流れ者の考察記録   作:sesamer

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 予め言っておきますが作者がハンターハンターで1番好きなキャラはクラピカです。ウボォーギン戦の考察だけでも多分5話くらいは書けます。



10. 最終試験×ハンターの資質×クラピカ

 

ーーーCASE1 ハンターの資質ーーー

 

 

 

「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。組み合わせはこうじゃ」

 

 ネテロはそう言いながらホワイトボードに掛けてあった布を払いトーナメントの対戦表を見せる。四次試験は勝ち抜け制のトーナメントだった。

 

「組み合わせが公平でない理由はなんでしょうか?」

 

「うむ、当然の質問じゃな」

 

 俺の質問にネテロが答える。確かこのセリフは今は亡きボドロ氏のセリフだったよな……

 

「この審査は今までの試験の成績を加味した上でのものじゃ。それだけ成績の高い者ほど合格のチャンスが残されているということ」

 

「それって納得できないな。詳しい点数の付け方を教えてよ」

 

 自分の位置に納得いかないキルアが対戦表の不服を申し出る。対戦表の位置はゴンとハンゾーが1番成績が良いという結果を示していた。ドベから3番目のキルアはゴンに嫉妬してるらしい。まあ俺はドベから2番目なんだがな!

 

「採点内容は教えるわけにはいかんが、まあ審査のやり方くらいなら教えてやろう」

 

「審査基準は身体能力値、精神能力値、そして印象値の3つじゃ。だが我々は最終試験まで残れた諸君の身体能力と精神能力を疑うつもりはない」

 

「して重要なのが印象値じゃ。これは前の2つでは測ることのできないなにか!言うなればハンターの資質といったところじゃ」

 

 この言い分は多分合っている。身体能力値や精神能力値を考えればイルミと俺が底辺争いをするはずがない。ハンターの資質という点で言えばイルミと俺はハンターに向いていないということなのだろう。

 

 

 

 そうなるとハンターの資質とはなんぞやという話になるのだが、この辺は原作での活躍を考えると分かるだろう。例えばこの成績の順番はハンゾー、ゴン、クラピカ、ヒソカ、ポックル、レオリオ、キルア、俺(原作ではボドロ)、イルミという順番なのだが、ハンター活動を全くしてないイルミや常にゴンの付き添いで自分からの活動は皆無のキルアとは違ってゴンとクラピカとヒソカの成績は素晴らしい(ハンゾーは描写が無いので省略)。

 

 原作でのゴンの目標はジンを探すのが大目標、その間にヒソカにプレートを返すことやカイトを助けることの中目標が挟まるのだが、それらをゴンは概ね達成している(カイトを助けられたかそうでないかは微妙だけど)。

 

 次点のクラピカの成績はもっと凄まじい。彼の目標は幻影旅団への復讐と緋の眼の回収なのだが、A級賞金首である幻影旅団のメンバー2人を殺し、更に入手難易度Aである緋の眼36対のうち10対を残し全てを回収している。そのどちらも並のハンターには不可能だ。それを2年も掛けずにやってんだからコイツの周りだけ時間の進みが早すぎると思う。俺がクラピカのことをヤバイと思う理由の1つだ。

 

 ヒソカの成績やそもそもヒソカの目標がなんなのかはちょっと意味不明だが、彼も幻影旅団のメンバー2人の殺害に成功している。なんか幻影旅団がハンター活動の指標扱いされてんな……

 

 

 

 それらに比べるとキルアとイルミが自分の目標に沿って行動したのは家族喧嘩くらいだ。その家族喧嘩の規模が大きすぎるのは別として、ハンターの活動として見ると微妙なところだろう。

 

 要は行動原理の問題だ。ハンターとはなにかを追い求める者の総称であり、ジンや緋の眼、強者とのバトルを目的とする上位勢とは違いキルアとイルミの行動原理はハンターらしくない。俺も他人のこと言えたもんじゃないけども。

 

 

 

「戦い方は単純明快、武器OK反則なし。相手にまいったと言わせれば勝ち!…なのじゃが、相手を死に至らせてしまった場合は即失格でその時点で試験は終了じゃ」

 

「それでは最終試験を開始する!第一試合はハンゾー対ゴン!」

 

