なんかこの主人公気軽にヤッてんだかヤッてないんだかよく分からないライン往復してくるな……
ーーーCASE1 最後の別れ道ーーー
試練官とのゲームによって50時間もの時間を消費させられた俺達は、残りの時間で急いでトリックタワーの攻略を目指した。
え?魔法?なんのことっスかね……?
「あっ!最後の別れ道って書いてある!」
「どうやら出口は近いみたいだな」
そして俺達は大きな石像に装飾された最後の別れ道まで辿り着くことができた。
「はぁ〜、いい加減機嫌直せよステラ」
「すまない……安易に人の秘密を探ろうなどと浅はかな真似をしてしまった。本当に申し訳ない……」
「え?なんですか秘密って?私そんなもの知りませんね。機嫌も悪くないです」
誰の負傷もなく無事出口に近づいて心に余裕を見せる俺達だったが、その石像から宣告される衝撃的な内容に一同は固まる。
その内容は、この先の扉の片方の道は全員通れるが通過に45時間以上掛かり、もう片方の道は3分でゴールに辿り着ける代わりに通過するためにこの部屋に2人を置いていかなければならない、というものだった。
俺達の今の残り時間は既に1時間を切っていた。つまりここで仲良く全員失格するか、ここで2人を蹴落としてこの試験を合格するか、今の俺達はその2択に迫られたのである。
「俺はなんとしても合格するぜ。どんな方法を使ってでもな」
レオリオは部屋の周囲を見ながら言う。そこには古今東西ありとあらゆる武器が並べてあった。この部屋で殺し合ってでも落ちる2人を決めろ、ということなのだろう。
「オレは5人で通過したい。せっかくここまで皆で来れたんだしさ、イチかバチかの可能性でもオレはそっちに賭けたい」
「おいおい、イチかバチかじゃないぜ。長い道を選んでも1時間を切った状態で45時間も掛かる道を通過すんのは不可能、合格したいのならオレ達はここで戦ってでも短い道を選ぶしかないよ」
ゴンは全員で合格する道を選ぼうとするが、それをキルアはそもそも全員で合格する道自体が無いのだと却下する。そんな流れでクラピカが俺にある提案をする。
「ステラ、ちょっと頼みたいことがあるのだが……貴女の魔法を使ってここに残る2人を作り出すことはできないだろうか?」
「そうか!ステラの分身を使えば5人で短い道を通過することができるかもしれねぇ!!」
クラピカの思いつきにレオリオが興奮するが俺はそれを却下する。
「ダーメ。だって俺の魔法の正体も所詮はトリックなんだもん」
「おいステラ、この期に及んで拗ねてる場合かよ!」
キルアが俺のことを叱るが、クラピカはやはりと言った表情で納得する。
「…私達が4人で降りてくる前に試していたんだな?」
「そうだよ、タイマーを分身含めた5人で装着したけど前に進むことはできなかった。この塔は至る所にあるカメラによって監視されてるから下手なトリックは通じない」
「くっ、そうだったか!じゃあやっぱり戦うしか……!」
俺の魔法も封じられ、いよいよ方法のなくなった俺達は選択を迫られるが、そこでゴンが口を開く。
「一個思いついたことがあるんだ」
「…ゴン?」
ーーーCASE2 ゴン・フリークスーーー
ゴンのアイデアとはまず全員で長い方の道に入り、そこから壁を壊して短い方の道に侵入する、というものだった。それなら残りの1時間で壁を壊すことに成功すれば全員で合格できるし、壁を破壊するための道具も部屋にいくらでも用意されていた。
ゴンの恐ろしいところはここだ。極限状態で提示された2択、普通の人間ならその2択を選ばないといけないという強迫観念に駆られる中、平然とその選択肢を無視して自分の答えを導くことができる能力。
