コソコソ…
ーーーCASE1 説得ーーー
「おいなんでソイツがここにいる?人質交換は失敗したのか?」
幻影旅団のアジト、そこで旅団の面々に囲まれながら俺はフィンクスの問いにパクノダの代わりに答える。
「人質交換は終わりました。俺がここにいるのは伝令の為です」
「伝令?」
「俺が教えられる限りのことを教えます。だからまずは話を聞いてください」
深々と頭を下げて俺はこれからの修羅場に覚悟を決める。
俺がヨークシン編でやりたいこと…それは「クラピカの能力の詳細が旅団に伝わるのを防ぐこと」と「パクノダを死なせないこと」だ。
クラピカの能力…特にチェーンジェイルが旅団にバレるのは彼にとって致命的だ。そして同じようにパクノダが死んでしまうのも旅団にとっては同じくらい手痛いだろう。
俺としてはクラピカと旅団には争ってほしくないから、できるだけ両方の損害を抑えて情報面でのアドバンテージも無くすことで彼らの間に膠着状態を作ることが一番の目的なのである。
原作でも膠着状態そのものはクロロに掛けられたジャッジメントチェーンによって作られるが、それはクロロが除念をすれば無くなってしまう程度のものだ。そうなれば後はクラピカの能力を知った旅団は彼を簡単に仕留めるだろう。原作の方でそうなってないのは、単にヒソカが旅団にとってクラピカ以上の敵になってるからに過ぎない。
だから旅団がクラピカの能力を知らない状態を作れば、彼らにとってクラピカは依然として襲撃するにはリスクが高く、予言に沿ってヨークシンから撤退しようとしたようにクラピカに手を出す可能性はほぼ0となるはずだ。
そしてその狙いの半分は成功した。ゴン達の代わりに俺の分身が捕まることでパクノダにクラピカの能力が伝わることを防いだのだ。
だから後はパクノダが死ぬのを止めるだけだ。そしてその方法は単純明快である。
それは「幻影旅団に今の状況を教える」ことである。それができればパクノダは間違いなく死なないはずだ。
原作でパクノダが死んだ理由は、人質交換をした筈のパクノダがクロロを連れて来ずにアジトへ帰って来て、それの説明を求めた団員達に対してパクノダが能力を使って全てを教えたからだ。
パクノダはクラピカのジャッジメントチェーンによってクラピカに関する情報を教えることを禁じられていた。その掟を破ったことでジャッジメントチェーンが発動してパクノダは死んだのだ。
だったらパクノダがクラピカのことを教えずに団員達が納得できる説明をできれば死なないと考えられるわけだが、この状況をクラピカの能力を省いて説明するのはとてもじゃないけど不可能だ。仲間割れ直前まで揉めていた彼らがそのような不自然な説明で納得するとは思えない。
だから俺が伝令役となってこの複雑な状況を彼らに説明することができれば、パクノダの死を防ぐことができるはずだ。パクノダだってクラピカのことさえ触れなければ能力も発動しないので普通に活動する上では問題ないし、原作でクロロにやったようにパクノダを除念すれば後は何の憂いも無くなるだろう。クラピカの能力に関しても説明に必要なのはジャッジメントチェーンであり、最大の急所であるチェーンジェイルを隠し通すことは容易い。
だから俺のやるべきことはひとつ、彼らに全てを教えて現状を理解してもらうのだ。
「貴方達が言う所の鎖野郎…クラピカの能力によってクロロは貴方達との接触、パクノダは彼の情報の伝達を禁じられている」
「…あぁ、掟の剣ってやつだね。今ヒソカに刺さってるやつ」
「え?あ、うん」
シャルナークの確認に対して何故か生返事のヒソカを見て思い出した。今のコイツの中身はイルミだったな……
本物のヒソカは今頃クロロとのデート中だろう。まあそのデートは失敗に終わるんだが。
