流れ者の考察記録   作:sesamer

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 もしステラがドッジボールに参加していた場合、分身をゴンの砲台役にすることでキルアの負担を軽減していたと思います。これならノーリスクで撃てますし、ゴンにとって彼女はキルアほどではないとはいえ信頼(無茶振り)足りる相手です。
 でもゴンとキルアの友情のエモさが薄れるため彼女の出番は無いです。

 ということで蟻編突入です。



18. 再会×別行動×隠密行動と絶と隠

 

ーーーCASE1 再会ーーー

 

 

 

 それはキャンプの夕食の為に魚を釣っている時のことだった。明るい光が遠くからこちらに飛んでくるのを見た俺はその時が来たのを確信した。

 

「来たか…!」

 

 半年しか経っていないのに見違えるほどに強くなったゴンとキルアを見て才能の違いを痛感しつつも2人を出迎える。

 

「あれ…ステラ!?」

 

「おぉ暫くぶりだな。現実世界でカードを使ってるってことはゲームはクリアしたのか、おめでとう2人とも」

 

「「??????」」

 

 頭に大量のハテナマークを浮かべてるゴンとキルアに種明かしをする。と言っても、原作知識無しに俺が説明できることは俺がジンの弟子(仮)でGIでニッグとして活動したくらいだけど。

 

「はぁ!?オメーがジンの弟子とか、もっと早く言えよ!!!」

 

「仕方ないじゃん!ゴンがジンの息子だってことは後から気付いたんだし、ゴンのフルネームとか聞く機会無かったし(苦しい言い訳)」

 

「いや〜、だけどなんだか安心したよ。ちょっと感情を整理できてなかったから……」

 

 俺に突っかかるキルアの反応は大体予想通りだったが、ゴンの反応が微妙だったのが気になった。

 

 

 

「ジンが幼女になったと思ってたぁ!?」

 

「…うん……」

 

「だーかーらそんなこと有り得ねぇ話だってオレは何度も言ってたじゃねーか」

 

「…でもGIには年齢や性別を変えるアイテムがあったし、ミトさんがよく言ってたジンが父親失格って話、もしかしたらそういう意味かもって……」

 

「プククッ…アーハッハ!流石にそれは考えすぎだって!」

 

 どうやら年若い少女である俺がニッグとしてGIで活動してたことで、ゴンはてっきりジンがTSしたものだと思ってしまったらしい。それで原作と比べてなにやら尻込みしていた様子だったのか。超ウケる。

 

 年齢や性別を変えるアイテムといえば、多分魔女の若返り薬とホルモンクッキーのことだろうな。確かにアレらを使えば外見も自由自在に変えられるだろうが「ジンが女になってる」なんて、ぶっ飛んだ考察動画くらいでしか聞いたことないぞ。

 

 

 

「それはそれとしてステラは自分のこと喋らなさすぎだっての!少しは反省しろ!!」

 

「分かった分かった!痛いから髪引っ張んないで〜」

 

「ったく!せめてGIのプレイヤーだったのならヨークシンの時に教えてくれよ!」

 

「先達として応援してるって言ったし……」

 

「そこで「あっ、既プレイの方だったんですね。」って反応できるわけねーだろーが!」

 

 おっナイスノリツッコミ。

 

「まあまあキルアもその辺に……」

 

「…なんだ騒がしいな客か?…ってお前ゴンか!随分とでっかくなったなー!」

 

「カイト!?」

 

 そこはまさにカオスと言うべき空間だったが、ゴンとカイトが思い出話に興じてる間に、俺はなんとか落ち着きを取り戻したキルアにカイトの紹介をしていた。

 

「へー、ゴンの命の恩人でステラの兄弟子なんだ」

 

「まさかゴンがジンの息子さんだったなんて、カイトから聞くまでは夢にも思ってなかったよ。イヤーセケンハセマイナー」

 

「…お前まだ何か隠してるわけじゃないよな?」

 

「ソンナコトナイヨ」

 

 これで後は俺が持ってる情報は原作知識くらいだし、原作知識は墓場まで抱える所存なので許して欲しい。

 

 

 

