本小説は考察メインな為予めご注意下さい。
本誌のネタバレもあるのでそこもご注意下さい。
ーーーCASE1 念能力ーーー
俺が創作上の特殊能力のシステムで1番好きなのがハンターハンターの念能力だ。作者がゲーム好きなのも相まってこのシステムにはゲーム的な要素がたくさんある。
例えば系統だ。念能力とは生き物が持つ生命エネルギーをオーラとして扱う技術なのだが、そのオーラの使い方には種類がありその系統は人それぞれ得意分野が違う。
具体的に説明すると系統は6つ存在し、オーラで肉体を強化する強化系、オーラに様々な特性を付与する変化系、オーラで物質を実体化させる具現化系、オーラで物や生物を操作する操作系、オーラを肉体から切り離す放出系、5つのどれにも当てはまらない特質系がある。面白いのはこの6つの系統には順番があり、隣り合った能力ほど相性が良く、離れるほど扱うのが苦手になるのだ。
だから基本的には各種個人の得意分野を伸ばしつつ鍛えるのが1番強くなる……のだが、ハンターハンターの世界はそんな単純な話ではない。この強さとは絶対的なものではあらず、敢えて苦手な他の系統を組み合わせることで敵を倒す為の能力、目的を達成する為の能力としての完成度を上げるという選択肢もあるのだ。
そして個人的に念能力が面白いと思うポイントはもう一つある。それは制約と誓約だ。これは格闘ゲーム等における必殺技という概念を上手く漫画の設定として落とし込んだものだ。
例えば格闘ゲームのキャラは様々な技を持つが、強力なものほど当たりにくかったり外した時の代償が重かったりする。その理由としては強力な技に代償がなければそれだけを撃てばいいわけで、それ以外の技の存在価値がなくなるから、というものが考えられる(そのようなゲームが無いわけではないが……)
念の話に戻すと、この制約と誓約はルールを決めてそれを遵守すると誓うことで能力の効果を上げるというものだ。このルールというのは多種多様で、能力の発動条件を制約として決める場合が多い。この制約が厳しくなればなるほど能力の効果も上がり、ゲームでいうデメリットのある強力な技へと変貌する。オーラは感情によって増減する為、制約を定めて自身に覚悟を強いることで出力を上げるという寸法だ。
だから読者が念能力について妄想する時、まず6つの系統から自分に合ったものを選び、更に制約と誓約を考え、効果を考える、という三重の楽しみがあるのだ。
そしてこの系統を判別するのには方法があり、名を水見式と呼ばれる、コップに水を入れてその上に葉っぱを乗せてそこで発動したオーラによってコップに引き起こされる現象で系統を判別するというものだ。
だから俺がハンターハンターの世界に転生したと気づいたときに真っ先に試したのがその水見式だった。水見式は念を習得してからじゃないと何も起きない為空振りに終わったのだが、こうして説明すると、自分がなんでハンターハンターの世界に転生したと気づいたかが気になることだろう。
ハンターハンターの世界はパッと見は現実世界と同じ世界観(時代は少し前だが技術文化は現代相応)なので普通に生活したままでは気づかない可能性も高いのだが、自分は生まれた場所が場所だった為すぐ気づくことができた。
「流星街じゃねぇか……転生させるならもっと別の場所にしてくれよ……」
ーーーCASE2 流星街ーーー
流星街についての説明をざっっっくりと説明すると、めちゃくちゃデカいスラム街である、説明おわり。
「しかもサラサ死んだ後っていうね。詰みすぎててこんな所さっさと出たいんだが」
「ステラ、何してるの?」
黒髪の幼女が隣の椅子に座る。一応自分も幼女なんだが隣の本物の幼女と比べると自分のようなエセ幼女とは雰囲気が全然違う。
「修行だよ修行。ほら、マチさんが変な能力使ってたじゃん。それを使えるようになりたいの」