イルミに頼むから余計な真似はしないでくれよ…と目で訴えながら続きを話す。
ーーーCASE2 掟の剣ーーー
ちなみにこの掟の剣とは十中八九ジャッジメントチェーンのことなのだが、これについて考えるとひとつ不自然な点がある。
それはヒソカがクラピカの能力を知っていることだ。
確かにクラピカとヒソカはお互いの目的の為に幻影旅団に対して協力関係を築いていた。しかしながらその関係は情報提供を基本としたギブアンドテイクだ。団員についての情報を共有することで蜘蛛の手脚を削りクラピカは復讐を、ヒソカはクロロとのタイマンを実現するのが目的で、クラピカが自分の能力を教える意味は薄い。
だからヒソカがジャッジメントチェーンを知っていたかどうかを考えると、おそらくは知らない可能性の方が高いんじゃないかと思う。
そうなるとじゃあヒソカが掟の剣を仄めかすことができたのは何故なんだ?という話になるわけだが、これはヒソカが団員の能力を売らざるを得なかったと言いたいが為のでたらめが偶然真実と重なった、ということじゃないかと俺は思う。
もちろん偶然にしては怖いくらい正確に能力のことを言い表しているが、これはヒソカの都合を考えるとそこまで不自然な話でもないと思う。
この時のヒソカは自身の裏切り行為を書かれた予言を改竄して嘘をつく必要があった。そこで予言にあるクラピカとの密会の内容を能力によって強制されたものだと改竄した。
たとえば、ここで予言の内容をクラピカがヒソカを操作して情報を売らせた、とすればヒソカはどうなるだろうか?
ヒソカがクラピカに仲間の情報を売ったのも彼についての情報を仲間に教えられないのも、全ては彼に操作されているからだとすると説明はつく。
だが人が操作されているか否かを見分ける方法は存在する。考えつくものだと「操作系は早い者勝ち」理論で操作を上書きしようとすることだ。それで操作が失敗したら実際に操作されており、操作が成功した場合は操作されてないことが分かる。仮にそれで真実が露呈するかもしれないことを考えると掟の剣を能力をただの操作能力とするのはリスクが高い。
あくまで「自分の意思で仲間を売ったしそのことも話せないが、それは強制されたものである」とヒソカは示す必要があった。その為には操作系によって操られているのではなくより直接的に脅されていることと、その脅しは現在も機能し続けていることを伝えなければいけない。
そのことを踏まえると、掟の剣という発想に至っても不思議ではない。元々ジャッジメントチェーンも相手を操作するのではなく命を握ることで相手に強制させる能力だ。元となる発想が同じだからこそ、ヒソカも偶然似たような能力を思い付いたのだろう。頭やわらかすぎるとは思うがこの世界の人達みんな賢いからなぁ……
ーーーCASE3 信用ーーー
「だからクロロは貴方達の元に行くわけにはいかないし、パクノダもそれを伝えることが能力の伝達に抵触する為に教えられません」
「本当かパク?」
ノブナガの問いにパクノダは頷きで返す。皆がこの説明を受け入れてくれれば万事解決なのだが、それだけで終わるとは到底思ってなかったから俺も気合いを入れてたわけで……
「信用できねぇな。その女は鎖野郎の仲間だろ?そいつが親切にも鎖野郎を裏切って親切にも俺達に真実を教えている可能性と、そいつが言っているのは嘘でパクノダも操作されている可能性、どっちの方が高い?」
フィンクスの正論に俺は閉口する。彼は一見単純そうに見えるがその実論理が一貫しているのは原作の継承戦編でのノブナガとの会話を見ると分かるだろう。話に続くのは旅団において頭脳担当であるシャルナークだった。
「まあ考えられるのは断然後者だね。けどその子と団長がなんらかの交友関係にあるのは事実だよ。ここに全員が集合する数日前に団長がその子を招いてたよ」