ーーーCASE2 東ゴルトーとNGLーーー

 

 

 

 その後はゴンとキルアも生物調査を手伝うことになり、2人はその才覚を活かして調査は大成功に終わるが、ヨークシンのサザンピースに奇妙な生命体の一部が持ち込まれたことから事態は一転する。

 

 その奇妙な生命体の正体こそがキメラアントの女王なのだ。キメラアントは獰猛な上、摂食交配という特殊な産卵形態をとっており食べた生物の遺伝子を取り込み次の世代へと反映させる能力がある。しかも発見した体の一部から推定される大きさは本来のサイズを大きく超えており、人間を喰らって繁殖していてもおかしくはなかった。

 

 大型キメラアントの脅威を危険視した俺達は女王が漂着した場所を世界各地で失踪事件が起きたかどうかから調べ、それらしい記録が見つからなかったことから消去法でNGL(ネオグリーンライフ)自治国と東ゴルトー共和国が怪しいと睨んだ。

 

「NGLって?」

 

「ネオグリーンライフという団体の略称。機械文明を捨てて自然の中で生活しようって連中だ」

 

「伝染病が蔓延しても国際医師団の入国を拒否したくらいだ。人が動物や魔獣に殺される程度なら自然の成り行きとして黙認するだろうね」

 

 カイトの説明を受けて補足する。この広い世界の中でたまたまNGLに紛れ込むのはやはり運命の悪戯的なものを感じてしまう。無論これがただの偶然ならそちらの方が良いのだが。

 

 例えば、キメラアントの女王がもし先程NGLと並べて挙げた東ゴルトー共和国に流れ着いたらスムーズに繁殖できていたとは到底思えないのだ。

 

 東ゴルトーは典型的な独裁国家であり、軍部が非常に強い力を持つ。王が産まれ兵隊蟻の殆どが念を覚えた後ならば取るに足らないが、初期のキメラアントの軍勢が本物の軍隊とやり合えばどうなるかは分からない。

 

 キメラアントの種族的特徴として昆虫としての硬さが挙げられるが、それでも現代兵器に対して無双できるかは非常に怪しい。原作でも師団長クラスが放った念弾で装甲車に傷ひとつ付かなかったり、作中最強を誇るメルエムですら薔薇の爆発で瀕死まで追い込まれたりと、念を覚え勢力を増大させた後半ですら現代兵器相手に対して苦戦すると思わせる描写がある。

 

 NGLにも一応の武装はあったようだが、素人の防衛程度では軍隊とは雲泥の差だろう。なんならその程度の悪知恵は却って逆効果で、NGLが自然文明を傘にして裏で麻薬を生産するような黒い集団だったからこそ、キメラアントは悪党を喰らって効率的に邪悪さを学べたという見方もある。

 

 

 

 NGLの検閲は厳しくカイトのチームと合わせて元々10人居た俺達のうちNGLに入国できたのは6人だけだったが、元より念能力者以外は連絡要員だから問題ない。

 

 NGLから遣わされた監視の目を受けながら進んでいた俺達の元に届いたのは手紙だった。それには血文字でキメラアントの場所が描かれており、それはポックル達先遣隊の全滅を表していた。

 

「かなり危険だが一緒に来るか?」

 

「もちろん!」

 

「オレ達だってプロだぜ」

 

 ここからは本格的に危険の伴う仕事となる。そのことをカイトは言外に伝えながら2人に意思を問う。後発とはいえ最初からカイトのチームの一員である俺には拒否権は無い。

 

「カイト!ワタシ達は?」

 

「2人は国境に戻って他の奴らと合流!協会に最高レベルの危険生物が出たと連絡してくれ!」

 

「了解!」

 

 他のメンバーに連絡を頼んだ俺達は今まで移動に使っていた馬から降りて駆け出す。ここから先は時間との勝負だった。

 

 

 

ーーーCASE3 別行動ーーー

 

 

 

 蟻達と本格的に接敵し捕捉される前に俺にはやるべきことがあった。

 

「ここから先は二手に別れよう。ゴンとキルアを頼む」

 

「…分かった。無茶はするなよ」

 