 部屋の中央に2人が進むとその片方であるハンゾーは決闘の立会人である試験官に確認する。

 

「勝つ条件は相手にまいったと言わせるしかないんだな?」

 

「その通りです」

 

「そいつはちと厄介かもな……」

 

 裏を返せばこの試験はただの戦いではなく、相手にまいったと言わせなければ勝てないルールなのである。要は意地の張り合いだ。そしてその意地の張り合いでなら絶対に負けないのがゴンという主人公で……

 

 

 

「要するにだ、俺はもう負ける気満々だが、もう一度勝つつもりで真剣に勝負をしろと。その上でお前が気持ちよく勝てる方法を一緒に考えろと。こーゆーことか!?」

 

「うん!!」

 

「アホかー!!!」

 

 腕を折られるどころか死んでも降参する気のないゴンにハンゾーの方が折れてしまい、更なるゴンのアホな追い討ちに呆れたハンゾーは降参する。

 

 その場の勝負に勝つ為には命ですら投げ出す、例え腕を折られても恨みや怒りどころか恐怖すら抱かない。その上で自分が気持ちよく勝つのを望む。GI編から目立ち始めるゴンの異常性はこの時点でその兆候が見えていたのだ。

 

 

 

ーーーCASE2 クラピカの強さーーー

 

 

 

 次の対戦はクラピカ対ヒソカだった。結果的に言うと、彼らはしばらく戦った後にヒソカの方がクラピカに幻影旅団に関することを耳打ちして降参するのだが、ひとつだけ思ったことは……

 

「クラピカ強すぎだろ」

 

 である。

 

 

 

 原作におけるクラピカの戦闘描写は少ない。それはまあただでさえ戦闘の少ないハンターハンターで更に主人公との別行動が多いキャラなのだから当然と言えば当然なのだが、それで困るのがその強さを測りにくいことだ。

 

 例えば、念を覚えてから初めてのクラピカの戦闘描写というのがクラピカvsウボォーギンだ。そして作中においてこのウボォーギンを超える強化系の人間は思いつくだけでは1人しかいない。更にその1人も肉体の強度という点でウボォーギンに勝てるかどうかは微妙だ。

 

 そんな奴に念を覚えて半年未満のクラピカは勝負を挑み、そして勝ったのである。ハッキリ言ってめちゃくちゃだ。この世界での戦いは年季が全てだって言ってんのに何してんだお前!

 

 

 

 ただ、年季だけで全てが決まる世界でもない。いくらオーラ量が凄まじいからといって毒や電気、念のもたらす特殊効果までは無効化することはできない。実際クラピカがウボォーを倒した手段は彼の「束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)」だ。その効果は捕らえた人間を強制的に絶の状態にすることであり、幻影旅団にしか使えない代わりに絶対に千切れない鎖を制約と誓約によって実現した能力だ。

 

 だから格下が格上を食らうのは容易……とまでは言わないが、いくら強くても決して無敵になることはできないのだ。どんなに強くてもどこかに必ず突くことができる隙は存在し、そしてその隙を突くことができる能力は決して少なくはない。

 

 

 

 だが、それらにも限界がある。そういう能力は大抵の場合、正面からヨーイドンで戦った時にはほぼ無力な能力なのだ。決して無力だとは言わないが、正面から戦う場合では隙は自分が作るものであり格下が格上に対してそれができるかというとちょっと無理がある。

 

 そしてクラピカとウボォーギンの戦いは正面からヨーイドンしての戦いである。だから何してんねん。

 

 クラピカは一応、具現化した鎖を常日頃から出しておくことで実在する鎖を操る操作系の能力者だと偽装して隠で見えなくした鎖を警戒から外すという仕込みをしていたわけだが、恐らくそれが機能したのはその一戦だけであり、予言の無い世界線で追加で4人の旅団メンバーを倒した時には純粋な力で捩じ伏せたのだろう。ウボォーギンが殺された時点でクロロはクラピカが具現化系能力者か操作系能力者だと断定して凝の必要性を説いたわけだからな。

 

 

 

ーーーCASE3 凝と隠ーーー

 

 

 

