多分これ以上の戦闘描写は書けません。
ーーーCASE OF HISOKAーーー
「さぁ、200階に上がってきた若き闘士は彼女を止めることができるのか!注目の一戦です!」
ステージには若い男女が立っていた。そこは戦う為の場所であり、決してダンスをする為の場所でも音楽を演奏する為の場所でもスピーチをする為の場所でもない。だが彼女はそこで明確なメッセージを発していた。
「おーっと!やはり出ましたステラ選手の魔法!彼女が指を鳴らすと破裂音と共に対戦相手は気絶します!一体どうすれば彼女を止められるというのかーっ!?」
巧みな隠によって普通の人間には勿論、この200階クラスでも見破れない人がいるほどに精巧に隠された人形が対戦相手の真横で破裂する。突然の大音で相手を瞬殺する手際はまさに完成された戦術。
「最近は獲物に困らないな…♠︎」
だけど彼女の魅力はそこだけじゃない。今まで彼女が相手した人は200階クラスへ登ってきたばかりの新人、わざわざ発を曝け出してでも瞬殺する価値はない。そこに彼女の優しさが詰まっている。
この200階クラスには洗礼という文化があり念を知らない新人は洗礼によって大きなダメージを受ける。だが、彼女の能力は彼らを念に目覚めさせながらもダメージを最小限にとどめている。ボクも愛せる才能を持つ相手には似たようなことをするケド、彼女のそれは万人に対する愛だ。
彼女は優しいだけでなく、同時に高潔な精神も持ち合わせている。新人相手に発を見せる理由が優しさなのは説明したが、それだけであれば隠を使う理由にはならない。
確かに隠をすることで観客やライバル相手に能力を秘匿することができる。だが、隠が通じる相手に隠をする戦略的な意味は薄いのだ。念の秘匿なんて今更だし、ここまで堂々と隠を使ったところで、ここで警戒すべき実力者相手には凝をして下さいと言っているようなものだ。
だからこれは挑戦状だ。「この隠を見破れない人間とは戦うつもりはない。中途半端な実力の人間を相手するくらいなら私は新人の保護を優先する」と、恐らく彼女はステージでそう言いたいのだ。
「フフフ……」
素晴らしい人間性だ。ここまで高潔な人間となると、ボクとしてもとても好感が持てる。ああ、食べちゃいたいくらいに……
「!」
そしてボクの発する気配に反応したのか、彼女はボクの方を見た。一瞬の視線の交差を経て、ボクらは通じ合った。
「クックック……!」
彼女が出した挑戦状にはボクも応えなきゃいけない。ボクはケータイを出して参戦の申請をした。
ーーーCASE1 戦い方ーーー
200階に来て3人目の新人を気絶させた後、異常な気配を察知して俺はそこを見た。
「(掛かった!ヒソカだ!)」
奇抜なメイクとファッションを携え金髪を後ろに流した青年は、禍々しいオーラを明らかに下半身に集中させていた。
やめろバカ!今の俺の性別考えたらただの変態だぞ!ただの変態だった!