「へぇ〜、じゃあ私も修行する」
「えっ、シズクが?(いやでも最終的には目覚めるわけだし今からやっても別におかしくはないか)」
それに目の前の幼女はちょっと……というかかなりの天然が入っている。原作でも数日前の出来事を忘れるほどうっかりしてるからな。
隣に座った幼女の名前はシズクといい、原作では幻影旅団という名の盗賊団の一味になる女だ。幻影旅団は流星街出身のクロロをリーダーにした組織で、その目的は色々あるがざっくり説明すると超極悪の犯罪者集団だ。というか流星街という環境自体が犯罪者を育てる温床と言っても良い。だからさっさと抜け出したいんだけどなぁ……
その後一緒に修行し始めたのだが予想通りシズクは3日坊主で終わり、俺の修行は1年後にようやく実を結ぶのであった。
流星街は長老と呼ばれる長達による議会によって統治されているが、その方針に大きな変化をもたらしたのが幻影旅団と、それを率いる団長クロロ=ルシルフルだった。彼らは犯罪の温床となっていた流星街の現状を変える為動き始め、まずはマフィアに人材を派遣することでマフィアに後ろ盾になって貰うという方針を立てた。
それはクロロに取っては単なる布石でしかなかったが、長老達にとっては流星街を守る為の新たな一手であり、クロロのことを幻影旅団を結成する前から目を掛けていた長老達は、彼のような才能ある子供から意見を聞くのが流星街をより良くする為の手段だと認識した。そして同じように目を掛けている少女を招こうとする意見が出る流れになるのもそう遅くなかった。
ーーーCASE3 水見式ーーーー
流星街がそんなことになってるのもつゆ知らず、俺は相変わらず念の世界にどっぷりとハマっていた。1年の修行期間を経て俺は纏と練を習得することができた。それが分かると俺は早速水見式の準備をする。
いや〜、俺って何の系統なんだろうな〜???性格でいうなら強化系か放出系かな?けどアレってヒソカの独断と偏見であって血液型診断みたいなものだからなぁ……
そうやってウキウキしながら準備していると、シズクが興味深そうに近寄ってくる。
「何してるの?」
「おぉ、シズクも見ていくか?念はこんなこともできるんだぞっと……練!」
俺がコップにオーラを流すと……なんとコップには変化が……
「あり?」
「なんもないけど」
はあ!?いや嘘だ!特質系でない限り必ずコップには系統に沿った変化が現れるはずだし、その特質系に関しても変化の仕方が定まっていないというだけで必ず変化は現れるはずだ。
特質系の水見式に関しては5系統以外の変化が発現するというざっくりとした説明だが、これに関しては特質系の念能力者について考えることでなんとなく類推することができる。
特質系の念能力者の能力は基本的に自分で能力を作ろうとして作るのではなく、気づいたらできていた(ツェリードニヒ)、或いは衝動的に能力が発現した(ピトー)パターンが多い。これは特質系の能力の本質が他の系統とは関係なくその人個人によるものであるからだろう。
そして個人による能力の本質が水見式に関係していると考えれば説明がつく。例えばクラピカの水見式は葉っぱが回り出し水の色が変化するが、これはクラピカの絶対時間が操作系や放出系など他の系統の適正を目覚めさせるものだからだろう。作中で確認されなかっただけで恐らく水の増加や水の味の変化もあったと思われる。ツェリードニヒの水見式ではコップの中身が腐るという現象が起きたが、これは彼の念能力が未来予知という時間に関係するものの可能性がある。コップの中の時間が経過したことで結果的にコップが腐ったということだ。
そんなことを考えて現実逃避をしつつも何度か練を繰り返すと、コップの中が僅かに濁ってきた。
「あっ、コップの中身が濁ってる……」
「ふぅ、疲れた……なるほど具現化系か。まだオーラが少なかったから目に見えにくい微細なゴミしか具現化できなかったわけだ」