 ここでひとつ注意しておきたいことは「ウボォーは凝を怠ったから雑魚」という風潮が世の中にはあるが、凝というのは常にするようなものではなくむしろ使い所を考えなければいけないものである、ということだ。

 

 

 

 GI編においてゴンとキルアの師匠となるビスケは戦闘における凝の重要性を説いたわけだが、その言い方は「なにか怪しい雰囲気を感じたらすかさず凝をすること」だった。彼女は常に凝をしながら戦えと言ってるわけではないし、実際そんな能力者は作中でもいない。

 

 まあ凝の役割を考えれば当たり前だ。凝とは目を凝らすことで隠されているオーラを見破るというものであり、隠がなければ本来必要のないものだ。そして個人が使えるオーラ量というのは決まっており、戦闘中に無駄な凝にオーラを使うということはそれだけ戦闘で不利になることを意味する。

 

 

 

 じゃあ具体的にどういう場合に凝を使うのかということについてなのだが、それはキメラアント編のキルアvsシュートの戦闘描写を見れば分かりやすいだろう。キルアはシュートが能力を発動して拳と鳥籠を浮かせた時に凝をし、隠で見えなくされた腕があるかどうかでシュートが操作系能力者か具現化系能力者かを判断した。

 

 相手が操作系の能力者ならそれ以降の戦闘で隠を警戒して凝をする必要はない。確かにこれは効率的な凝の使い方なわけだが、この使い方ならばクラピカの鎖を避けることができるかと言われたらそうではない。

 

 というかそれだと普段から具現化しているクラピカの鎖には気付くことはできない。キルアの戦い方が間違っているとは思えないので、おかしいのはクラピカのやっている「戦闘中に隠を仕込む」という戦い方だと思う。

 

 

 

ーーーCASE4 隠の難易度ーーー

 

 

 

 この戦闘中に隠を仕込む、ということを明確にやっている能力者は作中でも数人しかいない。俺が覚えている範囲だと鎖を見えなくしたクラピカ、バンジーガムを見えなくしたヒソカ、そして土煙を立てながら隠で気配を消すことでステルスしたウボォーの3人だ。

 

 それ以外の戦闘では隠もそれを見破る凝も全く出てこないのである。その理由について、俺は3つの可能性があると考えている。

 

 

 

 まず一つ目、「漫画的な都合で隠は消滅した」ということだ。あまりにも身も蓋もない理由なので俺は却下するが、実際常に隠と凝を描写しなければいけないというのは描いてて労力を使うだろう。

 

 そして二つ目、「戦略上隠を使う意味がない」というパターンだ。隠を使えたとしても使う意味がなければ使わないのは道理だろう。実際、ヨークシン編以降に出てくる具現化系の能力者にはゲンスルーやナックルなどが挙げられるが、彼らが戦闘中に隠をする意味はあまりない。

 

 ゲンスルーの場合は「一握りの火薬(リトルフラワー)」を使う時に隠でオーラを見えなくしても掴んで爆発するという仕様上不意を突くなんてことはできない。「命の音(カウントダウン)」にしても制約で説明をする以上その存在が絶対に知られるわけであり、見えなくしたところで戦略的な意味はないだろう。そもそも相手にカウントを教えるという能力の都合上隠で消せるかも怪しい。それはナックルの「天上不知唯我独損(ハコワレ)」も同様だ。

 

 最後の三つ目は「戦闘中に隠を使えない」というパターンだ。隠とは絶を応用した高等技術であり、高等技術である以上は使える人間が一握りだとしても不思議ではない。同じ高等技術の中でも円は個人によって距離や使えるかどうかが左右される技能であり、隠を実戦的に使えるかどうかも才能によって決まっているかもしれない。

 

 一応俺は隠は使えるのだが、実戦の中で人形を隠で見えなくすることができるかというとちょっと難しい。だけどそれが単純に修練不足なのか才能によるものなのかは分からないのである。だって教えてくれる人いないし……

 

 その中で俺は二つ目と三つ目の説を支持している(まあ一つ目の説は却下するから当たり前なんだけど)。ゲンスルーやナックルのような人間の実力者は二つ目の説、キメラアントや継承戦編に登場する能力者達は三つ目の説に該当すると思っている。

 

