異世界レトルト料理人~料理の鬼と呼ばれた男~   作:流石ユユシタ

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第2話 姫騎士VSカップラーメン(味噌)

 日本とは全く違う異世界。ここには多種多様な種族が存在している。長耳族(エルフ)小背族(ドワーフ)などなど。モンスターも居たりする。

 

 しかし、バーバイド王国、ここには主に人族(ヒューマン)という種族が多くいる。人族は一般的、普遍的で普通な特徴な種族。日本人と見た目はほぼ違いがない。

 

 だが、長耳族(エルフ)という種族は魔法が得意で耳が少し尖っていると言う特徴がある。そして、その長耳族(エルフ)の王族が統治をするルード王国と言う場所がある。

 

 ルード王国とバーバイド王国。この二つの国が本日、会談を予定していた。

 

 

「姫様! お待ちください!」

「遅いわね! 私の付き人ならちゃんとしなさい!!」

 

 

 ルード王国からは国王、そして、国王の娘であるエルフの姫が来日する。エルフの姫はお転婆少女で意地っ張りでプライドがものすごく高い。だが、とても美人であるのでそれも絵になってしまう。

 

 そんな彼女の名は、エリザベス・ルード。彼女は今、バーバイド王国の12区を護衛女騎士のリエーヌと一緒に歩いていた。

 

姫様(エリザベス)、お待ちください。ここはバーバイド王国12区、12区と言うのは下々がおる場所、姫様のような好奇な方には似つかわしくありません!! 直ぐに父であるルートル様がおられる1区にお戻りを!!」

「いいのよ! 偶にはね!」

「姫様のお転婆は偶にではすみません!!」

 

 女騎士リエーヌがエリザベスを無理に連れて行こうとするが彼女はそれを避ける。得意げな顔で避けながら進んでいく。

 

「ふーん12区ね……聞いてた通り、パッとしない場所と言うか、それ以下というか……」

「そうでしょうとも、姫様。そっこくお戻りを」

「えー、もうちょっといいじゃない!」

「ダメです! 見てください。おんぼろな服、荒れているような空き地、不衛生な食事処、ダメです。お戻りください」

「えー、まぁ、否定はしないけどね……。そろそろ、戻ろうかしら。確かにそんなにいい場所でもなさそうだし」

「ようやくですか……。でも、それなら良かったです」

 

 

 安堵の息を吐きながらリエーヌが踵を返すように1区に向かって歩いて行く。そんな彼女に欠伸をしながらエリザベスはついて行った。

 

 

「あ、エリーヌ」

「どうかいたしましたか?」

「お腹空いたわ。なんか買っていくわよ」

「ダメです。買うなら1区で購入をしてください」

「えー、偶にはこういう所で何か食べたいじゃない」

「お母様から口を酸っぱくされるほどに品位については言われておられるでしょうに。絶対にダメです」

「……えー……でも、お腹空いたからあの店入っちゃお!」

 

 

 そう言って、エリザベスは再び駆けだした。あ! と彼女の行動に気付いたエリーヌはもう遅い。彼女は走って、とある店に入った。

 

 

――神の拠り所(レトルト)と看板に書かれていることも知らずに……

 

 

 そして、ここが彼女が見た事のない、彼女が感じた事のない異界の地であるとはこの時は一切分からなかった。

 

 

◆◆

 

 

 エリザベスはとある店に入ると目を細めた。理由は思っていたよりも店内が綺麗であったからである。12区と言う場所が貧乏が多く、最下層の人間だと聞かされていた。しかし、思っていたより、かなり綺麗で清潔な印象だった。

 

「綺麗ね、意外と」

「姫様……」

「でも、客が一人も居ない」

「姫様、どうやらこの店は今は開いていないようです。清掃中と表の看板に書いてありました。ここに居ても無駄なので帰りましょう」

「えー、やだぁ! 私は今日ここで食べるって決めたの! 店主! でてきなさい! 王女である私がご飯を食べてあげると言っているの!」

 

 彼女が店の奥に響くように声を上げた。生意気そうな彼女の声に店の奥から、誰かが反応して、彼女達の方へ向かう。

 

 一歩一歩と彼女達の元へ誰かが寄ってきた。そして、店の主人と思われる男性を目にした時、女騎士リエーヌが剣を抜いた。

 

 

「姫様御下がりください! この男、明らかに只ものではありません」

 

 

 強靭な腕、人を殺していそうな眼力。その男から醸し出される雰囲気は覇道を行った猛者、あるいは極致を極めた達人のどちらかであった。故に女騎士テリーヌは警戒をする。

 

「……何か用か。俺の店は今……掃除中だ」

「掃除だと? 姫様御下がりください。この男、奥で人殺しを……」

「いや、してないでしょ、絶対。アンタが店主ね。まぁまぁの内装だけど綺麗だから気に入ったわ。この私にご飯を作らせてあげる権利をあげる。喜んで作りなさい」

「……今は掃除中だ。食べたければ夜に来い」

「いいから! 私が作ってと言ったら作るの! いいから食べさせなさい!」

「……いや、今は」

「お金から相場の倍出してあげるわよ」

「いや」

「はい、じゃあここの席に座るわね。さてと、何がお勧めなの?」

「……ラーメン」

「ら、らーめん? 何それ? エリーヌは知ってるの?」

「い、いえ、それよりも店主! お前、何者だ! 姫様、ワタシの後ろにお下がりを――」

「――だから、大丈夫だって。ほら、アンタも座りなさい」

「え、あ、はい……」

 

 

