流れ者の考察記録   作:sesamer

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 当初はヨークシン編に介入する予定はなかったんですがね…ステラと一緒に頭を抱えてます。



14. 本心×5本の鎖の目的×渦中へ

 

ーーーCASE1 警戒網ーーー

 

 

 

「こちらおたずねサイトの者だ。ターゲットは?」

 

「フードコートにいる男女の2人組。男の方は黒い長髪。間違いないですか?」

 

「ああ、間違いなさそうだ。約束の金を振り込むから確認してくれ」

 

 携帯で口座に1500万円が入っているのを確認する。これで金策も片付いたしもうヨークシンに留まる理由は無いだろう。

 

 レオリオとの電話を切り改めてマチとノブナガを観察する。彼らは自分達に莫大な懸賞金が懸かっているにもかかわらず堂々と人の多い場所に出歩いているわけだが、彼らの目的は決して懸賞金目当てのハンター達から逃げることではない。

 

 

 

 彼らの目的、それは旅団の構成員ウボォーギンを倒した鎖野郎ことクラピカを捕えることにある。その為に彼らは敢えて人の多い場所に出向き、鎖野郎の襲撃を待っているのだ。

 

 だから一見隙だらけのように見える彼らに隙なんてものは存在しない。俺のような念能力者が姿を現そうものなら即座に看破されるだろうし、原作でもゴン達の尾行やフィンクス達による二重尾行にも彼らは気付いていた。

 

 彼らは絶賛警戒中なのであり、その警戒網に鎖野郎が引っ掛かるのをまるで蝶が巣に掛かる蜘蛛のように待ち構えているのだ。

 

 

 

「ま、俺やゴン達にとってはそれは好都合なわけなんだがな」

 

 幻影旅団の目的は鎖野郎なわけだが、それは裏を返すと鎖野郎以外の人間に興味はないという意味でもある。原作でも鎖野郎と関係ない(実際は関係あったわけだが)ゴンとキルアを解放しようとしていた。彼らが自分達のアジトを知った上のことである。

 

 当然、そのゴン達に情報提供した俺の存在など彼らは全く気にしないだろう。仮に俺の存在が旅団に捕捉される場面を想定するなら、ゴン達と鎖野郎が関係していることが露見し、その上で情報提供者が一般人ではない可能性を追われた場合である。その場合はゴン達も高確率で死んでそうだが。

 

 まあそんな事態にはならないだろう。クラピカが鎖野郎であることをゴンとキルアは現時点では知らないのでパクノダとの接触でそれが露見することはない。唯一途中で鎖野郎の正体に気づいたキルアからバレる可能性はあるが、彼があの緊迫した状況で下手を打つなどあり得ない。

 

 

 

「そしてそれが露見する頃には俺はヨークシンにはいない…ってね」

 

 金を引き出した口座を抹消しヨークシン発カキン帝国行きの飛行船のチケットを手配しながら、フードコートを離れるマチ達とそれを尾行するゴン達を見送る。

 

 ゴン達と鎖野郎が繋がっていることを幻影旅団が知るのは2度目に彼らが接触するタイミングだ。その時点で鎖野郎の正体であるクラピカのことは幻影旅団に割れ、彼らが俺のことを気にする暇も理由もなくなる。そしてその頃には俺は悠々自適にヨークシンから離脱している、という寸法だ。

 

 心の中でゴンとキルアにエールを送りつつ俺はその場を離れた。

 

 

 

ーーーCASE OF KILLUAーーー

 

 

 

 幻影旅団の一味の尾行は失敗し、オレ達は命からがら奴らのアジトから逃げた所だった。オレなんかあのノブナガとかいう奴から必死に逃げたというのに、隣のゴンは不服そうに口をへの字に曲げる。

 

「ちぇっ、アイツぶっ飛ばしたかったのに」

 

「絶対無理、返り討ちにあってあの世行き!」

 

 ゴンはそれでも納得しないらしく聞き返すが、念を覚えて間もなく基礎しか知らないオレ達では奴らは敵う相手ではないということを説明すると、今度はニッコリと笑ってコチラを見る。

 

「…何だよ?」

 