そう考えると今回のケースは俺の練が未熟だったってだけだな。1年間修行したとはいえ、俺には師匠なんかいないし(辻褄合わせとしてマチから修行の方法だけは聞いてる)それは間違いなく修行効率の低下に繋がってるだろう。
普通の人間が1年間修行すると今の俺と大体同じレベルまで念を使えるようになるわけだが、それは基本の話であり念の習得期間には様々な要素が絡む。
まず1番大きいのは才能だ。主人公であるゴンとその仲間のキルアは外法と呼ばれる念の攻撃(便宜上攻撃という名前であってダメージはない)を受けることによって念を習得したが、本来のように人が少しずつ出している生命エネルギーを感知する方法でも1週間あれば習得できるという見立てであった。それ以前からゴン達の師匠であるウイングから修行を受けていたズシという少年は半年の期間を掛けてその段階にいたわけで、それらをウイングはズシが10万人に1人の才能でゴン達は1000万人に1人の才能を持っていたと表現していた。
……まあ世の中にはそれすらも上回る人間はいる。継承戦においてカキン王国第四王子であるツェリードニヒはオーラを感知して纏をする段階を一瞬でスキップした。比喩ではなく本当に一瞬なので、彼の才能はゴン達を遥かに超えるだろう。
ただ、才能だけが修行期間に関わるというわけではない。ウイングは才能ある人間であるズシに半年間掛けて纏を習得させたわけだが、ビスケは2ヶ月間あれば筋のある人間の身体能力を倍以上にできると言い切っている。ビスケはある程度才能がある人間なら2ヶ月以内で纏を習得させることができるということであり、教える人によっても念の習得期間に差が出ることは明白である。
それを踏まえると俺が師匠の手を借りず1年間で練まで習得できたのはとても才能があるのではないかとまで思える。まあ皆が遊んでる間もずっと修行していたから掛けた時間でいうと2、3年くらいの密度になるんだが……
ーーーCASE4 具現化系ーーー
「へぇ……他人の水見式は初めて見た。それ何系?」
「あ、お久しぶりですマチさん。これは具現化系です。コップに不純物が混ざってますので」
シズクは暫くの間コップの変化を不思議がり、自分がやっても何も起こらないのを知るとつまらなさそうに別のところに遊びに行ったが、そこに一応の師匠ということになっているマチが来た。俺はマチにコップの地味な変化を主張しながら言う。
「それにしても具現化かぁ。よかったぁ」
「そういえばアンタ前に1番なりたいのは具現化だって言ってたわね」
「そうですよ!念で物を実体化させるなんて素晴らしいと思いませんか?まさしく生命の神秘!って感じで」
「うーん、相変わらずアンタの価値観はよく分かんないわ」
具現化系の魅力についてマチに力説するが袖にされる。まあ具現化の真の魅力は他人に説明できるものじゃないから分かってもらえなくても仕方ないんだが。
ハンターハンターにおける戦闘はこの念能力を使った殴り合いが基本になる。なぜなら遠距離の戦闘になると防御側に対して攻撃側が念を使う利点が薄くなるからだ。
例えば放出系は念を体から切り離すのが得意であり、遠距離の戦いも得意なのだがそれはあくまでも他の系統が苦手である為相対的に得意になる、という話で遠くに飛ばせば飛ばすほど弱くなっていくのは放出系も同じだ。
そういうわけで、相手が同レベルの念の防御ができるという前提ならパワーを落として遠距離攻撃をするよりもそのパワーで直接攻撃するのが1番効果的なのだ。勿論例外も多々あるが。
そして念で殴り合いをする上で重要なのは強化系の素養がどれだけあるかだ。例えば強化系と具現化系、お互いに同程度の肉体強度と同程度のオーラ量を持つ能力者のパンチがぶつかったとする。一見すると威力は同じだが、ここでお互いが拳を強化していたとすると話は全く別になる。
