さて、ご存じの通り月月火水木金金みたいな生活を中学生に上がる前から送っているハルカであるが。
今回は読者諸君も気になっているであろう、彼が仮面ライダーとして・支部長として活躍してきた中で出るであろう疑問の1つ。
『実際彼はどのぐらいの人脈や権限があり、どんな仕事をやっているのか』。
それについて、彼の仕事風景をちょくちょく切り取りながら解説していこうと思う。
【霊山同盟支部 支部長室 早朝~午前中】
いわずと知れた『霊山同盟支部』、S県のほぼ全体を直接的・間接的に管理している大規模支部である。
東海道そのものを霊道化した大型霊道『東海道霊道』を管理し、県内に元地方都市を加工した都市クラスのシェルターを多数確保。
東海道霊道を『本流』とし、そこから『支流』となる霊道を血管のように通すことで、県内に浅く広くインフラを構築。
支流の先には上記のような都市クラスのシェルターやメシア教のシェルター、ガイア連合に協力する悪魔を主とした『管理異界』を接続。
これらのシェルターや管理異界を『親藩・譜代・外様』とランク分けすることでシェルター規模での階級管理社会を終末後も維持。
さらに東海道霊道及び各地のシェルターの結界維持や、一部の選ばれたシェルターのみに設置される『ターミナルシステム』の審査権限。
即ち、終末後のS県各地ではハルカの一存でおおよその決定が纏まってしまう。シェルターの格付けも、ターミナルの有無も、支援物資の量も、インフラ支援の優先度も。*1
極端な事を言うと、ガイア連合と言う組織からの切り捨てすらハルカの一存で決まってしまうのだ。*2
例外は黒札個人の管理するシェルターだが……プラチナカードの特権として『黒札からの命令の拒否権』がある。*3
自分のシェルターを維持するためにハルカに協力を『要請』することはできでも、『命令』することはできない。
結果的に、霊山同盟支部が管理している区画は、社会構造こそ江戸時代みたいなことになってる以外は案外安定した秩序を保っている。
シェルターに階級制があるように、シェルター内の人間も『ガイアポイントカード』の色、そして『所属している部署』によって事実上の階級が決まっている。
支部長であるハルカ、そして霊山同盟支部所属の黒札たちが『一応の』最高責任者。*4
その下に支部の幹部筆頭である巫女長が続き、さらにその下に幹部たち。
さらにその下に各地の親藩・譜代シェルターの管理者や、戦闘班や支援班の隊長といった『派出所のトップ』や『支部の中間管理職』が続く。
そして、それらの下に下部組織である『スマートブレイン』の人間や、戦闘班や支援班の隊員、マナミの部下である支部の事務員等の平職員、となる。
ここまでが江戸幕府で言う『士分』に該当する。すなわち『覚醒者かつ霊山同盟支部の職員となった者』だ。
そして士農工商はなく、士分に相当する職員以上の者と『それ以外』が分けられている。
フリーランスのデビルバスターやメシア穏健派の人間、覚醒非覚醒問わない一般人、多神連合のシェルター所属の信徒等だ。
管理異界は『業務委託』のような扱いなので、異界の主に関しては『仕事を頼んではいるがあくまで交渉前提のビジネスライクな相手』という関係である。
……長々と終末後の霊山同盟支部に対して語ったが、上記のアレコレに該当する人間……。
すなわち、元S県と呼ばれていた地区の人間は最低でも数十万人いることを思い出していただきたい。
黒札や覚醒者まで含んだ数十万人規模の超大規模支部、その事実上のトップというのが鷹村ハルカの持つ『権限』なのだ。
その結果……。
「主殿、メシア穏健派の管理シェルターにて、潜り込んでいたらしき天使ドミニオンが信徒を焚きつけて反乱を……」
「何だよぉお、もおおお またかよぉおぉぉおおおお!」
抱え込んだ人間もシェルターも派閥も多すぎて、終末前も終末後もだいたいこんな光景が絶えないのがハルカである。
今日もまた、早朝から支部長室を飛び出してギルスレイダーに乗って件のシェルターに走っていった。
本人の精神的負担を除けば、時間的にも難易度的にも『朝飯前』の仕事ではあるが……。
【霊山同盟支部 支部長室 昼~夕方】
(ぷるるるるる、ぴっ)*5
「あ、もしもし九重さん*6ですか。はい、例のG3の海外輸出について。*7
技術班からG3フレームのver2.8案が届きまして、その御連絡をば。
アタッチメント等にマイナーチェンジを施し、現地仕様向けの改造がしやすくなると……」*8
(ぷるるるるるる、ぴっ)
「はいもしもし、鷹村です……あ、ミナミさんですか。
え、ウチで扱ってる老化減退の霊水が欲しい?……恐山の若返りの水ではなく?