俺はゴンのスペックはあまり高くないと思っている。もちろん才能が素晴らしいということは作中で何度も描写されており、俺もそこを疑う気は全くない。
だけどこの世界の戦いは年季が全てであり、ゴンの戦いの年季は皆無だ。原作開始の3年前からハンターに憧れた彼は山で自身を鍛えた。確かに山育ちゆえの勘やパワーは優れているし、そこはゴンが高く評価される一因だ。だけどその戦いには技術がない。ゴンの体術レベルはほぼ皆無だと言っていいのだ。
作中での実力者相手に彼の体術は全く通用していないし、なんなら天空闘技場でヒソカと戦った時に初めてフェイントというものを知る始末だ。彼の体術、絶対的な指標としての強さはまだまだスタート地点に立ったばかりなのだ。
だが彼はそこから数年の間にゲンスルーを倒し、ナックルを追い詰め、キメラアントの兵隊達を倒す実力を身に付ける。それはただ単に彼の才能が素晴らしいもので一瞬で誰も彼もを追い越したからかもしれない。だが、俺はそれでもゴンがそこまで強くなったのだとは思わない。
もちろん相応の実力は身につけたであろう。キメラアントの兵隊達を倒せるようなったのはゴンの実力だと言ってもいいかもしれない。だが、俺はゴンが劇中であそこまで活躍できた理由は単純な強さではないと思っている。
ゴンの発といえばジャジャン拳だ。これに対して読者の中には使いづらい技だと思ったり、素でパワーに優れる強化系がリスクを冒して火力を上げることの無意味さを感じたりする人もいるだろう。だが、俺はこの技がゴンに1番相応しいものであり、この技がなければ彼が多くの強敵と戦い抜くことはできなかっただろうなと思う。
その理由は火力だ。念を習ってからまだ間もないゴンは攻撃力を意味するオーラ量も攻撃性能を意味する体術や流のレベルもまだまだであり、単純な殴り合いでは具現化系のゲンスルーやナックル相手に一方的にボコられる始末だ。まだまだ経験値が足りない。
そこでジャジャン拳という一発逆転の切り札だ。これを当てれば格上相手にも勝敗を決めるほどの大ダメージを与えることができる。ただ一つ問題なのは、ジャジャン拳には多数の制約がありまともに戦えば当てることなど到底できない。
だが、ゴンはまともじゃない。まともじゃないから極限状態の2択を前に誰も思いつかないような3択目を選べるし、その戦い方は当てさえすれば勝利確定のジャジャン拳と相性抜群の能力だ。俺はゴンの1番の強みはそこにあると思っている。
しかしそれは単純な強さとして現れるものではない。ステータスとして見ればゴンのステータスは暗殺者として長い時間を鍛錬に費やしたキルアに二歩も三歩も劣るだろう。なんなら主人公4人組の実力という観点で見るならクラピカに次いでレオリオよりは強いくらいの3番目ではないかと俺は思っている。
それでもゴンは実戦において格上を相手した時に飛躍的に強くなり、格上殺しのジャジャン拳とその技を通す為の機転とイカれ具合を以って作中の強敵達と渡り合うことができるのだ。フリークスの名に相応しい、主人公とは思えない戦い方である。
いや、主人公に求められる能力が状況を打開する力であるとするなら、ゴンの戦い方は最も主人公に向いているとすら言えるかもしれない。
ーーーCASE3 硬ーーー
「なるほど……それなら5人全員で合格することができるかもしれない!」
「よし、それならさっさと壁を壊そうぜ!」
ゴンの意見に全員が賛成し、壁を壊すことになったのだが……俺は周囲の武器を取りに行く4人とは逆に一直線に壁の方に向かう。
「ここまで皆に助けてもらったお礼だ。とっておきの魔法、見せてあげるよ」
右の拳にオーラを集中する。オーラを体の一部分に集中する技術は凝と呼ばれるのだが(ただ単に凝とだけ言えば眼に集中してオーラを集めることなのだが)これだけでは体全身のオーラを全て集めることはできない。体全身から絶えずオーラは流れておりそれを止めなければならないからだ。
