流れ者の考察記録   作:sesamer

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 プロット無しで書いてるので書き始めた時はここまでヒソカの存在感が大きくなるとは思いませんでした。まだ6話やぞ。



6. 原作開始×試験×魔術師

 

ーーーCASE1 魔法ーーー

 

 

 

「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

 

「アーラ不思議❤︎ 腕が消えてしまいました♠︎」

 

「お、おれ、のぉぉ!」

 

 両腕を切断された男が叫ぶ。まあ自業自得だ、ハンター試験の会場に着くほど優秀な人ならヒソカとの格の違いに気づいても良いのにね。

 

「あーあ、ダメだよ人にぶつかったのなら謝らないとな。特に快楽殺人鬼相手には、さ……」

 

「な、なんだコイツ……!宙に浮いてるぞ!!」

 

 俺はヒソカの後ろから現れる。その姿は黒いローブと黒い帽子を身に付けていて、何も見えない人には空を飛ぶ魔法使いのように見えるだろう。

 

 

 

 端的に言うと、俺は天空闘技場で魔術師と呼ばれているうちにこの称号を気に入ってしまった。いやまあただのごっこ遊びではなく実用性を加味してのロールプレイなのだが……

 

 前年の試験で気づいたのだが、ヒソカの隣にいるとヒソカに殺される人間が沢山出てくる。いやまあ流石にヒソカに喧嘩を売って死ぬヤツは自業自得だと思うが、中には逃げようとしてるのに殺される人間もいる。そんな人間を見て俺の良心が痛まないかというとめちゃくちゃ痛い。そりゃ選挙編到達の為に見捨てる人は見捨てると言ったものの、ヒソカに殺される有象無象なんて原作にはなんら関わらないし。

 

 そんな人を助けるには能力を解禁するしかない。ヒソカに先んじて殺される人を峰打ちで気絶させる、なんてことをするには俺の体が幾つあっても足りない。だが、都合の良いことに俺の手にはその人手を増やす手段と楽に人を無力化させる手段が存在した。

 

 流石のヒソカも気絶した人を殺すほど落ちぶれてはいないし(というかつまんないだろう)能力を使って先手を取ればヒソカに狙われた人をある程度助けることだってできる。

 

 

 

 だが、1番のネックは念能力を堂々と使ったら確実に目立つということだ。天空闘技場に出といて今更かよ、とは思われるかもしれないがあの世界はあの世界で日頃から念能力が飛び交ってるので慣れたものだと思われる。だが、そんなのを全く知らない人間が念能力を目の当たりにすれば驚くしその秘密に迫ろうとするだろう。

 

 だから俺は開き直った。魔術師だから魔法を使うのは当然だよね!とゴリ押すことにした。今も宙に浮いているのは隠で見えなくした分身に担いでもらってるからだし、魔法使いのような衣装もただのオシャレだ。一応ヒラヒラしたローブで見た目を誤魔化す狙いもなくはないけど。

 

 

 

 それよりも気になるのはゴン達からの評価だ。俺は目を閉じて新たに分身を召喚する。この分身に担がせるという方法は何も演出の為だけのものではない。

 

 俺のワンダーバルーンは手動操作で動く分身を召喚することができるが、その制約として俺は動けなくなる。だが、動けなくなるといってもピトーの「玩具修理者(ドクターブライス)」のように本人が縛られて移動することができなくなるわけでも、ハンゾーの「分身の術(ハンゾースキル4)」のように声を掛けられたり触れられると強制解除されるわけでもない。

 

 だから俺の動けなくなるという制約も分身に動かしてもらうということである程度カバーできるのだ。まあ制約の抜け道を見つけたせいでちょっと分身の仕様が変わっちゃったんだけど……

 

 

 

ーーーCASE2 制約と誓約ーーー

 

 

 

 以前念能力は制約(発動条件など)を定めることで能力の出力を上げることができる、と説明したがこの制約にはどんな制約がどの程度の出力になるのかという基準が統一されていない。全てはその人がその制約をどこまで厳しいと思うかに懸かっているのだ。

 

