なんか途中から発狂ダイスロール振ってない?
ーーーCASE OF GONーーー
オレのターゲットはヒソカだった。
一次試験でオレがレオリオ達を助けに行った時、オレはヒソカと目が合った瞬間に動けなくなった。その時に初めてオレはこの世界にはあのような人間がいることを知った。圧倒的な強者、それでいて森の捕食者達とも違う全く分からない行動原理で動く人間。
そんな人間を狩らなければいけないということに対してキルアは同情してくれたけど、オレは恐怖を抱くと同時にワクワクしていた。オレの力がアイツに届いたらどんなに嬉しいかって考えたら、ヒソカを避けて3点を稼ぐなんてことは考えられなくなった。
けれどオレだってそこでヒソカに殴り掛かろうとするほど考えなしでも命知らずでもない。オレは戦わずにヒソカのプレートを奪うことだけを考えて釣竿を使ってその練習をした。
相手の行動を予測してそこを狩る。口に出すだけなら簡単だったがいざ狙ってみるとそんなことは全くなく、その難易度の高さにオレは諦めかけた。だが、その時相手が獲物を狙う瞬間が1番の狙い目であることに気づき、無事に技を習得することができた。その後は血に惹かれる蝶を利用してヒソカに近づき、オレはその技を振るうチャンスを待ち続けた。
ヒソカが槍を携えた男と戦っている時もステラやギタラクルと会話している時もクラピカが交渉している時も待ち続け、ついにそのチャンスは来た。
オレはヒソカが他の受験者に襲いかかるその瞬間を狙った。そしてその結果は……
「驚いたよ♦︎ ずっと気配を絶ってチャンスを窺ってたのかい?」
他の受験者によって毒矢を撃たれ動けなくなったオレのもとへとヒソカが歩いてくる。その手にはオレに毒矢を撃った受験者の首が握られていた。
「気配の消し方、攻撃のタイミング、全て見事だった」
そう言うとヒソカはほんの一瞬だけオレが奪うことに成功したそのプレートをまるでオレにあげるかのようにオレの側に投げ落とした。
「そのプレートはあげる♠︎ コレが僕のターゲットだったからそれはもう要らない❤︎」
「オレも要らない…!!」
「そう言うなよ♠︎ それは貸しだ♣︎ いつか返してくれればいい❤︎」
その言葉にオレは全身に回る神経毒を無視して立ち上がる。立ち向かった強者に見逃され恩まで与えられる。オレはそんな無様を絶対に認めたくなかった。
「借りなんかまっぴらゴメンだ…今返す……!」
「くくく、断る♠︎」
笑みを浮かべたヒソカがオレの方に歩いてくる。オレは辛うじて反撃する為の構えを取る。
「今のキミはボクに生かされている♣︎ キミがもっと殺し甲斐のある使い手に育つまでキミはずっとボクに生かされているのだよ♠︎」
そう言うとヒソカは構えたまま動けないオレの頬をぶん殴る。パンチの衝撃で吹っ飛んでいくオレに対してヒソカはその場から立ち去りながらその言葉を残した。
「そのプレートは預けよう♠︎ 今みたいに1発ぶち込むことができたら受け取るよ♦︎」
「おっ、いたいた。やれやれ本当に気配を消すのが上手いな君は」
「…ステラ」
動かない体を引きずって森に隠れていたオレは声を掛けられる。彼女は手に持っていたプレートを投げて遊びながら近づき、オレの隣に座る。
「プレート、1点分余っちゃってね。いる?」
「要らない。オレはもう6点分集まった」
「…そっか。そうそう!ヒソカが褒めてたよ、あんな褒め方をするのは俺が見たのでも初めて……」
「………」
「ま、そんな慰めも逆効果だよな……」
頬を掻きながら困ったように笑うステラにオレは今の気持ちを吐露する。