 それを考えると半年未満の期間で四大行に加えて円以外の高等技術(流や硬は推測だけど)、更に鎖の具現化に成功したクラピカは尋常ではない才能だと思う。俺がクラピカのことをヤバイと思う理由その2である。

 

 

 

ーーーCASE5 隠の脅威ーーー

 

 

 

 そうやって隠が出てこない理由をあれこれ考えるほどには隠は強力な切り札だ。あまりにも堂々と使えば凝してくれと言ってるようなものだから通用しないが、逆に言えば相手が怪しまないタイミングで使えば絶対に通用するのである。

 

 更に言えば相手が絶対に凝を使わないだろうというタイミングも存在する。それは例えば殴り掛かる場面やそれを防御する場面だ。簡単に言えば殴り合いの最中である。

 

 普通に考えてそんな場面で目を凝らす奴はいないだろう。更に念においては凝をすることで攻防に使えるオーラが減るんだから当然の話である。

 

 

 

 ではクラピカはどのタイミングで隠をしたのか?ということを考えればクラピカのヤバさが分かってくる。

 

 ウボォーギン戦においてクラピカは「お前がつまらん強がりを言いかけた時、既に鎖はお前の体を覆っていたのだよ」と言った。このセリフが事実だとすると、クラピカは半分くらいの力を出したウボォーギンと格闘しながら隠を使ったのだ。

 

 このやり方ではまず間違いなく相手は凝を使えない。少なくとも俺には格闘戦しながら凝を使う余裕などない。そもそもヒソカのバンジーガムみたいに殴りながら鎖で巻かれたら凝を使っても無意味だし。

 

 そして殴り合いの最中で隠を使った人間が他に存在するのかというと……誰もいないのだ。ヒソカですら隠を維持しながらの殴り合いはしているものの殴り合いしながら隠は使ってない。クラピカがヤバイと思う理由その3。

 

 

 

ーーーCASE6 クラピカの体術ーーー

 

 

 

 何がヤバイかってウボォーギンと殴り合うのは片手間でできるということだ。もちろんウボォーの方も半分くらいの力で様子見していたからというのはあるが、それでもウボォーに捉えさせることができなかったのはクラピカの体術がヤバイからだと思っている。

 

 以前俺は強化系だからといって殴り合いに勝てるわけではないと言っただろう。念で強化することで影響があるのは攻撃力と防御力であって、スピードに関しては念での強化ではなく体術の問題である、ということだ。

 

 そしてクラピカの体術がどのくらいなのかという作中の言及は無い。だから俺は作中の描写から判断するしかないし、その描写から推測できるのは「幻影旅団のメンバーであるウボォーを体術で圧倒し、隠による初見殺しが恐らく通じないであろう状況から幻影旅団のメンバーを4人殺害できる」というものなのだ。

 

 

 

 そしてその推測を裏付ける結果が目の前にあった。念無しとはいえヒソカと真正面から小細工なしで戦ってある程度傷を付けることができる、鍛えている俺からしても唖然とするくらい強いのがクラピカなのだ。

 

 でもそれも当然なのかもしれない。生まれてから今まで強くなる理由のないゴンに強さはなくても不思議じゃないし、暗殺者として育てられたという強くなる理由のあるキルアは強くても不思議じゃない。そしてクラピカにそのような強くなる理由があったかを考えると大きな理由が存在するのだ。

 

 

 

 クルタ族が幻影旅団によって滅ぼされたのは6年前である。そこから原作開始まで、クラピカがどのように生きてきたのかは描かれていない。

 

 だが、幻影旅団に復讐する為には命も惜しくないと考えていた彼がその6年間で自身を鍛えていたと考えるのは自然だろう。ただでさえA級賞金首である幻影旅団を相手にするのにクラピカのような人間が楽観的になるはずがなく、念を知ることはできなかったものの彼なりに全力で自身を鍛えたはずだ。

 

 そして先程言っていたようにクラピカの才能は圧倒的だ。圧倒的な才能を持つ人間が6年以上鍛錬し続けたというのを考えると、下手すればキルアを超える実力を持っていたとしても不思議ではないのだ。キルアの鍛錬は単純な戦いよりも殺しの技術の方に比重を置いていただろうし。

 

 

 