 疑っていたエリーヌも渋々と言った感じで席に着いた。黒髪の店主に警戒心を出しながらも、渋々と言った感じだ。

 

「アンタ、ラーメンを2つ持ってきなさい! 王族からの命令よ。エルフの姫なのよ。断ったら不敬だからね!」

「え……、う、うむわかった」

 

 

 店主も渋々店の奥に消えて行った。店主が消えるとエルフの姫エリザベスは首をひねった。ラーメンと言う料理は聞いたことが無かったからだ。

 

「ラーメンね」

「聞いたことがないですが……恐らくは下々の者達が食べている民食の総称なのではないかと」

「ふーん」

「今からでも遅くありません。この店を出ましょう」

「却下よ。下々の料理、良いじゃない。食べてあげるわ」

 

 

 そして、待つこと……たった3分、彼女達の嗅覚に旨味の刺激が走った。深みのある濃厚な香りがさざ波のように押し寄せた。

 

「美味しそうな匂いね! びっくりだわ!」

「そ、そんなに驚くことは無いかと……下々の料理ですし」

「ええー、美味しそうな匂いじゃない!!」

 

 

 エリザベスはテンションが上がっている様子であったが反対にエリーヌは疑いの眼でと警戒心の眼であった。しかし、心なしかエリーヌからは涎をごくりと飲む音が聞こえた。

 

「ラーメン……味噌、2つ」

「うわぁ、凄く美味しそうね! しかも、3分くらいしか経ってないじゃない! なによ! 清掃中とか言ってたけど、ちゃんと客を入れる準備できてたのね! 感心だわ! 店主!」

「……いや、これはカップラーメンだから――」

「――姫様! このような下賤な料理、どのような毒が入っているのか分かりません! 先に私が毒見を致します!!」

「えー、私は約食べたいんだけど……まぁ、いいわ。エリーヌさっさと食べなさい」

「これ、カップラーメ――」

「――こんな料理きっと匂いだけであんまり美味しくないに決まってます!!」

「でも見た目もいいわよ! これ!」

 

 

 

 

 カップラーメンと説明しようとする店主の声を、丁度タイミングよくエリーヌが遮る。彼女は姫の護衛として毒見をすると言ってカップラーメンが入っていた器を見る。

 

 器には薬味のネギ、コーンの粒達、先が見えないほどの濃い汁、1枚だけのチャーシュー。彩も豊かに黄金のような麺が汁から見え隠れしているのも興味をそそる。

 

 どんな味なのだろうか。と思う彼女達だが濃い味噌の香りが美味しい雰囲気が伝わる。

 

「美味しそう、パスタとは全然違いそうね」

「……王宮のパスタの方がおいしいと思いますが」

「もう、すぐそう言うことを言うー。ほら、さっさと毒見して、私は食べたいの」

 

 

 王女にそう言われて、エリーヌは容器を手に取った。

 

 

「変わった容器だな……ブヨブヨして、ガラス製ではないのか……?」

 

 

 カップラーメンが売られている容器は発泡スチロールが使われている。

 

 

「ねぇねぇ、エリーヌ。こんなに湯気が出ているのに容器は全然熱くないわ! 不思議ね! こんなの王宮にもないわ! 凄い技術よ!」

 

 

 断熱性が高いのが発泡スチロールの特徴である。火傷をしないようにと言う企業動力の結晶なのだ。

 

「むむ、謎の文字も器の周りに書かれているな……何が書いているのか読めないが変な容器だなこれは……しかし、に、匂いはまぁまぁと言っておこう……」

「匂いから分かるわ! 絶対美味しいのよ! ラーメン!」

「匂いだけの可能性もあります。では、先ずはスープから……」

 

 容器を両手で持って、先ずはラーメンの汁を一口。濃厚な濃い味が口に広がる。

 

「ッ!!」

「あ、美味しいって顔した」

「していません。くしゃみをしそうになっただけです」

「いや、笑顔だったじゃん」

「……まぁ、スープはそれなりと言うか」

「じゃ、毒は問題ないのね。じゃ、たべーよ」

 

 

 エリザベスも容器を持ってゆっくりミソスープを口に含んだ。僅かにスープの上に張った油がくどくなく、食欲を掻き立てる。味噌の独特な香りが口いっぱいに埋め尽くされる。

 

 大豆の旨味が脂っこさを隠して、旨味だけを舌が拾うのだ。

 

「初めての味だわ!! 店主! 褒めて上げる! 最高よ!」

「姫様! そこまで褒めなくても――」

「でも、すっっっっごく美味しいわ!!! びっくりよ!! こんな所にこんな凄い料理人が居るなんて! 王宮も眼じゃないわ!!」

 

 

 店主に向かってそう言うと、店の奥から同じようにラーメンを持ってきた店主が席に着いた。

 

「あら、アンタも昼食なの?」

「丁度掃除が終わったからな」

「私専属の料理人にしてあげても」

「断る」

「えー!」

「姫様! このような――」

 

 

――エリーヌがエリザベスを止めようとした時、

 

「ズるズルズルズル―ッッ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 店主がラーメンの麺を箸を使って、音を立てて食べ始めた。

 

「な、なんという下品な食べ方だ! 下賤な料理だな! さては!!!」

「エリーヌ、あの食べ方で麺の毒見をしなさい」

「えッ!?」

「いいから、ほら、あの食べ方じゃないといけない理由があるのかもしれないわ。王女命令よ」

 

 

 

 

「――て、店主、このような食べ方を強いるとは恥を知れ!!」

 

 

 

 

 

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