だから凝で体の一部にオーラを集めた後に他の部分を絶でオーラを止める。これで体から放出してるオーラの全てが集中していることになる。
その時点でも既に恐ろしいくらいのオーラが一点に集まるのだが、これをオーラを増幅させる練をした状態で行うのが硬だ。硬による攻撃はその人間が普通の手段で出せる全力の攻撃であり、これが最強の攻撃である念能力者も少なくない。
ただこの攻撃にはリスクしかない。オーラを一点に集めるということはそれ以外の部位は劇的に防御力が減少する。当てれば大幅なリターンは見込めるが、反撃を受ければ致命傷を負う確率も高い。
作中ではキメラアント編にてフェイタンが硬で変身したザザンを攻撃したのだが、それは防御されてフェイタンは反撃を受ける。その反撃はオーラを飛ばすという放出系以外の能力者なら途端に威力の落ちる攻撃だったが、それでもフェイタンは大ダメージを受けてしまった。
ゴンが当たり前のようにジャジャン拳を振るうせいで印象は薄れるが、硬はそれ単体で超ハイリスク超ハイリターンの奥義なのである。ゴンがナックル戦でジャジャン拳を気軽に振るえたのは偏に強化系と具現化系で攻防力に大きな差があり、具現化系のナックルが硬の隙を狙おうとしても大したダメージが与えられなかったからに過ぎない。
「どっせい!!!」
硬のパンチによって壁が粉砕される。具現化系であり本質的に肉体の強化が苦手な俺ではあるが、硬で壁を破壊するくらいのことならGIにやってくる前のひよっこのゴンにでもできる技だ。強化系の苦手な能力者が戦闘で硬をしないのは威力の問題ではなくリスクの問題が大きいわけで、こんな場所なら有用な手段だ。
「な、石でできた壁をパンチ1発で破壊しやがった……」
「はぁ!?ゴリラかよ!?」
「ふふ、これのトリックは見破れるかい?クラピカ!」
「…いや、今の技にはなんの仕掛けも見られなかった、正真正銘の魔法だ……」
俺の渾身のドヤ顔に冷や汗を浮かべるクラピカ。念使いでない人間相手にすることがダサいし、そもそも手段と目的が逆転してしまっている気がするが、俺としても魔術師としての意地はあった。
先述した通り俺の魔術師のロールプレイはまず人前で念を使うことの方便としての理由が先にあり、言ってしまえば俺の能力がどのようなものかバレてしまっても、そこから誰にでも使える念という概念に行き着かなければそれだけで俺の目的は達成していると言えるのだ。
だが、今の硬は明らかにその目的から反していた。念を習得し修行を続けさえすれば誰にでも使えるようになる硬を披露することは、俺の魔法が他人にも使えるものであるということに繋がりかねないものだった。
…まあぶっちゃけると、ここにいる4人はどうせ後一年も経たずに念を習得するのだ。念の秘匿は念を知るべきでない人間にその存在を教えない為のものであり、逆に言えば念を知ってもいいと思える人間になら秘匿せずとも問題ないのである。
「今のってどうやってやったの?オレ達でもできる?」
「魔法だ」
まあ今の俺には師匠なんかやってる暇などないのだから、念の存在を教えることはあっても念を教えることはないのだが……
ーーーCASE4 四次試験ーーー
トリックタワーを無事攻略した俺達は試験官によってクジを引かされた。引いた番号はそれぞれの受験者の試験番号になっており、四次試験の内容は受験者番号の控えとなっているプレートを互いに奪い合うというものだった。自分のプレートとクジによって引いた番号のプレートはそれぞれ3点その他の番号は1点ずつとし、合計6点を試験終了時に持っておけば合格だ。