 例えば、2人の念能力者が「この能力は宇宙では使えない」という制約を定めるとしよう。そのうちの1人は宇宙と全く関わりのない人で特に宇宙で能力を使えないことをなんの障害とも思ってないのなら、その人の能力の出力が増加することはない。だが、もう1人が現役の宇宙飛行士であり生活の大半が宇宙の中であるのなら、この制約はとても重い障害となりその分その人の能力の出力も増加するのだ。

 

 逆に言えば、重い制約というのは自身が重いと思わなければ機能しない。そして、本人が重い制約だと思っている時点でその能力はどこかで使いにくくなっているはずなのだ。

 

 例えば、継承戦においてクラピカは「絶対時間(エンペラータイム)」にヨークシン編ではなかった「エンペラータイムの発動時間1秒につき寿命が1時間削れる」という重い制約(誓約かも)を設けたのだが、それで体力の消耗などそれまでのエンペラータイムの弱点がなくなったわけではなかった。常人にとっては重すぎる寿命消費のデメリットは、緋の眼の全回収が目前に迫りいよいよ自分の生きる意味を見失いつつあるクラピカには全く重くなかったのだ。

 

 

 

 俺のワンダーバルーンの制約も、制約を無視して動けるじゃん!と思い付いた結果制約が制約として機能しなくなったわけである。まあ制約が今でもある程度機能してると思ってるからこそ、能力の仕様変更も軽微だったのかもしれないが。

 

 仕様変更は分身の挙動だ。今までのワンダーバルーンは敵に接触したら破裂する、というあやふやな認識のまま成立していたが、今回の仕様変更にあたり分身を召喚する前に敵役を設定する必要が出てきた。それ以外の人や物に触れても破裂しないし、発動する前に俺自身が敵のことを認識する必要がある。

 

 ちなみに今の敵役はヒソカだ。敵役とはいったがヒソカが分身を触ってこない限りは破裂しないし、敵役に設定したからといって分身がヒソカを襲い始めるわけではない。

 

 

 

ーーーCASE3 奇術師と魔術師ーーー

 

 

 

 そういうわけで、俺は分身を手動操作してトンパとゴン達が俺のことをなんといってるのか聞きに行く。こういうの超気になるんだよ去年かなり暴れちゃったしさ…

 

 

 

「どうかしたのかゴン?」

 

 もちろん分身は隠で見えなくして気配を隠したのだが、それでもゴンが一瞬こちらの方を見たのにはびっくりした。流石野生児だ、他者の視線には敏感だということか。

 

「…ううん、気のせいみたい。それでトンパさん、そのアブない人って?」

 

「…44番、奇術師ヒソカ。去年合格確実だと言われながら気に入らない試験官を半殺しにして失格した奴だ」

 

「そんな奴が今年も堂々と試験を受けれんのかよ…!?」

 

「当然さ。ハンター試験は毎年別の試験官が担当し、その試験官次第で試験内容と合否が変わる。例え悪魔だって試験官次第で合格するのがハンター試験さ」

 

 その壮絶な内容を聞いた一同は冷や汗を流す。だがヒソカのやらかしはそれだけじゃない。

 

「奴は去年、試験官の他に10人の受験者を再起不能にしている。極力近づかない方がいいぜ」

 

 さて、ここまではヒソカのやらかしだ。ここからは多分俺の話になるのだが……ちょっと緊張してきたな、まだ試験も始まってないのに……

 

 

 

「ヒソカの後をついていくあの宙に浮いている女の人は?」

 

「何を言ってるんだゴン、人が宙に浮くわけ……浮いてる!?」

 

「なんだありぁ!?ハンター試験にはあんなバケモノまでいんのかよ!?」

 

 常識を外れた光景に思わず二度見するクラピカにバケモノ呼ばわりするレオリオ。まあバケモノ呼ばわりも仕方ないな、俺だってあんなの見たらバケモノって言うよ。

 

「…45番、魔術師ステラだ。奴もヒソカと同じで試験官を半殺しにして失格になったんだが、奴はヒソカ以上にやばいぞ。アイツが指を鳴らすとそれだけで人が倒れていくんだ……」

 

「そ、そんな魔法みたいなことできるわけ……!」

 

「本当だ、俺はその光景を見たんだ。ヒソカが受験者を斬り進むのを横目にアイツは指を鳴らすだけで、ヒソカが斬り捨てたのと同じ数の受験者を倒したんだ」

 

「奴みたいな人間を遥かに超えたバケモノもハンター試験にはたまに現れる。その中でもステラはトップクラスのイカれ女だ……!」

 

 

 

 え?ちょっと待ってなんで俺がヒソカ以上の危険人物扱いされなきゃいけないの?

