今更ですがハンターの英名ってあの世界独自のものなのか、そうとは読めんやろって名前が多いんですよね。視点変更で英名を使うのは失敗かもしれません。
今回のはパクノダです。いやそうとは読めんやろ…
ーーーCASE1 神の左手悪魔の右手ーーー
作戦を開始した俺は現在、街を爆走する幻影旅団を追跡していた。
旅団の方は占いの内容から鎖野郎がクルタ族であることに着目し、彼の目的が自分達への復讐以外に同胞の瞳である緋の眼にあると看破。今はコルトピの能力を利用して既に売り払った緋の眼のコピーを追いかけているところだ。
コルトピの能力であるギャラリーフェイクは左手で触ったもののコピーを右手から具現化するというものである。コピーは24時間で消える、生き物は動かない物体としてしかコピーできない、念能力によってできたものはコピーできないといった制約はあるものの、本物を触ることでコピーの位置を探知できることやコピーの数や大きさの制限がないこともあって具現化系能力として最強と挙げられることも少なくない。
以前はこの能力について具現化系特有の特殊な能力はないと考察したが、それを踏まえても超が付くほど優秀な能力だ。
具現化したものに特殊な能力がないというのは戦闘面で他の能力に劣るかもしれない。だが念能力者を殺すなら殺傷力のある武器を使えばいいわけで、この能力ならそんな武器を量産して即席の軍事力を作ることだってできる。
その点で言えば即席で大量の人力を生み出せる俺とは相性が良い。これ以上俺と相性の良い能力者を挙げるとするなら選挙編と継承戦編の間に登場した銃を具現化する能力者であるゴレムくらいだろう。
ふつう具現化系能力者がものを具現化する場合、イメージ修行が必要になる。このイメージ修行というのがとても厄介で、たとえば銃を具現化できる人間はそれだけ普段から銃を使い慣れ身近に感じる人間のはずだが、そんな人間がわざわざ普段使う銃を具現化することに利点があるかというと微妙なところだ。そういう点でゴレムと似たような能力者は探しても少ないと俺は思っている。
だが、コルトピはそのイメージ修行を省略することができる。それが制約と誓約による産物なのか、コルトピ自身の特性(たとえば一度見て触れたものを脳内で完全再現できる等)なのか、はたまたそれ以外の要因によるものなのかは分からないが、それは具現化系能力者の中では隔絶した技能だ。
ーーーCASE2 円の機能ーーー
そんなギャラリーフェイクだが、特に優秀と言われる部分に具現化したものが円の効果を持つというものがある。ビルのコピーを建ててキルアを撹乱した他、本物の緋の眼を触ることでコピーした緋の眼の位置を探り鎖野郎を探すなど今の展開に彼の能力は大きく関わっている。それはそれだけ能力が及ぼす影響力が高い…端的に言えば有能だという証左でもある。
この円の機能について個人的に思うのが、具現化したビルに入った侵入者を感知することと、本物を触ることでコピーの位置を探知することは別の能力なのではないか?ということだ。なぜそう思うのかは円がどういうものかを考えると自ずと辿り着く。
円は体に纏うオーラを広げることでその中にある物や人を探知できるようになる能力だ。1m以上という円の定義を満たせていないキルアもオーラに入ったものを感知できるため、オーラの中に入ったものを感知できるのはオーラそのものが持つ特性だと言える。
コルトピがコピーしたビルは具現化したものであり、当然ビルはオーラを纏っているはずだ。そのビルが入った者を感知するという円の効果を持っているのは、先程のオーラの持つ特性を考えれば当然のように思える。
同じ理屈で、具現化系や放出系の能力者が作るのを得意とする念空間に関してもこのビルと同じで円の効果を持っているはずだと推測できる。
だが、本物を触ることでコピーの位置を探知する能力に関してはオーラの特性からは説明できない。そして具現化したものを自らと離す能力であるジャッジメントチェーンやカウントダウンはこのような探知能力を持ってないことから、こちらの能力はギャラリーフェイクが持つ固有の能力だと考えられる。こちらの方にだけ本体を触るという発動条件(つまり制約)があるのも能力の一部であるという考えを補強している。