拳の強化に100のオーラを使って100の強化ができる強化系の能力者と拳の強化に100のオーラを使っても60の強化になってしまう具現化系の能力者では拳の強度が全く違うからだ。
勿論話はそう簡単ではないが、強化系の素養の有無が単純な殴り合いにおいて重要なファクターになるのは分かるだろう。そして、その一点において強化系と相性の悪い具現化系と操作系の能力者が不利を負っているのは否定できない事実だ。
だが、操作系と具現化系にはそのハンデを背負ってでも尚有り余る長所がある。操作系は人を操作できる為、殴り合いの途中でその条件を満たせば敵を倒す必要すらない。具現化系は具現化した物に特殊なルールを付与することができる為、それで殴り合いを拒否することができる。
更にこれは自分の考察なのだが、この具現化は一種のブラックボックスなのではないかと思っている。なんでも切れる刀という人間の想像力の限界があるものは具現化できないことは広く知れ渡っているが、具現化した物に付与されたルールを用いてならこれに限りなく近いものを再現することだって不可能ではない……と思う。
つまるところ、ルールさえ工夫すれば操作系より更に満たしやすい条件で敵に勝つ能力を作るのも不可能ではないのだ。
ーーーCASE5 分身ーーー
「それで、何を具現化しようと思ってるの?」
「……分身、ですかね」
「分身?使うの難しそう」
マチの率直な感想は正しい。作中において分身の能力は複数出てくるが、1つは想定通りの運用をするのに致命的なエラーがあり、他の能力も制約が厳しく汎用性は低い。
特に前者の例はハンターハンターの読者はすぐに分かるだろう。ヒソカの「メモリのムダ遣い❤︎」という名言を生み出したカストロのダブルだ。
彼は優れた才能を持つ強化系でありながら、本人と瓜二つな分身を作りそれを自在に操作するという無茶をした結果、分身の具現化と操作に意識とオーラを持っていかれてしまうという致命的なミスを犯した。
結果として本人の防御も凝をする余裕もなくなり、ヒソカの術中にまんまとハマってしまった(カストロは独力で念を習ったから凝はできないのでは?という意見もあるが、カストロはキルアの絶について正式名称である絶を使っていたので四大行は確実に知っており、優秀かどうかはともかく師匠の存在自体はいたと自分は思っている)
だが、カストロは決して最初の方針から間違っていたわけではない。念で具現化した物を強化して殴るのは強化系の得意分野だし、やっていること自体は作中でも最強と謳われるネテロの百式観音とほぼ同じなのだ。
百式観音に関しては裏技があるとはいえ、念で具現化した物を操作、強化して殴るという方針は間違ってない。
では何が間違っていたのかというと、それは「自分の精巧な分身を作る」という相性の悪い具現化系の難度の高い技に挑戦したことと、「分身を自在にリモート操作し複雑な動きをさせる」というこれまた相性の悪い操作系の難度の高い技に挑戦したことだ。
ヒソカはこの能力について、ダブルを使うのは大変すぎて他の能力を使えなくなることを指して「メモリのムダ遣い」と言ったのであって、やることのレベルを落として大変でなくすれば決してムダ遣いにはならなかったのだ。ヒソカがあそこまでガッカリしたのも分からなくもない。
そして分身を戦闘に使うのにも色々な問題がある。まず分身を使うにしても使えるオーラ量は1人の時と変わらないという問題だ。分身にオーラを割いて攻撃力や防御力を上げたとして、その分だけ本人の攻撃力や防御力が下がってしまう。
そして分身で攻撃するにしてもきちんと強化しなければ念で防御を固めた敵にダメージを通すことはできない。この辺は念を飛ばして攻撃するのと同じ理屈だ。