つまり、自分のプレートを保持しつつターゲットのプレートを奪えばそれで合格、ターゲットは分からなくても3人狩ればそれで合格、まああり得ないと思うが自分のプレートを奪われてターゲットが分からなくても6人狩れば合格になるのである。
船で2時間ほど揺られて、俺達は試験会場であるゼビル島へと到着した。ここで制限時間である1週間、俺達はプレートの奪い合いをするってわけだ。普通に死人が出るから自分としてはあまり好ましくない試験である。
試験が始まりトリックタワーを攻略した順番にゼビル島に上陸する。このタイムラグで試験開始直後の衝突を抑えているわけだ。それでもやろうと思えば1番最初のヒソカがスタート地点に居座って他の受験者を全員殺すとかもできるんだけど……
ちなみに三次試験をクリアした時点で来年度の試験会場への招待券が贈呈されるのだが、原作ではキルアはそれを使わずに試験会場探しをした。多分招待券は実家のゾルディック家に送られたから取りに行くのが手間だったんだと思う。
俺はとりあえずトリックタワーの攻略で汚れた体を水浴びで清めながらどうするかを考える。考えると言っても四次試験自体は楽勝だ。その辺にいる奴らから手当たり次第に狩れば合格は余裕なのだが、俺としてはまあ手が余ってるのなら余計な人死には食い止めたいと思うのが一般的な人間の心情なわけで…
水浴びを終えた俺はとりあえずヒソカのもとへと向かうことした。
ーーーCASE5 自動操作の弱点ーーー
「ようヒソカ」
「おやステラじゃないか♠︎ プレートはもう集めたのかい?」
「まだ2日目だぜ、そんな早く終わらせようとするほど俺はせっかちじゃないよ。同じ理由で俺のターゲットはお前じゃない」
「なぁんだ♦︎ デートのお誘いかと思ったのに♣︎ 」
ヒソカも俺が自分を狩ろうとするとは思ってないのだろう。全くの無警戒で俺のことを迎えていた。まあ俺もヒソカを狩るくらいなら適当な受験者3人狩るし。
「デートをするつもりは一生ないけどショーになら招待しようと思ってな」
「…なるほど、今の状況はアレをするのにピッタリだね❤︎ 」
ヒソカの前で座って目を閉じる。俺は手動操作の分身を出すと、二つ目の能力で分身の中に水素を生成した。
俺の「体内で水素を生成する能力」だが、厳密にはこの能力の原理は体内の空気を水素へと変化させるというものだ。変化させる空気の量も自由に調節できる為、普通に自分の体に使っても俺の体が破裂することはないし酸素欠乏症によって倒れることもない。
だからこんなこともできる。水素で満たされた風船の分身は徐々に地面から離れて空へと飛んでいく。
「そういうわけで俺の体のこと見張っといてよ。セクハラすんなよ」
「…まあボクもすることないし、キミを視姦しつつ暇を潰すことにするよ❤︎ 」
「きっしょ」
俺はヒソカに注意しつつゼビル島の上空へと飛んでいく。上昇が止まったところで俺は空の上から受験者の様子を監視する。
手動分身で見張りをするというのはハンター試験の会場や一次試験の時でも行ったのだが、その時のように俺の本体を自動分身で別に行動させるというのは難しい。
可能か不可能かと言われると可能なのだが、この四次試験という状況がそうさせることを難しくしていた。
例えばこの状況で俺自身を自動操作の分身に守らせる場合、「近づく人間を攻撃しろ」か「近づく人間から逃げろ」という命令になるだろう。お互いに狩るという目的な以上俺を狩りに来る受験者もいるからだ。
だが、それに対して俺の分身が攻撃した場合、その人は大きなダメージを受けてしまう。自動操作の分身では事前に破裂するよう敵役として設定しなければ「念を持たない人間がダメージを受けないように気絶させろ」という命令は行えないからだ。仮にダメージは少なくても高い確率で念に目覚めてしまうだろう。