変態なのは知ってたけど、実際に見るとキツイものがあるな……俺コイツと一緒に行動しなきゃいけないのか……
自分の判断に後悔を抱きつつ、会場を後にする。恐らく俺の予想が正しければ、彼は公平を期するために俺と似たようなことをするだろう。だがそれはヒソカがフェアプレイを重視するような良心があるからではない。
「おーっと!ヒソカ選手が指を鳴らした瞬間、彼がばら撒いたトランプが選手を斬り刻んだーっ!?これはステラ選手の魔法の再現でしょうか!?」
ヒソカが重んじるのは楽しい戦いと面白い勝ち方だ。ヒソカのバトルマニアとしての部分は最初から自分が有利な状態で始まる戦いを好まないし、エンターテイナーとしての部分は周囲を驚かせる為に奇抜な勝ち方を望む。ついでに変態な部分は敵を心身共に屈服させようとする。
だからヒソカは相手の戦い方に合わせる。本来なら相手の戦い方に合わせて戦うなど自殺行為だ。念能力はありとあらゆる可能性をもたらし、これらにその場その場で適切な攻略法を導くなんてできっこない。それをヒソカは自らの性癖の為に迷わず突っ込む、これをできる度胸とイカれ具合がヒソカのヒソカ足る所以なのだ。
例えば、以前俺は最も完成度の高い能力としてヒソカの「伸縮自在の愛(バンジーガム)」を挙げたが、敵を倒すという点に限って見ればこれよりも有用な能力は存在する。ネテロの「百式観音」は究極の速さを実現したもので先の先で敵を叩き潰す最強の能力だし、クロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」は使える能力を増やして敵を確殺できるコンボを揃えてから勝負を挑めば誰にでも勝てる能力だ。これらに比べたら、ヒソカの能力は敵を倒すことのみの視点で見ると無駄が多い。
だがヒソカにとっての戦いが「相手の戦い方に合わせて対応し自分のペースに持ち込んで相手を屈服させること」であるのを踏まえると、これ以上の能力は存在しない。
俺はヒソカの戦い方はバカのすることだと思っている。だけど、そのバカを100%勝つ気でやるのがとても恐ろしい。自分が最強であるという揺るぎない自信がなければこんなことはできない。
念能力者はその時の感情によってオーラが増減することは話しただろう。これに関連して、モラウはピトーから逃げたキルアに対して「100%勝つ気で闘るのが念使いの気概」であると説いた。念での戦闘に戦う前から勝ち負けを決められるものなんてない。勝敗など戦ってみないと分からない。その上で自分が100%勝つ気でいることが最重要だと。
だからこそ彼らには彼らの戦い方がある。100%勝つ気でいる為にそれぞれの戦い方を貫くのだ。根拠のない自信など蛮勇でしかない、彼らが自分が勝てると信じる根拠には彼らなりの戦い方があるのだ。
それを加味するとヒソカの化け物さが分かるのではないか?例え相手がどんな相手でもその相手の戦い方に合わせ心身共に屈服させるつもりでいる、こんな人間が死なずに今も生きているのがまずおかしいのだ。
ーーーCASE2 伸縮自在の愛ーーー
「さぁー!いよいよ始まります!世紀の第一戦!!戦績は4勝0敗!その全ての試合を一瞬で終わらせた大魔法の使い手、ステラ選手の入場です!」
大歓声を受けながら入場する。それにしてもなんなんだよ大魔法の使い手って。そりゃ確かに念について知らない人間からすりゃ魔法にしか見えないけどさ。
「そして反対側からはヒソカ選手の入場だぁー!!戦績は2勝0敗!その試合内容はステラ選手を彷彿とさせる瞬殺!今最も勢いのある奇術師です!」
反対側からヒソカが現れる。俺は積極的に新人を狩ってる(保護してる)から戦績が伸びているが、どうやらヒソカはそこまで天空闘技場で戦いの日々を繰り返しているわけではなかった。恐らく楽しめそうな相手とだけ戦えるように日時を合わせて戦おうとしているのだろう。
「最低限の準備はしてきたか?」
「耳栓のことかい?持ってきたよ♠︎ボクもできるだけ長くキミと愛を語り合いたいからねぇ……♦︎」
「ケッ、何が愛だ」