「ようやくキルアらしくなってきたじゃん。無茶を言うのはオレの役でキルアはクールに止めてくれないとね!」

 

 頼りにしてんだから!と無邪気に言うゴンにオレは照れくささを覚えながら嫌味を返す。その信頼が心地よく、ノブナガと対峙した際に覚えた不安をオレは思考の外に追い出した。

 

 

 

「で、どうするのこれから?」

 

「そりゃ何がしたいかによるさ今後のことは」

 

「アイツらをぶっ飛ばしたい!」

 

「やっぱりか……」

 

 まあゴンがやりたいことなんて聞かなくても分かってたわけで……実際幻影旅団を捕えて賞金を貰えばGIを手に入れるのに一気に近づくわけだからオレ達の基本方針としては合っている。

 

 だが、その為には念能力の向上が不可欠だ。特に四大行の最後である「発」をオレ達は習得していない。天空闘技場でオレがステラに一方的にやられたのも、恐らくクラピカが奴らの1人を倒したのも発が大いに関係しているはず。

 

 そしてそれを知るにはクラピカに聞くのが1番手っ取り早いということをゴンに話すと、オレ達の次の行動はクラピカと連絡を取って会うことに決定した。

 

 

 

 クラピカの説得は一筋縄では行かずなんとかまた連絡を取るという言葉をクラピカから引き出したオレ達だったが、そんな中でゴンが突然言い出した。

 

「そうだ、ステラはどうだろう?あの人ならオレ達に協力してくれるんじゃない?」

 

「ステラか?確かにアイツなら念について教えてくれそうだが……」

 

 だが、彼女が今どこで何をしているのかは分からない。天空闘技場にいた時に交換したから一応連絡先は持っているが、クラピカと違って彼女はヨークシンにいるわけではないだろう。今から連絡して教えに来てくれるか…いやいくらお人好しな彼女でもそこまではしてくれないだろう。

 

「それとも、ゴンはアイツがヨークシンにいるって思うのか?」

 

「うん、なんとなく……だけど」

 

「ま、聞くだけならタダだしな。電話してみる」

 

 あいにく、ゴンが携帯電話を買ったのはヨークシンに着いてからのことだからステラの連絡先を知ってるのはオレだけだ。

 

 クラピカとは違ってステラはオレからの電話にあっさりと出た。

 

 

 

ーーーCASE2 本心ーーー

 

 

 

 ヨークシンの空港に居た俺は携帯電話が鳴るのに気付いて確認する。てっきりカイトにメールで入れておいた、カキン帝国生態調査に加わりたいという要請に対する返事かと思っていたのだがそうではなく、発信元がキルアであることを少々不思議に思いながら俺は電話に出た。

 

「キルアか?どうした?」

 

「いや、こっちの方で色々困ったことがあってさ……ステラは今どこにいんの?」

 

 その言葉に返答する前に俺は思案する。恐らく彼らは俺にヨークシン編の味方となって欲しいのだろう。確かに彼らの立場となって考えれば俺はまあまあ頼れるポジションかもしれない。

 

 だが、そう簡単に返事をするわけにはいかない。俺がヨークシン編に関わりたくないのはこれまで散々語った通りである。

 

 …かと言って彼らを騙すのは気が引けると感じた俺は、ある程度本心で語りつつ彼らを拒否しようと心に決めた。

 

 

 

「俺は今ヨークシンの空港にいる。後1時間後にはここを発つつもりだ」

 

「えっ! マジで!? じゃあもし予定が空いてるなら飛行船はキャンセルしてオレ達に協力してくれないか!?」

 

「…協力か。幻影旅団を捕えること、をか?」

 

「な!?なんで知って……」

 

「俺は彼らと相対する気はない。俺は幻影旅団のメンバーの数人と知り合いなんだ。キルア達と協力して彼らに敵対する気はないし、勿論彼らに協力して非道な行いをするつもりもない」

 

「…そうか、変なこと聞いて悪かった。ゴンがステラと話したいみたいだからゴンと代わる」

 

 キルアと交代してゴンが電話に出てくる。何を言われようが俺の本心は変わらない…つもりだった。

 