ただ、元々かなり特殊な能力を持つナックルの能力ハコワレも同様の探知能力を持っていることを考えると、探知能力はそこまで実現するのに難しい能力ではなくちょっとした制約で付けられるくらいの能力のはずだ。コストが低いからこそギャラリーフェイクはあれだけ大量、大規模にその能力を行使できるのだろう。
ーーーCASE3 刻印ーーー
そんな取り止めのないことを考えていたからか、当然のように旅団に捕捉されてしまった。いや俺が捕まることまでは至って計画通りなんだけども。
「あれステラじゃん。まだヨークシンにいたんだ」
「ちょっとヒソカに用事がありまして。直接会いたかったんだけどアジトに行くのは怖いし、たまたま会えるかと思ってこの辺を彷徨ってたんです」
「ふーん、残念だけど当分はヒソカはアジトから出ないよ」
「あらら、このタイミング逃すといつ会えるか分かんないんだよな……」
とりあえずマチの問いに答えながら言い逃れを図るがあんな別れ方をしといてクロロが俺に疑念を持たないわけもなく、鎖野郎との繋がりを疑われて捕まってしまった。いや俺が捕まることまでは至って(以下略)
「マチ、お前の勘だとステラは鎖野郎の味方か?」
「団長はステラを疑ってんの?うーん、そう聞かれたら微妙な気もするんだけど」
クロロの問いにマチが曖昧に答える。まあ俺自身クラピカの味方かと聞かれたら微妙としか言えないから……
マチの答えを聞いたクロロは電話でフィンクスを呼び出す。人質を管理する為に新たに人員を配置するのはクロロらしい抜け目ない手腕だ。どうしてこんな優秀なリーダーがいるのに下はチンピラのノリでタイマンとかやってんだ。
「フィンクスをベーチタクルホテルに呼んだ。そこを集合場所にする。…だがその前にマチ、シズク」
「2人でステラが何か隠してないか調べろ。そのローブも脱がせ」
「了解」
「えっ!」
思ってもみなかったクロロの指示に俺は驚く。
だが確かに言われてみれば俺が何か隠してないかを調べるのはクロロからすれば当然だ。アイツは俺の能力でどんなことができるかを知っているわけで、それに対する警戒をして当たり前だわ。
「ち、ちょっと待ってくれませんか!?そういうのはせめて、こう、人のいない場所でというか……」
「なにバカなこと言ってんのさ。さっさと脱ぐ」
シズクに手足を押さえられながらマチにローブを脱がされる。
いや別に見られたらマズイものを隠してるわけではないけども!いや見られたらマズイと言われたらマズイかもしれないけど!(混乱)
「うわ、なんでアンタローブの下に何も着てないの?」
「下着は着てます!むしろこんな夏にクソ暑いローブの下に何枚も着込んだら倒れるもん!」
「じゃあそのクソ暑いローブ着なきゃいいじゃん」
「うぐっ」
天下の往来でストリップをかましている俺をマチは呆れながら正論で一刀両断する。
でもクロロだって俺と似たような服装じゃん!というツッコミは内心に留めといた。俺だって死にたくないからね。
クロロの懸念はなんとなく推測できる。俺の能力を知っているアイツは今の俺が分身である可能性に気付いている。そして以前流星街で実演したような他の能力とのコンボによる罠を仕掛けていることを懸念したのだ。
仮にそのような能力が仕掛けられていると考えた時、俺の体にはその能力が発動していることを示すなんらかの印が刻まれている可能性が高い。それで俺の全身を隠しているローブを剥いで体にその印が無いかを確認したのだと思われる。
この印についてだが、一番分かりやすい例を挙げるならそれはクロロとも関わりの深いサンアンドムーンだろう。この能力で俺を爆弾化した場合、俺の体には起爆のコードとなる太陽と月の刻印が押される。
