お久しぶりです
不定期ながら!
誰に感想いただけるかわかりませんが!
更新再開します!!
ブラック共和国・首都
避難勧告に逃げる国民達。
共和国本城の前へ、ゴリラの如く、石腕で歩くランス。
コクピットの中に立つワンドは、使命に燃えていた。
ブレイドの完全破壊。
リレアの止められなかったブレイドの滅殺。
アポリュオンの次に最優先すべき使命と、ワンドは思った。
しかし。それを遮る炎が一つ。ワンダームで振り払った先には、全身機械で出来た、赤い鳥。
「鳥の神機?」
最新型のサポート神機バードだ。英雄セイナの乗機である。
『やめなさい! ユキ先輩が望んでるとでも!?』
女性の声からの単語に、ワンドは反応を示した。
「ユキ……!? リレアさんのことですよね!?」
ワンダームの掌を、バードはひらりとかわす。
「どうしてリレアさんが、そんな名前なんですか!?」
牽制に放ったミサイルを、大きな腕がはたき落とす。
「ブレイドを使おうとした人の娘に、どうしてリレアさんが!?」
通信モニターに映る少年は、明らかに冷静ではない。
同胞の死の事実、ブレイドへの恐怖が、彼の精神を興奮させているのだろう、セイナはそう推測した。
(まずは大人しくさせないと……)
「各機、散開!」
バードの後を走っていた黒いランス達は、命令通りに四方へ散らばる。
孤立無援の方の黒槍が振り回す石腕、その肩の付け根に、実弾が無理矢理混じった。
「ッ?」
ワンドの肩の先に微かな幻肢痛が走った。
電磁ウェーブをレーザーで遮られた時よりもすごくマシだが、ワンドの動きを止めるのに充分だった。
ワンドが次に覚えた覚えた感覚は、全身が締め付けられるものだった。
太い腕の黒槍が、四方八方の黒槍達の放った鎖網に縛られている。
「エネルギー吸収、開始!」
セイナの掛け声と共に、チェーンが光を纏う。
セイバーのように、生命活動を行う生体神機の持つ、自己修復機能を応用した、エネルギー吸収装置が、チェーンネットに張り巡らされているのだ。
もっとも、実用化ケースが少ない、希少な兵器なのだが、古代神機が相手ということで持ち出された。
それから二十秒、幼い喘声を耳で受け止め、セイナは次の命令を下した。
『吸収停止!』
突発的困惑と動揺を抑えて、兵士達は押し続けていた指を離した。
光を解いた鎖に、宿主ごと繋がれたままの石腕、その色彩が、白みがかっている。
新死神研究所からの資料によると、ワンダームはエネルギーを激しく消耗すると、巨人特撮と似たような風にワンダームは白みがかると記されていた。
「帰投準備! 丁重に……」
『やめてええええええっ!!』
輸送ヘリから大声が割って入った。
『何をしてるんですか!! こんな小さい子を殺す理由なんて、ない!!』
『出しゃばるなっ、関係者だから乗せるだけにしたのにっ!』
モニター脇の映像には、道ノ瀬少女がヘリのコックピットから声を張り上げている。
セイナは整った声色で、返答を続ける。
「彼が脱走したので、捕縛任務を受けました。その途中です」
『脱走? 何があったんですか!?』
『だあーっもう! 引っ叩かれたくなかったら、降ろ……』
ヘリ操縦士が声を荒げた時、黒槍機から声が出た。
『お、おねえさん……?』
ワンダームと合体した神機、そのダメージや駆動感覚は、ワンドの五感として変換される。
痛みに縛られて、内側の力が捕縛部分へ吸い取られる気分を味わい、力を出せないでいるワンドは、息を切らして、言葉を紡ぐ。
「ブレイドに……トドメ……刺したいん、です……。
て……手伝って、くれますか……?」
数瞬して、言葉が返ってきた。
『わかった!! よくわかんないけど、連れ出してあげるから!!』
少年の前に光が差した。コクピットハッチがひとりでに開き、停電しかかって暗いコクピット内に、光が差すと、道ノ瀬光が飛び込んできた。
『なんだ!? ヘリから出たのは!?』
ヘリコプターは五体満足。ただし先程、キャノピーから、大腕ランスのコクピットへ薄緑色の光が、一瞬差した。
