煎じで後追いすればいいですもんね」
『こういう所が師匠のくそみそニキに似てるよな、意外とドライっていうか』
『ギレンの野望で偵察機を壁にしてミノフスキー粒子とビーム攪乱幕撒いて間接攻撃で沈めていくタイプ』
『声は高町なのはなのに思考回路は八神はやて』
(黒札から見た僕のイメージとは一体……?)
ハルカはアニメとかゲームとかほとんど触らない人生だったので、出て来たたとえ話が殆ど理解できていないのはある意味幸いであった。*8
「えーっと、現地霊能組織は『わからせ』られたので、種付け懇願みたいな問題とも無縁です」
「夏油クンとかキリちゃんシラベちゃんの例の件もあったけど、
KSJ研究所とドっくんの助力もあって、色々絵ヅラがあれだけど解決したしねー。*9
その後は名家(笑)のほとんど呼び出して脅しつけてからは全員腹見せたワンちゃん状態だし」
「ロボ部の皆さんの協力もあって、『量産型オートバジン』も順次配備が進んでます。
現在既に80機が稼働中、霊山同盟支部の管理下にある派出所に配置されています。
G3MILDやガイアトルーパー等の量産重視デモニカも配備良好ですから、
ちょっとしたオカルト案件なら現地勢力だけで解決できるっていうのもありますね」
「ガキだのゴーストだのを対処するために隣町まで行きたくないでしょー?みんな。
ロボ部に第一ロット300機分は頼んであるけど、残りは霊山同盟支部で順次生産予定!
最終的には20000機をS県全土に配備するよー!」
「それに合わせて、量産型オートバジンの購入も霊山同盟支部の窓口で開始しました。
黒札限定の販売で、レベルは10~30の間で調整可能。LVが高いほど高額ですが。
力・耐高めの前衛型で、飛行及び高速走行、AIによる自動戦闘も可能。
盾型武器『バスターホイール』による銃撃支援も可能な万能式神です」
「まあ、LV10でもトライチェイサーよりお高いって問題はあるけどね!
ぶっちゃけトライチェイサーとLV10のアガシオンをセットで買ってもいいし」
「シノさん???」
『購買意欲削ぎにきててワロタwwww』等のコメントが流されながら、ハルカがきっちりツッコミ。
とはいえ、『魔』重視の調整が多いアガシオンとは違い、非常に頑丈で堅牢。
空も飛べて銃攻撃もできて、スキルカードによる改造も対応と、はっきりいってスペックそのものは非常に高い。
ロボ部が生産している『変形部分を中心に一部にヒヒイロカネ合金を使った初期生産タイプ』と違い、
あくまでMAGによる強化を用いたフレームを使った廉価版だが、それでも前衛式神に使うには十分だ。
専用式神を美少女タイプにしてしまった人間にとっては、寧ろボロボロになったほうが味があるロボット型の前衛式神は喉から手が出るほど欲しいハズ。
あと、特撮ガチ勢なら大金吹っ飛ばしてでも買うという確信がシノにはあった。
「と、というわけで!治安・流通・生産のどれをとっても、大きな穴が無いのが霊山同盟支部です!」
「さっきもチラっと出たけど、黒札が住むことになるのは霊道や支部から近い区画だからね。
『親藩』シェルターとか呼ばれてるけど、聞き覚えはあるでしょ?」
『あー、小学校の時に社会の授業でやったような』
『江戸時代の大名の区分だな。徳川家に連なる【親藩】、昔からの家臣である【譜代】、最後に従った【外様】』
「そーそー。まず霊道や支部に一番近い、最も安定したシェルターが【親藩】。
それを囲むように、信用できる神や現地霊能組織が管理してる【譜代】。
……最後に、比較的危険な外周部に、多神連合やメシア穏健派が管理してる【外様】。
こういう状態になる予定だよ、終末後の霊山同盟支部……つまり、S県周辺は」
視聴者のほとんどが「あっ(察し)」という顔になる。
ガイア連合に所属している重要人物やその関係者は【親藩】シェルターで保護。
管理しやすい人間や、覚醒者等の『都合のいい人材』は【譜代】のシェルターで囲い込む。
最後に、獅子身中の虫になりうる『マーベルヒトモドキ』や、メシア穏健派や多神連合等は【外様】シェルターを与えて遠ざける。
マーベルヒトモドキが発生しても、収容先をメシア穏健派や多神連合管理のシェルターに指定してしまえばいい。
穏健派や多神連合の神の食い物にされるかもしれないが、逆に言えば霊山同盟支部が何もしなくても『被害者』になって処理されてくれる。
そして、万が一それらが問題を起こしたり反逆したりポカやらかして結界を破られたとしても、
真っ先に犠牲になるのは近くにいる【外様】シェルター、次に【譜代】シェルターだ。
立地的にも立場的にも、【親藩】シェルターはかなりの安全性を保障されている。
そして、黒札じゃないのに黒札修羅勢クラスの戦力を持ったハルカという存在。
わざわざ黒札が責任を負う必要すらない、言ってしまえば外部向けの土下座要員でもある筆頭戦力。
すなわち、終末後も黒札がわざわざ面倒な仕事をしたり、才能が原因で無駄に高い地位につく必要もない。
これらの存在が、黒札にとって『肩の荷を降ろして生活できる支部』という環境を作り出していた。
「……無論、僕は戦い続けます。可能な限り最善の選択肢を模索して。
そして、今の僕にできる『最善』がこれでした」
「黒札や金札、支部の人員は【親藩】シェルターで保護して。
戦力になる人員は【譜代】シェルターに配置して警戒に当たらせて。
毒にしかならないヤツらは【外様】シェルターに押し込んで食い合い!
いやぁ効率的だね!褒めてあげたいよ! ……それら全部の責任を君が背負ってなければ」
覚悟の上です、とハルカは言い切る。
命の重さが分かっていないわけではない、寧ろ大半の黒札より理解してしまっている。
この選択がどういう結果を産むのか理解してないわけでもない、そもそもこのシェルター構築案を発案したのはハルカだからだ。
彼は、自分の手の広さというモノをよく理解している。
手を伸ばしても届かない命もあれば、救えないほどのクズがこの世にいることも理解している。
前者は彼の初めての友人が手にかけてしまった子供たちで、後者はよりにもよって彼の母親と弟だ。
だからこそ、自分ができる範囲で『最大限の人間を救い出せるシステム』を構築したのである。
「そういうわけで、どこかの支部とかを背負っていない黒札の皆さん。
よろしければ、霊山同盟支部への移籍、考えてみたらいかがでしょうか?
少々騒がしい土地ですが、平穏な終末ライフをお約束いたします」
……なお、ハルカの目がガンギマリ極まった状態でこの宣言をしたのがアダとなったのか。
移籍の可能性があった黒札の半分以上は『あの男の娘はヤベェ』という理由で移籍候補から外しましたとさ♪*10
「なんでじゃー!?」
「いやそりゃそうでしょ」