「それは俺が一番分かってるさ」

 

 それはカイト達と離れることだ。言うなればこれは、俺がピトーに殺されるカイトを見捨てるという選択であるが、他に幾つかの戦略的利点もある。

 

「ちょっと待てよ、流石に1人は危険だろ。せめてオレ達のどっちかが……」

 

「キルア、それは驕りだよ。現状では今の2人じゃ援護になるどころか逆に足手纏いになる確率の方が高い」

 

「なんだって…!」

 

「ステラの言う通りだ。これから想定される戦局に対して今の2人の実力では話にならん。だがそれは今だけの話だ」

 

「2人の才能ならこれからの実戦で幾らでも実力は伸びるさ。だが、その為だけに戦力と時間を割くのは惜しい」

 

 猛るゴンとキルアに対して2人で諭す。仮に俺がこの場所に居なければ3人で進む他になかっただろうが、俺が加わったことで戦力的な余裕が生まれた。

 

 相手がピトーでなければカイトとこの2人なら戦力的には全く問題ない。そして相手がピトーであれば…物語は筋書き通りに進むだろう。そのどちらにしても俺は不要であり、むしろ邪魔とすら思える。

 

「幸いステラの能力は1人で戦うことに向いている…というよりチームで戦うことに向いてない。分身の中に別の人物が混ざってはデコイの役目は果たせないし、戦闘中に鳴り響く音は敵を呼ぶ誘蛾灯になり得る」

 

「……(あんま人のこと言えない癖に…)」

 

 どさくさに紛れてカイトから能力のダメ出しを受けるが事実ではあるので口をつぐむ。

 

 結局の問題はそこだ。タイマンを見据えて一見隙のないように作った俺の能力は、戦術的観点までは数的有利という面で有利に働いても戦略的観点まで行くとメリットよりデメリットの方が目立つ。このような戦局において俺の能力はガバガバな穴だらけである。

 

 しかしそれは別働隊の陽動や生存率の上昇という面では役に立つと言い換えることもできる。流石に1人で大立ち回りする気は皆無だが、俺の能力であれば余程のことがない限り敗北する前に撤退できるし、その余程にあたる不意打ちや狙撃なども分身を使ってリスクを抑えることができる。

 

 俺がこれらのことを見据えて能力を作ったのかと聞かれると全くのNOだが、この重要な局面において俺の能力は非常に都合が良かったのである。

 

「これを渡しておく。俺の能力でこちらからは場所の探知と連絡が取れる。非常事態なら割ればこっちに伝わる」

 

「OKだ。ゴン、キルア、行くぞ」

 

「「分かった!」」

 

 カイトに渡したのは手のひらサイズにまでの小型化に成功し、持ち運びやすくした風船人形だ。これは以前に手動で動かす分身を監視カメラやビーコンとして使用したヤツの発展形である。分身として作る人形のサイズを変更するのはなんとなく難易度が高そうなイメージだったが、小さくする分には問題なかった。逆は無理そうだが。

 

 流石にいつでも場所を探知できるわけではなく、探知している間は分身の操作に意識を奪われ無防備にはなるが、大した時間も掛からないので戦闘中でなければ十分に許容できるデメリットではある。

 

 

 

ーーーCASE4 隠密行動と絶と隠ーーー

 

 

 

「さて、これからどうするべきか……」

 

 3人を見送った後、自分が何をするかを考える。極論を言ってしまうとここで離脱しそのままフェードアウトすれば、大方は俺の望む通りに原作に沿って動くだろう。

 

 だが、不確定要素が無いわけではない。ゴンとキルアの運が悪ければピトーからの逃亡中に他の蟻に襲撃され無傷で帰還することはできなかったかもしれないし、最悪の場合も十分考えられる。

 

 だからこそ人形を渡して不測の事態に備えたわけだし、その方針ならやはり自らの戦力を向上させることは不可欠だった。幸い、銃などの武器は拾えそうだし、麻薬工場まで行けば武装には困らなさそうだ。

 

 

 

