考察しないところはどんどん飛ばします。
ーーーCASE1 NIGGーーー
ニッグ(NIGG)とはジン(GING)のアナグラムである。ジンはゴンがこのアナグラムに気づいて3枚のうち2枚のカード報酬の権利を捨てて移動系の呪文を行使するのなら会ってやろう、というメッセージをゲームに隠していたのだ。
それだけならまだどんだけ息子に会いたくないんだよクソ親父!で済むのだが、ジンのジンたる所以は違う。彼は同じ移動系の呪文でも、自分1人だけが発動する「磁力(マグネティックフォース)」と仲間と一緒に発動する「同行(アカンパニー)」で行き先を変えたのだ。
彼からすれば仲間を引き連れて会いに来る根性なしとは会わないらしいが、どう見ても捨てた子供の友人から白けた目で見られるのを耐えられないだけだぞ絶対。
つまるところ、ゴンがそこで同行を選んだ場合俺の下に来るように設定されていて(原作ではこの役はカイト)磁力を選んだ場合にのみジンに辿り着くように設定したのだ。
このことを念頭に置いてグリードアイランドの魔法カードを見ていくと面白いことに気付く。磁力のランクがCなのに対して同行のランクはFなのだ。効果だけ見ると同行は磁力の上位互換と言っても良いのにこれだけのランク差があるということから、もしかしたらジンは同行ではなく磁力を使えと伝えたかったのかもしれない。全く以って女々しい奴だ。
そして、原作ではゴンは友達であるキルアを紹介したいという一心で同行を選びカイトの下へ向かうのだが、そこからが問題なのだ。
その時カイトはカキン国からの依頼で生物調査をしていてゴン達もそれを手伝うのだが、とある流れで大型キメラアントの女王の一部を発見し、その調査を始める。これがキメラアント編の大まかな流れだ。
つまり、ゴン達が地獄のキメラアント編に合流する為には同行によって飛んできたゴン達を誘導しなければいけないのだ。それをいったい誰がするのかって?俺みたいですね……
ただぶっちゃけると、キメラアント編にゴン達が必要かと言われると必ずしもそういうわけではない。勿論原作の流れが最善の形である可能性が高いのは確かだし、ゴン達が行かないことで犠牲者が増える可能性もある。だが、王とコムギが出会う、ネテロが薔薇を埋め込む、ネテロがゼノに応援を依頼する、この3つの条件にゴンとキルアが関わらない以上は最終的に王と護衛軍は薔薇の毒で死ぬ運命なのだ。
だったらキメラアント編なんて危険なことに関わらせない方がいいじゃんとなるのだが、長期的な視点で見るとゴンとキルアを蟻編に関わらせることが人類の存続に必要不可欠になるかもしれないのだ。
ーーーCASE2 厄災ーーー
ゴンとキルアに限った話で、蟻編による1番大きい影響とはなんだろうか。カイトが死んで転生したことや、ネテロ会長が死んだことなどゴン達の人間関係も蟻編では大きく変化するが、個人的な影響だけを考えるなら、ゴンはゴンさんとなって再起不能となりキルアはイルミの呪縛である針を取った、というのがそれぞれで最も大きな変化だ。
そして、その変化はその次の選挙編に大きく影響する。再起不能になったゴンを巡る策謀が選挙編のキモだからだ。レオリオはゴンを見舞いに行かないジンを殴り飛ばすことで一躍会長候補になり、それを利用してパリストンはハンター協会第13代会長に就任した。
だがこれもゴンがいなくても大した影響はない。ジンが選挙を降りる時点でパリストンの勝利は決まっているし、仮にパリストンが敗北したとしても原作との相違点はチードルが第14代会長から第13代会長に変化するだけだ。
レオリオが選挙編で活躍しないことで彼が十二支ん入りせず、その影響でクラピカが十二支ん入りしないなどの多数の影響も予測されるが、結局のところその話は暗黒大陸での話であり、極端な話、仮に暗黒大陸を旅したハンター達全員が暗黒大陸の厄災によって死んだところでこの世界への影響はほぼない。
