ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かしてなんとか生き伸びます〜   作:みなかみしょう

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全体的に誤字を修正しました。



5.初戦闘

 『茜色の空、暁の翼』はRPG部分が結構よくできている。正直、美少女ゲームで基本がアドベンチャーだと、RPG部分がおまけ程度になっても不思議じゃないんだが、スタッフの思い入れのおかげか、かなりちゃんとしていたと評判になった程だ。

 

 基本はオーソドックスなコマンド選択式RPG、ダンジョンは一部が自動生成。レベルアップとは別に能力を底上げするスキル制、更に頑張って調整されたバランスでかなり遊べた。

 キャラの性別によって露骨に成長に差があることもなく、ラストバトルに男パーティーで挑むこともできた程だ。

 

 とにかく、結構しっかりしているゲームだったということだ。

 ただ、作り込まれている故に、色々とできることがある。

 

 ダンジョン内で遭遇したボーデンオーガ。この初戦闘で、ゲームの仕様が通用するか、確認させてもらう。

 

「ウォォォ……ガァァァ!」

「パラライズ!」

 

 ボーデンオーガが棍棒を振り上げたのとオレが杖を向けて呪文を口走ったのは同時。

 

「……グ……ゥ……」

 

 どうやら、上手く魔法は発動したらしい。

 パラライズの魔法は名前の通り、相手を麻痺させる。発動の瞬間、一瞬体から杖に何かが走る感触があったが、あれは魔力というものだろうか。

 ともあれ、無事に魔法は発動した。あの店のおばちゃんに感謝だ。

 

「ポイズン」

 

 再び杖をボーデンオーガに向け、今度は毒の魔法を唱える。

 待つことしばし、

 

「……がっ」

 

 ボーデンオーガは口の端から血を流し始めた。元々土気色なんで体色の変化はわからないが毒が効いているのは確かだ。

 

「パラライズ」

「……………」

 

 

 念のため、魔法を重ねがけしておく。たしか、麻痺は二〇ターンで、自動回復する設定だったはず。

 

 RPGとしてよくできている『茜色の空、暁の翼』だが、作り込んである故に、繰り返し遊んだプレイヤーには色んな攻略法が見えてくる。

 その一つが、これだ。

 このゲームは状態異常が強い。毒なんか回復しない限り永続だ。しかも数種類あって、後半まで使える。

 

 そして、大抵のモンスターは状態異常耐性に穴がある。

 レベル差がある相手でも、これを利用すれば狩っていけるのである。低レベルキャラのレベリングにも応用できるので、そういう手法が攻略サイトで紹介されていた。

 

 オーガ系は特に耐性が少なく、睡眠が効きにくいくらいしかない。低レベルメイジのオレからすれば、非常に与しやすい相手だと言える。

 

「……ごふっ」

 

 ここがゲームと同じで良かった、と思いながら毒でダメージを受け続けるボーデンオーガを眺めていたら、ついに力尽きた。

 絶命と同時に状態異常も消えて動けるようになったのか、巨体が床に倒れ伏す。

 

 すると、二メートルはあるボーデンオーガの体がうっすらと消えていく。

 その場に残にはクリスタルのような、角張った結晶体が残る。

 

「まずは一体、と。上手くできてるな、この設定」

 

 手に入れた土色の結晶を、腰の冒険者ポーチに入れながら呟く。

 

 この世界のモンスターは、何らかの魔力から生み出されたものである。中心に核となる結晶があり、そこに受肉している。

 倒すと肉体部分が消失し、魔石と呼ばれる結晶が残る。

 

 魔石は売ってよし、武具の材料にして良しの万能素材だ。

 死体から剥ぎ取りしないでいいので非常に助かる。

 

 ボーデンオーガはこのダンジョンでも上位のモンスター。収入でも経験値の面でも、非常に美味しい。

 

「レベル上がったかな? ステータスが見えればなぁ」

 

 ぼやきながら探索を再開すると、いきなり右肩に衝撃が走り、吹き飛ばされた。

 

「くっ、いって……」

 

 右肩を押さえ、痛みに呻きながら攻撃のあった方を見る。

 

「キキキキィ!」

 

 そこにいたのは小柄な灰色の体色を持つ禿げた子鬼。ハイゴブリンだ。

 

「キキキキィ!」

「ギギギィ!」

「ギギッ!」

 

 しかも一体じゃない。数は三、複数。しかも不意打ちだった。ゲーム的には先制されたことになるのか?

 

 いや違う。この世界はゲームじゃない。肩に走る痛みも、地面を転がった感触も、目の前のゴブリンに嘲笑されて軽く震える手も、嘘じゃない。

 

 ここは美少女ゲームの世界という先入観で行動することはオレにとってデメリットになる。今更になって、オレはそれを身をもって実感していた。

 

 ハイゴブリン達は無様に転がったオレを見て、笑っている。助かった。冷酷に追撃されたら終わっていたかもしれない。

 

 赤い宝玉の乗った杖を向け、オレは呪文を唱える。

 

「スリープ」

「…………」

 

 三体のハイゴブリンは次々に眠りに落ちた。

 このゲームのゴブリン系は、眠りに弱い。毒はやや耐性があるけど、寝てる間に何度もかけ直せば問題ないレベルだ。

 

「ヒール、ポイズン、ポイズン、ポイズン」

 

 痛みがあると判断が鈍りそうなので、自分を回復してからハイゴブリンに毒を付与していく。

 

 メイクベダンジョンのモンスターに、強力な耐性持ちはいない。なんとかこのペースでやっていけるはずだ。

 なにより、戦いってものに慣れなきゃいけないな。

 

 生き抜く上で鍛えなきゃいけないのは、オレの精神だ。現代日本で育った精神のままだといけないな。

 

 貴重な学びを体感しながら、ハイゴブリン達が毒で死ぬまで、オレはスリープを重ねがけした。

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