 絶の要領で隠を発動する。隠にはオーラを隠して凝以外では見えなくする他に気配を消す効果がある。つまるところ尾行や隠密行動時において隠は絶と同じように使えるのだ。

 

 そして隠と絶のどちらがそれらに相応しいのかの答えは状況によって異なる。各々のリスクの捉え方の問題と考えてもらっても良い。

 

 例えば、蟻編の中盤でノヴが1人で王の住む宮殿内に潜入した際、彼は隠密行動中でも能力を発動していたことから絶ではなく隠を使っていたと考えられる。能力を発動してない状況では絶であった可能性もあるが、接敵時から能力行使までの短さを見るとやはり隠であると考えた方が自然だ。

 

 絶を使った隠密は何より隠密のバレにくさを念頭に置いたものである。気配を隠すのではなく消すことから、円や一部の探知能力以外のオーラを使った手段では隠密を察知することはできない。これは例えば隠れる相手が予め決まっていて、相手がこちらを察知する以外に警戒すべきことがない場合には有効だろう。ゴンとキルアがヨークシン編で行った幻影旅団への尾行がそれに当たる。「バレること」を最大のリスクとした時ならこちらだ。

 

 隠を使った隠密はバレた際のリスク低減が主な目的だ。当然ながら絶の状態では防御力は皆無の為に少しの被弾が命取りとなる。絶を使った隠密は警戒外からの不意打ちや狙撃に対して非常に弱い。ノヴの隠密も「絶対にバレない」というよりは「バレた時にすぐに能力で撤退する」を意識してるように思える(勿論バレないに越したことはないが)。対してパームには逃亡手段が無い=リスク低減の意味が無い為、絶で隠密をしていたのだろう。その結果復活したピトーの円に対する防御反応としてオーラで身を守ったことが裏目になったのだが。

 

 

 

 今回のケースを考えると、どこで察知されるか分からない以上は絶で気配を断つのはリスクが高すぎる。現状の蟻の殆どが念を使えない以上、隠を凝によって見破られるのはほぼあり得ない。むしろ獣と交配した蟻特有の聴覚や嗅覚など念以外で察知される可能性を考えた方が良い。そして俺は交戦自体を避けてるわけではなく囲まれることを避けているわけで、多少察知された所で口封じすればいいだけだ

 

 隠を発動させた俺は麻薬工場を探すことにした。

 

 

 

ーーーCASE5 蟻の弱点ーーー

 

 

 

 途中何体かの蟻の兵士と交戦はしたものの特に苦戦はせず何事もなく処理した俺は麻薬工場の入り口を発見した。

 

 工場内部も蟻に占拠されていて何体かと戦うことになったがこちらも大した苦労はなかった。体感だとここまでで約数時間経過していた。

 

「これで制圧完了かな?武器庫かなんかで使える武装を補充したらカイトに連絡するか」

 

 種族全体として挙げられる蟻の特徴としては昆虫特有の硬さが挙げられ、ゴンの渾身のジャジャン拳グーですら蟻の兵隊であるラモットを死に至らしめることはできなかった。それほどまでに硬い蟻ではあるが決して無敵ではない。強化系の渾身の一撃で死ななかったラモットは一方、念を身につけて一層防御力が高くなったはずなのにキルアの手刀によって一瞬で首を刈られてしまった。

 

 勿論この時のキルアはビスケの修行を受けた上でイルミの呪縛から解かれて絶好調になっており、蟻編開始時のゴンより間違いなく強いのを忘れてはいけないが、それを加味しても変化系であるキルアの手刀が強化系であるゴンのグーより威力で勝るとは思えない。

 

 更に、ラモットをグーで仕留められなかったゴンはその後の戦闘においてチョキで蟻を両断している。戦闘の内容もゴンがグーを出せば耐えられたという旨だった。ゴンの系統は放出よりの強化系で変化系のチョキの威力は低いにも関わらずである。

 

 

 

 つまり一見無敵に見える蟻の防御力も殺傷力の低い攻撃に限った話で、殺傷力の高い攻撃に対する防御は無い。ここで言う殺傷力の高い攻撃とは、関節等の局部を破壊する攻撃や内臓を破壊する攻撃のことである。早い話、口を開かせてそこに銃を撃てば大半の蟻は死ぬだろう。よく蟻編以降のハンターハンターは銃が強すぎるなどと言われるが、それはそれまでの銃の使い方の問題で、使いようによっては蟻だって倒せるのだ。