他の例だとゲンスルーのカウントダウンも分かりやすいだろう。あれは対象に能力を発動した際に発動部位に爆弾とその起爆を予告するタイマーが具現化する。即座に爆弾が出てきて爆発するのではなく、爆弾とタイマーが能力の発動の印となるのだ。
これは俺の完全な推測になるが、爆発という殺傷能力の高い攻撃をリスクの低い遠距離から行うのに予告や印もなしに発動するのでは制約が足りない。身も蓋もない言い方をするならそれはズルだ。
その条件をできるだけ変えずに能力を実現する上で一番制約として負いやすいリスクが他者に能力の発動を印として教えることなのだろう。継承戦編でクラピカとビルが説明した言い方に則ると、印のない能力は行動制約のリスクが低いと説明できる。
クラピカとビルが説明した時の内容は具現化したものが念能力者以外の人間に見えるかどうかに関するものだった。要は他人に見えないように具現化した能力は能力を行使する上でバレるリスクが低い為、能力の規模も小さくなるはずというものである。
こちらの話に適用すると、そのような印のない仕掛けは威力もたかが知れてるはずだと説明できるわけだ。幻影旅団ほどの猛者達にダメージを与えられるとは思えない。それでクロロも俺の体にそのような印が無いかを確認するだけに終始したのだろう。もちろん俺がなんらかの武器を隠し持ってるかも含めてな。
気恥ずかしさで熱を帯びた体を夜の風で冷ましながら、ローブを着直した俺はクロロ達によってベーチタクルホテルへと連行される。
「ステラ、分かってると思うけど暴れないでよね。アタシだって顔見知りは殺したくない」
「大丈夫だって……」
目を閉じて答える。残念だけど暴れるのまで込みで計画なんだよね。
ーーーCASE OF PHALCNOTHDKーーー
緋の眼を持っていた鎖野郎の仲間であるスクワラという男を殺した私達が集合場所であるベーチタクルホテルへと着いた時、団長達は1人の少女を捕まえていた。
確か数日前に団長がアジトまで招き入れていた子だ。どうやら追手は彼女であり、団長は彼女が鎖野郎と繋がっているかどうかを私に確かめて欲しいようだった。
「OK、何を聞けばいい?」
団長は依然として目を瞑り沈黙を保っている少女を見ながら考えて答える。
「何を隠しているか? それを聞いてくれ」
「確かにその聞き方ならこの子が敵かを判断するのに一番手っ取り早いし、敵であったとしても知りたい情報はほぼ全て手に入るわね」
能力の使い方に我が能力のことながら感心しているとそれまで口を閉ざしていた少女が口を開いた。
「心を読む能力者ですか?対象に尋ねることがトリガーなら相当優秀ですし特質系?でも特質系以外でもどういうイメージで実現するか工夫すれば実現できる範疇なのかな?例えば具現化系能力者ならそのような機械や仕掛けをイメージできれば可能な気もしますし、強化系ならクトゥルフTRPGでいうところの超心理学、放出系なら対象の心の声を放出、操作系なら対象を操作して喋らせるというイメージで……」
「…そういえばアンタは昔から念能力のことになると饒舌になる子だったわね」
それまでの沈黙を破って私の能力について考え始めた少女にせっかくだから簡単に自分の能力を教える。どうせ能力を使う以上どんな能力かは自ずと分かるし、特に私の能力を心を読む能力だと誤解する者は読まれないようにと無駄に無心になろうとするから、この手の説明は慣れたものである。
どこかから聞こえてくるラジオの音が7時まであと1分であることを伝えていた。
罠に嵌められた。少女に能力を使った直後に停電が起きたのだ。
私は判明したその事実に驚きを浮かべることもできずに後頭部に強い衝撃を受けて体勢を崩す。その後突然真横に現れた何者かによる攻撃で私は吹っ飛ばされた。後ろではマチのくぐもった声が聞こえたことから彼女も同様の攻撃を受けたと認識する。
その後、円を使い位置を把握したらしいノブナガが刺客と何合か打ち合うような音が聞こえたが、大きな破裂音の後にはその音も聞こえなくなった。
暗闇に目が慣れ始めた私達が辺りを見渡すと、そこには今の襲撃などなかったかのように刺客は消え去っていた。しかし、今の襲撃は確かにあったことだと告げるかのように団長も消え去ってしまっていた。