 

 

「ステラは何も思わないの?」

 

「え?」

 

「オレは悲しかった。あいつらだって仲間は大切なのに、どうしてあんな酷いことをするんだろうって」

 

「俺は……」

 

「オレはあいつらを止めたい。そして、それは多分ステラも同じことを思ってると思う」

 

 

 

 ゴンの言葉にハッとする自分がいるのは確かだった。それでも、今の俺は……

 

「…そりゃ……止めれるなら止めたいさ。だがアイツらは俺やお前達が止めようとした所で止まんねぇよ」

 

「そして、同じようにお前達も止まんねぇ。俺がお前やクラピカを止めようとしたってお前達は止まんねぇんだろ?」

 

「…俺が止めたいのはお前達もだ、なんで親しい人達と世話になった人達が争うのを見なきゃいけないんだ!」

 

 

 

 確かに幻影旅団は極悪非道で滅ぶべき集団だ。そこに疑う余地はない。

 

 だけどクロロやマチが俺のことを心配してくれたのは事実であり、実際俺には彼らに流星街から外に出して貰った恩義がある。そんな人達に弓引くことなんか俺にはできない。

 

 そして、たとえ彼らへの恩がなかったとしても俺の思いは変わらないだろう。彼らにも人となりがあって魅力的な人達であるなんてことは、俺がこの世界で1番分かってる!

 

「分かったらさっさと電話を切ってくれ。これ以上無駄な問答を続けるつもりはない」

 

 

 

 原作が崩壊するとか、俺自身のリスクがあるとか、そういう懸念を除けば、俺がヨークシン編に介入したくないのはあの結末が旅団とゴン達の双方にとって最良の落とし所であると俺は思ってるからだ。

 

 確かに幻影旅団にとってパクノダを失うのは大きな痛手であろう。除念すれば何の意味もなくなるクロロの無力化だって幻影旅団を止めたいゴンや復讐したいクラピカにとっては成功とは言い難い。

 

 だが仮にお互いがあれ以上の成果を求めたら原作を遥かに超える死者が出るだろう。もしパクノダを生かそうとすればクラピカの目的は完全に失敗するし、かと言ってゴンの囮作戦を完全に成功させて人質交換自体を成立させなくすると旅団の制御が出来ず抗争は激化するに違いない。

 

 人質交換の形に持ち込みクロロを封じつつ生存させること、俺が介入した所であれ以上の成果は出せない。俺がやるべきことは速やかにヨークシンから離脱してあの流れを崩さないこと以外存在しない。

 

 

 

「…ステラは諦めるの?」

 

「……」

 

「それは逃げだよ。ヒソカの時とは違って今のステラは自分のやりたいことから逃げてる」

 

「…自分のやりたいことだと?俺が今1番したいことはこの電話を切ってお前達の見るに堪えない争いからおさらばすることだ!」

 

 電話相手が諦めるように願いながら俺は声を振り絞る。

 

 

 

 俺は忘れていた。俺なんかと違って電話の向こうの声の主は誰よりも諦めが悪い奴であることを。

 

「違う!ステラが本当にオレ達とクモに争って欲しくないんだったら、ステラがやるべきことはそんなことじゃない!」

 

「オレ達とアイツら両方の邪魔をすることだ!」

 

「「はぁ!?」」

 

 

 

 多分その声は俺だけじゃなく電話の向こうにいるキルアからも発せられたものだと思う。俺達の困惑を置き去りにゴンは捲し立てる。その言葉が続くにつれ嫌な予感が膨れ上がる。

 

「それをせずに争いを見たくないから見ないフリをするなんて、俺の知ってるステラのやることじゃない」

 

「やめろ……!」

 

「オレの知ってるステラはあのヒソカに負けることに本気で悔しさを感じる人だった!そんな人が諦める姿なんか、オレは見たくない!」

 

 その説得の仕方は俺にとって最も残酷な形だった。だがゴンが残酷な奴であることなんて、俺にはこの世界に生まれる前から分かっていた。

 

 

 

ーーーCASE2 身勝手ーーー

 

 

 