ふむ、レベルダウン耐性を抽出すれば生体MAGの拡散を抑えられるかもしれない、と。*9
わかりました。こちらでイワナガヒメ様に頼んで追加で用意できないか調べておきます」
(ぷるるるるるる、ぴっ)
「はいもしもし。 あ、カズフサさん。お久しぶりです。
霊山同盟支部の戦闘班向け研修でも『例のビデオ』*10使う件ですけど、ええ、はい。
限定的ですが採用することになりました。穏健派と溝が出来過ぎるのもマズいので。
ここまで人数が増えると、メシア穏健派の分母も相応の規模になりますからね……。
はい、万が一の時にメシア穏健派に『対処』する部隊の研修に使う予定です」
(ぷるるるるるる、ぴっ)
「はいもしもし。 ……(ぴっ)*11」
「……あの、よろしいのですか?」
「いつもの『幼女案件』*12だからいいよ。どうせ明日あたり勝手に来るし*13」
「は、はあ……」
(ぷるるるるるる、ぴっ)
「はいもしもし。 ……(ぴっ)」
「二回目!?」
「連絡先が大江山の鬼神サマだよ……あの鬼、大江山の管理異界担当で復活してから『ケンカしよーぜー!』って毎回誘ってくるんだもん……」
秘書についていたレムナントからのツッコミを受けつつも、両手で支部長の権限が必要な書類を捌く。
これらの会話は、通信装置を使った各地のシェルターや黒札とオンライン会議や電話交渉だ。
話す相手は大抵そのシェルターの黒札か、あるいは黒札から運営を任されている代理人。
ここで話した相手とのコネ1つだけでも、数えきれないほどの人間が欲しがるほどの人脈っぷりだ。
週末に突入する前から根気強く『横』の繋がりを作り、シノを中心とした技術班の技術交流希望を積極的に補佐・推奨した。
さらに特産物やオカルト製品の取引によって『取引先』という繋がりを各地に作り、浅く広く、霊山同盟支部そのものの繋がりを広げていく。
そうすれば、必然その『繋がり』をもつ霊山同盟支部の支部長であるハルカは、『物流』という流れからコネを繋ぐことができるのだ。
……そして、だからこそ。
ある意味この世界において最も面倒な事件に対して、ハルカは最適な手を打つ事ができた。
(ぷるるるるるる、ぴっ)
「はいもしもし……。師匠、例の『BC案件』ですか。
やはりあのラインの合意でまとまったんですね、よかった」
ふぅ、と安堵のため息をつく音がした。ハルカにとって、終末後に起こった事件の中で1、2を争う大事件だったのだから。
被害は外様シェルター2つ、譜代シェルター1つ、管理異界2つに加え、支流霊道4本。
これだけの被害を叩きだした『犯人』への対処が今終わった、という阿部からの連絡であった。
「しかしまさか……僕を危険視した黒札からの破壊活動*14とか、シャレにならないんだけど」
「主殿を狙うのではなく、支流霊道の寸断によるインフラ破壊や、黒札のいないシェルターへの破壊工作……兵糧攻めをされた気分でしたね」
「あるいは近代のテロリズムだ。 ただ……」
首をかしげながら、既に『ガイア連合の幹部や盟主によって』対処された黒札の事を思い出す。
即座に阿部や流石兄弟、それ以外でも多くの黒札に連絡を取って、金もコネも総動員して調査開始。
主犯も黒札とはいえ多勢に無勢、これ以上の被害を出す前に式神と共に拘束された。
その後は霊山同盟支部所属の黒札一同を中心に、今回の件で間接的に被害を被った黒札*15の連名で山梨支部に『意見書』を提出。
鷹村ハルカも一応参戦し、他の黒札と協力して犯人を確保、事件は終息した。
「師匠の占いで犯人が『黒札』ってわかった時点で、手は思いついたからね。
そも、黒札同士だって他の黒札へのスタンスは千差万別、十人十色だ。
黒札同士の殺し合いが発生した例だってある以上、大規模支部への破壊工作は悪手だよ。
どこを破壊したらどこに連鎖して誰にケンカ売るハメになるかわからないんだから」
「……ちなみにその、仮面ライダー的にはいいんですか、今回の対処法は……?」
「僕の中のライダー魂的なモノが『組織と協力するのはセーフ!』って言ってるからアリ。*16
第一、僕を排除したいんなら、僕が今回やったのと同じことをすればいいのに……」
「同じこと、ですか?」
そうだよ、と返答してから、休憩がてらぬるくなった緑茶をぐびりと飲んで。