「悔しかった。プレートを与えられて、それを返せなかった自分が情けなくて……ヒソカやステラ達に比べて如何に自分が弱い存在なのかって痛感して……」
話してるうちに思わず悔し涙を浮かべるオレにステラは背を向けて話し始める。
「確かに今のゴンは弱いよ、ヒソカのような強者に与えられないと生きることのできない弱者だ。でもね、俺はゴンの強さが羨ましい」
「…え?」
「今の君はそんな強者に負けることを悔しいと感じている。ヒソカに借りを返す気でいる。それは紛れもない君の強さだ。それに比べたら、今の君に力が足りないなんて些細なことでしかない」
そんな屁理屈みたいなことを言うステラにオレの怒りが募る。その影響でオレの言葉もつい強い口調になってしまった。
「どうせステラみたいな強い人には分からないよ!」
オレの言葉を聞いたステラは衝撃を受けた様子でオレに問いかける。
「そっか…今の俺はそう見えるか……なあゴン、オレとヒソカの関係はどう見える?」
「えっと、友達?」
「…まあそうなるよな。実はさ、俺も今のお前と同じなんだよ。いや、俺はお前よりもダメな人間だ」
そう言って振り向くステラの顔は悲しげだった。
「アイツが俺に多少の友情を感じてるのは確かかもしれない。だけど、俺がアイツに狩られていないのは生かされてるからだ」
「で、でも!ステラはあんなに強いのに!」
「…アイツは何よりも強い奴との戦いを望む男だ。ゴンみたいな才能のある弱者を気に入って見逃すのは珍しいことではない。そしてそんな気に入った人間には甘い対応をするのがアイツの特徴だ」
だから俺は……とステラの声が震える。
「だから俺は、わざとアイツに気に入られるようにしたんだよ。最初から白旗を上げて強者に媚びへつらう、まるで弱者の戦い方だ!」
それはまるで罪人が神に赦しを請うための懺悔のようで、オレはその姿から目を離せなくなった。
「多分ヒソカだって気付いてる……その上でいつか、全てを振り払って成長した俺と戦えるようになるのを待ってるんだ」
その顔はオレが今抱えている悔しさよりも長い期間熟成され、最早別物となっていた苦悩だった。
「そして1番の間抜けはこの状況を狙い通りだとほくそ笑んでる俺がいることだ!気持ちで言うのなら、俺は最初からヒソカにもゴンにも負けてるんだ……」
多分オレはその涙を一生忘れないだろう。自分より遥かに強いと思っていた人の弱み、それは今のオレにも理解できるもので、下手したらオレには一生掛けても理解できないようなものだった。
ーーーCASE1 プライドーーー
ゴンを慰めようとするあまり、ついつい言わなくていいことまで喋ってしまった!!!俺のバカ!
…この世界に余計なプライドを持ち込むのは死を招くことだというのは分かってる。ゴンがその意地を貫けるのは彼に類い稀なる才能と仲間に恵まれる天運があってのもので、そんなものを持たない俺には俺相応の生き方しかできないのだということも。
けれど頭ではそう分かっていても、心から納得できるようなものではなかった。俺だって正面からヒソカに挑んでぶっ飛ばしたい。
だけどそんなこと俺にはできないから、俺はゴンに嫉妬を抱いてしまうのだ。たった一年で驚くほど成長し、そのプライドを貫き通せる資格と強さを持つ彼に。
「オレが強いのならステラだって強いよ」
「ゴン?」
「だってステラはその悔しさを今でも感じてるんでしょ。悔しさを感じるのはその人の強さだって言ったのはステラ自身だよ?」
「い、いや……だって俺はそれで満足するような奴だし……」
ゴンの真っ直ぐな視線に俺は耐えられなくなる。あれ?なんで俺がゴンを慰めるつもりが俺がゴンに慰められる流れになってるの???
