ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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30.レベリング・モンスター

 ザイアムの町から東に一時間くらいの小さな村の隣に、小さなダンジョンがある。自然にできた洞窟みたいなところで、ゲーム的には簡単なお使いイベントが設定されているだけの場所だ。

 

「ほ、ほんとに隠し通路があった……。マイス君の予知夢はどうなってるんですか……」

「わからん。でも、使えそうなことは極力メモしてる」

「メモ……」

 

 そろそろ予知夢という設定でいくのは厳しくなってきたかなと思いつつ、オレは苦しい説明をフォミナにしていた。

 

 ゲームと同じように、このダンジョンには隠し部屋があった。最深部とかでは無く、なんでもない通路のちょっとした窪みを調べたら、いきなり扉が現れて小部屋が現れる。

 

 この小部屋こそ、レベル上げモンスターであるメタポーの出現部屋だ。

 オレは冒険者ポーチから、犬笛みたいな小さく細い笛を取り出した。

 

「呼び笛なんて買ってたんですね」

「これがないと出てこないんだよ」

 

 この部屋、普通に待つだけではなにも起きない。このモンスターを呼び寄せるアイテム、呼び笛が必要だ。ザイアムの町で購入できて助かった。

 

 笛を口にくわえて軽く吹くと、ピッという短い音がなった。

 さて、出てくるかな……。

 

「あ、出た! 出ましたよ!」

 

 効果はすぐに現れて、フォミナが歓声をあげた。

 いつの間にか、オレ達の前に金属質で丸っこい外見をした、デフォルメ全開のブタみたいなモンスターが現れている。

 

「ほぅ……これがメタポー……。かわいい……」

「スリープ、デッドポイズン」

「ぴぎぃ……」

 

 スキル<貫通>のおかげでメタポーは瞬殺された。

 

「ちょ、なんですぐ倒しちゃうんですか! 珍しい上に、あんなに可愛いんですよ! もう少し愛でる時間があっても良いじゃないですか!」

 

 過去一番くらいの勢いで抗議が来た。

 

 フォミナの言うとおり、たしかにこいつの見た目は悪くない。元ネタがメタボだとしてもだ。だが、できるだけ早く始末したい理由があるのだ。

 

「落ちついてくれ。どうせこれから沢山見るんだから」

 

 言いながら呼び笛を吹くと、またメタポーが一匹現れた。この部屋での出現率は九割だったかな。たまに複数出るんだけど、そこは運との勝負だ。

 

「ふぉぉ、マイス君。ちょっとだけ待ってください。戦いを仕掛けなければ、逃げにくいはずです。少し可愛いものを愛でる時間を……」

「そこまで言うならいいけど、後悔するなよ」

「?」

 

 オレに怪訝な笑みを返しつつ、フォミナはメタポーの凝視を始めた。

 

「うーん。この可愛さをぬいぐるみで表現するにはどうすればいいんでしょうか。基本が金属だから難しそうです……」

 

 本気で商品化を考えてる目だった。

 フォミナの意外な執念に密かに戦慄していると、状況に変化があった。

 

「……明日は紙とペンを持って来てスケッチしましょう。これは楽しくなってきました」

「おうおう、いー感じのねーちゃんじゃないの。その、お胸が発達しておられますね?」

 

 メタポーが流ちょうに言葉を放ったのである。

 

「……マイス君?」

「ああ、そいつ喋るんだ」

 

 オレの返事を証明するかのように、メタポーはフォミナの周りを跳ね回りながら勢いよく話す。

 

「いいぜいいぜ。その、ちょっと無理してお洒落してる感じがいいぜ。髪のセットとか、毎日ちょっと変わっちゃって困ってるだろ?」

「………えーと」

「元々地味で目立たなかったタイプだろ、ねーちゃん。プリーストの服で露出上がって恥ずかしいけど、頑張ってるんだろ? ……わかるぜ。少し足が太いのも魅力だ」

「…………」

 

 そうか、頑張ってたのか。あのスリット、大胆すぎるもんな。

 

「ま、頑張りな。ぽっと出てきた新人に相方をとられないようにな」

 

 なぜか全てわかった風に、慰め始めたメタポー。

 それを見るフォミナの目は、ハイライトが消えていた。表情も完全に消えてる。

 

「マイス君……」

「はい。スリープ、デッドポイズン」

「ぐぷぅ」

 

 フォミナに言いたい放題したメタポーは絶命した。

 

「こいつら、凄く口が悪いから、喋る前に倒しちゃいたいんだよ……」

 

 魔石を拾いながら、恐る恐る話しかける。フォミナは黙っている。この人、怒ると静かになるタイプだな。

 

「マイス君……こいつら、根絶やしにしましょう」

 

 凄絶な笑みと共に言われた。

 

「モンスターはダンジョンから生まれてくるから、全滅はちょっと……」

「なら、気が済むまで殲滅しましょう。ほら、呼び笛吹いて。なんなら私がやります」

「はい」

 

 ちょっと機嫌が直るまで時間がかかりそうなので、オレは大人しく指示に従うことにした。レベル上げに積極的になってくれるのは、好都合なので。

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