「あとアタシもその子と知り合いね。流星街生まれだったんだけど団長が目を掛けて外に出したんだ」
「一応シズクとも仲良かったんだけど……」
「???」
「へぇ!お前さん同郷だったのか!」
マチのお陰で俺が彼らと関係性があるということが保証されたのは幸運だった。旅団の多くは流星街出身であり彼ら自身が基本的に身内贔屓のスタンスでもあるため、俺の話も少しは耳を傾けてくれるはずだ。
相変わらずシズクが俺について思い出してくれることはなかったが。
「俺にとってはクロロはお世話になった人です。貴方達のやってることに俺は賛同できないけど、かと言って害したい訳じゃない。俺がクラピカに協力したのも、双方のダメージコントロールが目的のひとつでした」
「その割には鎖野郎に比べてこちらの被害が大きい気がするがな」
「…それに関しては俺も貴方達を止めたいと思ってたから。クロロを無力化すれば貴方達は暫くは動けないはずと判断しました」
フィンクスの追及に答える。鳴らないはずの心臓の音が聞こえるような錯覚に陥りつつ、俺は出来るだけ誠実に説明を続けた。
ーーーCASE4 証拠ーーー
「オーケー、大体の言い分は分かった。話の筋は通ってるし、君の言ってる事がもし本当なら、俺達はそれを証明するのにパクノダを失うことになる」
「だが信用するには都合が良すぎるな。証明する手段はあるか?」
「えぇ、と言っても俺に出せるのはこれだけですが」
ノブナガに応じて俺は懐から携帯電話を取り出して渡した。その画面にはどこかの荒野が映っていた。
「そこに現在のクロロの姿が映っています。さっきも言った通り彼はクラピカの能力によって旅団との接触や能力の行使を禁じられています。ここには来ないでしょうね」
この画面はキルアにクロロの追跡を頼んで実現したものだ。頼んだ時のキルアがとても怪訝な顔をしながら了承したのが印象に残っている。
「これ以上の情報は出せません。クロロと貴方達との接触が禁じられている以上、電話を使って連絡するのは無理です」
「だから映像だけで我慢しろってか。シャル、この映像が偽造されてる可能性は?」
「ほぼ無いと言っていいよ。確かに画質は粗いけどリアルタイムでフェイクを作るともっと違和感が出る作りになるはずだ。場所もすぐに特定できるよ」
コンピュータを使って映像を解析したシャルナークによって証拠が偽造ではないと証明される。
「じゃあ少なくとも団長が五体満足でいるのは確定ってことか」
「団長が無事なら信じてあげても良いんじゃない?アタシ達を嵌めるなら団長は絶対殺してるはずだよ」
話の流れがこちらに傾いてきたのを感じ取った俺は口を開く。
「俺は貴方達とは直接関係ないけど、クロロには恩義を感じてます。だから彼と親しい人に死んで欲しくないんです」
「…それで、お前の能力は何だ?」
フィンクスの追及に一瞬呼吸が止まる。
「え?」
「人質から解放されたのにわざわざ伝令としてここに戻ってくるということは、この状況から逃げる手段があるんだろ?」
「逃亡手段は他の奴が持ってるかもしれないがな。俺達が団長を攫われた時の状況を考えたら、コイツの仲間に瞬間移動を使える奴がいる可能性がある」
フランクリンの言葉を受けてノブナガが自身の推測を話す。だが俺にとってはそんなことより最大級の問題が立ちはだかっていた。
「私達に信用して欲しいなら鎖野郎か最低で自分の能力でも吐くね。吐かないのなら体に聞くだけね」
フェイタンが刀を見せながら歩いてくるのを見ながら俺は思考を巡らせていた。
当然だが、今の俺は分身体である。蜘蛛のアジトに本体で突貫するとかただの自殺だ。
だが、そんなこと伝えると今まで頑張って説得してきたのが無駄になるんじゃないか?
