ブラック共和国・田舎町
田んぼに挟まれた歩道を歩く二人の女子中学生。
二人の顔は前を見てるものの、暗い。
万年健康だった部活友達が、風邪で休んでいるという事実が、二人のテンションを落としている。
友達の名前は、道乃瀬光。
問題児の弟を抱えるせいで自分達以外の友達を少なくしている、クライマー部のエリートだ。
開店休業中の駄菓子屋の前に通りがかると、ラジオが鳴る。
『緊急速報です。 先日発見された古代神機が、合同研究所にて暴走、脱走した模様。
行き先はブラック共和国の地下遺こ……え? すいません、ブラック共和国方面以外、不明とのことです。
ブラック共和国の皆さんは自宅待機を……』
女子中学生達は、こわいなーと思いつつ、歩道をまっすぐ進む。
まさかこの田舎に突っ込むことはないだろうと思っているのだ。
しかし、その楽観的予想は、強い地響きによって大きく外れた。
「えっ!? なになに!?」
「じ、地震!? ちょっとまさか……うわあああ!?」
少女達の上を通るのは、黒い巨人。
石のような腕と、黒い足で側転しながら、歩道を通っている。
崩れ気味の足場に囲まれて、二歳差の友達同士は、遠のいていく神機を唖然と見る。
「……かりんちゃん? 荼毘かりんちゃん? あなたレトロ趣味でしょ、アレが古代神機かわかりますよね?」
「知りませんよ鹿沼先輩! ゲームキューブまでしか語れませんし、最近掘り出されたロボットなんて門外か……」
かりんが言い書けたところ、赤い鳥が上を飛び去った。
実は動物でも戦闘獣でもない。 現代の鳥型神機、ファルコンであるのを、女子中学生二人にはわからなかった。
それを知る中学生は、鳥の後ろを追いかけるヘリの中にいた。
時を戻して……
クリムゾン連合国
軍本部・医務室
医師から休むように言われた光だが。
つい昨日の悪夢が、脳裏にしがみついて離れない。
あの子はどうなったのだろう。 ……流はどうしてるだろう。
少年と、弟の安否も気になって、余計に休むに休めない。
そんな時、天上から警報が鳴った。
『出撃命令! 出撃命令! 合同研究所での実験途中、古代神機ワンダームが脱走!
繰り返す、古代神機ワンダーム脱走! 各自、現場へ急行されたし!』
合同研究所? 聞いたことがある。
淀んだ瞳で笑ってた流から聞いたことがある。
(あの子……ワンドくんはそこに?
まさか! あの人殺し博士も!?)
人殺し? 自分もだ。
連想からの自虐に心身が引き締まる。
瞑りかけた光の目は、医務室の出入口から、駆け出していくパイロット達の姿を捉えた。
(……怯えてられるかっ!)
心と全身を奮い立たせ、光はベッドから立ち上がった。
クリムゾン連合国・ハンガー
『あなた達なんか、ちょっとで潰せる!!』
少年の声が、モニターから響いた。
当の液晶は、迫るワンダームに怯え逃げる研究員達、アッパーカットに突き破られる合同研究所の屋根、ランスに合体したワンダームを次々と映す。
モニターの横で、セイナ少佐が指令を上げる。
「……このように実験体ワンダームは逃走中。 研究所の会話記録を聞く限り、恐らく目的地は世界統一戦争終戦地……ブラック共和国本部地下遺構!」
兵達の間で、どよめきが起こる。 そんな中で一人の新兵が手を上げた。
「ち、地下遺構に、何があるというんです。
ブレイドの名前が出てから、小僧の態度が一変したように見えますが」
セイナは返答する。
「ブレイドは太古に大きな被害をもたらしたと言います。
ワンド少年はその時の被害者か、目撃者なのでしょう。
地下遺構にはかつて私達が倒したブレイドの破片が眠っていますが、調査で自己修復は不可能ということが判明しました。
ワンド少年の説得と捕縛を優先します」
セイナの命令に対し、何人かの兵士達に疑問符が浮かぶ。
「あの、撃墜ではないんですね」
質問をする兵士に、肘でつつく同僚。
「バカッ、腕だけとはいえ、セイバーと同じ古代神機だ。 貴重なサンプルだろ」
セイナはそれもあります、と告げると、手を垂直に振って、出撃命令を下す。
散開する部下達と共に出撃の支度をする中で、セイナが心で思った。
(リレア……それがユキ先輩の本名……)
ユキ。 明るく優しく、勇敢な先輩。 ワンドという子と同じ時代から来た、セイバーの巫女。
(どうして、本当の名前を教えてくれなかったんだろう……)
同じ仲間だったはずなのに。
寂しく思いつつ、セイナは赤い鳥に乗り込んだ。
まだまだ続きます。
あと1~2partでしょうかね