一次創作に集中しすぎてまして……
誰も待ってなかったかもしれない二次創作
ちょっと再開しますねー
道ノ瀬光と、巨腕に繋がれた少年ワンドは、クリムゾンの兵士達の冷めた視線に晒されていた。
急に研究所から脱走したかと思えば、街を襲ったり民間人を踏み潰すわけでもなく、ただただ進行し、こちらが乗せた民間人は神機のコクピットに自動で入った。
これだけでも胡散臭いのに、共和国どころか二国の機密たる地下遺構に来てみたら、謎の生体神機というアクシデントがあったとはいえ、素直に投降した。
理解が追いつかない兵士達の多くを遮るかのように、指揮官のセイナはワンダームの間で疲労回復しているワンドと、電磁波を遮らないように後ろでへたり込んでいる光の前に出ると、片膝をついた。
「どうして勝手に抜け出したの? マッドサイエンティストの死神博士といえど、貴方は貴重なサンプル。 貴方に非道なことをすれば、上層部から罰を受けるはず……」
目線を少しでも合わせようとしてるセイナの姿勢に気づかずとも、寝てるわけでもなかったので声に気づき、目をパチリと開けたワンドは、こんなことを言った。
「……あ、研究所って、刑務所のじゅー犯罪者さんを実験体に選ぶって言ってましたね」
「は!? そんなのホントなんですか!?」
光の抗議めいた疑問に、セイナは目を閉じて、額に指を当てるだけ。兵士達は息を呑むだけ。
「博士さんがここらにブレイドが爆発した欠片があるって言ってたんです。 でも、欠片だけでもブレイドが残ってると危険だから、ブレイドを壊そうって思って……それでも、ブレイドの欠片、死んでました」
兵士の数名が嘲笑か苦笑を浮かべるが、マッドギアに銃口を突きつけた男を含むもう数名は眉を顰めるばかり。
セイナは光とワンドを交互に見て、こう言った。
「お二人に、お話があります」
ワンドが開けた穴を修復中の合同研究所に、少女と少年は運ばれた。
バードから降りたセイナは、
「……ここはクリムゾン連合国の機密を扱っています。 ここでなら、世界統一戦争の真実を、話せます」
光は、驚いた。ワンドにならともかく、何故、自分に?
「道ノ瀬さんは無関係ではありません。現状で、ワンドくんに最も適したパートナーであると私が判断しました。ですので、真実を聞く」
それからセイナが語る話には、光も知ってる話もあった。しかし、彼女は新たな情報に驚かされた。
数年前、ブラック共和国に侵攻されたレッド帝国。
戦闘獣に使われる巨大生物をブラック共和国に奪われ、レッド帝国は領地化の憂き目にあった。
その折に、帝国軍司令官ドラゴンの妻子も虐殺され、ドラゴンは復讐の念と共に帝国を立て直すことを決意した。
「政治家だった私の両親もブラック共和国の刺客に殺されて、姉もその心労で自殺して……そのブラック共和国への怨みで、軍に入りました。 小森さんとガイさんには、良い顔はされませんでしたが」
その知らない名前について光とワンドが聞くと、セイナと姉を刺客から助けた二人の軍人だという。
特に小森はドラゴンに忠実な部下にして親友でもあり、二人でオレンジ遺跡の調査に出向いた。
そこで発掘したのが、二対の古代神機、セイバーとブレイド、そしてワンドと同じように冷凍睡眠されていた古代人の少女リレア……。
「リレアという名前は、私も知りませんでしたが……」
そう言ったセイナの顔は、どこか寂しげだった。
「とにかく彼女は、ドラゴンさんにユキと名付けられて、養子になりました。リレア…さんはドラゴンさんの娘さんと瓜二つでしたので、ユキという名前もそこからきたそうです」
ブレイドの危険性を聞いたであろうドラゴンはそれを切り札として封印、セイバーの方を元にして初めての量産神機スピアを製造、量産。
ユキが乗るセイバーと、兵士達の駆るスピアは世界の軍事バランスをひっくり返し、ブラック共和国に反撃。
その最中に、ドラゴンは皇帝と相成った。
世界統一戦争終盤で、大きく戦果を上げたとされるのは、小森が率いる部隊。
所属するは、エリート軍人ガイ。
セイバー唯一のパイロットだったユキ。
後に彼女から譲り受けられ、炎帝と呼ばれるようになる新兵。
正義を重んじる熱き格闘家、豪田善。
そのまた後に、セイナ自身も加入し、ブラック共和国と戦い、いくつもの壁を破ってきた……。