「君こそ、ボクの能力は分かったかい?」
「散らせたトランプと相手をオーラで結んで引き寄せる。あそこまでオーラを自在に操れるのは変化系だ。オーラを物に付けて引き寄せることができるようなものに変化させてるんだろ」
「正解❤︎ ボクのオーラはガムとゴム、両方の性質を併せ持つ♠︎」
お互いの手札の見せ合いを終えると構えを取る。こちらは発を習得する段階でバンジーガムにどうやったら勝てるかを考えながら作ってたんだ。殺し合いに持ち込んでも7割くらいの勝率はあると思う。だが、ヒソカは圧倒的不利な状況ほど燃え上がるタイプであり、恐らく実戦ならその3割を確実に引いてくる人間だ。それが怖いからこそ、俺はヒソカに能力を明かし俺の流儀に合わせてくれるように誘導した。
「一撃与えた方の勝ちだ。異存は?」
「無いよ❤︎」
天空闘技場の戦闘は原則的にはポイント&KO制という、攻撃やダウンを取ってポイントを貯めて先に10ポイントを取るか、対戦相手を気絶させた方が勝利するという方式を取っている。だが、200階クラスより上では選手同士の合意の上であれば対戦方式を変更できる。
原作ではフロアマスター戦であるクロロとヒソカの戦いで判明したことだが、フロアマスター戦でも他の試合と同じく審判が存在することから死闘が解禁される200階でも同様の様式だと思い、事前に確認を取っていた。
「始めっ!」
「当然な風船人形(ワンダーバルーン)!」
審判の合図と共に俺は周囲に5体の分身を召喚して突進する。ヒソカはそれらの動きを見切りながら分身の一体に手を伸ばすと、能力を発動する。
「伸縮自在な愛(バンジーガム)」
ガムによって引き寄せられた分身は別の分身に向かって飛んでいき、2体の分身はぶつかると大きな音を出して破裂した。
その隙に俺はヒソカに攻撃を加えようとするが、ガムが飛来するのを見ると眼前に分身を出して盾にする。
盾にした分身にガムが付着するが、俺はその分身が利用される前にヒソカの方へと蹴り飛ばす。ヒソカは飛んできた分身を見て後ろに避け、そのまま地面に激突した分身は付着したガムごと破裂した。
「な、何が起きてるのでしょうか!?今の一瞬の攻防で不思議なことが起きすぎて実況を挟む隙もありません!」
「どうやら嬢ちゃんは自分の体を模した風船を操るようだ。それに対してヒソカは……風船を引き寄せてぶつける、念動力のようなものを使っているな」
「なっ、なるほど。彼らはそのようなことができるのですか。…で、アンタ誰?」
「ふぅん……分身を出すのは一瞬でその数も大量に展開可能、ただし分身自体は攻撃力は持たない烏合の衆ってところかな?」
「烏合の衆か、まさしく言い得て妙だな」
「ふふふ、冗談だよ❤︎ その分身が真価を発揮するのは撹乱と防御♠︎」
バンジーガムはとても厄介な能力だ。一度つけられてしまうと逃げることはできなくなるし、その付け方もオーラを飛ばして付着させる以外に殴り合いのついでで付着させることができる。このバンジーガムから逃れる為には常に盾となるものを用意するしかない。だが、ただの盾ではすぐにガムによって没収されてしまう。
そこでワンダーバルーンがガムの対策になる。ガムを飛ばすにも分身に紛れた俺に正確に狙いをつけるのは難しいし、俺は常にヒソカとの間に分身を置くことを意識すればガムが付くのも防げる。
「だけど分身を使うならキミ自身が突っ込んでくる必要はないよね♦︎ 操作できる限界距離はそこまで広くないのかな♣︎」
「どうかな?俺の分身に攻撃性能はないから、仕方なく俺が攻めてるだけかもしれないぞ?」
「そうだとしてもキミの狙いは同じだ♣︎ 分身で死角を作ってボクに攻撃すること……だろ?」
流石に読まれてるか。まあ音響兵器としての部分が封じられれば、ワンダーバルーンの役割は撹乱のみだ。
「そうだな。勝敗条件を変更するか?確かにこの条件だと俺に有利だし」
「まさか❤︎ 」
自分の敗北を全く考えてないような笑顔に俺も釣られて口角が上がる。俺としてもお前の驚く顔を見たいが為にここに来たんだ、100%勝つ気なのは決してお前だけじゃない!