「パク、平気?こっちはアバラ何本か折られたけど」
「…ええ、痛むけど行動には支障ないわ。それよりも…」
「待て!パクノダ、オメーにだ」
肉体的なダメージと精神的な動揺で痛む頭を押さえながら、私はその事実を皆で共有してどういうことかを考えようとしたが、ノブナガによって止められる。
ノブナガから渡されたメモには少女の記憶を話せば団長を殺す旨の内容が書かれていた。メモの記憶を読み取って鎖野郎が仕掛けた罠について全て分かった私だったが、その一点だけが謎を更に深めてしまった。
その元凶である少女の方を見る。彼女は先程と同じ場所姿勢で依然として拘束されており、停電前から一歩も動かなかったことを示していた。
少女の記憶が読めなかった。
私の能力は記憶を読むというもので、先程も少女に説明したように無心になることで防げるような代物ではない。私の能力で読めない人間など存在しないと言ってもいい。
だから少女の記憶が読めなかったのには彼女の能力によるなんらかのカラクリがあるはずだ。そのカラクリが何なのかはひとまず置いておくとして、問題は私の能力を少女が対策していたという事実を鎖野郎は知らない可能性があるということだ。それが意味することとは……
「パク、これからオメーは一言も話すな」
ノブナガの指示に頷く。メモの中身を見る限り、鎖野郎は記憶が読まれていると思ってるはずだ。だが実際はそうではなく、人質の能力について鎖野郎は知らない…もしくは知っていても能力を使っているか分からない状況にあると考えられる。
「…この杖、さっきまでは落ちてなかったよね?」
「それは暗闇の時に襲ってきた奴が使ってた武器だ。俺がそれごと奴を斬った瞬間に奴は消えた。恐らくは念能力を使った瞬間移動だろう」
シズクが拾った杖に触れて能力を発動する。勿論先程の推測は鎖野郎のブラフである可能性も十分にある。だからまずは情報を集める必要があった。
「瞬間移動ができる能力者ってこと?」
「多分な。人質を助けるのが不可能だと悟り自分だけ脱出したわけだ。そして団長を人質にしてトレードに持ち込んだ。そう考えると辻褄が合う」
「…アタシはそうは思わないけど」
杖の記憶を読んだことで暗闇の中で何が起きたのかは分かった。
この杖は停電の直後に以前捕まえた緑服の子供が投げたものだ。彼らも直接の関わりがなかっただけで鎖野郎の味方であることは分かった。だがそんなことより、そこから先に謎の答えが隠されていたことが私には重要だった。
「能力がなんであれ、今の俺達にできることはこのまま鎖野郎からの連絡とフィンクス達の到着を待つだけだ」
私の後頭部へと直撃したその杖を受け取ったのが人質の少女だったのだ。いや、厳密に言えばその少女は偽物…彼女の能力によって作られた分身であり、それは私とマチを薙ぎ払った後にノブナガによって杖ごと斬られて破壊された。大きな破裂音はその時の音だったというわけだ。
分身を作る能力、それなら私の記憶を読む能力をすり抜けたカラクリも説明できる。
そもそも私達が現在人質に取っている少女そのものが分身なのだ。質問をしてその記憶を読む能力は人にのみ使える能力である。物の記憶を読む場合は質問はせずその物に起きた記憶を読む為、私の中では物として判定された分身の記憶は人のようには読むことができなかった、ということか。
…もし人質が分身だったとしたら、彼女に人質としての価値など存在しない。つまり暗闇に乗じての奇襲は人質を助ける為ではなく、最初から団長を攫う為のものとなる。
頬を伝う汗を拭う。だとしたらマズイ。人質に価値がない以上、鎖野郎が団長を殺さない理由がない!
だが今それを話したところでどうなる?どちらにしろ鎖野郎は団長を連れ去った以上、今から追いかけたところで団長の死は確実!更に鎖野郎の能力も分からない以上、下手に追っても団長以外にも犠牲者は出てもおかしくはない……
貴方ならどうしますか?団長…!!