「けれどそれで悔しさを感じられなくなったわけじゃない。ステラの気持ちはまだ負けたわけじゃ…」
「分かった!も、もうやめよう!!これ以上は恥ずかしい!!!」
大人のお姉さんらしくゴンのことを導こうと思ったのに!ゴンのコミュ力を舐めていた!
「えー、でもステラは本当に…」
「分かったから!俺はまだ負けてない!俺いつかヒソカ倒す!!!」
…よく考えたらコイツお姉さん特攻持ってたんだったな……毒牙に掛からないように注意しないと……
純真そうな主人公の見た目をしているゴンだが、彼はくじら島に漁に来る海女さん達と頻繁にデートをしているのだ。原作ではキメラアント編で成り行きでパームという女性とデートをすることになったのだが、彼の様子はそれはもう手慣れたものだった。多分俺より経験豊富だぞ、そもそも俺の経験は皆無に等しいけども。
ちなみにその事実は長年のファン達にも衝撃的なもので、彼らの間でしばしばゴンは童貞なのか非童貞なのか熱く議論されるほどだった。流石に11歳で非童貞はマズイって!!
ーーーCASE2 蛇使いの罠ーーー
ゴンの毒が癒えてから俺達はクラピカ達がまだプレートを持ってなければその手助けをしようという話になった。ちなみにゴンに撃たれた毒は筋弛緩剤で通常の人間なら10日で回復するというものだったが、ゴンはそれを3日で回復させた。強化系の人間は回復力にも優れているのである。ゴンはまだ念能力者ではないけど。
そして四次試験最終日、俺達はクラピカとレオリオと合流してレオリオのターゲットであるポンズという女性を探すことになった。ゴンの嗅覚を利用して薬品使いである彼女を探知した俺達は彼女の隠れる洞穴へと行くレオリオを見送ったのだが……
「みんな来るな!ヘビだ!!!」
「レオリオ!」
洞穴の中へと急いだ俺達が見たのは倒れるレオリオとそれを離れた場所から座って見ているポンズ、そして1番奥に座るターバンを頭に巻いた男だった。
「バカ…ヤロ…なんで入ってきやが……」
レオリオの足元にはヘビの死体が散乱しており、それはレオリオがヘビの大群に襲われたのだということを物語っていた。
レオリオを連れて洞穴から抜け出そうとする俺達だったが、その行手を大量のヘビが阻む。その様子を見たポンズは現状を教える。
「蛇使いバーボンの罠よ。一度この洞穴に入ってきた人間は蛇に阻まれて逃げられない。一度でも咬まれたらその男みたいに倒れるわ」
「バーボン!プレートなら全て渡す!だから今すぐ私達をここから出せ!」
「無駄よ」
クラピカの懇願に反応しないバーボンを見ながらポンズはこの状況が手詰まりであることを教える。
「彼はもう死んでいるわ。私が殺った、方法は企業ヒミツ」
クラピカがバーボンのもとへ近づこうとするも、途中で蛇が行手を阻む。
「…なるほど。この部屋から出ようとすることと、バーボンの体に触れようとすること。この二つが蛇が攻撃する条件ってこと」
「多分ね。私も彼の体を調べようとしたんだけど……」
「蛇に襲われて蜂を解き放った。バーボンはアナフィラキシーショックにより死亡……か」
「…まいったわ。ご名答よ」
クラピカがバーボンの傷口から死因が蜂による殺害だと気づき、状況を考察する。バーボンが死んでも命令が解かれないという状況、まさに八方塞がりとでも言うべきものだった。
ーーーCASE3 操作系能力者?ーーー
ここでポンズとバーボンはそれぞれ一種の動物や昆虫に命令を与えてそれを実行させているわけだが、これは念能力の内の操作系に属する能力による動物の操作であるのではないか?という疑問がある。
動物を使役するにしても、知能の高いとは言えない動物に細かい条件を設けてそれを忠実に実行させるというのは個人の技能を逸脱しているように感じる。それを念能力によるものだと考えるのは至極当然な考え方だ。