だが、この世界に既に存在する厄災に関しては話は別だ。暗黒大陸から持ち帰られた5つの厄災はそれぞれ「人類が滅亡していないのはたまたま」とジンに言わしめるほど危険なものであり、これらに対するバタフライエフェクトは慎重に懸念しなければならない。
そしてその厄災の内のひとつが大きく関わるのがこの選挙編だ。「ガス生命体アイ」はキルアの妹アルカである可能性が高く、そうでなくてもアルカが暗黒大陸の出身であり5大厄災の内のひとつであるのは確定している。
選挙編はこのアルカを巡ってゾルディック家での抗争が起きるのだが、その結果としてゾルディック家に封印されていたアルカはキルアによって連れ出されることになる。アルカの能力は文字通りなんでも願いを叶えることとその代償として願いの大きさに比例したおねだりをするというものだ。だがもしそのおねだりが1人の人間には払いきれないものでおねだりを払うのに失敗した場合、失敗した人間に関わる多くの人間が願いの規模に応じて死亡する。
この存在をゾルディック家は管理、利用しようと企んでおり、それを良しとしないキルアがアルカを連れ出したのが選挙編のキルアの物語だ。
結局はそのことをゾルディック家は認めて丸く収まるのだが、この時この状況でなければ話がどう転がっていたかは分からない。まずゴンを治すという目的がなければキルアは強い意志でアルカを連れ出そうとはしなかったかもしれないし、針を抜いた直後でなければ新たにイルミから呪縛を掛けられていたかもしれない。キメラアント編を経て新たに能力を身に付けたキルアだからイルミに対抗できたかもしれないし、少しでも時期がズレるとキルアの詳細な能力をゾルディック家に把握され対策されていたかもしれない。
そうなればアルカは一生ゾルディック家の物のままか、どこかのタイミングでイルミに殺されてしまう。前者はゾルディック家の野望次第で世界に混乱を招くかもしれないし、後者の場合アルカに取り憑いている厄災がどうなるか誰にも分からない。
つまり、アルカにまつわる問題を平和に着地させるためにはゴン達をキメラアント編に介入させることが必要不可欠なのである。
「ということで私は今の時点より蟻編強制参加になりました……はぁ……憂鬱だ……」
何が憂鬱かって蟻編の中でも特に危険な先遣隊の役割をこなさなきゃならないところだ。自然な流れでゴン達をキメラアント編に介入させるには俺がカイトの生態調査に同行すればいいだけなのだが、その場合キメラアント編で俺がどう巻き込まれるのかが分からない。カイト達に不信感を与えない為に気を遣ってたら気づいたら女王の巣付近に1人取り残されていました、なんてことになっても全然おかしくはない。
「今できるのは備えるだけ、か……幸い環境には恵まれているし頑張るしかないか」
ーーーCASE3 GIプレイヤーの強さーーー
グリードアイランドの岩山地帯にて作中でのビスケの修行を思い出しながらトンネルを掘り進める。今までの俺は念の修行そのものはしてきたが、肉体のトレーニングはやってこなかった。だからカイトと戦った時も碌な攻撃を与えられなかったのだが、今までは成長してもっと筋肉がついてからでも遅くないと思ってやってこなかった。
だがそんな悠長な言葉を言っている場合ではない。少なくとも5年以内にはグリードアイランドのモンスターを一蹴できるようにならなければお話にならない。
グリードアイランドの難易度についてだが、俺は一人前のプロハンターならクリアするのはそこまで難しくないと思っている。だが、それはあくまで仕様上の話であり原作での複雑な状況に陥ってしまったグリードアイランドのことではない。
原作でゴン達がグリードアイランドを探す何年も前からバッテラはクリアしたプレイヤーに500億の報酬を渡すと約束しておりそれでプレイヤーは増加した。ゲンスルー達も元はバッテラに雇われた人間であり、バッテラの存在がグリードアイランドの難易度を高くした可能性は高い。