「パク!余計なことを考えなくていい」
マチに声を掛けられて思考を中断する。
そうだ、どちらにしろ今は行動する為の判断材料に欠けている。鎖野郎からの連絡を待って、そこで団長の生存を確認すれば憂いはなくなる。
停電から復旧したホテルのロビーは人の流れによって慌ただしくなっていた。
フィンクス達が来たのとほぼ同じタイミングで鎖野郎からの着信が来た。既に人質に危害を加えたと嘘を吐くフィンクスを殴りつつ電話を代わる。
「スクワラという男の記憶を引き出したな?こちらにはセンリツという能力者がいる。偽証は不可能だと思え」
盗聴をされないように私を移動させた後に鎖野郎は私に2つの指示を出した。
ひとつ目は仲間とのコミュニケーションの禁止、ふたつ目はこれから8時までにリンゴーン空港に1人で来ることだった。
ノブナガにも指示を出した鎖野郎が電話を切る前に私はどうしても気になって団長の安否を尋ねた。
「待って。団長が生きてることの証明にせめて声を聞かせて頂戴」
「…了解した」
鎖野郎は団長に余計なことを伝えると殺すと脅してから電話を代わる。
「…ヤツを信用しろ」
その声は紛れもなく団長のものだった。
もちろん既に操作系能力者によって操作されている可能性などは存在するが状況的に偽証の可能性は低いと判断し、その上で団長の言葉の意味を探る。
団長の言うヤツとは普通に考えたら鎖野郎のことだ。鎖野郎は人質交換をするつもりがあるので素直に命令通り人質を連れて行け、という意味だろう。
そもそも私達と対立している軸が鎖野郎しかない以上、ヤツという私達以外を指す言葉は鎖野郎を指していると考える他ない。
だが、私が手に入れた情報を合わせるとそうではない可能性がひとつだけ存在する。
それは「人質の少女には鎖野郎とは別の思惑があり、ヤツというのは彼女を指している」可能性だ。
彼女の能力は分身で、今現在私達が拘束しているのも本体ではなく分身である。それは私の能力が効かなかったことからして確実だと思う。
だが、それならば人質交換など成立しない。制約の都合で分身が壊されることにデメリットがあるとしても、復讐相手である団長の抹殺に比べたら些細なものだろう。
そしてそんなことは鎖野郎も百も承知のはずだ。それなのに人質交換が成立しているという矛盾、それが鎖野郎は人質が分身であることを知らないということを示している。
何故少女は鎖野郎にその事実を伝えないのか?その問いに対する答えが彼女には別の思惑があり団長もその点で彼女を信用しろ、と言った可能性に繋がるわけだ。
団長と少女は既知の関係にあった。能力について知っていてもおかしくないし、そこから現状の矛盾に気付き私と同じ結論に至るのも不自然な流れではない。
だったら私の成すべきことはひとつだ。皆には何も言わずに私はリンゴーン空港へと出発した。
ーーーCASE4 修羅場ーーー
こんにちはステラです……
「そんな条件、飲めると思ってんのか?」
「場所を言えパクノダ。コイツを殺して鎖野郎を殺しに行く」
「場所は言わないし人質を連れて行くのも私だけよ。邪魔しないで」
「ジャマ!?そりゃどっちのセリフだコラ!」
「行きなよパクノダ。ここはアタシ達が止める」
「止める?なめてるか?」
こちらは現在絶賛修羅場中です……
旅団は今現在、クラピカの指示に従い人質交換をするのに賛成するパクノダ、マチ、コルトピと、人質交換を放棄して鎖野郎を襲撃しようとするフィンクス、フェイタンに割れ大いに荒れていた。
人数比では賛成派が多数だが、戦力という意味ではサポート役であるパクノダコルトピを抱え本人も若干サポート寄りであるマチが率いる賛成派よりもゴリゴリの武闘派である2人の反対派の方が強いだろう。どちらにしろここで戦闘に発展すれば酷いことになるのは確実だが。
「本気かよお前ら…理解できねぇぜ。頭どうかしちまったか!?」
「おそらく鎖野郎に操作されてるね。ワタシが吐かせるよ」
互いの陣営の緊張が最大にまでなろうとしている中、俺はクロロのいない幻影旅団は本当にどうしようもない集団だと呆れていた。
「…なに言ってんだか……!」
「あぁ?」
「そのまま仲間割れすることはクロロが最も忌避していたことでしょう?…掟に囚われすぎてその本質も忘れたんですか!?」