ーーーCASE OF HISOKAーーー
ああ、彼女の能力は素晴らしい。予め能力を知って対策しなければ分身一体一体の脅威が跳ね上がり、その対策をした上でも撹乱としての役割に切り替えられるだけの汎用性がある。
周で強化したトランプで分身を処理していくが一向に分身は減らない。破壊と生産のペースではこちらの方が間に合ってないようだ。
だが、それは関係ない。なんなら破壊よりも生産の方が早いと分かった今、攻撃性を持たない分身に無駄な攻撃をして隙を晒せばステラの攻撃を受ける危険性が上がる。
ではこのまま包囲され続けるのを許容するのかという話になるが、それもあまり良くない選択だ。何故なら、分身の作る死角に乗じての不意打ちに反応できるかどうかは分からないからだ。ステラが隠を使えることが分かっている以上、気配に反応して防御するのでは不十分であり、円を展開してもこの大量の分身達も円の中に入る為にその中に紛れた本物を見つけ出すのは難しい。
だとすればこの包囲網から抜け出すのが1番良い手なのかもしれないが、包囲網の一点から逃れようとしても分身の消滅によってボクの行動が彼女に感知されてしまう。安全に逃れられる場所は上しかない。
だからこそ、彼女はそこを張っているはずだ。言うなればボクは穴の中に投げ込まれたネズミ、出口は一ヶ所しかなく、その出口には怖い猫が待ち構えている。どうすれば生き残られるかは中のネズミには分からない。
だけどひとつだけ言えることは、ボクはネズミじゃないということだ。
ボクは分身の包囲網から抜け出す為に高く飛び上がる。この隙を見逃すかどうかは彼女次第だった。
「やっぱり来たか❤︎」
明らかに他の分身より動きの速い気配がボクの背後を取る。その反応速度は素晴らしいものだったが、その判断は甘かった。
彼女はハッタリで乗り切ろうとしたが、彼女の分身の操作範囲が狭いのは彼女が恐らく具現化系に属する能力者だからだろう。強化系と操作系と放出系が苦手な為に強度のない分身を狭い範囲で操るという能力を作ったに違いない。
そんな彼女が分身を置いて突撃するのは危険な行動だ。分身の1番の利点は本物と見分けがつかないことであり、本物が「分身と距離を離して行動する」という分身では不可能な挙動をしている時点でその利点は失われる。
天井と左手を結んでいたガムを一気に縮めて加速し、ステラの攻撃を避ける。それと同時に右手でガムを飛ばしステラを引き寄せる。
「まだまだキミも青い♠︎」
ボクに釣られて飛び上がったこと自体は悪くない。あそこで勝負を決め切れるのならそれに越したことはないし、基本的に戦いは長引けば長引くほど不確定要素は増える。
だけど彼女の能力は守りに偏重していて、無理に攻めるよりは守り続ける方が戦いを有利に運ぶことができるだろう。動かないという選択肢を選べるほど彼女は熟してはいなかったが、まだまだ未熟な彼女の戦い方はそれはそれでボクの好みだった。
引き寄せたステラを殴り抜ける。
パァン!
破裂音と共に拳が空を切った。
……分身!?本物は!?