元々はどのくらいの難易度だったのかを考えると、ゲーム内のAランクのモンスターを討伐できるラインが指標なのではないかと考えられる。Sランク以上のモンスターはおらず、そこから先のカードを手に入れるには強さよりも運や洞察力を必要とするからだ。
一応レイザーっていうめちゃくちゃ強い敵キャラもいるが、このイベントは敗北しても再戦可能なので何度も挑戦してクリアしてもらう高難易度イベントという位置付けなのだろう。
そして修行後のゴンとキルアも恐らくAランク相当の指標に到達しているはずだ。同じくツェズゲラやゴレイヌなど攻略組もそのくらいの強さを持っているだろう。
だが、キメラアント編でゴン達はカイトやナックルから半人前扱いされていた。特にナックルからは具体的にオーラ量ならプロの中堅だが経験が足りないとまで言われていた。
つまり、強さではプロクラスに劣っていても十分にクリア可能なのがグリードアイランドだということなのだろう。ツェズゲラも修練不足で体が鈍っていると言ってたし。
だから、こんな場所で尻込みしている場合ではない。原作までの時間はおよそ10年、それまでにゴン達が駆け上がって行った強さの階段を登り詰める必要がある!
俺はゴンとキルアやクラピカなどといった主要人物ほど才能があるとは思わない。カイトに勝ったのだって発ありきで体術では全く勝負にならなかったし、その点グリードアイランドに来た時点のゴンとキルアよりも弱い可能性まである。
だから5年、それまでにここのモンスターは余裕で狩れるようにする!
ーーーCASE4 修行内容は原作を読んでねーーー
そして5年が経ち、グリードアイランドの全てのモンスターを狩れるようになった俺はログアウトすることにした。これまでずっと島の中にいたから久々のシャバだ。ジョネスもこんな気分だったのかな。
ちなみにカードも集めずに島から出られなくなった人を島から出られるよう手助けをしたり、モンスターに追われている人を助けたり(こっちは修行のついでだったけど)してるうちに俺はグリードアイランドの名物プレイヤーになっていたようだった。サインねだられた時にはニッグの名前どう書くのか一瞬戸惑ったわ。
「いらっしゃいませ、ニッグ様」
「……その名前で呼ばれたくなかったから島の出入りをしないようにしてたんだった……」
「本当にごめんなさい、ジンにやれって言われたから……」
「いや、そこまで気にしてないからいいですよ」
ここでキレてもかえってお姉さん達を困らせるだけだからなぁ……そもそも俺が分かってるはずの情報なら偽名で登録するくらいでそんなに怒る要素でもないし。
「もう帰ってくる予定ないから指輪返していい?」
「そうですか?なら預かりましょうか」
そう言ってお姉さんに指輪を返す。ジンのイニシャルに気づかせるなら下手にニッグの名前を残すのは良くないからな、ちょっと手遅れな気がしないでもないけど。
「それでは、お疲れ様でした」
「お世話になりました」
ぺこりと挨拶して視界が変化する。取り敢えずヨルビアン大陸の適当な街に飛んできたが、これからどうしようかな。原作までは5年の時間があるが、まだ自分の力量がキメラアントに対抗できるレベルではないのを考えればうかうかしてられない。
とりあえずジンとカイトに連絡するか。
……あ、連絡手段なんて俺持ってなかった。
そういうわけで俺は途方に暮れていた。もちろん、うかうかしてられないなどと言った手前、ジンとカイトとの連絡がつかないくらいで足を止めるのは良くないことなのだが(そもそも正式に師弟関係になった覚えもないし)、俺としても今まで目標に向けて頑張ってたので短期的な目標を達成した今はそこまで物事に真面目に取り組む気力がないのだ。
