超絶!神機大戦 ワンダーム   作:ユウーザ

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ブラック共和国の鉱山で発掘された冷凍睡眠の少年ワンド、その巨大義手たるワンダーム
彼を巡って狂人達が起こした騒動で、目覚めた本人によるワンダームのパワーは驚異的な腕力を発揮した
この古代の秘宝の研究のため、ワンドとワンダームは最先端技術研究所=刑務所=新死神基地へ連れて行かれ、
無断でスピアに搭乗した一般人の光は……



第一章 片割れ、それぞれ -姉の場合- part1

 

 

 

クリムゾン連合国

軍本部・取調室

 

 紅。 クリムゾンの名の通り、硬い内装の節々を紅色が彩っている。

 質素で硬い机を通して、レッド軍服とはまた違う紅色の軍人と、顔を伏せ気味にしている少女が向かい合っている。

「……つまり、君の動機は、少年を守るために、神機に乗ったと?」

「……はい。 さっきからそう言ってました」

 訝しむクリムゾン軍人の手元にあるのは、眼前の少女の書類。 事件当時には『勝ち気に大人達に食ってかかっていた』という記述と、今の暗い様子は噛み合っていない。

「……次に……スピアに搭乗した時について」

 光、顔を少し上げるが、すぐに伏せる。

「スピアの足から登って、搭乗したというが……コクピットに、キーはついてなかったのかな?」

「? キー、って……なんですか?」

「軍属の神機には、必ず起動するための鍵がついてるはずなんだが」

「……ああ、なんかついてたかも」

 数秒して、軍人は頭を抱えた。 スピアのパイロットは、乗機を雑に乗り捨てたためにキーがついたままだった。

 神機への恨み辛みを叫んでいたとも言う。 神機開発者を友に持つだけあって、本当に腹が煮えくり返るようだった。

 息を長く吐くと、手元の書類を垣間見た。

「君の所属しているクライマー部……県大会の記録はないようだが」

「大会? あー……大人の都合みたいです。 村長の代わりのお兄さんがダメだって。

 友達が大会出てーよーとか言ってました」

「因みに、部内の交友関係は?」

「……二人くらいですけど……親いないせいで、町からほとんどハブられ続けてる感じで」

 軍人の眉の距離が縮んだ。

「? もしかして町ぐるみで虐待を?」

「いえ、スルーされてるっていうか。 冷たくされてばかりっていうか……。

 村長の代わりのお兄さん、不公平だからって私達に毎月のお金くれるんで。 なんか顰蹙買ってるみたいで……」

(……普通逆じゃないのか? 冷たい自治体もあったもん……)

 そう思っていたら、書類の道乃瀬流の傷害事件に目がいった。 被害者の少女は暴行を受けた結果、視力も低下し、膝を痛め、歩行能力が低くなっている。

 なるほど、村人のそういう反応は当然と言えなくもない。

 同情の余地はある、が……思考を中断し、一軍人は質問をあるべき形に戻していく。

 

『それで……最大で何mくらい登れる?』

 取調室の前、頭皮から長い金髪を垂らす、若い女性は、ツリ目の中のをドアの覗き窓に向けている。 視線の先の娘は、短くない前髪で目を隠している。

「彼女が例の?」

 青い軍服の女性が、唇から言葉を紡ぐと、背後のサバン班長が答える。

「は、はい、確かにこの娘ですが……なんだか様子が違いますね」

「というと?」

「跳ねっ返り娘といった感じでしたが……やはり素人の初操縦に、初めての殺人、ショックが強かったのかも……」

 サバンの感想を聞き入れつつ、視線を固定している女性は、少女の出した言葉に目を見張った。

 

「アタシが殺したのは――化け物なんですよね?」

 突拍子もない発言が、光から出たことに驚いたクリムゾン軍人は、ふーっと息を吐いた。

「人間に化け物なんていない。 歪に見える形で生まれる赤ん坊も人間。

 障害を持つ人だって人間さ。

 心を無くしたように見えるのは、壊した心を持つ人間だ。 殺意ぐらい、誰でも持ち合わせる。

 君が犯したのは、まぁ善行かもしれないが、後先を考えない短慮な行動。 しかも」

 軍人は声の抑揚をなるべく変えず、平常心を保ちつつ、こうしっかり発言した。

「殺人だ」

 しばらくの数秒後。 光の瞳が小さくなった。 椅子から立ち上がった。 全身を震わせた。 己の肩を抱いた。

「お、おい」

 軍人の声も聞こえずに、転びかける光の身体は、すんでのところで手に収まる。

 ドアを開けて部屋に入った、女性軍人の両手の上に。

「り、リーレント少佐!?」

 思わぬ英雄の登場に焦った軍人は、敬礼を取る。

「少し言葉を選んでみては? 彼女を医務室に。 急いでください」

 セイナ=リーレントの腕中で震える少女は、うわ言で自分に暗示をかけようとしていた。

「あたしは……あたしは……バケモノ……やだ……ちがう……ちがう……」

 

 

 

クリムゾン連合国

合同研究所

 

 合同研究所という名前は、旧レッド帝国人と旧ブラック共和国人が共同で働いてることからなっている。

 敵対国同士だったので、当初は連携が取れてるとは言い難かったが、同好の士という言葉がある。

 同じ科学の探求者の集まりは、新技術の探究に努めている。

 

