ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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ご無沙汰しております。
昔、『オタ提督と艦娘たち』などを投稿していたキグチと申します。

あれから色々とオリジナル作品を書いて別サイトで投稿などしていたのですが、今回書けたものをどこで公開すべきか悩んでおりまして、まず古巣であるハーメルンで投稿してみようと思いました。

状況設定は良くないですが、コメディ色強めです。

楽しんで頂ければ幸いです。


1.終わりのはじまり

「みんな! また会ってもよろしくな! 楽しかったよ!」

 

 その台詞を聞いた瞬間、オレの運命は決まった。

 王立ガスティーヤ学園。桜舞い散る春の季節。石とガラスで作られた校舎が建ち並ぶ一画に、制服姿の学生達が集っている。

 全員が胸元に桜を模した造花を身につけ、今日は卒業式だ。

 

 集っている学生達の制服、特に女子のものが妙に体のラインがはっきりしたり、髪色がカラフルなのは、そういう場所だから仕方ない。

 ここは、オレがかつて遊びまくった美少女ゲーム、『茜色の翼、暁の空』の世界だ。現代日本の制服を魔改造したような服装と、ゲームっぽい異世界の建物。そして、見慣れたキャラクターが並んでいる。

 

「あんたはこれから、どうするのよ?」

「俺はしばらく、冒険者をやってから……どうするかな?」

 

 木陰から眺める視界の中、目元まで隠れた黒髪の少年が、赤髪の少女と会話している。

 男の方はレイヤ・ミニスター、このゲームの主人公。

 赤髪の方はエリア・リコニア、ヒロインの一人だ。

 

 今日この時、俺も含めたこの場の全員は学園を卒業し、それぞれの進路に乗る。

 ある者は実家の領地に。

 またある者は騎士団に。

 またある者は研究所に。

 それまたある者は冒険者に。

 

「それじゃあ、みんな、またな!」

 

 表情がわかりにくい割に、妙に爽やかさを感じさせる口調で、レイヤが胸元の造花を手に持つ。

 周囲にいた様々な髪色のヒロイン達も、それに続く。

 

 それがきっかけになったのか、周囲の生徒達も同じく桜の造花を手にした。一応、俺もそれに続く。

 

「王立ガスティーヤ学園に栄光あれ!」

 

 主人公の声に合わせ、空に桜の造花が舞った。

 

 ファンタジー世界において、プレイヤーに親近感を持たせるために設定されたソメイヨシノもどき。異世界でも変わらず美しい桜吹雪が舞う中に、卒業生達の造花が加わる。

 

 良い光景だ。昔、何度もテキストとイベントCGを見たこのシーンを実際に見られるとは、感無量だ。ちょっとした感動すら、俺の胸に去来する。

 

「それじゃあ、みんな、ありがとう!」

 

 そう言い残して、ゲームの主人公、レイヤ・ミニスターは一番にこの場を去って行く。

 

 俺はそれを見送りながら、小さく一言零す。

 

「……確定だな。全滅ルート」

 

 主人公が特定のヒロインとくっつかずに、一人で卒業する。

 『茜色の空、暁の翼』において、これは特殊なルートに入ったことを意味する。

 

 これから始まるのは、戦乱ルート。

 ガスティーヤ学園のあるメイナス王国は、隣の帝国から侵攻を受ける。

 ひたすら戦火を広げる帝国に侵略され、主人公とヒロインが必死になってそれを撃退する。そんな特殊ルートだ。

 

 このルートの特徴は、全滅。

 主人公レイヤが誰か一人ヒロインとくっつくことで、更に別ルートに入るんだけど、それができないと全滅する。

 

 ゲームとしては学園編から継続するRPGパートとADVパートの選択肢の組み合わせで進行するが、時間などの制限がシビアなのだ。

 

 『茜色の空、暁の翼』はゲームとしての出来は非常に評価が良かった。かつて、二〇〇〇年代を若者として生きたオレは、気に入って何度も遊んでいたわけだが。

 

「選択の余地なしで、これは酷くないですかねぇ……」

 

 空を仰ぎ、そう零す。

 

 オレが意識を持ったのは三日前。既に全ては手遅れだった。主人公レイヤを誘導して、ヒロインとくっつけることすらできない。

 

 美少女ゲームの世界に転生を果たした今のオレの名前はマイス・カダント。

 

 だいたいこれから一年後、戦乱の中で死ぬことが確定しているサブキャラだ。

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