お金に関しては結構な余裕がある。グリードアイランドで帰還できない人の案内をした際に報酬として割と貰っていたからだ。グリードアイランドでは現実世界のカード化されていないお金は使えないし、だからといってモンスターも倒せない人達には島で金を稼ぐ手段がほとんどない。結果的に彼らが俺に差し出せるものは現実世界のお金くらいしかなかったということだ。いや別にお金が欲しくてやったわけじゃないんだけども。
取り敢えず世界各地を回って旅しつつ鍛えるか、アマチュアとしてハンターの仕事をしつつ鍛えるか、ハンター試験を受けてプロになるか、はたまた天空闘技場に行って戦いながら強くなるか……取り敢えずやることはやっておこうと、俺は天空闘技場のあるパドキア共和国の方へと向かった。
ーーーCASE5 天空闘技場ーーー
天空闘技場とは地上251階、高さ991mで、世界第4位の高さを誇る建物である(ただし暗黒大陸を除く)。ここは世界中の腕自慢が集う場所(ただし必ずしも強者が集うわけではない)であり、1階から始まって試合を勝つごとに上に登っていくシステムだ。
つまり強い者ほど上に登れるわけなのだが、この世界の凄腕に分類されるプロハンターの多くはこの塔には見向きもしていない。
なんなら200階クラスには上がらないように150階クラスで止まるだけでも一度勝つだけで1000万ジェニーの報酬が支払われる。200階に行くまでは念能力者など皆無だと言っていいし、200階以降の能力者もある程度実力があれば余裕で勝てる人間が多い。
プロハンターにも金を目的としたハンターが多いのはグリードアイランドがバッテラの報酬によってプレイヤーが増えたのが証明しているだろう。ではなぜそういうハンター達が天空闘技場で金稼ぎをしなかったのかは結構な謎である。
ただ、臆病者である自分の視点であればある程度の推測はできる。天空闘技場は数多くの観客がおり、その試合も映像として記録される。その中で念能力者がいたとして、同じ念能力者がその試合を見ればすぐバレるだろう。例え発を見せなくてもオーラの大きさや滑らかさなどで能力者としての強さを測ることは可能である。そして自分より強い念能力者に目を付けられた人間がどうなるかは想像に難くない。つまり、小市民程度の強さしか持たない念能力者が天空闘技場に通って金を稼ごうとするのは却って危険かもしれない、というのが俺の見解だ。
「まあ俺はそんな天空闘技場に通おうとしてるんだが……」
そう思いながら天空闘技場の受付に並ぼうとしたのだが、その前に何やらどことなく見覚えのある姿の人達が話してるのを見て俺は動揺した。
「キル、約束事は覚えているか?」
「だいじょうぶだって。200階には行かずに降りる、だろ?」
「そうだ。200階から上に行けば今後もう一度上がることはできなくなる。手っ取り早く金を稼ぐ手段として残しておいた方がいい」
「殺しで稼ぐしそんな心配ないと思うけどなぁ……」
白髪の親子が話し合っていたのだ。その会話内容からこの親子の正体に気づいた俺はそれはもうビビった。ビビりすぎてつい絶をしてしまった。癖になってんのかなぁ、強者の気配にビビって絶するの……
だが前にも言った通り、気配を捉えられている場合に急に絶をするのは却って怪しまれる行為なのだ。俺は背中から声を掛けられて肩に手を置かれる。その瞬間まで俺は後ろの気配に気づかなかったということが、俺の後ろにいる人物が誰であるかを物語っている気がした。
「ねぇ君、お願いがあるんだけどいいかな?」
ギギギ、という音を鳴らしながら俺が振り向いた先にいたのは黒い長髪をたなびかせた暗殺一家の長男だった。
ーーーCASE6 ゾルディック家ーーー
俺はビビって絶をする癖を絶対治そうと心に強く誓った。
「君、能力者だよね?だったらお願いがあるんだけど」
「はい!大丈夫です!心配しないでください!」
「まだ何も言ってないんだけど、まあいいや、今君が見ている子供はオレの弟でね?」
イルミに首を掴まれて強制的に前を向かされる。大丈夫?これ針刺されてないよね?