 

 変身後ザザンのような全身を満遍なく硬化させるような相手は処理しにくくて厳しいかもしれないが、それでも高熱に対しては対抗策はなく現代兵器があれば蟻は問題なく倒せるというのが俺の結論だ。

 

 

 

ーーーCASE6     ーーー

 

 

 

「カイト!」

 

「その声、ステラか?」

 

 カイトのポケットから顔を出して連絡を取り合う。この人形の唯一の弱点、それは俺が小人化することだ。小さな分身に意識を移す必要があるからな。

 

「そっちの戦況はどう?」

 

「今は奴らに囲まれているが、どうやら向こうはタイマンが望みらしく2人の経験値にしてる所だな」

 

 確かに見た所、ゴンがアルマジロ型の蟻と戦っているようだった。原作と相違が無くて何よりである。

 

「こっちは付近の工場を制圧して分身に武装させた所。合流する必要ある?」

 

「そうだな…女王の巣を発見したら一度合流しよう。その時は連絡をくれ」

 

「了解」

 

 

 

「はぁ……」

 

 本体に戻ってため息を吐く。

 

 

 

 ピトーから逃げる最中のゴンとキルアと合流し、2人を無事送り届ければ、俺のやるべき事はもうない。

 

 2人はカイトを取り戻す為に必死に戦い傷付き、戦後キルアは死に瀕したゴンを助け妹を救う為に家族と戦う道を選ぶ……

 

 ゴンを救うまでにおいては恐らくイレギュラーなことは何も起きないだろう。ゾルディック家の家庭内指令がある限りキルアが死ぬことはあり得ないし、そんなキルアがアルカを守る限り彼女が死ぬのはもっとあり得ない。

 

 

 

 

 

 

「俺の戦いは終わった……これで晴れて自由なわけだ」

 

 

 

 本当にそれでいいのか?

 

 このままカイトを見殺しにして???

 

 

 

「だって仕方がないだろう…?そうしなければゴンは復讐の意思を持たずあれほどの無茶を敢行しなかった!何よりカイトは復活する!俺が中途半端に助けに行ったって、原作になかった死者が1人増えるだけだ!」

 

 それで復活したカイトとゴンの前で言ってやるのか?「色々あったけど皆無事で何よりだった」と!?

 

 

 

 ふざけるなよ…!訳知り顔で原作を荒らし回って、味方ヅラしながら大事なことは何も教えず、最後に顔を出してハッピーエンドでも告げるのか?上位者気取りも大概にしやがれ…!

 

「だったらどうするんだ!?このまま介入して俺が死ぬだけなら問題ないさ!だけど俺がカイトを助けに行くことでカイトの心境が変化すれば、最悪カイトの復活すらも無くなるんだぞ!?」

 

 

 

 …ようやく分かった。あの一回を除いて俺がヒソカに勝てない理由、ここに来る前のカイトとの手合わせで勝てなかった理由を。いや、これはもっと前から気づいてたはずだ。

 

 

 

 何故なら、念使いの気概について俺は一度考えたことがあるからだ。

 

「…念での戦闘に戦う前から勝ち負けを決められるものなんてない。勝敗など戦ってみないと分からない。その上で自分が100%勝つ気でいることが最重要」

 

 今の俺はその気概を持ち合わせていない。ピトーを前にして負けのことばかり考えて、ヤツに勝つ気がない。そしてそれはピトーに対してだけの話じゃない。

 

「…ヒソカに対してもそうだった。ヒソカに負けて殺されない為に殺し合いを回避したけど、その時から俺は負けてたのか…っ!」

 

 

 

 ピトーに負けたらどうする?を考えている限り、俺は一生負けたままだ。それが嫌なら…

 

「ピトーに勝つ為にどうする?か。…やっと、ようやく俺が何をすべきなのか分かった気がする」

 

 

 

