ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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25.出撃、神聖騎士団

 旧大聖堂はミレスの町には珍しく、灰色をしている。それは古い石造りであることと、モンスターが出る関係で整備できていないことの両方が影響しているという。建物的にも二つの塔が印象的な今の大聖堂と違って、丸くて大きく作られた見た目が、時代の違いを感じさせる。

 

 その旧大聖堂前で神聖騎士団の団長が演説をいていた。

 

「これより、神聖騎士団によるアンデッド討伐を行う。これは大聖堂に古代の魔族が封じられた際より、我々に定められた聖業であり、この町、ひいては国全体の治安を預かる者の誇りでもある。協力者も含め、それぞれの仕事を十分に果たすように」

 

 眠たそうな顔をしたひげ面のおっさんが悠然と演説すると、神聖騎士団の若者を中心に歓声があがった。盛り上がってるな。

 さりげなく触れられた協力者、オレ達冒険者は静かなものである。とりあえず仕事はしますよという感じだ。

 

 オレはというと、神聖騎士団の団長を見てちょっと驚いていた。

 

「マイス君、どうしたんですか?」

「いや、あの団長、結構やり手だよ。本当に心配しすぎだったかもしれないな」

 

 あのひげ面、名前をエドモンドと言う。ゲーム内だと敗北続きで国土深くまで攻め込まれた王国軍を立て直す重要人物だ。いつもとぼけた態度をしているけど、指示は的確で、心の中では戦争を憎んでいる熱い人物でもある。当然、人気キャラでファンディスクでは男性キャラにも関わらずシナリオが書き下ろされた。

 

「たしかに、今の団長になってから神聖騎士団は若い人が重用されたりして良くなってると聞きますね」

 

 さすがはマイス君、とフォミナが褒めてくれるけど、申し訳ないがこれはゲーム知識があるからにすぎない。

 エドモンド氏、かっこいいけど結構簡単に死ぬんだよな。国を護るため、主人公に道を譲って討ち死にするその最期は心を熱くさせるけれど、できれば生きていてほしい。

 彼がここにいることがわかっただけでも、参加した意味があるかもしれない。今後は王国内の重要人物の居場所についても把握するようにした方がいいかもな。

 

「それでは、出陣!」

 

 前の方でエドモンド氏が声をあげると、威勢良く完全武装の神聖騎士団が出発した。輸送隊を囲む形で配置されたオレたち冒険者もそれに続く。

 

「じゃあ、オレ達も頑張りますか。輸送隊の護衛」

「はい。なんだか安心ですね。人も多いですし、恐いモンスターもあまりいないところですから」

 

 オレと一緒に流血の宮殿に挑んだおかげで、フォミナの感覚はちょっとおかしくなっているらしい。周りの冒険者と比べて余裕が違う。頼もしい限りだ。

 

 白銀の輝きと共に進撃する騎士団に続いて、オレ達はのんびりとダンジョンへと向かっていくのだった。

 

○○○

 

 神聖騎士団は精鋭部隊。それは嘘じゃなかった。旧大聖堂の攻略レベルは四五くらいとあまり高くないことを考えても、順調にアンデッド討伐は推移した。

 

「いや、想像はしてたけれど、本当に楽だな……」

「さすがは精鋭部隊ですね」

 

 輸送隊の荷車の横をゆっくりと歩きながら、オレ達は前の方の騒ぎを遠くの世界のできごとのように感じていた。

 ターンアンデッドとか聖属性魔法とか、そんなのが乱舞している光が見える。プリーストやら聖騎士やらその道のプロの団体様だから強い強い。

 おかげでオレ達冒険者の方には殆どモンスターが回ってこない。

 

「あ、ゾンビの上位種の群れ」

「エクソシズム!」

 

 たまにこっちに流れてくるやつがいても、このようにフォミナが始末してしまう。流血の神殿で過酷な戦いを繰り返したおかげか、戦闘に対する勘が鋭くなっているようだ。

 オレもたまには普通の魔法で活躍したかったんだけれど、その出番すらない。一応ウィザードになって攻撃魔法の種類も増えてるんだけどな……。

 

「もう、地下五階か、半日くらいしかかからなかったな」

「日頃の訓練をちゃんとしてるんですね。進軍に慣れてます」

 

 大人数だから、進むのに時間が掛かるかと思っていたけれど、さすがは精鋭部隊。伊達ではないらしい。オレ達が荷車をのんびり運ぶ間、迷い無く突き進み、半日で最下層に到達した。旧大聖堂が大きいとはいえ、軍隊が最短ルートで進めばそんなもんか。

 

 部隊の前の方では相変わらず派手な光が乱舞している。最下層ともなれば、流血の宮殿上層とまではいかなくとも、グラン・レイスの下位種くらいはいるはずなんだけど。

 

「このまま奥にある封印の扉にいって儀式を行えば仕事は終わりです」

「古の魔族の遺体が安置されてるんだよな。死んでなお、死霊を集めるって相当だな」

 

 たしか、古の魔族って、吸血鬼と魔族の混血だったはずだ。クラム様ほどじゃないけど、死んだ後も特性が残るのは大変だ。

 

「その魔族の遺体、どうにかできないのか?」

「浄化できるのは年月のみ。二神の加護によって押さえられてこれだそうです」

 

 そりゃ、オレがどうにかしたいと思う程度には対処法は考えてるか。それでいてこの現状なのは致し方ないな。

 

 そんな風にどこか他人事に旧大聖堂の事情について考えていた時だ。

 いきなり、進軍が止まった。

 

「なんだ? 最深部ってもうちょっと先じゃないのか?」

「はい。このまま真っ直ぐいくと封印の間になるはずですが……」

 

 なにかがおかしい。先ほどまでの快進撃が急に止まった。あまりにも急すぎる。

 普段から非日常に身を置いている冒険者達は変化に敏感だ。オレ達以外も武器を手に取り、警戒を始める。

 

「マイス君、なにかが来てます」

「なにかって……!?」

 

 オレが怪訝な反応をした瞬間だった。

 神聖騎士団のいる前の方、最前線で大爆発が起きた。

 

「きゃぅ!」

「くっ……」

 

 衝撃波がオレ達の方まで伝わってくる。

 

 レベルが上がってるおかげか、戦いに慣れてるからか、オレは前の方で起きた現象が見えた。

 

 魔法による大爆発だ。

 それも特殊な魔法なんだろう。先ほどまで静謐な気配すらあった、地下空間のそこかしこで火柱が残っている。

 

 ここに火属性のモンスターはいなかったはず。なんかあったな。

 

「フォミナ、行くぞ! 緊急事態だ!」

「え? でも」

 

 輸送隊の荷物を心配するフォミナに付け加える。

 

「お姉さんが心配だろ!」

「っ! はい!」

 

 オレとフォミナは前に進む、謎の爆発があった最前線へと。

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