胃に優しいものを食べなければ早死にしてしまう
50回噛みを実践する日が来ようとは、思いもよりませんでしたです
クリムゾン連合国・医務室
光はベッドに眠っていた。
息を吸って、吐いて、呼吸している。
時折、寝顔を険しくする。 石腕で人を潰したことが、悪夢として囁いている。
運の悪いことに、PTSDを発症した整備士が、隣のベッドに運ばれた。
目下に重い隈ばかりの整備士の寝言は。
「セイバー、一緒に発見された……ブレイド……ブレイドが……暴走……マッドギア!!!」
整備士は目を見開いた。 彼の脳裏には虐殺の記憶。
踏み潰される家族や友人。 皆で作った神機の崩壊。 迫り来る黒いセイバー。
「轟博士ぇ! 人造人間!! 人造人間が!! うわあああああ」
大声に目を覚ましてしまったのは、光。
自分を起こした主の狂乱に、恐れを抱いた。
――世界統一戦争の後半、猛攻を繰り返す生体神機セイバーに対し、ブラック共和国は別大陸から天才を呼び出し、ある禁忌を犯した。
人造人間マッドギア。 セイバー打倒を目的とし、敵と見なした者全てを殺し尽くす殺戮兵器である。
そのパワーは人間サイズでありながら、神機であるセイバーに迫り、一部隊を軽々と銃殺してのけた。 これに対してレッド帝国も、最悪の切り札を取った。
それなるはブレイド。 セイバーと、その巫女リレアと共に発掘された、破壊の神機であった……。
クリムゾン連合国・合同研究所
「ブレイドの暴走が、この時代に……リレアさんが止められなかったなんて……」
ワンドは涙を流している。
「セイバーとの決戦の末、ブレイドを操縦したドラゴン皇帝はリレアくんと共に遺跡の崩落で死んだ。 その後、ブレイドはマッドギアに奪われてしまい、レッド帝国、ブラック共和国双方ともに破壊と虐殺を開始した。
神機戦の破壊は何度も見てきたつもりだったが、あれは凄まじい光景だった……市民がブラックブレイドで裂かれる様、バスターキャノンで消し飛ぶ建物、将官があの足に踏み潰された時の痙攣の様は……」
天上を見上げる死神博士の目を、ワンドは捉えた。 悪夢を想起させる言葉を並び立てる際の、瞳の輝きを。
「あなたは、悪人ですか?」
「ふふふ、世界中はここを除いて紛争中だ。 戦争に正義はあっても、善悪はないと思うがね?」
気味の悪い笑みに、口を噤むワンド。 次に質問を取った。
「……ブレイドはどうなったんですか?
ブレイドが滅びたのなら、セイバーも機能停止するはずです」
「ああ、爆散した。 リレアくんとセイバーに選ばれたパイロット……当時は新兵だったが、今は炎帝と呼ばれている男と、その仲間達によってね。
その爆発を耐え抜いたマッドギアの身体は、立ったままにして今もあの場所で死んでいる……ブレイドの破片も、そこに眠っている」
「……ブレイドの破片……」
ワンドは顔を青ざめると、声を荒らげた。
「ブレイドには、自己修復機能があったはずです。
チリ一つ残さず、消し去った方が良いです!」
データ収集に喚きはしたが、どこか危いものの大人しい印象だった少年が、大声を出したことに、博士は少しばかり驚いたが、冷静に答えを返した。
「だが……あそこはマッドギアごと、レッド、ブラック、クリムゾンの、三国共通の最重要機密区画に認定された。
レッド帝国の上層部に口を出せる私でも、無理なものは無理だね」
ワンドは噤む口を震わせる。
ブレイドという剣に通じる言葉を聞くと、嫌でも脳の裏に
「ブレイドはダメだ……」
紫刃に裂かれる、友達。
家族に等しい仲間達を、焼き尽くす光線。
みんなで築き上げた建物を砕き潰す、黒い巨人。
悲劇は、繰り返されてはいけない!
「ブレイドは、ダメだ!!」
今回は短めでした。