であるならば近づく人間からは逃げるという命令を選ぶしかないわけだが、その場合は監視を終えて本体に戻った時によく分からない場所に辿り着いている可能性がある。上空から島を見下ろしてるのに何故か自分の位置が分からなくなった、なんていう間抜けは晒したくない。
だからこそ今回は分身を使わずにヒソカに頼んで俺の本体を守ってもらうことにした。ヒソカの態度はキモいがまあそのくらいなら大した被害じゃない。アイツ変態だけど強姦魔ではないし……多分。
ーーーCASE6 円の弱点ーーー
単純に監視するなら円でもいいんじゃないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、円にはリスクがあるということを忘れてはいけない。ちなみに俺も円を少しはできるが、後述の弱点と俺のスタイルが合わない為に円を伸ばそうと思ったことがない。
円とは四大行のうちの纏と練を複合した高等技術であり、オーラを薄く伸ばしつつ自分の周囲に広く覆う技術である。その説明の印象から放出系の得意分野のように聞こえるが、放出系はオーラと自分を切り離すのが得意であって円は体と切り離す技術ではないので円と放出系は無関係である(ただ、覚醒メルエムの円は微小なオーラの粒子を飛ばすという形である為、あれには放出系の才能が必要なのかもしれない)。
円によって伸ばされたオーラの中にあるものを円の術者は動きや形として肌で感じ取ることができるようになるわけだが、円は一方的に位置を探れるような万能性はなく、お互いに位置を知るというものだ。
念能力者であれば他の念能力者の円に入った時点でそのオーラを感じ取れるわけだし、円に入らなかったとしてもオーラを見れる念能力者からしたら円は視認できる。
だから円を伸ばして相手の位置を探ったところで相手側からもそれが探知されるのだ。自分が相手を追いかける時に円を使うというのははっきり言って愚策の部類に入る。
じゃあヨークシン編でゼノとシルバがクロロを追い詰めるために円を使ったのが愚策だってのかよ、という話になるのだが、あれはまずクロロがオークション会場に立て籠っているという前提があり、袋の中のネズミだから追い立てて狩るという手段が取れたのだ。
基本的に円が有効に働く場面とは、他を寄せ付けない圧倒的な強者が格下の相手の攻めを待つ時だけだ。そんな機会は俺にはないだろう。
念能力者じゃない人間に円を使うなら効果的かもしれない。念を使えない人間にはオーラは見えないし、念を使えない人間が円を使える念能力者に勝てるわけはないからだ。
そういう意味では今回は円を有効に使える場面ではあるが、問題は念使いでもない人間にもオーラを感じ取れる人間がいることだ。例えばキルアやゴンはイルミの出すオーラに気づいて警戒している描写がある。ある程度の才能か実力のある人間には円を伸ばしても気づかれるだろう。四次試験まで残った面子が誰も彼も無能揃いだとは考えにくい。
そこで上空からの監視というわけだ。ここからならオーラから追跡がバレることはないし、隠をすれば念能力者非念能力者問わず気づかれることはないだろう。常識的に上空からの監視を恐れて普段から凝で空を見上げるような念能力者はいないし。
こっちからもかなり離れてるし、隠をしてるから凝を併用して目を凝らしてオーラから敵を見つけるなんて芸当はできないが、人間にできないことなら道具に頼ればいいだけだ。
スコープを使って大まかな受験者の位置を確認する。その中にある人物がいるのを見つけてそいつの行動を追う。
「あ、いた」
その人はスナイパーライフルを構えた女性だ。名前は忘れたが、少なくとも今その女が紛れもない自殺行為をしていることだけは確かだった。