 

 百歩譲ってヒソカと同じレベルの危険人物扱いされるのはいいよ、ぶっちゃけやってることそんなに変わらないしさ。けどわざわざ受験者がヒソカに殺されないように守ってあげてる俺がそんな謂れを受けるのは理不尽じゃない?

 

 ……まあいいや、実際ヒソカに比べたら念能力をバリバリ使ってる俺は目立つだろう。そしてヒソカの横にいるというそれだけで色眼鏡で見られるのも仕方ない。決して俺が悪いのではなくヒソカが悪い!

 

 

 

「なんか怒ってる?」

 

「怒ってないよ、今年こそは大人しくしてくんないかなって思ってるだけ」

 

「うーんそれは難しいかも❤︎ 今年は特に美味しそうな果実が並んでるし♠︎」

 

 ヒソカの問いに俺は項垂れながら答える。最近はヒソカが俺の反応と対応を見たくて殺してる気さえしてくるのだが、流石に自意識過剰だろう。自意識過剰であってくれ……!

 

 

 

ーーーCASE4 ギタラクルーーー

 

 

 

 ちょっと精神的にしんどくなったのでヒソカの隣を離れて別の場所に向かったのだが、懐かしい声に話しかけられて足を止める。

 

「おっ、ステラじゃん久しぶり!なにその格好イメチェン?」

 

「久しぶりキルア、魔術師ステラとは俺のことよ!ってね」

 

「全然口調合ってないぜそれ」

 

「うっさいな、キルアこそどうしたのよ。お父さんに今度はハンター資格取れって言われたのか?」

 

 俺の問いにキルアは逡巡し、それをなんでもないように感じさせる声で答える。

 

「ああね、最近は親父達もアレコレうるさくってさぁ……ミルキと母さん刺して今家出中」

 

「…ミルキかわいそ……今頃みんな心配してるんじゃない?」

 

 恐らくキルアはイルミには逆らえない妹達には手を出さないの消去法でミルキにナイフを刺したんだろう。俺はアイツこそ家出するべきだと思うんだが……

 

「はっ、関係ないね!俺はハンターになってアイツらとっ捕まえてやるんだから!」

 

 その後ドリンクをご馳走してくれるおじさんがいるとキルアに誘われたのだが、俺は丁重にお断りした。俺だって下剤入りドリンクはごめんだ。

 

 

 

 そろそろ試験も始まるということでヒソカの下に戻ると、ヒソカは顔中体中に針を刺された複雑怪奇な人間と親しく話していた。

 

「お、どこいってたのさ♠︎」

 

「随分とキルと親しげに話してるね」

 

「げっ、見てたのか」

 

 そのビックリ針人間の正体はイルミだ。彼はハンター試験を受けるに当たってギタラクルという容姿と名前を用意して受験しているのだ。まあゾルディック家は暗殺者として有名だし、ハンターサイトに名前が載る以上は本来なら気をつけるべきだわな。本名で登録するヒソカとキルアのせいでいまいち重要に感じないけど。

 

「ま、付き合い程度なら許すよ」

 

「ゆ、許された」

 

「キミもあの子に執着するねぇ♣︎」

 

「例えヒソカとステラでもキルに手を出すなら殺すからね」

 

「いやぁ、怖い怖い❤︎ 」

 

「頼むから手を出さないでくれよヒソカ……」

 

 常人が受けたら気絶するであろう殺気を受けながら喜ぶ変態に忠告する。というかここの犯罪係数やばいな?俺以外のやつ失格にした方がいいんじゃないか?(ブシドラ並感)

 

 

 

 そして今年のハンター試験の一次試験の試験官であるサトツさんが現れて説明を終えると、試験は始まった。

 

 その試験内容とは二次試験の会場までサトツさんについていくことだ。

 