「キルは大丈夫だって言ってるし、親父達も可愛い子供には旅をさせる方針だから監視もつけないんだけどさ、オレとしては可愛い弟分がもし能力者の毒牙に掛かってしまったら……と考えるとさ、心配で仕方ないんだよねぇ」
「はい!弟さんのご安全は私が守ります!念能力のことも一切教えません!」
俺の即答に満足したのか、イルミは首を掴んでいた手を離す。ひええ、マジで死ぬかと思った。
「うん、それなら心配いらないね。良かった〜、俺としては保険はいくつあっても足りないって思うからさぁ」
後ろから聞こえる声が急に近くなる。
「お前のこと、見てるからね?」
そう言い残して背後の気配は消えた。俺は冷や汗を流しながら、行列の最後尾にいたキルアの後ろに並んだ。ブラコン野郎め……
ーーーCASE7 キルア・ゾルディックーーー
「へぇ、お姉さんもここでお金稼ぎするんだ?」
「まあそんなところかな……ついさっき他にやることができたけど」
「俺も親父に無一文でここに放り出されてさぁ、今のファイトマネーじゃチョコロボくんも買えないんだけど、大丈夫なの?って感じ」
「大丈夫だよ、100階くらいまで行けば一回勝つだけで100万ジェニーも貰えるから」
「ひゃっ、100万ジェニー!?それってチョコロボくんが何個買えるんだ……!?」
必死に指で四桁の計算を頑張ろうとしているキルアを横目に今後の方針を考える。ちなみに今は一階のリングの相手を楽々倒したところだ。俺もキルアも流石にこんなところでつまずきはしない。
だが俺としてはこの状況自体が思わぬつまずきとなってしまった。修行は諦めて6歳のキルアが1人で生活するのをサポートしなければならない。
冷静に考えたら暗殺一家の天才息子を雑に放り込むわけはなく、今もこの状況を執事か誰かが監視しているはずなのだが、1人で来ていると思い込んでるキルアが執事がいることを知ったら間違いなく不機嫌になるだろう。イルミが俺にキルアのことを頼んだ?のも念能力者である俺を警戒するというより単純に俺を執事代わりにキルアの手伝いをさせる意味合いが大きいと思う。
そんな中で俺だけが早々に200階に行って念能力者達と戦うわけにはいかない。間違いなくキルアは対抗心を燃やして200階に上がろうとするし、念能力のことを知れば覚えたがるに決まってる。
キルアの弟?のカルトは10歳にも満たない段階で発まで習得しているのに11歳になってもなお念能力を秘匿されていたキルアだが、天才と期待されておきながら念については全く教えないというゾルディック家の方針は少し不思議だ。
念能力は基本的にコツコツ鍛えることが1番強くなるもので、才能だけでゴリ押しできるものではない。むしろ原作のゴン達は有り余る才能でゴリ押ししていた側だったが、作中でも度々壁に阻まれておりそれらから生き延びて強くなれたのは才能よりも運の部分が大きい。
だからこそ才能に期待して強く育てるのなら子供の頃から念を教えてコツコツと鍛えるのが1番強くなると思うのだが、今隣にいるキルアを見ているとそう簡単に済む話でもないと思えてきた。
ミルキはキルアについて精神的には暗殺者失格、とまで言っていたが、その根拠はムラっけがある、友達を作る、精神的に弱虫という内容だった。友達を作るということに関してはキルアの父親であるシルバも否定するどころか応援してたし、弱虫であることはむしろ失敗を何よりも恐れる暗殺者としてなら正解であると思う。
だが、最初に言ったムラっけがあるというのは否定できない。原作ではそれ以上の不安定さを発揮するゴンと比較されて安定していると扱われるが、キルア自身も割と調子に乗るところがある。というか調子に乗る場面だけならゴンよりも多い。