『せ、セイナ少佐! あの少女がいません! 操縦席を壊さずに、通り抜けました!』
なんですって、と驚く一瞬の間、セイナはこれも古代神機の機能か、と脳内で納得する。
拘束維持の指示を喉から出そうとしたら、正面モニターに驚愕が舞い込んだ。
石腕黒槍が、ワンダランサーが、チェーンを破ったのだ。一瞬見えた、チェーンのエネルギー数値が、臨界を突破していた。
光が吸い込まれた瞬間、ワンダランサーが自らを縛るチェーンへ、エネルギーを逆流したのだ。
「まさか! ワンダームと接続した神機は、二人乗りでこそ真価を発揮する!?」
危機を察知したセイナは、コンソールを操作して、バードを空中へ後退。部下達のランスの足も続くように、下がっていく。
ワンダランサーが向くのは、明後日。
『ぶ……ブレイドは……滅ぼさなきゃ……破片、残らず……』
痛みに耐えるワンドの声は、ブラック共和国本城へと向いていた。翼をはためかせて、浮遊していたバードは、ワンダランサーに接近する。
「待ちなさい! ブレイドの破片は確かに残ってるわ」
地を掘り進めるワンダランサー。
「破片の自己修復は不可能なのよ! 残っているのは、ブレイドの死骸だけ!!」
『子供のワガママを、どうして許してくれないんですか!?』
今度はワンドではない。光の大声だ。
「その子供のワガママで、皆を不安がらせないで!!」
セイナの一喝で、ワンダランサーの掘り方が変わった。操作担当が変わったのだろう。
『私達に、安心なんて、もうない……っ!!』
ワンダランサーのコクピット。
「……ねえ……ワンド。アンタが死ぬって思って、ここまで飛び込んできたんだけど……ていうか、なんで乗ってるかわかんないけど」
腕を動かすワンドは目を開閉。頭に昇ってた血が冷えていく。
「ボク、死ぬつもりなんてありませんよ? ブレイドを根こそぎ滅ぼさなきゃって思ったら、身体が勝手に動いたんです。
ブレイドなんて、アポリュオンと一緒で、この世にあっていけないものなんですから」
それでも、モニターに映る、掘り進める腕は止まらない。光は聞いてみた。
「ブレイドとか、アポリュオンって……なに? あの化け物……っ」
軍人、と言いかけたら、光の身が凍えた。少女は、恐怖宿す両腕を抱える。
「? お姉さん、どうしました?」
「……ワンド……アタシ……昨日……人を……ころ、して……」
液晶モニターで、土を掘り進める石腕。しかし、勢いが冷めるように遅くなっていく。
ワンドは困惑した。ブレイドの元へ進む意志はあるし、パイロット一人いるだけでワンダランサーの能力は数倍アップするが、パイロットに意志がないと、更なるパワーアップは見込めない。
ワンドは、口を出した。
「昨日の神機撃破なら、気にしないで良いと思いますけど……正当防衛だから自宅謹慎で済むって、あの研究所で言ってました」
「だって、殺したのアタシなんだよ!?」
振り向く少女の目には涙。
「でも、お姉さんと潰したの、僕の手だし……」
首を傾げるワンド少年。光がその言葉を理解するのに数秒かかった。
「……あなたの手? ……ワンダーム、っていうのが?」
「はい、お姉さんからしたら、すっごい昔のことなんですけど……僕、産まれ方が悪かったとかで、僕には生まれつきの腕がなかったんです。同じくらいの子達は腕があるのに、僕だけ皆より小さいって、ずっと思ってました。でも、軍隊の方々からもらったんです。今、繋がってるワンダームを」
ワンドの瞳が輝いてきている。
「ど……どうして?」
「アポリュオンを倒すためです。アポリュオンは地球ごと動物も食べるから、全滅させなきゃいけないんです。だから、神機でやっつけなきゃいけないんです。僕、他の皆より大きい腕をもらえた上に、誰よりも小さかった僕がそういうことへの手伝いをしてもらえる……それが何よりも、嬉しいんです」
今度、困惑したのは少女の方だった。彼の瞳と口からまろび出る情熱が、理解しがたかった。
「……アポリュオンって、ロボ」
光が言いかけたその時、コクピットが揺れた。