「ピトーを倒したら当然カイトを助けるし、カイトを助けたらゴンが命を賭ける理由は無くなるし、ゴンが再起不能にならないとアルカを助け出す理由は無くなるし、そうなると厄災であるナニカが世界を襲う可能性がある」

 

 なーんだ、話はシンプルじゃないか。

 

「だったら俺がアルカを助ければいいな、うん。キルアと協力して、ゴンも多分手伝うだろうし、なんだったらここでヒソカもヤっちまうか」

 

 この能力を作った時に俺は一体何を考えてたのか、最近は忘れてたな……

 

 

 

ーーーCASE OF STELLAーーー

 

 

 

 人形を使ってカイト達の位置を探知した俺は、そこへ向かって全速力で駆ける。工場の制圧と先程までの葛藤で随分と時間を無駄にしたようで、合流まではかなり距離があった。

 

 ただし、原作においてカイト達がNGLに突入してからピトーの強襲を受けるまでには一度日が沈んで昇るだけの時間が経過しており、カイト達の進軍速度を考慮しても俺がカイト達と合流してピトーを迎え撃つまでには十分間に合うだろう、というのが俺の見立てだった。

 

 

 

 蟻の襲撃を考えなければ、の話だが。

 

「ホーホッホーッ!また女王様の栄養になりそうなエサを発見したべ!オラはついてるべ!」

 

「ちっ、これまた面倒な奴らと遭遇したな」

 

 それは処理した蟻の数がそろそろ20を超えたかどうかくらいの時だった。人面蜘蛛というべき風貌の蟻と相対した俺は小さく舌打ちをした。

 

 目の前の蟻はパイクといい、先程名前を挙げた蟻の師団長ザザンの側近だ。階級は兵隊長ではあるものの、念を身に付ける前からオーラを視認できるほどの潜在能力を持っており、恐らく作中の兵隊長クラスの中では一番強いと思われる。

 

 そしてコイツがいるということは、近くではザザンが控えていると考えた方がいいだろう。作中でポックルを倒した彼女らの強さは伊達ではないと俺は思っており、幻影旅団の武闘派ともある程度は戦えたことからもパイクのみならずザザン隊自体の強さが他の隊より上であると俺は考えている。流石に新たな女王を名乗るだけのことはある。

 

 

 

「でも今の俺は護衛軍とヤるつもりなんでね!テメェらの相手してる暇は無いんだよ!」

 

「なっ!エサがいきなり増えただ!?」

 

 ワンダーバルーンで分身を召喚して一気に戦線離脱を図る。パイクは4本の手で分身を捕まえようとするが……

 

「このエサ喰えないべ!?はっ!そもそも喰っちゃいけないんだったべ!」

 

 捕まえた分身が破裂したことで大きな衝撃を受ける。そのまま分身達と共に離脱しようとしたが、奴が立ち直る方が早かった。

 

 

 

「数が多いなら一度に全員捕まえればいいんだべ!」

 

 飛び上がったパイクが尻から粘着質の糸を繰り出す。これは後に対峙するシズクを拘束した技「愛の放物線(ラブシャワー)」の原型だろう。今の時点での彼らは念能力は使えないが、それ以前からザザンの尻尾にはポックルを麻痺させた神経毒があったように、パイクが生態特有の能力として蜘蛛の糸を発射しても何らおかしくはない。

 

「うっほーっ!大漁だべーっ!」

 

 大量の分身を捕まえたパイクが糸を手繰ってエサを回収しようとする。

 

 

 

「隙だらけだ」

 

 その隙を狙う者は2人いた。

 

 パイクの背後から現れた俺は手にしたナイフで頸を狙う。

 

 

 

「それはこっちのセリフね」

 

 俺の背後からザザンの声がする。原作でも彼女はパイクをフォローする形でポックルを不意打ちしており、彼を一撃で仕留めた尻尾の針が背後から俺に迫っていた。

 

 

 

 まあその俺は分身なのだが。

 

 最初に分身を召喚した時、本体である俺は大量の分身に紛れて近くの茂みに隠れた。その後手動の分身を召喚し、俺はそれを意識的に動かしていた。勿論気配は消している。

 