念能力者には念を習った上で念能力者になった人間の他に無意識の内に念能力者になった天然の念能力者がいると考えられている。前者は大抵の念能力者がそうであり、例えば直接念を習っていない天空闘技場の洗礼組も他者から念の存在を教わり使えるようになったと考えると念を習った念能力者に該当する。
ここでいう天然の念能力者とは念の存在を知らずに発を使えるようになる人間を指す。作中ではネオン・ノストラードがそうじゃないかと言われる他、最近判明した中ではコムギが天然の念能力者であった。
ポンズやバーボンも知らず知らずのうちに念能力を発現した可能性は十分に考えられる。一応念を知った上で習得したパターンも考えられるが、纏を覚えた時点で通常の人間より遥かに頑丈になる人間がトンパに取っ組み合いになれば勝てると評されるとは思えない。少なくともこの時点でのポンズが純正の念能力者である可能性は低いように思える。
作中ではウイングは「念能力を一部でも使いこなせる者」を指しこれらの人間が天才や超能力者などと呼ばれると説明した。恐らくこの人間が天然の念能力者に該当すると思われる。ハンター試験を最後半まで残れる人間であればこのカテゴリに該当しても不思議ではない。
彼らが操作系の念能力者だとするとポンズは自分に対する攻撃に反撃するよう蜂を操作し、バーボンの場合はそれに加えて洞穴から逃げようとする人間を攻撃するような命令を蛇に下しているのだと考えられるが、ひとつだけ気にかかることはバーボンが死後に強まる念を発動しているということだ。
ーーーCASE4 死後に強まる念ーーー
死後の念、死後に強まる念などと言われるこの現象は、念能力者が能力の発動中に死んだ場合に術者の死後に能力が消失するのではなく却って強まるという内容の現象である。作中での発動シーンはピトーの「黒子無想(テレプシコーラ)」やヒソカの「伸縮自在の愛(バンジーガム)」などがある。
バーボンが死んだならその念が死後に強まる念となり蛇を操作し続けたと考えても不思議ではないのだが、気になることというのは死後に強まる念の発動条件である。
死後に強まる念の発動条件は術者が強い執着や怨恨を抱えたまま死ぬことである。ピトーはメルエムに対する思いが心残りとなり、ヒソカは自分が死ぬことで戦いが終わってしまうことを心残りとして発動した(ヒソカ無敵かよ)。
念能力者が死ぬ場合のほとんどが殺されることなのだが、殺される直前になってそれらを思い残すのは中々珍しいと思う、普通の人間が殺される時には死に対する恐怖を浮かべるのが大半だろう。そういう理由で死後の念を発動するケースは珍しいはずだ。
では、バーボンの死亡状況はどうだったであろうか?ポンズの説明では彼女がバーボンの潜む洞穴に催眠ガスを送り込み、バーボンが眠った隙に彼女がプレートを奪おうとした結果、蛇と蜂が互いに反応してバーボンは殺された。
つまりバーボンは眠ったまま殺された可能性が高いのだ。説明は不要だと思うが眠ったままの状態で強い執着や怨恨を残していたとは考えにくく、あのケースで死後の念が発動した可能性は低いと思う。
死後の念が発動していないのに蛇が死後も命令を実行していたということは、バーボンは純正の念能力者でも天然の念能力者でもなくただの凄腕の蛇使いだった、ということになる。
まあこの辺りは死後の念についての詳細な説明がないために現時点で正しい答えは出せない問題だ。
ただ一つだけ言えることは、この世界には念能力関係なく広い空間を呼吸だけで二酸化炭素で埋め尽くすという頭のおかしい特技を持った人間もいるので、非現実的な特技を全て念能力だと解釈するのは早計なのは確かである。