 ゴンの行動原理は単純明快だ。誰よりも純粋に自分のしたいことをするし他人にも自分の望むことをして欲しい、彼は誰よりも身勝手で自己中心的な人間だ。彼自身に欲が少ないからそうは見えないだけで、もしもゴンの欲望が人並み以上にあったら彼は正真正銘の化物に成り果てていただろう。

 

 だから彼が他人を説得する時は他人の都合なんて考えない。俺を説得しているのも全てはゴン自身が俺にそう期待しているからだ。

 

 

 

「ステラ!」

 

「くっ…!」

 

 もしも俺がこの世界に生まれただけのただの人間なら、たった1人の少年の期待を裏切ろうが気にも留めなかったに違いない。でも俺はその少年がこの世界の主人公であることを知ってて、彼は俺にとってはヒーローの1人なんだ。

 

 彼に失望されることがどんなに恐ろしいことなのか、それを理解できる人が俺以外に存在するとしたら、それは彼の隣にいるキルアだけかもしれない。

 

 

 

 この形に持ち込まれた時点で断ることはできなくなったのを薄々悟った俺は、今度は別の方向から断り方を探す。

 

「…いいのか?俺はお前達にクモの奴らが捕まらないように裏切るかもしれないんだぞ?」

 

「それは困る!……けど実は、オレはそうした方が良いんじゃないかって思ってるんだ」

 

「おい!!」

 

 ゴンの隣からキルアが怒鳴る声が聞こえるが、ゴンは苦笑いしながら続きを話す。

 

「オレだってクラピカがアイツらと殺し合う姿なんて見たくない。もしステラが裏切ってもそれが本心から行動したことなら、その裏切りは皆を止める為に必要なものなんだとオレは思う」

 

 その丸投げとも無責任とも言える言動を、俺は彼からの信頼と捉えてしまい無意識に口元が緩む。

 

「…クソッ、期待だけしといて後は人任せか!つくづく我儘な奴だなお前は!」

 

「ご、ごめん」

 

 やっぱりコイツには勝てない、と思いつつ溜め息を吐く。

 

「はぁ……分かったさ。お前達に協力する」

 

「ホント!?」

 

「だけど忘れるなよ、俺はお前達とは目的が違うんだ。あとお前は一旦キルアに叱られろ」

 

 

 

 電話を切って溜め息を吐きながらこの後何をすべきかを考える。先程も言った通りヨークシン編は原作の結末が最良である、というのが俺の認識だ。

 

 だから俺がやるべきことは最低でも人質交換の形にはしつつ、クラピカと旅団双方のダメージを原作以上に抑えるように立ち回ることだろう。

 

 そうなると俺が介入すべき場面は……

 

 

 

「思い浮かんだはいいけど…もし失敗したらお前を恨むからなゴン……」

 

 気怠げに呟きながら俺は立ち上がった。

 

 

 

ーーーCASE3 5本の鎖の目的ーーー

 

 

 

 ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ、ついでに俺。数ヶ月前にトリックタワーを攻略した面子での久々の再会だったが、再会を喜んでいる場合ではない俺達は幻影旅団に対抗する手段をクラピカから聞いていた。

 

「制約と誓約…」

 

「念は精神が大きく影響する能力。強い覚悟で念を使えばそれだけ力が上がる」

 

 具現化した鎖に込められた強いオーラを見せながらクラピカはゴン達に語る。一応俺も念の熟練者として彼の説明の補足をする。

 

「だけどそれは本来の力じゃない。覚悟を強いる為に定めたルールは使用者に別のリスクとなって現れる」

 

「そうだ。私は念能力の大半をクモの打倒の為に使うことを誓い、その為のルールも設けた」

 

 そう言いながらクラピカは自分の胸を指す。

 

「私がクモではない者を攻撃した場合、私は命を落とす。そのルールを守る為、今も私の心臓には念の刃が刺さったままだ」

 

「!!」

 

 尋常ではないクラピカの覚悟、それを見た一行は冷や汗をかきながら話の続きを聞く。

 

 

 

 しかし、クラピカの能力を考えたら念能力の大半をクモに費やしたというのは大袈裟な話だ。

 