「第四試合!ヒソカ対ステラ!」

 

「あっ俺まいった」

 

「え〜、やろうよステラ❤︎」

 

「うるさいな、時々相手してやってんだから我慢しろよ。それに、純粋な体術じゃ俺に勝ち目がないことくらい理解してる」

 

 普段からある程度戦ってるから分かるのだ。強化系の得意不得意関係なく俺ではヒソカに殴り勝つことはできない。念能力まで含めるのなら勝ちの目は見えてくるが、この状況で念能力を使えば恐らく俺の魔法も解けてしまう。

 

 

 

「じゃあ……アリでやる?」

 

「この状況で使わねぇよバカ!」

 

 俺は自分の能力を魔法だと言って誤魔化してるわけだが、これを戦闘で使ってヒソカと戦えばまず間違いなく俺の魔法は戦う為のものであり、ヒソカも同様のものが使えるということが他の受験者にバレるだろう。

 

 俺としてはここにいる奴らはどうせハンターになるのだから念能力を教えても問題ないとは思っているが、協会としては念能力の習得は裏ハンター試験であってそれを監督するハンターもいるらしいから彼らの仕事を奪う形になるし、そもそも念の存在を教えれば高確率で俺が彼らの師匠をする羽目になる。

 

「どうせ近いうちにやるんだから我慢しろ」

 

「しょうがないなぁ♦︎」

 

 

 

 というわけで第四試合は俺の降参で終わった。さて、問題は次以降の試合なのだが……

 

「俺もまいった。悪いけどあんたとは戦う気がしないんでね」

 

 第五試合は試合開始直後にキルアが降参。

 

「じゃあ俺もまいった」

 

「舐めとんのかーっ!」

 

 そして第六試合は試合開始直後に俺の降参だった。レオリオのツッコミを尻目にギャラリーの方に戻る。自分で荒らしといてなんだけども、めちゃくちゃだなこの試験……

 

 

 

「…まさかこんなにまいったを気軽に言える受験者が残るとはのぉ……」

 

「アンタらいい加減にしろぉぉ!!ハンター試験は遊びじゃないのよぉぉ!!!」

 

「どうどう、メンチ落ち着いて……」

 

「すみませんって……次はちゃんとやりますから……」

 

 ブチギレ寸前のメンチにぺこぺこと平謝りをする。…だって実力の離れたレオリオとじゃ戦いにならないし、レオリオをここで負けさせるにもいかないんだもん……

 

 

 

ーーーCASE7 呪いーーー

 

 

 

 続いて始まった第七試合、キルアは当然勝てるものとして前の試合は降参したわけだが、その相手であるギタラクルはそんな生優しいものではなかった。

 

「久しぶりだね、キル」

 

「あ…兄貴!?」

 

 なんとギタラクルの正体とはキルアの兄のイルミであった。ナンダッテー。

 

「お前はハンターに向いてないよ。お前の天職は殺し屋なんだから」

 

 

 

 そしてイルミの説得は始まった。やれ熱を持たない闇人形だの、やれ何も欲しがらず何も望まないだの、やれ唯一の歓びは人の死に触れた時だの……

 

 めちゃくちゃ言ってるけどこれミルキのキルアに対する評価とは全く違うし、どちらかというとイルミの願望が多分に含まれている気がする。

 

 しかしゾルディック家に縛られているキルアはその明らかに間違ってるであろうイルミの言葉も真に受けることしかできないわけで……

 

「そんなお前が何を求めてハンターになると?」

 

「確かに…ハンターになりたいと思ってるわけじゃない。だけど、俺にだって欲しいものくらいはある!」

 

「ないね。試しに言ってごらん?お前が何を望んでいるか」

 

 イルミの問いにキルアは俯く。絞り出されたその言葉は殺し屋が天職の闇人形には出せないものだった。

 

「ゴンと…友達になりたい。もう人殺しなんてうんざりだ。普通に、ゴンと友達になって、普通に遊びたい」

 

 その言葉をイルミは真っ向から否定する。

 

「無理だね。お前に友達なんて出来っこないよ。お前は人を殺せるか殺せないかでしか判断できない」

 

「今のお前はゴンが眩しすぎて測りきれないでいるだけだ。友達になりたいわけじゃない」

 