咄嗟に堅で防御を固めるが、本物がすぐに追撃してくるようなことはなかった。だったら一体今のは…?と思いながら分身達のいた場所を見下ろす。
そこにいたのは動かない分身に紛れてなにかを投げつけるステラの姿だった。その投げ込んだものが火のついたマッチであるのを確認すると、ボクは足と床に結んでいたガムを一気に縮める。
爆発が起こった。
ーーーCASE3 イメージーーー
ミルキから得たアドバイスは水素だった。可燃性のガスである水素なら風船人形が相手に当たって破裂した後に火種を投げ込めばボカン!だし、イメージ修行に必要な水素はいくらでも入手方法があるので調達にも困らない。
自爆の危険性が低いのも有用だった。例えば、世の中には空気と混ざるだけで発火するガスも存在するが、それを使う場合分身を作った直後に破壊されてしまうと俺諸共自爆してしまう。破壊されるだけでは脅威はないというのは俺のリスクを考える上で重要だった。
そしてイメージ修行にも危険性がない。勿論可燃性ガスであるので火元には細心の注意が必要だが、毒ガスを死なない範囲で取り込むことなんかと比べたら圧倒的に無害だ。むしろ水素吸入器で水素を吸うのは健康に良いくらいだ。
だがイメージ修行自体の難易度はとても高く、修行は難航した。もともと目に見えず触れられない気体の具現化や変化がそう簡単にできるとは思ってなかったが、思ってた以上にガスのイメージが掴めなかった。
だから俺は能力を妥協した。元々は水素が中に入った風船人形を具現化するつもりだったが、それを具現化した風船人形の中に水素を入れるという形を目指した。これなら水素吸入器をイメージすれば可能だと思ったからだ。
だがそれすらも難しかった。いや、やろうと思えば多分できたかもしれない。例えばキルアは決して無条件でオーラを電気へと変えられるわけではなく、その前に体に電気を取り入れることでオーラを電気に変えるイメージを強化している。それと同じように俺も水素を体内に取り入れて、それを取り出すイメージをすればその形も実現できたかもしれない。だがその方法は電気以上に現地調達の難しいものを制約とするわけで、長期遠征であるキメラアント編で使うには厳しい。
そういうわけで俺がどういう形で水素を具現化したかというと「水素吸入器を普通に使う」という日常的な行動を念で再現することにした。単なる水素では目に見えず触れられない為にイメージしにくいが、俺自身が体内に取り入れた水素というのはイメージしやすかった。
つまるところ俺の二つ目の能力は「体内で水素を生成する」というものだ。地味すぎて名前はまだない。
だがそんな普段は健康法にしか使えないような能力も、ワンダーバルーンと組み合わせることで爆弾人形を作ることができる。
普段のワンダーバルーンは自動操作に設定しているが、俺自身が動けなくなることを制約として手動操作にすることもできる。この手動操作というのは自分の場合、自分の意識が分身の方に入っているパターンだ。ハンゾーの「分身の術(ハンゾースキル4)」と似たようなものだと思ってくれればいい。
だからこそ「体内で水素を生成する能力」を発動した時に、体内の定義が本体と分身のどちらかにあるかで能力の挙動が変わってくる。
もちろんだが手動操作の分身を出してない状態でこの能力を発動しても他の分身に水素を送ることはできない。それができるなら最初から水素を送り込む能力を作ってたよぉ……
だが、意識が手動操作中の分身に寄っている状態でこの能力を発動した場合にのみ、水素が手動操作中の分身の中に入るのだ。これに気づいたのは「体内で水素を生成する能力」を習得した後の話なのだが、気づいた時は超安心した。なんせ役立たずの能力を作ってしまったとばかり思い込んでたからな……
ーーーCASE4 切り札と罠ーーー
俺がヒソカに隠していた切り札はこの二つだ。手動操作の分身を普段の分身より長い範囲内で動かせることと、その分身の中に水素を詰められるということ。どちらも戦術を前提から覆すもので、ワンダーバルーンを用いた駆け引きの中でこの2つの切り札を切るのが俺の勝ち筋だった。