「死ぬかもしれないけど確定で死ぬよりはマシ、お前もそう思うだろっ!」
俺はもう片方の手に持っていた石を女の方へ投げる。石は重力の影響も受けて徐々に加速し、女が登っていた大木を粉砕する。キャー!という悲鳴と大木が薙ぎ倒される大音を残して俺は分身を解除する。
「安全確認ヨシ!」
「今のはステラの仕業かい?」
「そうそう、空から石投げつけた。直接当ててないから多分死んでないと思うけど。つーわけでもう一回行くけど、次ケツ触ったら怒るからな!」
「バレてたか♣︎」
「分身の感触が無い分本体の感触は残ったままなんだよ!」
もし分身の感触やダメージがこっちにもフィードバックされるとすると俺は自分が破裂するような感触を受けてしまう。五感の中でも触覚と味覚は本体のままなので自分の体に異常を感じた時には戻りやすいのは利点だ。ダメージ食らった後に戻ったとしても多分もう手遅れだろうけど。
今度は空を飛ばずに女のもとへと走っていく。女は幸運にも当たりどころが良かったらしく、脚を負傷して動けなくなっていたところだった。俺は観念したように項垂れている女性からプレートを頂き、ヒソカの下へと戻った。
ちなみにこの女性は原作では確かイルミを暗殺しようとして死ぬ人だ。というか原作とか関係なくイルミに喧嘩売るなんて止めるしかないわ。ヒソカと違ってイルミ相手だと死ぬしかないし。ヒソカ相手でも8割くらいの確率で死ぬけどさ……
ーーーCASE7 絶ーーー
ヒソカの所に戻ると、ヤツは槍使いの人と一戦交えていた。槍使いの渾身の攻撃を避け続けるヒソカを見ながら、俺は今この場に同席してるはずのゴンの気配が全く感じ取れないことに戦慄を抱いていた。
念能力者が絶で気配を完璧に消すのは簡単だ。絶というのはオーラを体外に出さないようにする技術であり、これによって気配を消したり体力を回復したりできる基礎的な技術だ。念能力者なのに絶が完璧ではないとしたら残念ながらもう一度修行し直せとしか言えない。
だが、念能力者でもない人間にも絶を使える人間はいる。ゴンとキルアはそういう人間だ。キルアは暗殺者として何年間も鍛え続けていたから気配の消し方が完璧でも全く不思議ではない。だがゴンは一般的な山育ちの子供であり、ハンターを志して鍛え始めたのは原作の3年前からだ。キルアは少なくとも6年以上ゴンより遥かに厳しい訓練を行ってきたので、キルアと同じ年齢でありながらキルアと同じレベルの絶ができるゴンが如何に凄まじい才能を持っているかが分かる。
そして絶を維持するにも高い集中力が必要だ。継承戦においてカキン国第四王子ツェリードニヒが絶の修行をするシーンがあるが、彼は纏を一瞬で覚えた凄まじい才能を持つにもかかわらず、絶の修行ではコップを割った音や声掛けによって集中を乱されて絶の維持を失敗していた。
そんな中でゴンは、隣で死闘が起きても集中を乱さずに丸一日絶を維持させることに成功したのである。一口に念の才能と言ってもオーラを扱う技術に関してはゴンやキルアよりツェリードニヒに軍配が上がるかもしれないが、気配の消し方や集中力の維持などより実戦的な念の才能に関してはゴンとキルアの方がずっと優れているのかもしれない。
俺としても槍使いの人はよく頑張ったと思ってたのだが、既にイルミによって致命傷を負わされた体は疾うに限界に達しており、ヒソカには相手にされずイルミにトドメを刺されて息絶えた。ハンター試験編で可哀想な死に方ランキングを付けるとしたらこの人は堂々の一位だと思う。二位はヒソカかキルアどっちに殺されてるかな……
「ゴメンゴメン、つい油断して逃しちゃったよ」
「ウソばっかり♦︎ 死にゆくオレの最期の願いをとか泣きつかれたんだろ?どうでもいい敵に情けをかけるのやめなよ♠︎」