分身を操作するのも難しい。オート操作で戦わせるとトチーノのように簡素な動きしかさせられないし、かと言ってリモート操作で戦わせるのはカストロやゴレイヌのように本人の意識状態が操作に反映されてしまう。
だが、それらの問題を解決しつつ分身を使って戦う手段は存在する。
要は戦わせなければいいのだ。トンチに聞こえるが、具現化系能力者であれば難しい話ではない。例えば、具現化した分身に触れることを条件に特殊なルールを発動すればいい。これなら分身には難しい操作なんて要らずただ「相手に触れろ」と命令すればいいし、敵に攻撃を通す為に強化にオーラを費やす必要もない。
ーーーCASE6 具現化系と放出系ーーー
だがそれでも解決できない問題はある。それは放出系との兼ね合いだ。
オーラを切り離して運用することには放出系の能力が必要である。この放出系と具現化系は系統図での距離が最も離れており、運用する能力の技術力と出力の両方ともに4割にまで減少する。
だからといって具現化系能力者が放出系を全く扱えないわけではない。作中の具現化系能力者で具現化したものを手放さない能力者はむしろ少ない方で(絶対時間抜きのクラピカとシズクくらい)作中の具現化系能力者の多くが当たり前のように自分から離して運用している。
これに対して自分は1つの仮説を立てている。それは、具現化したものが特殊な能力を持たない場合は自らと離しても問題は無いということだ。
例えばコルトピの場合、「神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)」の能力でフェイクを作った後24時間はどれだけ自分から離れても消失しないが、これはフェイクに搭載された特殊能力は位置のサーチのみであり、更に具現化したモノの位置のサーチは難しくないと考えればそこまで無理のある能力ではない。
ゲンスルーなんかもそうだ。「命の音(カウントダウン)」は一見複雑な能力のように見えるが、その実態は時限爆弾の具現化とその時間を数える為のカウンターだ。特殊能力はそのカウンターだけだと考えれば10人以上に取り付けた爆弾を爆発させるのも可能であると思う。(ゲンスルーの場合は複数人で能力を発動するジョイント能力者である為放出系や操作系を無視できるという考察もあるが、自分はジョイント能力はカウントを無視して起爆させる解放(リリース)だけであると考えている為、具現化系能力者として再現可能であるかどうかを考察した)
極め付けは継承戦編に出てくるヒンリギだ。彼は「てのひらを太陽に(バイオハザード)」という能力を使って機械や武器を元の機能を残しつつ生き物に変えて操作することができるが、遠隔から蛇と化した銃を操って暴発させたり猫に変えたビデオカメラを残して監視したりと一見すると放出系と操作系を無視したような挙動をしている。だが、特殊な能力を載せているかや複雑な操作をしているかを焦点に置けばこの能力もそこまで無理のある能力ではない。具現化したものに載せた特殊な能力は無いし(元々持っている機能のみ)機械を仕様上の範囲内で動かすのは人間などを動かすよりもよっぽど簡単だからだ。
つまるところ、具現化したものに特殊な能力を載せなければ距離を離して運用しても破綻は起きないのだと考えられる。クラピカの鎖が弱くなるのは強制絶という強力な特殊能力を有してるからであろう。
だが、これではせっかくの具現化の醍醐味である特殊ルールとは共存できないのだが……まあ仕方ない。俺はメモリの無駄遣いだとバカにされがちな分身能力の真髄はあんなものではないと証明したいのだ。できることならこの分身能力でヒソカに勝ちたい。
だから、今の俺がすべきことは自分のイメージを明確にすることだ。幸運なことに転生して見た目が変わったこともあって自分のイメージ修行が楽しい。これも今は亡きカストロの恨みを晴らしてくれと神様が言ってるに違いない!
