「セッ〇ス!【ズキューン】!【禁則事項】!【プロレス】! みんな【ピーッ】し続けろ!」
「やめないか!」
開始早々最低なやり取りが飛んできたが、そんなやり取りが行われているのは巫女長の屋敷。
霊山開放の勢いで秘蔵の地酒やお神酒をありったけ振る舞う宴を開き、本人も瓶に貯めておいたお神酒を一気飲みするわ、
飲んで吐いて飲んで吐いてを数回ほどループした末に撃沈した巫女長が、二日酔いをパトラで治してもらった直後に言い放った発言であった。
ちなみにいろんな意味で最低な発言を遮ったのは、巫女長の娘である『山根 柚子』のしごく真っ当なツッコミ。
ツッコミついでに巫女長の顔面へ右ストレートが飛んだがコラテラルダメージである。
「どうしたんですか、ついに瘴気が頭にまで回って発狂したんですか?」
「ち、違うのよ。決して発狂したわけでも悪ふざけしたわけでもなくて……」
赤くなった鼻をさすりながら巫女長は語る。『約束の報酬はもちろん全額支払うが、どう考えてもそれじゃ足りない』と。
ちょっと古いが屋敷もあるし、霊山がマトモになった今、保有している無駄に広い土地を売ってしまえば金銭は確保できる。
なんなら霊山そのものが欲しいと言われても巫女長はイエスと答えたはずだ。霊山同盟ごとガイア連合傘下に入るセット販売だけど。
が、霊山の大悪魔を討伐した報酬をガイア連合に支払い……残ったモノからさらに個人的にハルカや鬼灯、サスガブラザーズにお礼をするなると。
「年に小瓶1本しか作れない秘蔵の霊薬……」
「ガイア連合の傷薬とやらの方が効果が上ですね」
「破魔の力を込めた霊石を山ほど……」
「ガイア連合のハマストーンとやらの下位互換ですね」
「先祖代々受け継いだ対魔装備!」
「ガイア連合の量産品装備にすら劣りますね」
「若い巫女たちでハーレム!」
「一人は12歳の少年なんですけど?それに我々の都合混じりですよねソレ。主にあのとんでもない霊能力者の血が欲しいっていう」
「ならいっそ私を!!!」
「今話しているのはお礼の方法であって、いかにして産業廃棄物を押し付けるかという謀略ではないのですが?」
「自分の母親を産業廃棄物扱いしないでちょうだいな!?」
外見は美熟女とはいえ、流石に10~20代の少年・青年に50代をぶつけるのはどうよ、と思うだけの常識はあった模様。
いやまあ、元々は血を繋ぐため・より強い血族を作るためということで無駄に人数だけは多い霊山同盟の婚姻は進めていたし『そういうこと』もあった。
が、今回は『お礼』なのである。つまりは向こうが価値があると思えるモノを出さないといけないのである。
仕事の『報酬』ともまた違う、末永くガイア連合と縁を繋ぐための贈り物選びは難航していた。
冒頭のアレもあんまりにもアイディアが浮かばないものだから、もういっそ巫女全員妾ポジのお土産として持って帰って!という思考から巫女長が錯乱したせいである。
※なお巫女全員ということは本人も含む。
「はっきりいってガイア連合なら超人級の『女の霊能力者』も所属しているはず……強い血を、という意味なら我々の価値はありませんよ?」
「そうなのよねぇ、顔も可愛らしくて、宴で話したけど性格も善良。おまけに大悪魔である異界の主を下せる力の持ち主……引く手数多でしょうね」
なお、ガイア連合俺たち(女)の一部、具体的には「美ショタカモーン!」とか言ってる面々からは確かにモテる。
とはいえ生前は童貞/処女のままだった比率もひじょーに高いし式神を作ってしまった後の者も多いので、今の所オネショタ案件は発生していない。
もっというと師匠が『あの』阿部な時点で下手に手ぇ出すとアヘ顔Wピースするハメになりそうと思われているのも大きい。
……ので、遠征のお土産とか言ってスパチャ的に消耗品(傷薬とか各種ストーンとか)を渡してくるショタコンが割と多いが、それはともかく。
『師匠が阿部』というのは、実は霊山同盟にとっても懸念事項であった。