一見すると分身を用いた攻防でも俺が押していたように思えるが、結局のところ本体である俺がヒソカにダメージを与えることに成功しない限り俺の勝ちはない。
そして、死角からの攻撃がヒソカに通るかどうかは非常に怪しい。普通ならそこを通すための分身なのだが、ギアを上げまくったヒソカの反応速度を前に死角から攻撃したくらいで攻撃を通せる自信はなかった。
もし俺の不意打ちがガードされてしまえば、待っているのはガムだ。その時点で俺の敗北は確定事項となる。
だからこそ俺は状況を作った。分身の動きなど度外視してとにかく大量の分身を作る。ヒソカが分身を消すよりも早く分身を作り出せば、彼は分身を消すのではなく本体の攻撃を待つ形になるだろう。
仮にこれが普通の戦闘であれば、ヒソカは周囲を分身が囲む中でも平気で俺のことを待ち構えていたに違いない。いくら俺が相応の実力を持っているといっても、死角からの攻撃で自分より実力のある相手を殺し切るまでには持っていけない。
その為のルールだ。一撃でも食らったら終了、というルールであれば死角からの攻撃は脅威だ。ヒソカは決められたルールにはきちんと向き合うし、そのルールで勝つ為に最善の選択肢を取るだろう。
結果としてヒソカは跳んだ。それは決して安易な跳びではなく俺への罠だったのだが、この状況まで辿り着いた時点で俺の罠は完成していたのだ。
「素晴らしい……❤︎ ボクの負けだよ♠︎」
体中を焼かれたヒソカが煙から出てくる。オーラの防御自体は間に合ったみたいだが、軽傷を負っていた。俺は感慨に耽るのを抑えて告げる。
「ああ……俺の勝ちだ」
俺たちの言葉を皮切りに審判が決着を告げる。その瞬間会場に割れんばかりの声が上がった。
ーーーCASE5 ハンター試験への道ーーー
それから2年後、カイトからジンを見つけて一人前になれた報告を聞いた俺はハンター試験を受けることにした。なんの偶然か、俺の知人であるヒソカという奴もハンター試験を受けたいらしく俺はそいつについて行った。いやぁ〜ぐうぜんもあるもんだ。
いや……この言い方には語弊があるな。実際はヒソカにストーカーされている、というのが正しい。
「お前らはなんでハンターになりたいんだ?」
「ボクは別にハンターになりたいわけじゃないな♦︎ハンター資格を持ってるとなにかと便利だから欲しいだけ♣︎あと彼女の付き添い❤︎ 」
「彼女言うな!…俺も似たようなもんだ、ハンターになれば身元も保証されるし就職で有利だからな……」
俺の遠い目に面接官の人は同情の目を向けたが、俺達の発言内容を振り返ると露骨に不機嫌になる。
「ちっ、お前らは大した理由もなくハンターを目指すタイプか!こんな奴らほど実力はあるんだからやってられねぇぜ!」
面接官の人はため息を吐くと、俺達に忠告なのか負け惜しみなのかよく分からないことを言ってくる。
「いいか!ハンターになる為に必要なのは腕っぷしだけじゃねぇ!そんな適当な奴らがハンターになれると思ったら大間違いだぞ!!」
「(そんなの分かってるからこんなヤツについてきたんだよ!!!)」
「何か言った?」
「なんでも!」
面接官の人がしぶしぶ教えてくれた目安の場所を目指して歩く。その道中で寂れた街を歩いていると、目の前に仮面を被った集団を引き連れた老婆が現れた。
「ドキドキ2択クイ〜〜〜ズ!!!」
「クイズ?」
後ろの仮面の人たちがうすーい拍手をする中、老婆は説明する。コイツら何の為にいるんだろうか。
「お前の母親と恋人が悪党に捕まり、1人しか助けられない。母親と恋人のどちらを助ける?」
それにしてもドキドキ2択クイズか……
「恋人かな❤︎」
「理由は?」
「恋人ってことはその時点で1番大切な人ってこと♣︎ 既に大切じゃなくなった人になんか興味ない♦︎」
「なるほど、分かった」
まあヒソカならそんな答えだよな……もしかしたら俺という存在がヒソカに恋人と答えさせたのかもしれないが(想像するだけで吐きそう)それでもヒソカが答えは沈黙、なんていう殊勝な回答するとは思えない。「答えはお死枚♠︎」とかいうクソつまんないことは言うけど。
「アンタは?」
「俺は……」