「外野の癖に偉そうに言いやがって…文句があるなら来いや。一歩でも動いたらその首へし折ってやる」
「そうやってなんでもかんでも暴力で解決しようとするからこうなってるのに……」
「……(ビキビキ)」
旅団は決して考え無しの集団ではない。確かに個人個人で見ると脳筋の人間は多いがその本質は組織力だ。彼らがゾルディック家をして手を出すべきでないとまで言われるのは、彼らが個として強いからではなく集団として強いからだ。
「クラピカは貴方達とは違う!たとえ一族の仇を目の前にしても暴力に身を任せて大切な仲間を傷付けたりはしない!パクノダさん達だって仲間が大切だからこうやって必死にクロロを助けようとしてるんだ!それを暴力で否定するのは仲間であることの否定だ!」
「いい加減にしろや勝手なことごちゃごちゃ言いやがって……!」
「貴方達だって仲間が大切だからこそ死の連鎖を止めようと必死になってるんでしょう!?」
「てめぇに何が分かる!」
フィンクスの言葉に気圧される。俺は彼らの仲間ではなく、どこまで行っても所詮は彼らを理解したつもりの部外者でしかない。彼らの苦悩に共感することはできないのだろう。
でも、だからこそ俺は……
ーーーCASE5 第二の頭ーーー
「その辺にしとけフィンクス、パクノダの好きにさせればいいじゃねぇか」
「フランクリン!?おめぇまで何言いやがる!?」
俺達の口論に終止符を打ったのがフランクリンだった。彼はその巨体と風貌に似合わず冷静に場をまとめる。
「シャル、今の状況から想定される最悪のケースは何だ?」
「えーと、団長は死んでてパクノダ達は鎖野郎に操作されてる、鎖野郎の所在は分からず仕舞いで人質にも逃げられる、かな」
「それが間違ってんだよお前らは。最悪なのはオレ達全員がやられて蜘蛛が死ぬことだ。それに比べりゃお前の言ったケースなんて屁みてぇなもんだ。違うか?」
「確かに…そりゃそうだ」
「それを踏まえりゃこのまま仲間割れを起こすのは一番蜘蛛にとっての不都合だろうが。ソイツの台詞は100%正論だ」
フランケンシュタインみたいなイカれた見た目してるのに、能力を強くする為に(しかもなんとなくで)指を切り落とすくらいイカれてるのに、言ってることが余りにも冷静すぎるフランクリンのギャップに俺は若干引きながら彼の言葉を聞く。
「パクノダ達を行かせてもしも団長が戻って来なかったら、その時は操作されてる連中を全員ぶっ殺して蜘蛛再生だ。簡単なことだろうが」
「それで気が済むならいいよ。ま、アタシは操作されてないし簡単に殺られもしないけど」
いや、むしろフランクリンはイカれているからこそ、この状況下でも冷静に仲間を殺す判断が下せるのかもしれない。そのクレバーすぎる判断能力は俺にゴンを彷彿とさせた。
どちらにせよ脳筋の多い蜘蛛の中で彼はクロロに次ぐリーダー性を持っていると俺は思う。控えめに言って頭おかしいけど……
フランクリンについてはまた機会があれば考えるとして…俺は第一の修羅場をなんとか乗り越えることができたことに思わず胸を撫で下ろした。
ここまでは殆ど原作と同じ流れだ。どうしても記憶が読まれるのが嫌だったので分身を使ったのは大きな違いと言ってもいいかもしれないが。
パクノダの能力は対象に触れながら質問をすることで記憶を読むことができるというものだ。だから分身を遠隔で操作すれば遠く離れた俺自身の記憶までは読み取れないはずだと踏んでいたが、パクノダの様子を見るにその試みは上手くいったのだろう。
人質が分身であることがバレて人質交換が成立しないという流れになるのは俺自身大いに危惧していたことだったが、奇跡的に上手くいったようだ。いやぁマジで良かったぁ……
だが、言ってしまえばここまでの流れで俺が変えられたことなんて殆どない。クラピカの能力を秘匿できたのは大きな変化と言っても過言ではないだろうが、俺がやりたいことは決してそれだけじゃない。
次に起きるであろう修羅場、俺にとっての分水嶺であろうその事態が近づきつつあることに俺は内心怯えながらパクノダと一緒にアジトを出た。
今回はいつもの考察が少なめにそれぞれの視点の思考描写を書いたせいかいつもより難産でした。読者の皆様方にちゃんと伝わってるかどうかも不安ですし…
前半は一瞬で書けたのになぁ…こういうの書ける人ホント憧れる。