ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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11.パーティ結成と次の町

 パーティを組むことが決まったら、フォミナがオレの滞在している宿に引っ越してきた。

 

 それ事態は別におかしい話じゃない。階は別だし、近くにいる方が情報共有は容易になる。 女性とはいえ基本的に冒険者は荷物が少ないので引っ越しも楽だ。町を拠点にでもしなければ、いつでも移動できるように最小限の荷物にしておくのが普通なので。

 

 ただオレ、近日中にこの町を出ていくつもりなんだよな……。

 

 もうメイクベの町に滞在する理由はないし。レベル上げのため、別のところに行かなきゃいけない。

 

 その辺りをどう説明すべきか悩む。今回に限って言えば「ボスを倒したから」で済むと思うんだけど、オレの最終目的までフォミナを付き合わせると、ほぼ確実に戦乱に巻き込むことになってしまう。

 

 一晩じっくりと考えた末、とりあえず、オレなりに苦しいけれど理解を示してくれそうな理屈をひねり出した。

 

「どうぞ。なにもないけれど」

「失礼します。……あ、本当に最小限なんですね」

 

 ビジネスホテルより少し広い程度の部屋へ招き入れると、フォミナは室内を見回して言った。

 実際、オレの部屋には変わったものは置かれていない。装備品と衣類と荷物だけだ。すぐにでも来たときの状態に戻せるだろう。

 

「ほぼ、こことダンジョンとの往復だったし、私物は持ち運びに困るからね。あ、そこの椅子座って」

「確かに、私もそうです。あんまり買い物にも行けませんでしたし」

 

 失礼します、と言ってフォミナが室内唯一の椅子に腰掛ける。とりあえず、オレはベッドに座った。

 

 オレ達の今後の予定について話そうと言ったら、こうなった。男の部屋に来るのなんて嫌がるかと思ったけど、意外だった。

 こちらとしては内密の話をしやすくて助かる。外で話すようなことでもないので、ギルドの会議室でも借りれないかと考えてたくらいだから。

 

「で、では、お話をうかがいましょう」

 

 ちょっと緊張気味にフォミナが言ってきた。

 

 目の前にゲーム画面の向こうにいる存在だった女の子がいる。

 そんなことを今更ながらに実感する。しかもこれは触れるし、設定されたテキスト以外のことも喋る。当たり前だが、不思議な感覚だ。 

 

「まず、フォミナにオレの行動方針を話しておこうと思う。これを聞いて嫌だったらパーティー解散でもいい」

「そ、そんなこと、私はしません……っ」

 

 いきなりの解散宣言に慌てられたが、とりあえず手で制して落ちつかせる。

 

「そのくらい荒唐無稽な話なんだ。フォミナは、予知夢って信じるか?」

「夢……ですか?」

「そう。夢だ。少し前から、何度も何度も、自分が死ぬ夢を見るんだ。それも妙に現実的な、はっきりとしたやつを……」

 

 それからオレは、前世のゲームで得た知識を『予知夢』としてフォミナに聞かせた。もちろん全てじゃない。これから王国と帝国で戦争が起きること。王国軍が苦戦すること。なにより、その最中にオレが死ぬこと。それも、一年以内に。そのあたりをかいつまんで話した程度だ。

 

「見る夢の時期は飛び飛びなんだけど、帝国と北方商業連合の戦争が現実になったりして、これはもしかしてって思ってさ。とにかく、死にたくないから強くなるために動いてるんだ」

 

 ミノタウロス討伐後、ギルドに入ったら帝国と商業連合が開戦したという話を聞いた。まだ夏にもなってないのに、ゲームより早い展開だ。正直、焦りを感じる。しかし、自分にできることは限られている。まずはレベル上げで強くなるという方針に変更はない。

 

 自分に都合の良い感じに編集した話を聞かせ終え、フォミナの方を見る。

 

「…………」

 

 彼女は静かに下を向き、「むー」とかいって唸っていた。

 変な夢にとらわれてる狂人だと思われたかもしれない。くそっ、もっとオレに説明する能力があれば。前世がラノベ作家とかだったら、もっと上手い妄想ができたかもしれないのに。

「…………」

 

 まだ黙ってる。目を合わせてくれない。これは失敗かな。

 

「……わかりました」

「え、マジで!?」

「なんでマイス君が驚いてるんです?」

「いや、相当無茶苦茶な話だからさ……」

 

 オレの言葉を聞いて、フォミナは笑みを浮かべた。

 

「神殿だと珍しい話じゃないですよ、こういうの。私が考えてたのは、神託の類いなのかとか、似たような伝承があったかな、ということです」

 

 そうだったのか。オレ、この世界の神話伝承はおろか、常識にすら詳しくないからな。ファンタジー世界に感謝だ。

 

「今の話だと、マイス君は一年後の死を避けるために頑張るってことですね?」

「そう。それで、予知夢も見なくなって安心したら、好きに生きる」

「わかりました。それまでお付き合いしましょう。……いえ、マイス君さえ良ければ、それ以降も一緒にいて頂ければ……」

「ほんとか! ありがとう!」

 

 立ち上がって全力で頭を下げる。

 後半小声で上手く聞き取れなかったけど、フォミナが同意してくれたのはよくわかった。

 良かった。爆速でパーティー解散にならなくて。仲間がいるのは本当に頼もしい。

 

「大げさですよ。な、仲間なんだから、当たり前じゃないですか。それに、当面の目的があるのは良いことだと思いますし」

「そうだな。それじゃ、今後の方針だけれど」

「はい。マイス君がリーダーだから、私はそれに従いますよ」

 

 先ほどまでとは打って変わって和やかな雰囲気になり、オレは次の町の名前を彼女に伝える。

 

「数日中に、ミレスの町に行こうと思うんだ」

「…………えー、ちょっと……いえ、わかりました。……ミレスかぁ」

 

 町の名前にフォミナがちょっと嫌な顔をしたが、了承してくれた。

 

 次の行き先は、白の町ミレス。大聖堂がある、綺麗な町だ。

 

 ちなみに、フォミナの親族がいるところでもある。

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