 俺は茂みの中からライフルで狙いを付ける。そのターゲットはパイクではなく、ザザンでもなく、俺の分身だった。

 

「またいつか会えたら今度は相手してやるよ!」

 

 

 

 ワンダーバルーンともう一つの能力である「体内に水素を生成する能力」、俺はこれらを使って爆弾人形を作るのだが、その能力の殺傷力はそれほど高いわけではない。

 

 勿論一般人を爆殺するには十分な威力だろう。生半可な念能力者を爆殺するのもタイミングに依るがそこまで難しくはない、どちらも当然やらんが。

 

 だがこのコンボを初披露した際にオーラで防御したヒソカを殺せなかったように、この能力には一定以上の実力者を殺すほどの殺傷力は無い。

 

 そして、このコンボは念能力ではなく物理的、科学的な現象を利用した攻撃なので、オーラを込めれば込めるほど攻撃力が上がるというものではない。大したオーラを使わずに一定の威力の爆破攻撃が行えるのは利点だが、オーラ量や制約を変えてもそれ以上の火力は出せない欠点もあるのだ。

 

 

 

 では、これで殺し切れない相手に対してこのコンボを使う意味が薄いかと言われたらそれは違う。単純なダメージも十分見込めるし、何より爆発時に発生する光と音による視聴覚に対する攻撃は、聴覚のみを考えても風船人形破裂時のそれを大きく超える。

 

 そして俺がこの攻撃を行うタイミングは決まって同じだ。「他の分身と動きの異なる分身が破壊される」時。手動で操作する分身はその操作精度の高さもあり、分身ではなく本体と捉えられる可能性が高い。そしてその分身を破壊しに行くということは、相手は本体と誤認して致命の攻撃を敵である俺へと仕掛けているケースが殆どだ。

 

 そんな時に本体と思われた敵が爆発したらどうなるだろうか?

 

 不意を突くという意図では最大級の効果を発揮するだろう。発生する光と音で目を灼き耳を塞ぐのみならず、発生した熱は本当に目を焼き、音は鼓膜を破壊しても何らおかしくはない。

 

 

 

「ま、再会する可能性なんて無いと思うけど」

 

 地面をのたうち回っているパイクとザザンを尻目に、俺は先を急いだ。

 

 

 

 カイト達と合流する寸前のことだった。俺はカイトに渡した人形の破裂と、そして今までに対峙した誰よりも不吉なものをもたらすオーラを感じた。

 

 

 

「遅かったか!!!」

 

 辿り着いた俺が一番に発した言葉がそれだった。

 

 右肩から先を失ったカイト、気絶したゴンを背負ったキルア。俺はあと少しのタイミングで間に合わなかった。

 

 

 

「いいや、ジャストタイミングさ」

 

「中々盛り上がってきたな!ドゥルルルル…」

 

 だがまだ取り返せる。片腕は失ってもカイトの実力はピトーに惜しまれるほどであり、2人で協力すれば奴に間違いなく勝てる!

 

 

 

 だから、俺が考察すべきは…ピトーに勝つ為にはどうするかだ!!!

 

 

 

「大鎌を出せ!!」

 

「6!期待に沿えなくてワリィな嬢ちゃん!」

 

 ピエロが大鎌ではない出目を宣告するが、それは大して重要じゃない。重要なのは、3以外の出目を宣告したこと。つまり、「カイトはまだ死ぬ気じゃない。生きて勝つ気である」ことだ。

 

 

 

「出るまで回し続けろ!俺一人でコイツの相手をする!!!」

 

 




 ようやく自分が考えていた展開まで来れたな…いやぁ長かった……
 今回の話は自分の性癖を詰めに詰め込んだせいか、後から読み返したら絶対恥ずかしい出来になってると思います。
 具体的には後半のシーンですね。自分の感情と理屈の間挟みに遭ってバグるキャラが本当に本当に大好きで、考察部分が感情を出し始めてステラ自身を責めるという描写はパニック感を出したいという思い付きで書きました。
 ヨークシン編のクラピカと蟻編のキルアいいよね…
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