今までのは直接顔を出してお願いしたから聞いてくれたのであって、それがただの分身ともなれば遠隔から口出ししてるのと何の変わりもないじゃないか。
かと言ってこの場で誤魔化すのが良い手段だとは到底思えない。俺はこの緊迫の状況で彼らを騙し切れるほど賢くもそんな度胸があるわけでもない。同じ状況で騙し切れたヒソカに改めて尊敬の念を感じてしまう。ああはなりたくはないが。
…だから、最初から俺に出来ることは誠意を持って話すことしかなかった。
「…俺の能力は分身です。分身体は風船でできていて、攻撃を受けると破裂する」
「成程!あの時は暗闇に乗じて分身を出して襲撃したってことか。便利だな」
「じゃあ今のお前も分身体なんだな?」
「…はい」
「じゃあもう帰っていいぞ。情報は出揃った」
フランクリンが冷淡に告げる。俺は焦燥に駆られるままに言葉を探す。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!俺を信じ」
「もうお前には用はねぇよ」
俺が最後に見たのは右手を向けたフランクリンの姿だった。
ーーーCASE5 記憶弾ーーー
「大丈夫?ステラ」
「…あぁ」
気遣うゴンに答えながら俺はホテルの一部屋で目を覚ました。俺に出来ることはやった。あれ以上俺に彼らを信用させる手段なんてなかった。だから仕方ないんだ。
「今更だけど…巻き込んじゃってごめんね」
「最終的に俺の意思で参加したんだからゴンが謝ることはないさ。それに、今回やったことが意味の無いことだとは思わない」
この後は恐らく俺の話の真偽を確かめるためにパクノダのメモリーボムを使うのだろう。そして、パクノダは……
パクノダの能力のひとつであるメモリーボムは、読んだ記憶を銃弾に込めて撃つことで記憶を読んだ相手にはその記憶を忘れさせ、それ以外の相手には読んだ記憶をそのまま伝えることができる能力だ。その希少性はパクノダの読心能力の高さも併せると恐らくこの世に二つと無い激レアと言って良いだろう。
以前考察した時はパクノダの読心能力に関して随一と評価したが、読心能力に限っては同じレベルの能力者が作中にも存在する。それは継承戦編に登場するリンチという女性だ。
彼女の能力、「体は全部知っている(ボディアンドソウル)」は質問をしながら殴ることで殴った相手の心の声を聞くことができるというものだ。発動条件が触れるパクノダと殴るリンチ、読むものが記憶であるパクノダと直接心の声が聞けるリンチで多少の使用感は異なるだろうがこの2つだけで考えたら殆ど優劣は付かない。
だが、メモリーボムも併せるとパクノダの圧勝だ。リンチは読んだ心の声を他者に伝える能力を持ってないし、相手に心を読む以上の害を能力によって加えることはできない。
この辺りはマフィアのいち構成員と幻影旅団のメンバーの差ということなのだろう。リンチも十分優秀なのは言うまでもないが。
読んだ記憶を詳細に伝えることができるのはとても優秀だ。作中でノブナガにクラピカの情報を伝えたように口頭では伝わりにくい顔立ちや声といった五感による情報を直接伝えることができる。
また、一度にまとまった情報を送ることができるので、原作での最期のように「クラピカの能力によってクロロが旅団との接触を禁じられた」という複雑な状況を一回の能力行使で伝えることができる。仮にこの能力が無い状況でパクノダがあの状況を説明しようとした場合、全てを伝え切る前に死んでいることだろう。
メタ的に考えるとパクノダの最期から逆算して作られた能力がメモリーボムであり、だからこそ俺がその説明を肩代わりすることで彼女にメモリーボムを使わせないようにしたのだ。その結果は恐らく失敗だろうが。
だが、それも当然のことなのかもしれない。元々、彼女を生存させることはヨークシン編に関わることになった時に生まれた、ただの思い付きだ。
俺がこの世界に生まれて本当に彼女を生存させる気だったのなら、俺はクロロの誘いを断らずに旅団に入るべきだった。そしてそれを蹴ったのは俺自身だ。
これは運命や原作の修正力といった言葉では決して濁してはならない、俺の選択の結果だ。だから俺もその結果を受け入れて前に進むべきなんだ。
「もしもし、カイト?数日後にそっちに着く予定だったけど1週間くらい遅れるから」