 彼の能力は右手の指にそれぞれ別の具現化した鎖による能力が備わっている。つまりクラピカには5つの能力がある。

 

 そして、それらの中で幻影旅団にしか使えない能力はというと……

 

 中指の鎖の能力、チェーンジェイルのみである。

 

 つまり、彼が本当にクモの為に費やしたと言えるものは彼の念能力のうちの五分の一なのである。個人的にこれを大半というのは詐欺みたいなものだと思う。

 

 

 

 ただ、クラピカの視点からこの発言の意図を読み取ろうとするなら、恐らくクラピカは中指以外の能力も対旅団を想定して作っており、たまたまその能力が対旅団以外にも汎用性が高かった、ということであると思う。

 

 例えば、小指の鎖の能力である律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)は元々はクモにのみ使う予定だったものの、紆余曲折あってそれ以外の他人にも使えるようになっている。

 

 親指の鎖の能力である癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)もまた、彼ほどの人物が怪我を治癒せざるを得ない状況を想定しているという意味でクモが仮想敵であると判断していいだろう。

 

 クラピカは幻影旅団を相手する上で仲間を必要としていない。だから他人と協力して役割を担うのではなく、自分1人でクモを追い詰め、倒し、情報を引き出し、拘束する為に能力を作った。それらの能力に汎用性があるかどうかなど彼にとっては二の次だったのだろう。

 

 

 

 クラピカの目的は幻影旅団への復讐だけではない。彼は同族を弔う為に世界中の緋の眼を集めており、その為に作ったであろう能力もある。

 

 それが薬指の鎖の能力、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)だ。この能力はクラピカの集中力を極限まで引き上げて自己認識を超える情報を鎖の振動で捉えるという能力らしい(らしい、というのはクラピカ自身がこの能力の詳細を把握してないからである。この辺は念能力の面白いところだ)。

 

 この能力を使って他人の嘘を暴いたり、人や物の場所をダウジングの名前の通りに探すことができる。

 

 もしクラピカの他の4つの能力が無く、これ一本だけだったとしても余裕でその辺の念能力者を遥かに超える、と言っても過言ではないくらいにはこの能力は優秀な能力だ。ついでのように銃弾も止めやがるし……

 

 ただこの能力が説明の通りだとするなら、これはクラピカの判断力、推理力あってのものだ。彼ほどに優秀な人間が使わない限り嘘を確実に見破ることはできないし探し物もできないはずだ。つくづくチートだなコイツ!

 

 

 

 残る人差し指の能力である奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)だが、これが具体的に何のために作られた能力か俺は分からない。この能力は簡単に言えば相手の念を奪って一回だけ自分や他人に使用権を与える能力であり、ヨークシン編を終えて自分に何が不足しているか理解したクラピカがその不足を埋める為に作った能力である。

 

 それにしても、俺だって他人には言えない原作知識があって協力するにしても他人を騙さないといけない都合上1人で行動し1人で戦えるよう能力を作っているわけだが、師匠にあれだけ仲間と協力しろと言われながら1人で戦う為の能力を作るクラピカは本当に筋金入りの頑固者だ。その辺もまた彼の魅力ではあるが。

 

 

 

 まとめると彼の5つの能力とその目的は、

・束縛する中指の鎖(対旅団専用)

・癒す親指の鎖(恐らく対旅団を想定)

・律する小指の鎖(対旅団を想定)

・導く薬指の鎖(恐らく緋の眼を探す為)

・奪う人差し指の鎖(1人で戦う為)

 という感じであると俺は推測している。これなら大半(五分の三)をクモに費やしていると言っても大袈裟ではないだろう。

 

 こうやって見るとさ…やっぱクラピカの能力多すぎだし強すぎんだろ!

 

 

 

ーーーCASE4 偽物の死体ーーー

 

 

 

 クラピカの講義も終わると俺達の議題は今後どうするのかに移る。幻影旅団の偽装死体に騙されたクラピカはリーダーが死んだことでクモへの復讐は置いて仲間の眼を集めることに専念しようとするが……

 

「…どうしたクラピカ?」

 

「ヒソカから?」

 

 動揺するクラピカにキルアが尋ねる。

 

「ああ、…死体はフェイクだと。奴らの中にそういう能力者がいるらしい」

 

「なるほど、分身を作る能力ね。いや分身となると本人に似た形状のはずだから、この場合は他人のコピーが正しいか」

 

 クラピカ達の視線を感じながら敵の能力を推察する。いや、流石に俺じゃないからね?