 俺は隠で隠した分身に自分を運ばせながら移動する。めちゃくちゃ卑怯だし念能力を知らない人達の前で堂々と能力使って恥ずかしくないのか、と思われるだろうがこれは魔法だから仕方ない、仕方ないんだ。

 

「ねぇステラ、それ一体どうやってんの?」

 

「魔法だよ魔法、キルアだって魔法の存在を信じればできるようになるさ」

 

「嘘くせー」

 

 

 

 スケボーに乗って移動するキルアと会話しながら集団を追い抜いていると、その光景を見たレオリオに非難される。

 

「おいお前ら汚ねぇぞ!ちゃんと走りやがれ!!」

 

「なんで?」

 

「だってこれは持久力のテストだぜ!」

 

 そのレオリオの批判に今度はレオリオの両側からツッコミが入る。

 

「そんなこと試験官の人は言ってないよ」

 

「テストは原則持ち込み自由なのだよ、君もその鞄を持ってるのなら分かるだろう」

 

 そんな3人の様子を見てキルアはスケボーを降りてゴンに並んで走る。2人はお互いに自己紹介をして、そこで初めてゴンとキルアの物語が幕を開けるのだった。

 

 

 

「ステラさんは何歳なの?」

 

「ゴン、無闇に女性に年齢を尋ねるのは……」

 

「ふっふっふ……俺は魔法使いだぞ、年齢なんて100を超えてからは数えてな」

 

「俺が6歳の時13歳つってたし18歳くらいだろ」

 

「…なんで本当のこと言うの……」

 

「(…ひょっとして、そこまで危険人物じゃないのか……?)」

 

 

 

ーーーCASE5 ヌメーレ湿原ーーー

 

 

 

 長い通路と高い階段を乗り越えた先にあったのは広い湿原だった。この湿原はヌメーレ湿原といい、人を騙して餌にする生物が生息する場所だ。そう説明するサトツさんだったが、人に扮した人面猿が自身が本物の試験官だと偽りサトツさんのことを人面猿が扮した偽物であると糾弾する。

 

 その時、ヒソカの投げたトランプが人面猿とサトツさんに襲い掛かり、トランプを受け止められなかった人面猿はそのまま死んだ。

 

 投げた当人であるヒソカ曰く、ハンターの試験官はこの程度の攻撃で死ぬわけないからサトツさんの方が本物である、と。

 

 

 

 いやお前普通に殺すつもりだったよね?殺すとまではいかなくとも去年みたいに試験官半殺しにするつもりだったろ。周によって切れ味を強化されたトランプを受け止めながら内心でツッコむ。

 

 何故か俺にまでトランプを投げられたが、この程度のイタズラは些細なものだ。とうとう100を超えたイタズラポイントを計上するだけで我慢する。このポイントどっかで使えねぇかな……

 

 

 

 ヌメーレ湿原は霧が深く、更に人間に化けた生物が撹乱する為に後続の受験者は試験官を見失って迷ってしまう。俺は手動操作の分身に試験官を追跡させ、自分は自動操作の分身に抱えてもらってヒソカを追跡していた。

 

 前方にいる俺(手動分身)からは既に後方からまばらに悲鳴が聞こえ始めており、ヒソカの試験官ごっこが始まったのは明らかだった。

 

 

 

 だが、ここで彼らを助けるかどうか迷う。もちろん気持ち的には助けたいのだが、後方の俺(本体with自動分身)には意識がなくヒソカを止められる戦力ではない。だが、前方の俺(手動分身)を消してしまうと今度は俺が2次試験会場を見失ってしまう。

 

 ヒソカやイルミに助けてもらえるならこんなことは考えなくてもいいのだが、俺達の関係はそう単純な話ではない。

 

 

 

ーーーCASE6 目的と手段と結果ーーー

 

 

 

 今の俺とヒソカの関係は危うい薄氷の上にある。俺の殺人を見たくないという要求とヒソカの人殺しをしたいという要求をお互いに折衷して成り立つギリギリのバランス。

 

 もちろん気持ち的には俺の方が大いに譲歩している。俺はヒソカの殺しにも俺に対するイタズラにも強く言えない。何故ならヒソカからしたら俺との殺し合いは望むところであり、俺の方が一方的に衝突を避けているからだ。