「僕の排除論を山梨支部に提出して、ガイア連合の幹部の過半数ぐらいから賛成を貰えばいい」
「……それは……難しいのでは?」
「うん。不可能じゃないけど、難しいとは思う。
でもね、どこまでいってもテロや虐殺は『暴走』なんだよ。
本気でガイア連合の事を考えるのなら、正当な手続きで排除するべきなんだ。
ガイア連合そのものにツバを吐く、忘八者になるようなマネをせずに」
「か、かなり辛辣ですね、主殿……」
「死者793名、負傷者3891名。多数のシェルターと支流霊道に重大な損傷。
それだけの被害を『僕が気に入らない』なんて理由で出されれば腹も立つさ」
鷹村ハルカにどんな才能があるのか、と言われた時、巫女長は『政治家か新興宗教の教祖』と答えた。
人の心を惹き付け、組織を最適に運用する。その2点こそが鷹村ハルカの持って生まれた才能。
今回の場合は後者……組織の構造にダメージを与えることなく、捌きづらい案件をしっかりと処理した。
「それに、こういう『個人の暴走でガイア連合を巻き込んだ』事例は以前にあったらしいよ。
それを聞いて、『前例』があるならそれに則った対処をするよう誘導できると思ったんだ」
「『前例』、ですか?」
「うん、『前例』。今頃あの黒札のお兄さんは……」
若干遠い目になりながら、阿部経由で知らされた、今日執行されるらしい『罰』の事を思い出す。
「肉体的にも人格的にも性転換させられてる頃かな……」
「一体どんな『前例』なんですか!?」
ゴトウにガイア連合の事をバラしたせいで、盛大に面倒な事態を引き起こした『自衛隊ニキ』。
彼の前提に則って、事件を引き起こした黒札は心身ともにチン〇とバイバイバタフリーすることになったそうな……。
なお、一般人相手でもやらかし過ぎた場合記憶消去からの脱退もあり得る*17のがガイア連合なので、今回の判決はかなりダダ甘のケースである。
解説・名も無き黒札
魚無金剛氏と同じく、ハルカとは致命的にソリが合わないダークサマナー寄りのアライメント持ち黒札。
メシア穏健派も大嫌い、現地人に契合する気も薄い、ガイア連合への帰属意識が高い、という割とそこそこいそうな価値観の持ち主。
彼の居住地が霊山同盟支部の管理区域(クソ広いけど)と隣接していたせいもあり、ハルカへの警戒と嫌悪が限界をぶっちぎり、テロリズム開始。
ハルカが対処するために出てきたら返り討ちにするための準備もしっかり仕込んであった。
……が、ハルカはゴ・バダー・バに対処するクウガばりに組織力をフル活用。
最初に霊山同盟支部所属の黒札、次に今回の件で間接的に被害を受けた取引先の黒札。
それらを経由して山梨支部や幹部たちに先手を打って根回し。拘束した時点で勝負がつく土壌を整えてから出撃してきた。
(ちなみに名も無き黒札さんが同じ根回しができるんなら本文通りハルカの排除論通せばいいだけなので、ハルカ排除論を通さず(通せず)テロに走った時点で負けが確定した)
殺さずに拘束して幹部に判決を任せる、ということをアピールしたこともあって、結構な人数の黒札がハルカと組んで襲撃。
しっかり山梨支部に引き渡され、○○ニキとよばれていた彼は『彼女』になった。
現在はとんでもない額になった借金を清算するためにどこかで頑張っている模様。詳しい事は特に決めていない。
『現地人とのぐだぐだ小話』の『3回目はもうベテラン 後編』のあとがきから着想を得たキャラクター。
Q 黒札が霊山同盟支部に無差別テロ仕掛けてきたらどうする?
A ハルカを合法的に排除できるんならそんな事する必要ない。
つまり向こうは合法的な排除を諦めたので、こっちが法で殴る。
黒札の暴走への罰則は自衛隊ニキと言う前例がいるので、
それに則って心と体のチン〇をバイバイバタフリー。
Q ハルカ君を排除するにはどうすればいいの?
A 神主への恩返しになるレベルでガイア連合の運営を頑張る。
当然幹部にもなって政治力も影響力も信用も積み上げていく。
その上で上記の通りハルカ排除論を合法的に通す。
こうすれば最低でもガイア連合から追放できる。
あるいは正々堂々果たし状書いて合意の上で決闘して殺す。
Q というか黒札が暴走するのが短絡的すぎない?
A こういう『ご都合悪い主義』をハルカ君の運命力で発生させつつ、
山梨支部の儀式で霊山同盟支部に押し付けるのが『防波堤』の役割です。
by流石兄弟の報告書