 

「具現化能力者であればそのようなことができるのはステラが示していたのに…!何故こんなことに頭が回らなかったんだ……!!」

 

 彼らしくもない失態にクラピカは酷く狼狽する。ようやく復讐できると思った矢先の仇の死は、彼にとって冷静でいられない程の衝撃を与えたのだろう。

 

 

 

 クラピカの受難はそれだけではない。偽装死体から幻影旅団が生体データを持たない流星街出身の組織であることが発覚したのだ。流星街を利用するマフィア達にとって流星街との軋轢は避けたいらしく、マフィアンコミュニティは賞金を撤回した。

 

「…実は俺も流星街出身なんだよね。旅団の中には顔見知りもいる」

 

「なんだって!?アイツらについて詳しく知ってるのか!?」

 

 驚くレオリオの問いに首を振って答える。

 

「いや、世代が違うから俺もアイツらが何なのかはよく理解してないんだけど」

 

「…そうか」

 

 クラピカは最初から知っていたかのように頷く。この様子だと多分ヒソカから俺と旅団の繋がりについて聞いていたっぽいな……

 

 

 

「あ!じゃあヒソカも流星街出身ってこと!?」

 

「確かにアイツはステラの知り合いで幻影旅団だな」

 

 ゴンとキルアの言葉を否定する。もしそうだったら話はすこぶる簡単だったんだけどな……

 

「いや…アイツは野生の変態だ。どこ出身かは俺も知らねぇ」

 

「野生の変態」

 

 

 

ーーーCASE5 役割ーーー

 

 

 

 その後は一度マフィア側に連絡を取るクラピカと賞金が撤回されたことでクモを狩る理由が消失したゴンとキルアが席を外すが、結局は仲間が居なくなろうと復讐を続ける以外ないクラピカにクモを止めたいゴン達が協力を申し出ることになる。

 

「私の考えている計画はシンプルだ。撹乱役が奴らの目を盗んだ隙に私がパクノダを捕らえ車で連れ去る。この計画には奴らのアジトを張る中継と撹乱、それと私と行動を共にする運転手が必要だ」

 

「中継はオレがやるよ。この中だとオレが1番その手の経験がある」

 

「ターゲットはパクノダという女のみ。それ以外は無視で気付かれないことを優先に」

 

「OK、無理はしない」

 

 3つの役割の内の中継役においては、キルア以上の適任はいないだろう。そんな中レオリオが意を決して口を開く。

 

「そ、そうなると車の運転手はオレか?ステラは運転できないよな?な?」

 

「俺は撹乱役をやるから安全な運転手はレオリオがやっていいよ」

 

「い、いや別にオレは運転手が1番安全そうだから立候補したわけじゃないぞ!?」

 

「じゃあオレは何をすればいい?」

 

 3つの役割から溢れたゴンがクラピカに尋ねる。クラピカは一瞬だけ俺の方を見て答えた。

 

 

 

「ゴンはステラの監視を頼む」

 

「!?オイそれって……!」

 

「いや、その配慮は当然だレオリオ。俺だってクラピカの立場なら俺なんか信用できない」

 

 敵と知り合いである人間をここに連れている時点でクラピカが俺のことを十分信頼しているのは分かってる。だからこそ、その信頼を裏切ることになることに俺は嫌気が差した。

 

「…監視と言っても、私はステラが奴らの味方とは思ってない。ゴンにやって欲しいことは、ステラの撹乱が上手くいくようにサポートすること、いざという時ステラが躊躇した際に彼女の代わりになること、以上の二つだ」

 

「ステラの代わり……」

 

「ちょっと待った!撹乱役はかなりヤバい役だろ。ステラならともかく、ゴンには危険だ」

 