「彼の側にいればいつかお前は彼を殺したくなるよ。殺せるか殺せないのか、判断したくなる」

 

「なぜなら、お前は根っからの人殺しだから」

 

 

 

 その虐待とも言える光景にレオリオはキレる。

 

「キルア!!そんなバカ野郎でクズ野郎の言葉なんか聞くな!いつもの調子でさっさとぶっ飛ばしちまえ!!」

 

「お前もお前だ!ゴンと友達になりたいだと!?寝ぼけたこと言うな!お前らはもうとっくにダチ同士だろーが!!少なくともゴンはそう思ってるはずだぜ!」

 

 レオリオの言葉にキルアとイルミは衝撃を受ける。今までの人生で友達を作ったことのないキルアはゴンと自分が既に友達であると全く分からなかったのだろう。なんなら初対面の時点でほぼ友達だったよ。

 

「え?そうなの?まいったな、あっちはもう友達のつもりなのか……」

 

 よし、とイルミは悩む素振りも見せずに思いつく。

 

 

 

「ゴンを殺そう、殺し屋に友達なんかいらない。邪魔なだけだから」

 

 そう言うと試合を抜け出してゴンの下へと向かおうとする。立会人であるどこかレオリオに似た試験官の人に針を刺すとゴンの場所を聞き出してこの部屋の出口へと向かう。

 

「そういえば、ここでゴンを殺すとオレが落ちて自動的にキルアが合格しちゃうね。なら合格してからゴンを殺そうか。それならオレは不合格にならないよね?」

 

「うむ、ルール上は問題ない」

 

 ハンター十ヶ条のこと考えれば問題ないわけないだろと思わずツッコミたくなるが、まあこれもネテロの性格なのだろう。であればイルミやヒソカ、幻影旅団のメンバーがハンターになれるわけがない。やっぱりブシドラの言うことは正しいよなぁ……

 

 

 

「聞いたかいキル?お前はオレと戦って倒さないと友達を助けることはできない。だけどお前は友達のためにオレと戦うことはできない」

 

「なぜならお前は友達なんかより、相手を倒せるか倒せないかでしか判断できないから」

 

「そしてその答えもすでに出ている。オレじゃ兄貴は倒せないと」

 

「オレが散々教えたもんね?勝ち目のない相手とは戦うなと」

 

 凶悪なオーラを出しながらキルアの方に歩くイルミ。それにしても酷い誘導だ、友達であるゴンを助ける手段なんて試験でイルミに真正面から勝つ他にもたくさんあるのにそれを一方的な2択として迫る。手慣れた様子を見るに今までもこうしてキルアを支配してきたに違いない。思わず漏れ出す怒りの感情を抑えつつ見守る。

 

 

 

「まいった。オレの…負けだよ……」

 

「はっはっは、ウソだよキル。ゴンを殺すなんてウソ、ちょっとお前を試しただけさ。でもこれでハッキリしたね」

 

「お前に友達をつくる資格なんてない。必要もない。今まで通りオレと親父の言うことを聞いてただ仕事をしていればいい」

 

「ハンター資格も今は取る必要はない。必要になればオレが指示する」

 

 その言葉を最後にキルアは動かなくなっ……

 

 

 

「キルア!じゃあ第八試合は俺が相手だよ!」

 

 俺の言葉に一同は静まり返る。しばらく間を置いてイルミが口を開く。

 

「…ステラ、オレの話聞いてた?今のキルにハンター資格は必要ないんだよ」

 

「聞いてたけどさ、後で必要になるんだったら別に今取っても良くない?ハンター資格取ったところで別にハンター活動をする義務はないんだし、普通に殺し屋続けさせればいいじゃん」

 

「…もしかして、オレに喧嘩売ってる?」

 

 不穏なオーラを出し始めるイルミに俺は首を高速で横に振る。口先だけでなんとかならねぇかなぁ……

 

「全然全然!他所の家庭の事情に首を突っ込むつもりはないよ!…けど、別に試験を放棄する必要はないんじゃないかなって…そう俺は思うわけですよ!」

 

「……」

 

「だってあと一戦して勝つだけだぞ?それだけで今後また数週間掛けてハンター試験受けなくてもよくなるんだぞ?」

 