 

 俺とヒソカの関係は例えると、不良の暴力を恐れて本気で止めることができない学級委員長とそれを気に入ってある程度は学級委員長に譲歩してる不良だ。不良が学級委員長を気に入るのは自由にやらせてもらってるからであり、それを学級委員長の方から崩してしまえばどうなるかは自明の理である。

 

 

 

 なんでそんな奴と付き合ってんだよ…と他の人は思われるかもしれないが、他の奴に至ってはもっと酷いのだ。

 

 例えば、普通の人間にとっての殺しは目的だ。その人が憎いから殺す、その人が死ぬことで得られるものが欲しくて殺す、色々な理由があるが基本的に殺すには殺すだけの理由があり、手段としての殺しだとしても最終手段であり目的と殺しが深く関わっている。だから他人から妬みや恨みを買わなければ普通の人には殺されることはない。

 

 だが、この世界の悪党である幻影旅団やゾルディック家は違う。彼らにとって殺しは手段だ、それもとってもお手軽な。金や物を手に入れる過程で殺した、邪魔だから殺した。彼らの殺しに正当性はなくても目的がある。彼らと距離を詰めればその目的にいつ自分が絡んでもおかしくはない。

 

 そしてヒソカの場合の殺しは結果だ。戦いを楽しむ上で1番なのが殺し合いであり、その結果として人が死ぬ。つまり殺し合い以外で楽しい戦いをするという目的を満たせるなら殺しをする必要はないし、殺そうとしても目的である楽しい戦いができないのなら殺さない。ヒソカが殺しに来た時の唯一の正解は抵抗せずに大人しく殺されようとすることなのだ(ヒソカの方に最低限の理性があることが前提だが……)

 

 

 

 だからこそ、俺はゾルディック家や幻影旅団なんかよりもヒソカの方がよっぽど安全だと思っており、それでもそのバランスを崩すのを恐れている。そもそもヒソカが2次試験会場にたどり着けるのはイルミの協力あってのことだから、ヒソカに助けてもらうのは間接的にイルミに借り作ることになるし、その前にヒソカに殺されてしまえば借りどころの話じゃない。

 

 だからここでの最良の選択肢は無視一択なのだが、そう簡単に納得できるほど俺は冷静でもなかった。

 

 

 

ーーーCASE7 試験官ごっこーーー

 

 

 

 霧の向こうからのレオリオの悲鳴を聞いた俺は急ぐ。近づくほどに濃くなる最早日常的になった血の匂いを辿り俺はその場所へと着く。

 

「あーっはっはっはァーーーァ!!」

 

「うわぁーっ!!!」

 

 ヒソカは逃げ惑う受験者を追いかけて殺していた。この状況を見て真っ先に俺の言い分が通るかどうかを考える俺の醜さに若干憂鬱になりながら、俺はヒソカを止める算段を立てる。

 

 

 

「止まれ!!」

 

 ヒソカのトランプを受け止める。オーラによって強化されていないトランプは簡単に止まった。まあここで念使ってたらトランプで裂かれたレオリオが念目覚めるし、クラピカの刀なんぞで止められるわけないからな。

 

「おやステラじゃないか❤︎ 一次試験はいいのかい♣︎」

 

「誰のせいでこーなってんのか…!ワンダーバルーン!!」

 

 俺がヒソカを食い止めたのを見て逃げようとする受験生の側で風船人形を破裂させる。そのままぶつけたらその人が念に目覚めてしまうので、わざわざ2体出して同士討ちさせる。耳へのダメージも2倍だが、ヒソカに殺されるかヌメーレ湿原の生き物に食われるよりは遥かにマシだろう。

 

 ただ、クラピカとレオリオには何もしなかった。どうせ2人はヒソカに殺されることはないし湿原の生き物に食われることもないだろう。

 

「逃げる人間を殺るのを止めるのは俺の自由だろ?」

 

「うーん♦︎けどそいつらは僕に襲いかかってきたからなぁ♠︎」

 

 まあそんなことだろうとは分かってるが、重要なのは俺はその場面は見ていないことだ。

 