カイトとの合流を先延ばしにして俺はゴンとキルアの付き添いでGIが売買されるサザンピースオークションの会場へと向かった。
ーーーCASE OF PHYNKSSーーー
ヨークシンでのゴタゴタを終えて漸く本業に入ることができた俺とフェイタンは目的である伝説のゲームを盗む為にサザンピースオークションの会場に来ていた。勿論入場に必要である目録は奪ったものだ。俺達は盗賊であり欲しい物は奪うスタイルだからな。
そんな中で見知った顔のガキ共が現れたと思ったら即背中を向いて逃げようとしたので回り込んだ。
「つれねーな、逃げることはねぇだろ」
「逃げるっつーの……」
「安心するね。別にお前達殺る気ないよ」
今の俺達が鎖野郎を殺す訳には行かない理由を女が推測する。てっきり死後の念についてはこのガキ達に既に教えていたものかと思ってたが、俺達に協力したことといいコイツら単なる仲間ってだけではないらしい。
「死後の念か」
「そうだ」
「「死後の念?」」
「強い恨みや執着、未練を持った念能力者が死ぬと念は消滅せずにこの世界に留まるんだ。その念は行き場を求め、恨みや執着の元である対象に牙を剥く」
「鎖野郎はその典型だな。今ヤツを殺ると死後に強まった念は団長に向くだろう。そうなると念能力の使えない今の団長は邪念をモロに受けて心身をやられちまう。だから鎖野郎を殺るわけにはいかねぇのさ」
話をしている途中にフェイタンの視線に気付いてアイコンタクトを送る。今の話には嘘…正確に言えば本当のことを言ってない部分がある。
それは除念師の存在だ。念能力には他者がかけた念を外す能力者がおり、凄腕の能力者ともなれば死後の念すらも外せる。俺達が鎖野郎に手を出せないのは今だけであり、名のある除念師を探し出して団長を除念してもらうまでの話だ。
「……」
そしてそれは、目の前の無言を貫いている女にとっても承知のはずだ。それでも除念師のことについてをこのガキ共に教えないということは、この女からしても俺達が除念師を探すことは問題にならないと考えているはずだ。
本当、何を考えてるんだかよく分からねぇ女だな……
「パクノダは……あの人はどうなった?」
その女が意を決した様子で尋ねてきた。その内容はパクが生きてるかどうかだったが、俺はその質問で先日の騒動を思い出し改めて腹が立ってきた。
「生きてるわアホ!テメェ無駄にオレ達を混乱させやがって……!」
「……え?」
話は数日前に遡る。
説得しに来た女を追い出したオレ達は改めて女の話を信用するかどうかを話し合っていた。オレとフェイタンは反対派でその話は平行線の様相だったが、パクが銃を取り出したことでその空気が変わった。
「仕方ないわね……」
「お、おいまさか…!」
「何やってるのさパク!それを撃ったらアンタは…!」
それまで特にオレとマチが意見をぶつけ合っていたが、この時ばかりは2人でパクの静止にかかる。
だが当の本人はあっけからんとした様子で答えた。
「あのね、確かに私の能力を使えば鎖野郎の情報を伝えることができる。貴方達の危惧している通りにもなるわ。でも、元々あの子のせいで私は鎖野郎の情報を碌に持ってないのよ。既にノブナガに伝えた以上のものを知らないし、私が貴方達に伝える必要がないのよ」
それより、とパクは続けて言う。
「あの子が信頼できるかどうかは、私の記憶を見た方が早いわ。勿論、私の記憶を信頼できるならの話だけど……」
そう言いながらオレ達に向けてパクは銃弾を放った。
「お願いします!俺に説明をさせて下さい!」
「なんで貴女がそんなことをする必要があるの?」
「俺はクラピカの復讐を妨害したいんです」
「アイツは人を害することに忌避感を覚えるくらい潔癖で、仲間を巻き込むくらいなら1人で戦おうとするくらい繊細なんです。本来ならアイツに復讐は一番向いてないんです」
「これはただの自己満足です。クラピカからしたら邪魔以外の何物でもないけど…俺は目の前で友人によって人が殺されるのは見たくない!」
「…友人のことを大切にしてるのね、もしかして好きだったりする?」
「ち、ちがいますよ、確かにクラピカのことは人間的に尊敬してるし好きだけどそんな風に考えてはいません!」