そう思いながら俺は1ヶ月間自分の体を触り続け、シズクに変質者だと誤解されるのであった。
ーーーCASE7 流星街の掟ーーー
司祭の人に呼び止められ、長老会議に招かれたのは能力が一応の完成を迎えてから数日後だった。どうやら流星街でも珍しい念能力を6歳という若さで身に付けた自分に意見を聞き、念能力者をもっと増やす為にどうしたらいいかを会議する為だったらしい。らしい……のだが、
「クロロ様はどうでしたか?」
「俺の場合はマチから念の存在を聞き、約1年半を掛けて念の習得と今の能力の開発をした。その間することが多く修行に専念することはできなかったが、修行を続ければ念能力を身に付けることは難しくない」
「では、やはりその修行の難易度がネックになってきますな」
「子供が続けるには単調でつまらない。大人が続けるには費やす時間が多い。老人が始めるには集中力の低下が厳しい。何か良い手はないだろうか……」
こんなところでクロロと遭遇するとは思わなかった。マチは割と頻繁に流星街に帰ってくるから慣れたし、シズクはそもそも旅団に入ってないから怖くもなんともないが、クロロは一度も会ったことがないレアキャラだ。
あと単純に物凄い怖い。マチも雰囲気は怖いが顔は美人だし身長もそこまで高くないので怖さが和らぐところはあるが、長身のイケメンが怖い雰囲気出しても怖さは全く薄れないんよ……
「ステラはどう思うかの?君が念能力を獲得したのは類稀なる集中力を発揮したからだと聞いているが」
「ハ、ハイ。私はあんまり他の子と遊ぶのが好きじゃなかったので……その分修行にのめり込んだのだと思いマス……」
「では、普通の子供が念能力を身につけるのはやはり難しいか……」
だが意見を聞くといっても、幼女である自分にそこまで求める人間も多くない。だから自分なりの見解を述べれば、後は空気と化して乗り切れると思ってたのだが……
「ステラと言ったか?」
「は、ハイ!」
「君の念能力を見せて欲しい。君が発まで習得したことはマチから聞いている」
え?コレってまさか……狙われてる!?
ーーーCASE8 盗賊の極意ーーー
そして俺は長老達とクロロの目の前で能力のお披露目をすることになった。学芸会ちゃうんやぞ!とは叫びたかったが、今の弱い立場の俺にそんなことはできない。
「……ではいきます。当然な風船人形(ワンダーバルーン)!」
俺が手を前に突き出すと、その先から俺そっくりな念人形が現れる。人形を数回ジャンプさせ、近くにあった木にぶつける。
パァン!という音と共に念人形は破裂した。その間長老達は俺の能力に対して驚嘆の声を上げ、クロロはじっと俺のことを見ていた。だから怖いって!
「……えー、私の能力は風船のような中身のない私そっくりな人形を具現化し、それを操作するというものです」
「ほぉ……これはこれは……」
「念能力では分身を作ることもできるのか……」
能力の見た目こそはトチーノの能力である「縁の下の11人(イレブンブラックチルドレン)」とそっくりだが、やっていることはほとんど真逆だ。あちらは現実にある風船にオーラの塊を入れて操作する、というものだが俺の能力は風船人形を具現化してそれを操作する、トチーノの場合は放出系能力者が苦手な具現化系を省略する為に風船を利用したという形であり、俺は放出系が苦手な為に最初から戦わせる為ではなく撹乱に重きを置いた風船人形を具現化したというわけだ。
徹底的にコストを下げたこの能力でも操れる範囲はトチーノと同じくらいの射程範囲しかない。だが、それはあくまで自動操作では操作能力の限界が来るからであり、自分が動けないことを制約として手動操作の人形を作ることで動ける範囲を飛躍的に拡大させることができる。
「1つ聞いてもいいか?」
「っ!……何でしょうか?」
「その分身、どのくらいの精度で操作できる?先程のが限界の距離か?」
2つじゃねぇか!……というツッコミを飲み込んでクロロへの質問に冷や汗を流して逡巡する。だが悲しいかな、ここで答えない選択肢はない。
「いえ、もっと離して高精度の操作はできます……が、制約としてその間私は動くことができません」
「なるほどな……」
そう言ってクロロは顎に手を当てて考え出す。いやコエーよ!今頃どうやってコイツの能力奪おうかな……とか考えてるよ絶対!