「だって可哀想じゃん、どうせ本当に死ぬ人だし」
「まあ恐怖の針人間に致命傷負わされて戦いの中で死にたかったのにピエロに無視されて結局針人間に殺されるのは可哀想以外の何者でもないな……」
「じゃあステラが相手してあげれば良かったじゃん。ヒソカだってたまに似たようなことするしさ」
「俺は殺したくないし……」
「ボクは殺すに惜しい人を殺さないだけ♣︎」
「よく君たち友人やれてるよね」
この中で1番イカれてる奴にツッコミ入れられるのは屈辱的な気分だった。まあ俺も四六時中そんな疑問抱えてるけどさ。
「で、2人はプレートは?」
「オレは6点分揃った」
「俺もイルミ狙ってる奴倒して6点」
「あれキミの仕業だったのね」
「え〜、じゃあ残りはボクだけ?」
そりゃゲーム開始から全く動いてなかったしなお前。まあ今回は世話になったから手伝うけども。
「俺のこと見張ってくれた礼に1点分は稼いでくるよ」
「ついでにあと2点分稼いできてよ❤︎」
「甘えんなよそんくらい自分でやれ」
俺達が言い合ってるうちにイルミは顔に刺さっている針を取ることでギタラクルからイルミに顔を変形させる。何度見てもキモいなこれ……
「じゃ、オレ期日まで寝るから。頑張ってねー」
そう言うとイルミは素手で掘り進んだ穴に潜って冬眠?した。つくづく不思議生物だなゾルディック家という奴らは……
「俺も探しに行くか……」
ヒソカのターゲットはゴンのことを狙っていてゴンの成長イベントに必要不可欠だ。だから俺はヒソカの1点分のプレートがどこかにないか探すことにした。
ーーーCASE8 ボドローーー
「むっ!なにやつ!」
そんな中で遭遇したのは最終試験でキルアに殺されるボドロ氏だった。あー、そういやこの人も殺されるな。今のうちに狩っとくか。
そんな風に思っていたらボドロ氏の方が先に口を開いた。
「私は君のような女子供とは戦いたくない。ここは収めてくれないか?」
「は?」
「プレートが足りないのであれば私も協力する。3点欲しいのであれば私と協力してその分を稼げば良いだろう?もし足りなかったらその時に私のプレートをあげよう」
「何言ってんのお前」
これが挑発のつもりなら相当だ。しかしボドロは実に本気な姿勢で俺に説得を続ける。
「私は君のような人を傷つけたくないのだ。できることなら戦いたくは…」
「とんだ馬鹿だよお前」
いよいよ堪忍袋の緒が切れた俺は男の背後に回って地面へと投げ飛ばす。うつ伏せに倒れた男の首を掴むと俺は説得する。
「お前ハンター向いてないよ。実力差を理解してないのはまあ仕方ない、俺とお前の間には途方もない差があるわけだし。だけど人を見た目だけで判断するのはダメだよ、そんなんでハンターやってたらいつか死ぬよ」
「ぐっ、ぐぉお」
「あ、でも別にライセンス目的なら別にいいと思うよ。実際俺と会わなきゃ最終試験までは辿り着けたわけだし、また来年…いや再来年……?いやその時は試験も様変わりするしな……まあ次回以降のハンター試験に賭ければいいよ」
ただし、と言いながら俺は首を締め上げる。
「今回みたいな舐めた真似してたら近いうちに痛い目に遭うよ、この世界にはお前が侮る女子供の形をしたバケモノが沢山いるんだから」
この世界で子供だから女だからと紳士ぶったところで長生きはできない。そんな生き方を貫くなら最低でもヒソカくらいの力を身に付けてから言って欲しいものだ。
俺は2点分のプレートを手にヒソカのもとへ帰っていった。既に太陽は沈み辺りはピエロの跋扈する恐ろしい闇の世界になっていた。
ヒソカの前で完全に無防備になるのはヤッてるよなぁ…けどセクハラにはキレてるしなぁ…けどそれも一種のプレイかもしれないしなぁ…