「それはやり方次第だな、直接対峙しなくても彼らの意識を逸らせばいい。詳しいやり方は2人に任せるが、最低0.5秒、できれば1秒時間を稼いで欲しい」

 

 

 

 ゴンはクモ達から時間を稼ぐことがどんなに難しいことかを知っている。なにせ昨日は一歩も動くことさえできずに捕らえられたくらいだ。

 

 だからなのか、ゴンのその提案は彼らしい常人には思い付かないアイデアでありながら、その本質は失敗した時の保険という彼らしくない後ろ向きなものだった。

 

「クラピカ、俺にも念の刃を刺してよ」

 

「「!?」」

 

「ゴン!!話を聞いてたのか!?旅団以外の者を攻撃したらクラピカは死ぬんだぞ!?」

 

「声がでかい!」

 

 

 

ーーーCASE6 律する小指の鎖ーーー

 

 

 

 先程も説明した通り、ジャッジメントチェーンは元々はクラピカがクモにのみ使用すると決めていた能力だ。それが何故他の人間に使えるようになっているのかというと、クラピカが誓約として自分自身に能力を使おうとした際、それがクモしか攻撃してはいけないという条件を破るかもしれないと懸念したからだ。

 

 クラピカの能力の制約は彼らしく几帳面と言うべきか、自身の能力を使ってでも制約と誓約を履行しようとしている。

 

 普通ならその能力を作る際、例えばチェーンジェイルなら「クモ以外を狙って発動できない」というような発動条件を決めるだろう。それならわざわざジャッジメントチェーンで自分の心臓に念の刃を撃ち込む必要もない。

 

 恐らくそれでは覚悟が足りない、とクラピカは危惧したのだろう。そこで彼は制約を破った時に自らの命も絶たれるようにしたのだと思われる。

 

 

 

 だが、彼の自分で決めたルールを遵守しようとする性格と命さえ惜しまない覚悟は念能力との相性が凄まじい。その制約によるリターンは直接関係しているチェーンジェイル以外にジャッジメントチェーンにも影響している、と俺は思っている。

 

 ジャッジメントチェーンは対象の心臓に鎖のついた剣を刺してルールを宣告しそのルールを破れば鎖が心臓を潰す能力だ。クモ以外に使えるようになる為に、緋の眼の状態となってエンペラータイムを発動することを制約とした。

 

 このルールを定めるというのは具現化系が得意とする分野だ。具体的にはナックルのハコワレやヂートゥの鬼ごっこ空間(仮称)などがあるが、これらの能力は全て自分にもそのルールが適用されることが重要だ。

 

 考えてみればすぐに分かるだろうが、「自分が守る気の無いルールに説得力があるか?」と聞かれたらその答えは否だろう。だからその手の能力のルールには必ず使用者も則らなければならない。でなければルールの拘束力は格段に落ちるはずだ。

 

 そしてクラピカはこのジャッジメントチェーンを使うにあたり、まず自分がその能力を使ってルールを守らなければいけない立場にあるのだ。その覚悟の強さはジャッジメントチェーンそのものにも影響していると俺は考えている。

 

 

 

 ゴンの提案は結局実現しなかった。何故ならパクノダに触れられた時点でゴンが死ぬようにルールを定めるのは戦略的に間違っているからだ。たとえ秘密を握られたとしても後から口を塞げばいい。その為の反撃のチャンスをむざむざ潰すのは間違っている。

 

「…でも、だったらなんでリスクが増すだけの話をオレたちに…?」

 

 ゴンの問いにクラピカは答える。その姿に俺はクルタ族の誇りというべきものを感じた。

 

「これはお前達の覚悟に対する私なりの礼だよ。仮にお前達から秘密が漏れたとしても、私は何一つ後悔しない」

 

 

 

「私はいい仲間を持った」

 

 

 

 彼の心からの信頼に心が張り裂けそうになりながら、俺はゴンと作戦を話し合う為に席を外した。

 

 

 




 ハンターハンターを読んでて個人的に思うのが、主人公達が自身の理屈に沿って行動する中で度々理屈と感情の板挟みに遭ってバグる描写が性へ…魅力的であることですね。
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