「嘘つきの言葉なんて信用に当たらないぜ」

 

 俺の言葉にヒソカはハッとして、そうだったとでも言いたげに笑みを浮かべる。

 

「確かに❤︎ じゃあそこの2人に聞いてみようか♣︎」

 

「レオリオ、クラピカ。コイツらはヒソカに攻撃したのか?」

 

 確かにその2人は一部始終を目撃しており事実を証言されると俺の言い分は通らないだろう。だがレオリオもクラピカも他人の命を尊ぶ人間だ。

 

 彼らの答えは残酷な真実ではなく優しい嘘だった。

 

「いや、私にはヒソカの方から攻撃しているように見えた」

 

「ああ、俺もそう思った」

 

 2人の即答に対して、ヒソカは一瞬の空白の後に笑い出した。

 

「クックック!!!2人が言うのならそうなんだろうね❤︎ ボクの嘘だよ♠︎」

 

「…だろうと思った」

 

「ああ、僕はもう満足したよ❤︎ 手助けは必要かい?」

 

「いらねぇ」

 

「じゃあね、ステラ❤︎ 」

 

 

 

 ヒソカが霧の向こうへと一歩を踏み出す瞬間、その奥から主人公が遅れてやってきた。

 

「ゴン!どうしてここに!?」

 

「バカヤロウ!逃げろゴン!!」

 

 ヒソカの奥からやってきたゴンを守ろうとしても、俺では届かないだろう。だが、俺は最初から助ける気はなかった。

 

「仲間を助けに来たのかい?イイコだねぇ〜〜〜♣︎」

 

 動かなくなったゴンにヒソカはしゃがんで目線を合わせると、その目をじっと見つめる。助けに行こうとするクラピカとレオリオを俺が抑えていると、しばらくゴンを見つめていたヒソカは立ち上がる。

 

「うん!合格❤︎ ここに立っている子は皆合格だよ、ステラ♦︎」

 

「分かってるさ、気絶した奴はもうハンターになる気はないだろう。もしなろうとするなら俺が止める」

 

「やっぱりキミは優しいねぇ❤︎ 」

 

 そう言ってヒソカは霧の向こうへと消えた。ハートマーク多すぎだろ……

 

 

 

 俺は隠で見えなくした分身達に気絶させた受験者達を運ばせながら、ヒソカを類稀なる嗅覚で追いかけるゴンをクラピカレオリオと一緒に追う。

 

「助かったぜゴン、お前が来てくれなきゃ2次試験会場には辿り着けなかった」

 

「俺の方こそごめん!助けになろうとしたのに……」

 

「いや……私とレオリオだって何もできなかった。生き延びられたのはステラのお陰だ」

 

 俺はクラピカの言葉に反論する。決してあれは俺がヒソカを追い返したわけじゃない。

 

「違う、クラピカとレオリオがあそこで嘘をつかなければ、最悪全滅まで見えていた。そうでなくとも間違いなく後ろの人は誰も助からなかったろう。お前達2人が彼らを救ったんだ」

 

「俺たちが……?」

 

 

 

 そう断言する俺に対して、クラピカは尤もな疑問を投げかける。

 

「ステラ、貴女はヒソカとどういう関係なのか?2人の距離の近さとその殺伐さが私には理解できない」

 

「そうだぜ!俺にはお前さんがトンパの言うような危険人物には思えねぇ!」

 

 その質問に対してどう答えるべきか迷っていると、無言を保っていたゴンのことを考えて質問を投げる。

 

「ゴン、キミはヒソカのことをどう思う?今後一生顔も見たくないと思うかい?」

 

 ゴンはゆっくりと、自分の言葉を探すかのように話し出す。

 

「…いや、オレはヒソカがなんでオレたちが合格と言ったのかを知りたい。もう一度会うのがオレの死を意味することだとしても、オレはヒソカに会いたい」

 

「そういうことだ。人には善悪や好き嫌いや生死では語れない関係もあるってことだ」

 

 

 

「そうか……すまない、聞き辛いことを聞いてしまった」

 

 申し訳なさそうに謝罪するクラピカに対して、俺は逆にビックリした。

 