ーーーCASE5 最終試験ーーー
窮地に追い込まれた俺達だったが、致死性の毒を使う人間ならばプレートを手に入れる駆け引きに利用するための解毒剤を持っているはずだと考えたゴンはバーボンへと突貫する。無事解毒剤を入手したクラピカがゴンとレオリオに解毒剤を投与することでレオリオの死は回避することはできた。
バーボンの罠もゴンが機転と肺活量を活かして突破することができた。ポンズの持ってる催眠ガスを洞穴に散布し、蛇が眠った後に長時間息を止めることで催眠ガスを無効化したゴンが皆を運んだのだった。
そして俺達は無事四次試験を合格し、最終試験へと歩を進めたのである。
「失礼します」
「座りなさい。最終試験の参考にキミに質問したくてのう」
「了解です」
後ろに「心」と書かれた掛け軸のある和室に俺は招かれた。和室ってことはネテロはジャポンの出身なのかねぇ……スシの知名度の低さを考えるとどっちかというと和室等の現実世界の一部の日本文化がこの世界でのジャポン由来ではない可能性の方が高い気がするけど。
まあこの辺は考えるだけ無駄だろう。思考の隅に追いやってネテロの質問に答える。
「まずは、なぜ君はハンターになりたいのかな?」
「1番は身分の証明の為ですね。流星街生まれなので」
「なるほどのう、ではお主以外の8人の中で1番注目してるのは?」
「えっ1番?1番か〜、1番だと誰なんだろうなぁ〜」
「1人じゃなくてもよいぞ」
「なら99番と403番と404番と405番だなぁ。あとついでに44番と301番も」
「多いのぉ」
呆れたように呟くネテロに苦笑する。まあ俺としてはこの辺のメインキャラは嫌でも注目せざるを得ないからな。
「では8人の中で今1番戦いたくないのは?」
「99番と403番と404番と405番かなぁ。44番と301番は殺し無しならやってもいいけど」
「殺しは嫌なのかい?」
「まあそうですねぇ。絶対に殺したくないとまで頑なな思いではないですが、できるだけ人が死ぬのは見たくありませんね……」
「うむ、ご苦労じゃった。さがってよいぞよ」
「失礼しました」
部屋を退室しながらネテロの顔を拝む。原作通りに行くなら多分この邂逅が俺とネテロに会う最期の機会だろう。1年後に訪れるキメラアント編のことを考えつつ、俺は自室へと戻る。
そんな中、俺はある可能性に気づいた。
あくまで気のせいなのかもしれない。ただ全体を通して見た時に僅かに感じる違和感、普通ならただの陰謀論として切り捨てるべき可能性。だけどその一致を全て偶然と済ませるほど俺は楽観的な人間ではなく、そして俺はその戦いが作中で最高の戦いだからと言ってその戦いが必ずしも有意義なものであったとは限らないと考えるような卑屈な人間だった。
もしかしたらキメラアント編、そしてその戦いによるネテロの自爆はカキン国或いはビヨンド・ネテロによる盛大な茶番劇だったのかもしれないという可能性である。
ーーーCASE6 死闘に隠された陰謀ーーー
劇中におけるキメラアント編はカイトがとある流れで女王蟻の体の一部を入手することから始まり、その結果は東ゴルトーの国民約500万人とハンター数人の死亡で終わる。
その被害が多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだが、少なくとも五大国から見たらその被害は皆無と言っても良い。元々キメラアント討伐は五大国がハンター協会に丸投げしたものであり、人的被害も討伐までに被る汚名も全てハンター協会が背負うものである。