「まさか、あの『破界僧』の一番弟子とは……」
「全国を巡り、各地で異界を潰してきたと噂の高僧。しかし戒律には一切従わない事でも有名……。
それゆえに『破界僧』と呼ばれることになった、とか」
「霊能組織のヨコのつながりで流れてきた程度の噂だけれどね。それでも弟子があの強さなら真実でしょう」
ガイア連合発足前から各地で悪魔退治をやりつつメシアの追跡から逃げ切ってた男だ、そりゃあ噂ぐらいにはなる。
都市伝説とか誇張ありきだろ流石にとかそういう扱いではあるが、弟子であるハルカの力を見た後の二人ならするりと信じられた。
「で、本題に戻るけど……ホントにどうしましょっか。若い巫女集めて全裸土下座博覧会する?」
「それで喜んでくれるのならやりますが間違いなくドン引きする善人だらけなんですがそれは」
「じゃあどうするのよ!もういっそ今から私が全裸で足舐めて何が欲しいか聞いてくる!?」
「やめてください!媚び売るためにそんなド変態プレイする組織のトップがいてたまるものですか!」
※います
「……誠心誠意お礼を言いながら、何が欲しいのかを会話の中から探り出しましょう。幸い麓の村にある駅に電車が来るまではまだいくらか時間もあります」
「それしかありませんね……」
とまあ、こんな会話があったのが日の出前の早朝であり、本家の屋敷にある客間に泊まっていたハルカたちが山の幸たっぷりの朝食に舌鼓を打った後、最後の会合が行われた。
……だったのだが。
「此度は異界調伏に加え、霊山の浄化まで行って頂き誠に……」
深々と礼をする巫女一同に対し、ちょっとすいません、とハルカが発言。
「あ、すいません。話をさえぎって申し訳ないのですが、異界の主倒したのは確かなんですけど浄化とかはまだ終わってなくて……」「えっ」
「例の呪物のせいで霊山の一部が別の色のMAGに染まったままですし、元が汚れを集める地脈の点だったので異界の再出現が近そうで」「えっ?」
「呪物自体は封印処理してから撤去したんですけど、このままいくとベイコクより1~2周り下……LV20未満ぐらいの異界の主は出てきそうで」「えっ、ちょっ」
「地脈を歪めてた呪物は消えましたから、主以外の出現する悪魔自体の強さ寧ろ上がりそうですし……今はLV1~5ぐらいですが、LV10以下なら普通に出れこれそう」「えっ、はっ?」
「それに加えて高ランクの呪物や霊遺物があればそれ以上の悪魔が出てくる可能性がある、っていうのも確か。ダークサマナーによる破壊工作されたら元の木阿弥」「えっ、ちょ、えっ?」
「でもあの霊山に最適な浄化方法の儀式とかは失伝してるらしいですし、その辺りを色々試しつつ結構な危険地帯(現地人基準)になるわけで」「は、えっ、えっ!?」
「……どうしましょっかコレ?」
「……そうね、どうしましょっか」
巫女長は頭を抱えた、文字通り。もうお礼どころの騒ぎではない。
霊山同盟を霊山ごとガイア連合に売り払うにしても、このままでは霊山が不良債権だ。
ガイア連合基準でも『最大LV20ぐらいの主がいてLV10以下の悪魔がでてくる異界ができそうな霊山』
……なんていう危険地帯を管理したいはずもない。
いや、管理自体は可能なのだろう。それに割くリソースを払う理由が無いだけで。
(マズいマズいマズいマズいマズいッ!考えろ紫陽花、脳細胞の全部を使って思考力を絞り出せ!!)
周囲の巫女達が青を通し越して真っ白な顔色になりながらこちらをすがるように見つめてくる。
真偽のほどは彼らの言葉だけ、しかしこれが真実なら自分たちは今度こそあの山に全員食い殺される。
そして『そんな無意味な嘘』を使う理由もない、自分たちから何かを搾り取りたいのなら今回の恩を使って搾ればいいだけだ。
つまり『ただ分かった事実を報告に来ただけ』……これが、現状なのだ。
どんな手を使ってでもいい、ガイア連合にこの地を管理してもらうメリットを提示できなければ霊山同盟は滅ぶ。
(かっ……ひゅ……!!)