「俺とヒソカの関係はただの腐れ縁だよ。特にそんなドラマがあるわけじゃないが……」

 

 

 

「紛らわしい!!!」

 

 クラピカとレオリオはずっこけた。

 

 

 

ーーーCASE8 二次試験ーーー

 

 

 

 とりあえず無事に一次試験が終わったことに安堵していると、隣に不思議そうな顔をしたキルアがやってきた。

 

「ステラ、突然消えたけどどこ行ってたんだ?」

 

「あっ、そういえばオレの方がステラより早くレオリオ達の方に向かったのに、なんでステラの方が先に着いてたの?」

 

 ゴンとキルアの問いに答える。

 

「ふむ、魔法だな。魔法を使えば瞬時に場所を移動することだって不可能ではない」

 

「ちぇっ、また魔法かよ」

 

「まあ魔法を使えばなんでもできるからな!魔術師に不可能はない!」

 

 ガッハッハ!と俺が笑っていると、クラピカが揚げ足を取る。

 

「ヒソカを追いかけることはできなかったようだが……」

 

「ヒ、ヒソカは俺と同格以上の奇術師だから……」

 

 

 

 そんな感じで雑談していると、二次試験会場の扉が開き若い女性と大きく太った男性のコンビが現れる。

 

 彼らはメンチとブハラといい、美食ハンターの2人が二次試験の試験官なのだが、この試験が毎年のように存在するハンター試験のガバの今年分だった。ちなみに去年の分は無限四刀流の人な!

 

 前半であるブハラの試験はグレイトスタンプという凶暴な大豚を仕留めて丸焼きにする、という簡単なものだったが、後半のメンチの試験が問題だった。

 

 

 

「二次試験後半、あたしのメニューは、スシよ!!」

 

 原作において合格者0人を叩き出した試験。寿司について全く知らない状況から数少ない情報だけで推理し美食ハンターが美味しいと感じる寿司を作れ、という前半だけでも難易度が高すぎるこの試験は作中のハンター試験の中でもトップオブトップのクソ試験である。

 

 まあ一応擁護しておくと、最初はそれっぽい寿司の形さえできてれば合格のはずだったのだ。それがヒソカがメンチに殺気を出して喧嘩を売り、ハンゾーが料理の作り方をバラし、合格者を絞るために味で判断することになった結果、メンチが腹いっぱいになって試験続行不可になったのだ。

 

 …うん、クソ試験だね。

 

 

 

 あまりにも情報が少なすぎなのである。原作ではクラピカが文献として知っていた情報をレオリオが言いふらすことで材料が魚であることが分かるのだが、それがなければまず魚料理かどうかすら分からないのである。

 

 メンチが出している(と思われる)ヒントは

・握るという工程が必要なこと

・箸で掴む料理だということ

・小皿の調味料(醤油)につけて食べる料理ということ

・ご飯を使った料理だということ

・固形の料理だということ

・定番の形がある料理だということ

 

 こんだけである。材料に魚を使うのも、酢飯を作るのに調味料の酢が必要なのも全く分からないのだ。特に下の2つなんかはヒントとしての価値がほぼない。

 

 

 

 では、逆にこれだけのヒントしか出てこない試験が逆に試験として認められた理由について考えてみよう。ブハラのセリフから元々はヒントを見逃さない注意力さえあれば十分合格できるはずの試験だと考えられる。

 

 だとすれば魚料理という説明がなかったのはハンバーグ寿司や焼肉寿司など、いわゆる変わり種の寿司を作っても問題なかったからだという可能性は高い。それならまだワンチャン、クソ試験じゃなかった可能性もあったかもしれない。いやそれでもクソ試験かな……

 

 

 

 結局のところ、原作通りにヒソカはメンチに殺気を向け(一応止めたけども)ハンゾーの寿司をメンチは味の問題で落とし、ハンゾーがキレて寿司の作り方をバラし、受験者達が正しい形の寿司を作り、メンチが味で合否を判定することになり、誰も合格者が出ないままメンチが満腹になった。

 

 うーん、これはクソ試験!w

 

 




 いやぁステラちゃんはまだハンター試験編なのにバンバン念能力使ってチートしてますなぁ…チートタグも必要とちゃうんか?
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