長老達もしばらくクロロが何を言いたいのか図りかねていたが、クロロが相変わらず何も言わないのを確認すると、念能力がどのようなことができるかを俺を交えて話し出す。
そしてクロロが爆弾を投下するのは会議の議題も終わるかという頃だった。
「少々実験をしたい。長老、ステラ。力を借りてもいいか?」
そして会議は終わり、俺はやっちまったという表情をしながら集落への道を歩く。その途中に現れたのがクロロだった。
あー、そりゃ盗むよなぁ……せっかくのコンボパーツだもん。今後の流星街の方針には必要不可欠だよなぁ……
「ステラ、君にして欲しいことがある」
「…はい……なんでしょうか……」
実験というのは俺のワンダーバルーンと長老の持つ念能力である「番いの破壊者(サンアンドムーン)」を組み合わせて自立型の爆弾人形を作る、というものだった。ハイ、どう見ても流星街の掟に使われる爆弾人形ですありがとうございました。
恐らく俺はここでクロロに能力を奪われるのだろう。クロロの能力である「盗賊の極意(スキルハンター)」は条件を満たした相手の能力を盗み具現化した本の中に封じ込めるというものだ。条件は4個で、一つ目は念能力を実際に見ること、二つ目は能力について相手に質問しそれに答えてもらうこと、三つ目は本の表紙と相手の手のひらに合わせること、四つ目はそれらを1時間内に遂行するというものだ。
俺は会議の間にクロロに能力を見せ、クロロに能力の質問をされ回答し、そして1時間も経たない内に今この場にいる。つまりここでクロロに攻撃されて倒されれば、後はクロロが俺の手を本と合わせるだけで能力を盗まれてしまうのだ。
そんな絶体絶命のピンチにいる俺だが、意外なことにもう諦めてる。え?全然意外じゃないって?まあ6歳の幼女が15歳くらいの青年に勝てるわけないからねしょうがないね。
そんな絶賛諦めムードの俺に対してクロロが言ったのは意外な言葉だった。
「蜘蛛の仲間になって欲しい」
「……え?」
ファッ!?俺くんがあの幻影旅団のメンバーに!?
「俺達は流星街を外の社会から守る為に恐ろしい流星街という偶像を作り上げようとしている。その為に君の力を借りたい」
「……」
「君の力で君の友達を助けることができるんだ」
そう語るクロロには人を従えるオーラがあった。まるで生まれながらにして人の上に立つと決められていたかのような。
それに対して俺は……
ーーーCASE OF QUWROFーーー
「よかったの?団長」
徐々に小さくなっていく背中を見送っていると、気配を消していたマチが聞いてくる。どうやら戦闘が始まるとでも思ったのか待機していたらしい。仮にそうなってもこっちは傷つけずに終わらせるくらい余裕なんだが。
「あの子は流星街や俺達の下に居るべき存在ではない。爆弾人形の仕掛けのヒントになってくれただけで十分俺達の為に働いてくれた」
俺はステラの言葉を思い出しながら話す。
(わ、悪いことをするのはいけないと思います!私は貴方達に協力することはできません!)
「悪いことはするのはダメ、か……もし彼女がいたら、同じ言葉で説教してくれたのかもな」
「クロロ……」
「だが、流星街にいてもどうせ長老達に使われているのは目に見えていた。外の世界は危険だが、彼女が彼女らしくある為にはこの世界にいてはいけなかった」
だから、ステラを流星街の外へと連れ出した。6歳の子供が生きていくには危険な外の世界だが、あの子は覚悟を持って外の世界へと出て行った。ヒントのお代として結構な路銀も渡したから、これで俺達とあの子の関係もお終いだ。
俺達は善人じゃない。だから良い子の味方にはなれないし、なってはいけない。そして悪人には悪人のすることがある。
「マチ、シャルに伝えてくれ。具現化系に属し人間を具現化できる能力者を探せとな」
「分かったよ、団長」
念能力者の系統については冨樫展のメモを参考にしている為ガイドブックと合わない部分があるかもしれません。
というかなんでガイドブックと作者のメモが矛盾してるんですかね……