だが、ここでヒソカが試験を脱落するのはあり得ない。何故ならヒソカは今年の試験は試験官を半殺しにしたことで失格するからだ。だから必然的にこのクイズは正解するはずだ。
そこで原作の流れを思い返す。確かゴン達より先に受けた人は母親と答えて通された道を歩いていったが、その道には危険な魔獣が沢山いてそいつに襲われた。それを指して正しくない道だと言ったわけだが、別にその道自体がゴールに繋がっていないとは言われていない。
だとしたら「ゴールには繋がっているが危険な魔獣がいる道」である可能性はあるのだ。むしろ、ヒソカやイルミなどの危険人物が受かるということは、選択肢を間違えても乗り越えられるだけの腕があれば問題ないという可能性が高い。
「俺も恋人だ。理由は隣と同じ」
「ではこの道を通れ」
老婆が指す道を通る。途中で危険な魔獣とやらも現れたが、俺達に喧嘩を売ることはなかった。魔獣って確か頭が良い設定だったからな、わざわざ自殺行為なんてしないだろう。
「なんだ♣︎ ボク達は両想いだったのかい❤︎」
「死ね」
…あれ……これもしかしてヒソカと知り合わなくてもなんとかなった可能性ある……?いや、よそう……余計なことに気がついて発狂なんてのはごめんだ……
ーーーCASE6 無限四刀流の人ーーー
「おい、キサマら!試験官であるこのオレに対して喧嘩を売ってるのか!?」
結局無事にハンター試験に辿り着き、試験が開始されて一安心した俺とヒソカだったが(ヒソカは別に安心してない)、新たな試練が立ち塞がっていた。試験官の人に絡まれたのである。
いや、それは念を使えない人にはそう見えるのかもしれない。だが気配をオーラとして捉えられる俺の視点では明らかにヒソカの方が喧嘩を売っていた。
ヒソカは殺気を試験官の人に向けていたのである。うーわ、と思いながら俺はヒソカから離れようとしたのだが、敢えなく俺も巻き込まれてしまった。
これでもし俺が念を覚えていなければ試験官の人も俺のことを無関係な受験者だと思っただろう。だが俺は念を使える人間で、現に俺はヒソカの出す殺気が気持ち悪すぎたためにこっちもオーラで防御していた。
それを試験官から見て生意気な念使いの受験者がいると思われたのかもしれない。俺は受験者を掻き分けてこちらに歩いてくる試験官を見ながらヒソカに強く言い含める。
「絶対手を出したら駄目だぞ!いいか、絶対だぞ!」
「分かってるよぉ♠︎」
コイツ分かってないよ絶対!
俺達の目の前に試験官の人は現れた。片手には曲刀が握られており、やる気満々というオーラを出していた。その人の顔を見て俺はピンとくる。
ああ、この人が無限四刀流の人か。この人も念能力者だったんだなぁ……
考えてみれば当たり前だ。ハンターの試験官はプロハンターの仕事(ボランティアではあるが)であり、そのハンターの仕事をする為には裏試験の合格は前提である。そして裏試験の内容が念能力の習得だ。必然的に無限四刀流の人も念を習得してたことになる。
だとしたら系統はなんだったのだろうか?刀を投げて操ることから操作系かもしれないが、セリフ的にはそっちはただの投擲技術であり普通に刀を強化してるだけの強化系な可能性もある。
「俺は試験官だぞ!俺がお前らを不合格だと言えばお前達は不合格なんだ!」
それにしても無限四刀流の人は小物くさいな……こんな人間がヒソカの挑発を受け流せるわけない。
「キミが試験官なんだ♦︎ じゃあハンターになるのに強さは要らないのかな♣︎」
「ッ!!テメェ!!!」
あっ、と思った時には遅かった。無限四刀流の人が曲刀でヒソカに斬りかかるが、その曲刀がヒソカに到達する前に曲刀は床へと落ちた。
「ぐわぁぁぁあああ!!!」
「うわぁ……」
無限四刀流の人の顔面は血だらけだった。顔を斜めに切り裂かれており、その痛みで悶絶していた。いや、そんなことより……
「手出すなって言ったじゃん!!」
「ボクからは手を出してないよ♣︎これは正当防衛♠︎」
「ぶっ飛ばすぞお前!」
結局俺とヒソカは試験を失格になってしまった。こんなヤツと知り合わずちゃんとハンター試験の勉強しとけば良かった……
ハンター試験編でのステラの大体のポジションが見えてきましたね……