 実験スペースの中央、鎖で固定されてる巨腕の間で、椅子に座るワンドは喘いでいた。

「ん~~……んん~~……んんん~~~……」

 しっかり目を閉じ、閉口を波のようにさざめかせている。

 ワンダームの表面に、電気光線が照射されている。

『はい、ここまで』

 照射が止まると、大きく息を吐く。

「ぷふぁーっ……何の意味があるんですか、今の……」

 実験スペースの外で、科学者達がマイクを通して答える。

『データ収集の実験だ。 君の口伝だけじゃあ証明しようがないものばかりだからね』

 今度はペンチアームとドリルアームが上から出てくると、ワンドがびくりと身を震わすと、ワンダームも痙攣した。

「い、痛くしないでくださいね?」

 金属音が響くと、弱い悲鳴が響いた。

「いたい~!」

 

 度重なるデータ収集に、汗をかいたワンド。

「汗かいちゃいました……脱がせてくださ~い」

 肌色の腕のないワンドでは、一人で服を脱ぐことも、一人で食事もできない。

『……めんどくせえな……誰か行けよ』

『ええ~』

『お前行けよ』

『やだよ』

『じゃあ俺が』

『どうぞどうぞ』

 実験スペースに入るなり、舌打ちしまくる研究員に、ワンドは良い顔をしなかった。

「なにこの服、どうやって脱がすの」

「痛いんですけど」

「お前が脱ぎづらいの着てるせいだろが。 なんで言葉通じてんだ、キメェよ……」

 なんとか古代服を脱がせた研究員は、自前の洗い済みTシャツを着せた。

 しかしワンドはシャツを好まなかった。

 何せ、サイズもブカブカで、腕を通す袖があるから。

 袖通す腕のない自分にとって嫌だし、細かな布で電磁波を遮られて、ワンダームも動かしづらい上に痛痒い。

「なんだよ、これ以上文句言うなよ」

 頬をリスのように膨らまして、顔を横に向けるワンド。

 自分に向ける嫌な視線を気に入るはずもないし、おまけに汗を拭ってもくれなかった。

「おいおい、汗を拭かなきゃダメじゃないかね」

 新しい声に、研究員が全身を硬直させる。 よく見れば、実験スペースに白衣を着た人間がもう一人。

「貴重な実験体だよ。 清潔を保たなくてはいけない」

 モノクルをかけた白衣男性の言葉に、顔肌を青くする研究員は頭を下げて早々と立ち去った。

「やあ、先日ぶりかな?」

 モノクル男の言葉に、ワンドは首を傾げる。

「覚えていないかな? 私はレッド帝国から来た死神博士。 君の発掘現場に鉢合わせていた」

 ワンドは、起きたばかりの記憶を軽くだが思い返し、場面の中の濃い面影を見る。

「そういえばいたかも……」

「君に取りたい確認と、聞きたいことがあってね……」

 そう言って死神博士が取り出したタオルを見た瞬間、少年は花のような笑顔を咲かせた。

 しかし、丁寧に拭かれる時の、博士の素手からくる血生臭さに、不信感が募った。

 

 その後、ワンドは親切で怪しい博士から、簡単な歴史を教えられた。

 今の暦は天星暦、1000年の節目に起きた世界統一戦争の中の出来事。

 セイバーの発掘、神機の量産、終戦後のクリムゾン連合国の設立……

 今は神機の大量売買で、世界中で紛争が絶えず、クリムゾンが世界警察を各国に放っていること。

 ワンドはもの悲しい気持ちのまま、一番気になっていることを質問した。

「……あの、セイバーには巫女と呼ばれた女の人が一緒にいたはずですけど……その人は?」

 わかってるよ彼女のことだね、と死神博士はスクリーンに顔写真を出した。

「あ、リレアさん!」

 茶髪で、活発そうでかわいらしい少女の顔。 ただ、死神博士は今しがた聞いた名前に心当たりがなかった。

「リレア?」

「はい、セイバーの巫女に等しいフォース使いの方です」

 死神博士は笑い顔のまま、顎に手をやって虚空を見つめる。

「リ・レ・ア? リレア? それがユキくんの本名か……ほお~~……」

 また気になることに、ワンドは素朴な質問をした。

「ユキクン? 何のお話ですか?」

 思案していた死神博士はこう答えた。

「君の言うリレアくんは発掘された時、発見者のドラゴン皇帝と小森提督によってユキと名付けられたのだ」

 ドラゴン皇帝といえば、さっきの戦争の中のレッド帝国の皇帝。 小森提督は知らないが、合点がいった。

 しかし、ワンドにはユキとリレアの二つの単語が結びつかなかった。

「ユキって……寒い季節に空から降る小さいアレですか?」

「いやね、亡き娘に瓜二つだったからねぇ……」

 スクリーンに、また違う写真が映り上がる。

「あ、またリレアさん……え? 誰です、この人達?」

 高らかに笑う長い軍服の壮年、同じように笑う桃髪の女性と、口抑えて笑うリレアと同じ顔の少女、バンダナにサングラスの男性が微笑んでいる。

「ここに君の言うリレアくんはいない。 レッド帝国を切り盛りしたドラゴン皇帝陛下……この頃は司令官かな? それと、その妻子……隣にいるのは、陛下と親交のあった、小森提督だ」

 へぇー、とワンドは感心する。 本当にユキはリレアとそっくりだと。 そういえばリレアに両親はいたのだろうか? それが急に気になった。

「この写真に写ってる人間は、もうこの世にはいない。 リレアくんもね……」

「えっ。 リレアさんも……?」

 一瞬、目の前が黒一色に染まった。

 しかし、他の神機はどうなってるだろうか。

 ()()()()()()()()()、かの()()()()は。

 あの()使()と、あの()はともかくとして――

 

 

 

 




前後編のように長すぎてもアレなので、出来上がった場面ごとに投稿していきます
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