調子に乗ること自体は悪いわけではない。念はその時の感情によって左右されるので戦闘毎に調子のブレを合わせれば普段以上の力を発揮できるわけだが、今のキルアにそのようなことはできないだろう。
それと無意識に相手の強さを低く見誤る癖もある。もちろんキルアの眼は凄いと思うし敵味方のステータスをほぼ正しく測ることができるだろう。だが実際の戦闘はそのステータスだけで決まるものではない。そういう意味でもイルミの呪縛には敵の能力を高く設定して自分が敗北する可能性が少しでもあれば逃げの選択肢を選ぶようにしていたのだ。
そんな幼いキルアが念能力を知ったら考えなしに発を作る可能性が高い。なにせキルアは天才だ。天才だからそれまでに挫折せず念と出会う可能性は高いし、天才だから少しの知識と努力で念を修めることもできるだろう。
だからゾルディック家は過保護ともいえるほど慎重に、キルアに対して念の存在を秘匿したのだ。なんなら今のキルアが念なんて教わったらチョコロボくん具現化する馬鹿をしてもおかしくはない。
そんなキルアと関わりながら念の修行を並行して行うのは難しいし、もし見つかったらキルアに質問責めにされた上でイルミに殺される。そうなると素直に筋力でも鍛えるしかないか……
それならいっそのことキルアから色々聞くってのもアリだな。暗殺一家の天才息子であるキルアなら6歳にして天空闘技場を念なしで勝ち上がれるくらいに強いし、人を殺す技術や知恵も豊富だ。現状俺の能力は殺傷性が皆無だから、殺すとまでは言わなくてもある程度肉体的なダメージを与えられるようにしたい。
ーーーCASE8 ミルキ・ゾルディックーーー
そんなわけで俺は、キルアのペースに合わせて天空闘技場を登りながらキルアとの親交を深めていた。今はある程度親しくなって呼び捨てで呼ぶことを許可されたところだ。普通に考えたら俺の方がさん付けされる立場なのだが、原作以上のワガママ坊やなのだからこちらの方が譲歩するしかない。
天空闘技場の階層も150階に到達した。原作だと確か6歳のキルアはここに来るまでに2ヶ月は掛けたはずだったが、ここに来るまで1ヶ月しか経っていない。ライバルの存在が身近にいることでキルアのやる気も引き出されているのだろう。恐ろしいとも言える成長速度だった。
俺の方は絶をしながら戦うことで少しでも肉体の修行になるかなど試行錯誤はしているのだが、あまり成果は感じられない。まあ天空闘技場編の念を覚えてないゴン達がワンパンでKOできる相手だ。今の俺が絶で相手したところで縛りプレイにすらならない。
やはり地道に鍛えるしかないか、と思いながらキルアに暗殺技術について聞く。守秘義務など存在しないのかキルアは色々なことを話してくれた。
「離れた人間を殺す方法?うーん、銃で撃つのが1番手っ取り早いと思うけど」
「いやまぁ確かにそれで大体解決できるけども……実際は銃火器なんてそうそう持ち込めないでしょ?」
銃火器が解禁されるなら俺は人形10体くらいにマシンガン持たせて集中砲火するぞ。それだけで大半の能力者はミンチだろう。だがそれをしてしまうのは流石に反則だと思うし、何よりキメラアント編では銃火器は持ち込めない。
「俺は親父達みたいに体を凶器として扱うからさぁ、そっちの方は兄貴の得意分野なんだよね」
「えーっと、確かお兄さんが2人いるんだっけ?」
「そうそう。その下の方の兄貴が遠隔操作とか詳しいんだよね」
ゾルディック家の次男、ミルキ・ゾルディックは暗殺一家とは思えない肥えた腹が特徴の引きこもりだ。インターネットや機械に強く、小型化した爆弾を蚊に搭載したり特注の合金で50kgのヨーヨーを作成したりする器用な奴だ。
