ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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49.暁の翼

 地下への螺旋階段を下ると、周囲が複雑な紋様が走る壁になった。恐らく、魔法的ななにかなのだろう。たまに明滅する、魔法的な古代機構。帝都の中央に位置する、巨大施設だ。

 階段を降りきって、天井のない教室くらいの広さのフロアに、古代種はいた。

 

 ファンタジーではなく、SF的な作りの椅子に優雅に腰掛け、古代種はオレ達を見据える。

 

「ようこそ。我が城へ。愚かな神の使徒よ」

 

 古代種の背中からは暁色の翼が生えていた。

 まさか、思ったよりも強くなってる? 翼の数が四枚だ。戦乱がそれなりに起きてないと枚数はここまで増えないはずだが。

 

「……マイス君の言っている意味がようやくわかりました。あれは、この世に居てはいけない存在です」

 

 何か感じたらしいフォミナが、緊張の面持ちで杖を構えた。

 オレも同じく、七悪の杖を取り出して、古代種に向ける。

 

「お前、なにをした。まだそこまで強くなれないはずじゃないのか?」

「……本当に貴様は何者だ。なに、ちとこいつに無理をさせてるだけだ。どうも、貴様らはここで始末した方が良さそうだからな。妨害者は想定していたが、たった二人とは拍子抜けだが……」

 

 暁色の翼が蠢き、そのたびに空間に赤い稲妻が走った。轟音の閃光。フォミナが一瞬震えたが、彼女は気丈に敵を見た。

 オレはただ驚くばかりだ。こんな芸当ができるとは。全てがゲーム通りにいかないのは承知していたけど、ここに来て、という気持ちはある。

 

 施設を暴走して無理矢理強くするパターンか。

 

「マイス君!」

「お仲間もちゃんといるか……」

 

 ついでに巨大ロボっぽいの奴が二体ほど歩いて来た。こっちは知ってる。問題ない。

 

「こいつらは眠らん上に、極上の魔法耐性を誇る。見たところ、魔法使いのお前達に勝ち目はないぞ」

「スターライト・レイ」

 

 七悪の杖を持ったオレの呪文により、無数の光が周囲に舞い、次々に古代種と巨大ロボを貫き、光の爆発を引き起こす。

 星の輝きのような小さな瞬きだが、極上の攻撃力を持った全体光属性攻撃魔法はしっかり効果を発揮した。

 巨大ロボは穴だらけ。古代種は翼で身を守ったようだが、あからさまにそれがボロボロになった。

 

「よし。かなり効いたな」

「……マイス君、本当に強いね」

 

 オレは相当レベルを上げたが、七悪の杖は魔力補正がほぼない。さすがにラスボスを一撃とはいかなかったようだ。

 とはいえ、<貫通>の効果でダメージは素通し、その上七つのバッドステータスをその身に受けて、敵は古代種ごと行動不能だ。

 

「ぐっ……貴様! なんなんだ!」

 

 それでも古代種は動いた。これはちゃんと絡繰りがある。

 こいつは<バッドステータス解除>というスキルを持っている。あらゆるバッドステータスを解除する能力だが、一度に一つしか解除できないという欠点があるスキルだ。

 古代種はラスボスらしく耐性も高いので睡眠と暗闇は自動でほぼ即時解除になるが、残りはそうはいかない。ランダム二回か三回行動をとるが、残った状態異常を解除して行動は終わりだ。

 

 動くためだけに<バッドステータス解除>が必要になる古代種に対して、オレは<貫通>付きの魔法攻撃で状態異常を再度かけ直すだけでいい。

 

 はっきりいって完封である。

 

 クリスに会えたのは運が良かった。最初から七悪の杖と<貫通>さえあれば、どうにかなると思っていたので。

 

「一応言っておく。降伏して侵略戦争をやめろ」

「断る! この程度で勝ったと思ったか、下等種族め! 丸裸にしてやる……っ!」

 

 そういって古代種がなにか指示を出すと、周囲の壁から無数の文字が浮かび上がり、オレ達に照射された。

 これは知ってる。戦闘ターンとは別に処理される、こちらを分析するイベントだ。この後、弱点属性とかを容赦なく突いてくる発狂モードになる。

 

「……なんなんだお前は! レベル六百二十八だと!!! 故障か! 馬鹿げている! マイス・カダント! お前は何者なのだ!」

 

 なんか、古代種が狂乱状態で叫びだした。ステータスを見れるのは、ちょっと羨ましいな。

 どうやら、三日間不休でメタポー狩りをした甲斐はあったようだ。レベル五百を超えてた。あと多分、もうこいつは瀕死だ。

 

 なんの面白みもないラスボス戦で申し訳ないが、それが狙いだから仕方ない。心置きなく止めを刺そう。

 だが、言うべきことは言っておく。

 

「馬鹿げてるのはお前だよ。戦争なんか起こして、お前みたいのがいるとこの世の全員が迷惑なんだ」

「なっ……隷属種族の分際で……」

 

 種族についての語彙が豊富だな、古代種は。しかし、こんな奴に、これ以上付き合う気も、必要もない。

 

「フォミナ、頼んだ」

「はい。マイス君」

 

 一言、横にいる彼女に告げてから、オレはとどめの魔法を唱える。

 

「スターダスト・レイ」

 

 無数の光が、暁の翼を背負った古代種を貫く。

 これで終わりだ。

 

 しかし、バッドステータス満載で動けないはずの古代種は、オレを見て不適に笑った。

 

「なめるなよ。貴様達だけは連れて行く」

 

 直後だった。

 翼が赤く発光したと思ったら、古代種を中心に巨大な爆発が巻き起こった。

 回避不能な光の爆発ごと、ラスボス戦のフロアが吹き飛び、崩壊していく。

 

「これ、ファイナルアタックか……」

 

 爆発で、オレの意識は容赦なく刈り取られた。

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