そしてキメラアントと人間が本気で戦争した場合にキメラアントに軍配が上がる可能性は皆無だ。つまり、人間(五大国)はキメラアントの脅威を大したものではないと判断し、その全てをハンター協会が解決できるだろうと予測し、実際その通りにハンター協会は事態の収拾に成功したのである。人類規模という観点においてキメラアントの脅威は全くない。
だが、それでもネテロは死んでしまった。それはメルエムを始めとした人間を食ったキメラアントが人間の予想以上に強かったからかもしれない。けれど、1番の理由としてはハンター協会も一枚岩ではなくその皺寄せが全てネテロに行ったから、が大きいだろうと俺は考えている。
ハンター協会はトップであるネテロが会長を務める組織だが、それに次ぐナンバーツーとしてパリストンが副会長を務める。このパリストンというヤツは作中のほぼ全員から「荒らし・嫌がらせ・混乱の元」として扱われており、ネテロが彼を副会長に指名したのもその方が面白そうだから、という組織としては身も蓋もない理由である。
そして実際にパリストンはハンター協会に混乱をもたらした。ハンター協会の斡旋する仕事だけを請け負う協専ハンター関連の人事を担当し、キメラアント討伐任務の意図的な失敗(推測)、行方不明のハンター数の急増など黒い部分を見せており、彼が暗躍しているというのは紛れもない事実だ。
実際ハンター十二支んと呼ばれる、ネテロに信頼を置かれたハンター達(この中にパリストンもいる)の中には、キメラアント討伐にネテロの他にモラウとノヴしか同行しなかったのを不満に思っていた者もいた。
これに対してネテロは「中途半端な戦力では蟻に吸収されるから」十二支んのチードルは「自分で狩りたかったから」という風に述べているが、俺は副会長パリストンの妨害によってネテロは任務達成できるギリギリの人材しか使えなかった可能性があると思っている。
特にネテロの言ったセリフはキルア達を焚き付ける為の方便にしか聞こえない。確かに下手な戦力は無駄である可能性が高いが、蟻に吸収されるというのは原作のようにスローペースで討伐した場合の話だ。最初から戦力を集中し、最速で叩けば吸収されてキメラアントに改造される隙なんてものはない。
むしろパリストンの妨害によってネテロは戦力を連れ出すことができず、その妨害にネテロはむしろ喜んでネテロ自身が蟻を狩るためにモラウとノヴを連れて行った、と考える方が自然である。
ちなみにパリストンはキメラアント討伐後、東ゴルトーに向かいキメラアント達を回収している。それだけ討伐組の動きを詳細に把握できたパリストンが討伐組に何も手出しできなかったとは考えにくいし、パリストンの性格で何も手出ししなかったとも考えにくい。
そして、パリストンがどの勢力に属しているかを考えると、キメラアント編は途端にきな臭いものになるのである。
ーーーCASE7 ネテロへの贈り物ーーー
先程はパリストンがハンター協会の副会長であることは説明したが、彼は同時に別の組織のナンバーツーも務めていた。それはネテロの息子ビヨンド・ネテロをトップとする組織である。この組織は暗黒大陸の冒険を目的としたものであり、構成員のほとんどは協専ハンターである。つまり、パリストンはハンター協会から人員をビヨンドへと横流ししていたのである。
彼らはネテロの死後にカキン国の支援を受けて暗黒大陸の冒険に乗り出す。それは次のハンター協会の会長がチードルに決まってすぐ後であり、余りにもタイミングが良すぎることからこれはビヨンド側からもハンター協会の動向が握られていたのだろう。まあ普通に考えたら当たり前だ、ナンバーツーとその他大勢の構成員は元々ハンター協会に所属しているのだから。
劇中ではそれ以上ビヨンド一派がハンター協会に関わっているとは描かれていないが、先程のパリストンの妨害を合わせると良くないものが見えてくるのではないか?