しかし、思いつかない。元々彼らへの『お礼』ですら難儀している状態だったのだ。
最大の利益だったはずの霊山が不良債権……下手すれば『産業廃棄物』だと判明した時点で、走馬灯レベルにまで加速した思考回路でも名案等浮かぶはずもない。
さっき柚子が言ったジョークが現実になってしまった。それも最悪の形で。
脳みそは高熱を出したように熱いのに、首から下は滝行の最中のように冷たい。
「……だからこそ、ガイア連合はいくつかの提案をしたい」
「……えっ?」
「師匠にも連絡を取って許可は取りました。ガイア連合側は『今からボクのする提案』を飲んでくれてる。
……巫女長さん、いや紫陽花さん。あの霊山の浄化及び管理をガイア連合に任せてほしい」
「で、ですが!あんな不良債権を押し付けるなんて!それに我々はまだ貴方がたにお礼の1つすら!」
言葉だけの礼などいくらでもいえる。しかし、あの霊山の管理を任せるのにふさわしいほどの返礼の品など思い浮かぶはずもない。だが……。
「いいんです。元より、僕らはこの場所にいる『誇り高い霊能者』達を、そしてそれらが護る人々を救いに来たのですから」
「ッ……!?しかし、それでは貴方がたには何の得もありません!こんな自己犠牲のような……」
「自己犠牲に満ちているのはそちらもでしょう?ああ、でもそうですね……『どこかに管理を手伝ってくれる霊能者の集団』がいれば楽になるかも?」
「! も、もとより霊山同盟は霊山と共にガイア連合に下るつもりでした。しかし霊山という利益が無くなってしまっては、今更我らの力など……」
「必要なのです」
背筋の伸び切った見事な正座のまま、まっすぐな視線が巫女長を貫く。
MAGがどうのとかLVがどうのとかではない、信念によって立つ人間の意思が宿る眼だ。
「皆さんが誠実なのは分かります、なんなら今のやり取りだってそう。
ここぞとばかりに霊山と自分達を売り込んでしまえばいいのに……
『ガイア連合に何の益も無い』『なんの返礼もできない』事を悔やんでいる。
そういう事がいえる誠実さがあるからこそ我々は手を貸したいし、助けたいのです。
……少なくとも自分を助けてくれた人々は、そういう相手を気にいる者ばかりですから」
鷹村ハルカの強い心は、自分を死の淵から救った『正義』によって信念を得た。
無論、打算もある。ガイア連合から派遣する人間を最低限にしないと、この山に何人もの黒札と式神を常駐させる必要が出てきてしまう。
オマケにあの霊山もレベルを考えると『後発の黒札』の修行用異界としてはひっじょーに都合がいい。
使役している悪魔を異界の主にして異界を調節し、奥へ進むほど強い悪魔が出る異界の性質を利用すれば、修行用異界として有益に過ぎる。
ちょっとアクセスは悪いが、公共交通機関を使って山梨支部から数時間程度なら許容範囲だ。
なにより地元霊能組織として考えると霊山同盟はかなりの上澄みだ、人格的にも、戦力的にも。
そういう相手に『可能な限り恩を売りつつ取り込む』ための手順は踏んだ、踏んだが。
(…………だいたい建前だけどな!!この人たち助けるための!!)
ショタオジ達に話しても『オッケーそういう建前(りゆう)ね、許可!』してくれるぐらいには外も内も詰めてから来たのである。
やっぱり12歳に任せることじゃないが、まあ、今回は阿部とスマホで連絡とりながらなのでまだマシだろう。
「……わかりました、すべての条件を飲みましょう。 これより我ら霊山同盟一同、その全身全霊をもって御山を守護・管理し、同時にガイア連合に下りまする」
「! はい、ありがとうございます。これからも末永く」
「ええ、末永く……ところで、ハルカ殿」
「殿……殿かぁ、僕が殿……まあいいや、なんでしょうか?」
肩の重荷が取れた、という清々しい笑顔で、紫陽花は言葉を紡ぐ。
「一二三家の三女と『救ってくれたらなんでもする』という契約をしたようですし、
何年後かに孕ませて頂いてもまったくかまいませんよ?ついでにウチの孫も同年代ですしいかが?」
「台無しだよバカヤロー!!」
「あ、もしかして成熟した女性の方が好みでしょうか?でしたらあちらに私の娘が。
まだ30代なので子は産めますし未亡人ですし……なんなら私でもまったくもって問題なく」
「師匠ォー!誰か師匠呼んできて!あの人なら親子丼超えて祖母母娘の三色丼やってくれるから!!」
色ボケ脳とお見合いおばさんを併発した巫女長が自分の孫どころか一族全員勧めてくるわ
多少は常識あるけどよく考えたらこれ通れば次代がすごいことにと考えてる娘は止めるか悩むわ
後に弥生と巫女長の孫娘が恋のライバル的なナニカになるわ……。
最後の最後まで騒がしい、鷹村ハルカによる異界調伏物語。
これにて、堂々閉幕!
「あ、終わりやないよ?もうちょっとだけつづくんや」
「誰と話してるんだ鬼灯さん」「つーか今回俺たち出番これだけ?」
ハルカの後ろでずーっと正座してた三人なのでしたとさ。ちゃんちゃん。
『霊山同盟』編 END
NEXT STAGE
『エンジェルチルドレン』編
to be continued……