「でもその相手はステラ、キミのことだよ。少なくとも今のキルアには勝てる相手じゃない」

 

「そうか?それは分かんないぞ。この戦いの勝ち負けはまいったと言わせられるかどうかだ。俺が絶対にまいったと言わないような意思の強い人間に見えるか?」

 

「俺だってキルアと戦いたいんだよ!この2年間で相手したのあの変態ピエロくらいしかいねぇんだよ!」

 

 情けなさすぎて自分で言ってて泣きたくなるが、この状況は最大限利用してやる。ハッキリ言ってゾルディック家編とか俺は無駄だと思っている。あそこで身に付けたものなんて試しの門を開けられる腕力くらいだ。

 

 でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。 重要なことじゃない。腕力なんて後でいくらでも身に付けられるし、そんなことの為にこの状況を見過ごせるものかよ。

 

 

 

「キルアもそう思うだろ?これは天空闘技場で戦った時とおんなじだ。ルールとして殺しが禁じられてる以上、強い人間と戦うのを避ける必要なんか全くない。勝ち負けだって普通の戦いじゃないから勝ち目がどうこう言える勝負じゃない」

 

「……」

 

 キルアは何も言わなかったが、明らかに考え込んでいる様子だった。キルアの頭に刺さっているイルミの針による呪いはキルアの行動を縛っているものだが、俺はある程度自由度のあるものであると思っている。

 

 

 もちろんイルミによるものである以上はイルミに逆らうことはできないのであろう。だが、その命令内容が常に遵守されるかと言われるとそうではない。

 

 イルミによる呪いの内容は大まかに分けると以下の二つだ。一つ目は自分より強い相手とは戦わずに逃げること、そして二つ目は不可解な攻撃を受けたら距離を取ること。前者は主に単純に強い奴から逃げることで生存率を高めるのが狙いで、後者は恐らく念からキルアを守る為のものだろう。念を習得してない段階では他人のオーラに触れるだけでも攻撃と感じるくらいキルアの察知力は高いし、念を覚えた後でもとりあえず距離を取って出方を伺うのは重要だ。一撃必殺がいきなり飛んでくるかもしれないのがこの世界だからな……

 

 

 

 しかし、この呪いが作中において常に発動していたかと問われると微妙なところだ。ヨークシン編で闇に乗じて幻影旅団に攻撃を加えた時やサブを相手した時など同格以上の敵をキルアが相手にしたケースは存在する。

 

 そこで俺は、この呪いはキルア自身がある程度状況を判断した上で敗死の可能性が1%でもあれば逃げるようになる、というものであると推測した。幻影旅団に攻撃した時は闇に紛れて逃げる為のものだからキルアは正常に動けたし、サブ相手に戦った時のキルアは電気とヨーヨーという新たな武器を手にしていた為に状況を優位に想定していたというものだ。

 

 だから俺の言葉はキルアに届くはずだ。先程はイルミに強制されたからキルア自身が考える余地はなかったが、冷静に考えると今この場面は逃げるべき場面ではない。

 

 

 

 キルアは口を開こうとし、その前にイルミに制された。

 

「キル」

 

「っ!…オレは試験を放棄する」

 

 キルアはそう言ってこの部屋の出口に歩いて行く。俺は諦めきれずにその背中に話しかける。

 

「どうした、俺に怖気付いたのか?もしかして女の子相手にビビってんのかぁ?」

 

「自分で女の子とか言ってんじゃねーよ、そんな下手な挑発に乗るか」

 

「こんのヘタレキルア!!前に俺が言ったこと忘れんなよ!!」

 

 その言葉が届いたかは分からなかったが、仮にここでキルアを止められなくても俺はそれだけは言いたかった。

 

 

 

 俺は信じられなくてもゴンと自分自身は信じて欲しい。原作の流れがある以上、俺がキルアにしてやれることなんて少しもないかもしれない。それでも、言葉だけでも掛けてやりたい。俺は選挙編でレオリオが全ハンターを前にして堂々と発言した言葉を思い出していた。

 

 

 




 これにてハンター試験編は終了です。ゾルディック編は飛ばすとして、これ選挙編まで書けるかなぁ……
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