それは「ネテロチームの出撃はビヨンド側からの工作によるものである」という可能性だ。ネテロの死後にすぐビヨンドが現れたということはビヨンドはネテロによって抑えられていたと考えられる。そしてビヨンドはそのネテロを抹殺して暗黒大陸へと行く為にパリストンを使って妨害をした、ということだ。
これだけ聞くと、ビヨンドとパリストンはなんたる外道なのかと思われるが、恐らくネテロも喜んでその挑戦を受けたのであろう。長い間格下からの挑戦しか受けてこなかった人類最強にとってはキメラアントという格上に対して心躍ったに違いない。
俺の希望的観測なら、ビヨンドとパリストンは暗黒大陸への準備が整いこれ以上はネテロの存在が邪魔になるという組織としての理由と、老い先短い?ネテロに武闘家としての素晴らしい最期を用意したいという個人的な理由からネテロvsキメラアントという舞台を用意したのではないか?というのがこの考察のひとつの答えだ。
これ自体は確証はなくとも状況から考えて可能性は高いと思っている。キメラアント討伐を五大国から無茶振りされるという状況もビヨンド達からすれば都合が良い。恐らくキメラアント騒動の事態が発生してから大分早い段階でこの計画が立てられたのだろう。
そして、俺があり得ないと警鐘を鳴らしているのはここからの話だ。ここから先の話はあまりにも醜悪で、これが真実だとしたら俺は所謂「知るべきではない真実」に辿り着いた人間だ。
ーーーCASE8 キメラアント騒動の原因ーーー
その可能性とは「ビヨンド達は女王蟻をわざとこの世界へと流し、キメラアント騒動を発生させた」というものである。
キメラアント騒動があそこまで大規模になった大きな理由として環境が挙げられる。
女王蟻が打ち上げられた場所であるNGLは特殊な国だ。ネオグリーンライフ略してNGLと呼ばれるこの国は、機械文明を全て捨てて自然の中で暮らすという理念の自然保護団体によって統治されている。それはあくまで表の顔で裏で麻薬を生産し世界中にばら撒く為のダミーなのだが、ここではありとあらゆる文明の持ち込みを禁止しており国民が伝染病や危険な魔獣によって殺されても自然な成り行きであり、キメラアントが隠れて力を付けるには絶好の場所なのである。
そんな場所に女王蟻が打ち上げられるなどあまりにも偶然が過ぎるのではないか?恐らくその場所以外に女王蟻が打ち上げられていればまず間違いなく女王蟻はメルエムを産む前に討伐されていただろう。よりによってそうじゃないNGLに辿り着くというのに俺はなんらかの作為を感じざるを得ない。
もちろん漫画の展開だから、と言われればそれで終わりだ。敵のご都合主義だろうが味方のご都合主義だろうが創作の中では珍しい話ではなく、その一点で疑うには材料が足りなさすぎる。
だけどただでさえキメラアントによる騒動を利用した陰謀があった可能性が疑われる中、キメラアントが着いた場所がこの世界で最もキメラアントにとって都合の良い場所である、というのはあまりにも出来すぎた話ではないだろうか?
キメラアントが発生したことを利用してネテロに最期の場を与えて謀殺する。その内容自体は酷いとは思うが、この話が組織争いとするとそこまで珍しくもない話だ。
だが、そのキメラアントですら人為的に仕組まれていたとすると、それはもう組織の動き、人類の動きとして絶対に認めてはならないものだ。人類を守護する組織(厳密にはそんな組織じゃないけど)に影響を及ぼす為に意図的に人類の敵を生み出す……それは最早ただの人類の敵だ。
だけどその敵に対して俺ができることは何もない。なにせ敵が大きすぎる。協専ハンターだけでも100名以上、パリストンに味方する勢力まで敵に数えるとプロハンターのほぼ半数以上が敵になるのだ。それに対してまだハンターですらない人間が立ち向かおうとしたところで消されるだけだ。
だから俺はこの妄想じみた考察が正真正銘の妄想であることを祈ってこのことを忘れるしかないのだ。
俺は震える体を抑えて布団を頭から被った。なんにせよ、今後俺は絶対に協専ハンター及びパリストン一派に近づかないことを心に強く刻んだのだった。
唐突にアイデア振って発狂するとかクトゥルフじゃないんだからさ…