(私も貴女のように考えられたら、少しは違った今があったかもしれないわね……)
ーーーCASE6 誤解ーーー
「あっそうか!その手があったか!」
「あったか!…じゃねぇよ。こっちはお前の早とちりのせいで揉めたんだぞ」
「フィンクスの焦る顔は傑作だたね」
「て…テメェ……」
てっきり俺はパクノダが能力を使うと「クラピカに関する情報を漏らさない」というジャッジメントチェーンの条件に抵触すると思ってばかりだった。
しかしよくよく考えたらメモリーボムの銃弾に込める記憶は自由に選べて、しかもクラピカの能力をパクノダは殆ど知らないとすれば、パクノダにはクラピカに関する記憶を撃つ意味は皆無だ。
原作ではクラピカの能力が現状を説明するのに不可欠だからこそ銃弾にクラピカに関する記憶を撃ち込む必要があったが、その工程は俺が説明したことで省略でき、後はクラピカ以外で取引に関する記憶を撃ち込み実際に取引が存在したということを証明すればいい。
「良かったねステラ」
「あ、そういや監視の件の報酬貰ってないんだけど!お菓子1万ジェニー分な!」
…だとしたらやっぱり、俺がしたことに意味はあったんだ。
「…フン、やっぱり気持ち悪い奴だな」
フィンクスとフェイタンは元に座っていた席へと戻って行った。俺はなんだか救われた気持ちになると共に、今後の目標を改めて意識した。
ーーーCASE7 ヨークシン閉幕ーーー
「え?もう行っちゃうの?まだクラピカも起きてないのに……」
「仕事があるからな。なんなら最初の予定では今頃は着いてるはずだったんだぞ」
「そうだった、オレが電話掛けた時には空港にいたんだよな……」
オークションの翌日、俺はヨークシンを出発する為にゴン達に別れの挨拶をしに来ていた。仕事があるというのは本当だが、大部分はクラピカに後ろめたい気持ちがあるから会いにくいというのが心境だ。
「そういうわけだから、修行を見ることはできないということで」
「う〜、仕方ないかぁ」
ゴンが意気消沈して項垂れる。現在の彼らはGIのプレイヤー募集審査の合格を目指して修行中だ。特に念の四大行である発、要は必殺技を完成させる段階で、発が思い付かず困っているゴンを尻目にキルアが順調に発を作っているところだ。
できればこのままGI編に混じりたい気持ちもあるが、それを断腸の思いで断ち切る。俺は俺で修行しないといけないし、そもそもGI内ではジンということになっていた俺がGI編に介入したら絶対ややこしいことになるからな。
「そういやステラは何の仕事すんのさ」
「ん?まあ一言で言えば生物調査だな。もう天空闘技場のお世話になることもできないからなぁ」
なんだかんだでもう5年以上お世話になっていた天空闘技場だが、そろそろ200階クラスに居座るのは厳しくこれ以上はフロアマスターになるか失格になるかの2択しかなかった。
俺自身フロアマスターになるつもりはないので90日間の登録期間を過ぎて失格となった。恐らくヒソカはヨークシンにいる間も登録だけはして不戦敗になっていることだろう。アイツにとっては楽園だろうし。
「生物調査かぁ、面白そうだね!」
「そうか?なんか地味そーだから俺はヤダね」
「まあお前達もこういう仕事を後でやることになるだろうさ」
「うげ、ステラのそういう発言って大抵的中するからなぁ」
「魔法使いだからな」
というかGI終わったらすぐだぞ。そしてそこがいよいよ俺の生死を分かつ時なんだが。
「ま、2人もGI攻略頑張れよ。俺も先達として応援しとくから」
2人に別れを告げて空港に向かう。その心は数日前にヨークシンを発とうとした時よりも晴れやかだった。
毎度毎度話の畳み方に苦労しますが、今回の難易度は前半の時点で失踪を決意するほどでした。再び書く気力が湧いたのは今になっても感想を書いて下さった方々のお陰です。感謝を申し上げると共に謝罪を…お待たせしてすみませんでした…
話の途中で原作の修正力等を軽んじるような発言がありますが筆者自身はそんなこと思っていないので不快にさせてしまった方も何卒お目溢しを…
筆者は大幅な原作改変を書くのが苦手なんですよね。特にハンターのキャラはセリフや多少の動きを考えるのが限界で…これは作者の知能が冨樫先生及びハンターキャラより大幅に低いせいです。