確かに、ミルキを参考にすれば能力の強化になるかもしれないな。俺の分身は射程距離が短いとはいえ、分類として遠距離攻撃に相当する。であれば、通常の兵器やミルキの作るようなトンデモ兵器が発想の種になるだろう。
ーーーCASE9 2つ目の能力ーーー
1番最初に思いつくのは分身に爆弾を搭載することだ。これは能力が発現してからずっと考えてきたことだし、実際にクロロが爆弾を作る能力と組み合わせて爆弾人形にする実演も見せてもらった。
だが、それを真似するとなると自分には無理だ。爆弾を具現化するというのは自分のイメージでは難しいのだ。俺は爆弾なんか一度も扱ったことないし、自分では爆弾の見た目だけ具現化するのが限界で爆発までは再現できないだろうというのがなんとなく分かるのだ。
むしろゲンスルーに尊敬の念を抱いてしまう。爆弾を具現化することなんてどんな生き方すればできるようになるのか、日常が爆弾だったはず……だとしても全然おかしくないのだ。
では風船人形に実物の爆弾を搭載するのはどうか?という話になるのだがこれも難しい。そもそも爆弾を入手するツテが俺にはないし、キメラアント編に持ち込まないため目的と合わない。
実物の爆弾を搭載するにしても爆弾を具現化して搭載するにしても俺の能力の場合は重量の問題がある。軽い風船人形だから動かせていたものに爆弾を乗せて動かそうとすると、今より操作が難しくなるかもしれない。最悪の場合新たな制約を入れて能力の調整をすることになる。
それで今まで困ってたのだ。直接攻撃のできない分身に攻撃能力を持たせるのがこんなに難しいとは……
「あー、それならガスは?最近毒ガスの拷問受けてたんだけど、普通の人間ならちょっと吸い込むだけで死ぬぜ?」
「いやいや、そんなことしたら俺も死んじゃうし……いや待てよ、ガスなら……」
ガスは風船と1番相性が良い組み合わせなのではないか?銃火器や爆弾は分身が重くなるが、ガスの場合は普段入れている空気の代わりにガスを入れるだけで普段と変わらず動かせる。
風船が破裂することで中に入っているガスも飛散するわけだが、これは相手に接触することで破裂する俺のワンダーバルーンと相性が良いのだ。
それにガスを中に入れて運用するとなると、ガスの種類によっては攻撃だけでなく補助としての性能も期待できる。
今までなんで気づかなかったのだろうか!こんなに相性の良い組み合わせが他にはない!
「それだ!ガスだ!ガスしかない!」
「お、おう?」
なんだかついていけてない反応をするキルアに対して俺はこのアイデアを実現する方法を調べる。
「その毒ガス拷問ってどういう風にやったの!?」
「え、うちはガス室を持ってるからさ。それに丸一日入れられてって感じだったけど……」
「なるほどなるほど……」
ではキルアのお守りというイルミの依頼を達成した報酬として、ガス室送りにして貰おう!そこで今後使うであろうガスを浴びまくってガスを具現化か変化させられるようにしよう!
「ありがとうキルア!君のお陰でやるべきことが分かったよ!」
「お、おう。それはなによりだ」
そうと決まればさっさとキルアと200階を目指そう!目指せガス室送り!
「……変なヤツ」
トレーニングに燃える俺にはキルアの呟きは聞こえなかった。
ビビると絶をする、というステラの癖は多分ですがかなり珍しいです。キメラアント編の蟻パームのところを読む限り、咄嗟に反応する時にはオーラで防御反応をするのが普通っぽいですからね。
一般的な反応がを驚いた時に体が硬直することだとすると、ステラの反応は驚くと死んだふりをするようなものです。小動物かな?