その過程で、後に毒地となる死神基地にて、セイナは見た。
無理矢理拉致されて、射殺練習台に連れてこられた、共和国の民間人達を。
「……お互い様だったんです。私も、自らの仇と同じことをしていたことを自覚したら……立ってられませんでした」
その時、どうやって立ち直ったか聞いてみると、こう返ってきた。
「隣で支えてくれたんです。ユキさんに……先輩が」
微笑みながら告げた先輩とはセイナと同じ新兵、今の炎帝のことらしい。
一方、ブラック共和国は、セイバーを倒すために人造人間を製造した。
それこそ結果的に世界統一戦争を終結に導く要因の一つ、マッドギアだった。
マッドギアの実力は絶大で、生身一つと銃弾の早撃ちだけで、レッド帝国の一部隊を全滅に追いやり、セイバーを含む神機四機でも渡り合うどころか追い込んだ難敵……。
これを受けてドラゴン皇帝は、ブレイドの稼働を決断。ブレイドはパイロットを乗っ取って殺す代わりに驚異的な性能を発揮する。ドラゴンは新兵をその生贄にしようと画策する。
これを認められないユキは、新兵と格闘家、セイナと共にドラゴン皇帝に反抗。
ドラゴンに恩ある小森との死闘、ユキにライバル心を抱えていたガイとの戦いを経て、ドラゴン皇帝はブレイドに搭乗する。
次々に倒れ伏す仲間達のため、新兵はセイバーを覚醒。ブレイドを一度は下した。
しかし、崩落する遺跡の中、ユキは「後から自分も行く」と嘘をつき、娘としてドラゴン皇帝に寄り添った……。
光の視界がぼやけている。ワンドの目から涙が溢れている。
「……今日はここまでにした方が良さそうね……」
セイナの手配によって、ワンダームとセットであるワンドはクリムゾン軍基地の整備ドックに安置されることとなり、光は軍用寝袋をもらった。
ワンドには巨腕と電磁で繋がる脇を除いて、毛布がかけられる。
その頭上に、寝袋に収まる道ノ瀬光が、横になっている。まだ、彼女は寝つけていない。
ヘイ山中の鉱山でワンドを見つけて彼を巡っての大立ち回り、そこで人を殺し……そして今日、ワンドをかばって自国の最奥まで逃げ延びて、リレアとかマッドギアとか死神基地などの重大な秘密を聞かされて……ここまで丸二日間。
疲労はあれど、逆に眠れるものも眠れないというものだ。
「リレアさんが皇帝さんと一緒に死んだの、正直わからないけど、わかるような気もします」
ワンドが、声を出した。
「ブレイドはアポリュオンごと沢山の人達を皆殺しにした、危ない神機でした。
それでも破壊されないで封じられたのは、大人の人達がどうしても切り札に残しておきたかったから……それを止めるため、ストッパーって奴としてセイバーとリレアさんがブレイドのそばに眠りについたんです。
でも、他の神機やボクが、アポリュオンを倒すために眠ったことを知らなかったのかもしれません。
だから、自分が一人ぼっちだと思って、皇帝さんのことをお父さんって……」
「……でも、本当に一人だったのかな」
納得がいかずに、光が声を出した。
「少佐さん、リレアって人のこと言う度、なんか優しい顔してたじゃない? 炎帝になった人のことも、ガイってイケメンさんのことも。 リレアさんって、一人ぼっちでもなかったのかも。でも……お父さんには、敵わなかったのかな」
光は、父を思い出した。母と一緒に、たちの悪い風邪に殺された、父のこと。もっと甘えていたかった、大きな背中を。
そんな回想は、嗚咽によって中断された。ワンドが、すすり泣いている。
「もっと早く、起きたかった……ブレイドを、一緒にやっつけられたら……リレアさん……」
ワンドの腕たるワンダームは今、停止状態になっているらしい。大きな指で涙や鼻水を拭うことなど至難の業だ。
光は寝袋から肩を出し、その腕をワンドへ掲げる。
「……アポリュオンっていうのこと、聞きたいけど……今は良いや」
ワンドの涙が、光の指で掬われる。
「今日は疲れたでしょ?
ゆっくり、休んで良いよ」
ワンドは両肩がない身体バランス上、頭上を見上げることが叶わない。しかし、何をされたかはわかるので。
「……ありがとう、ございます。お姉さん」
道ノ瀬光は寝袋に身を包みながら、こう思った。
――この子は、私が守っていこう
――これからは守れるぐらい、強くなろう
そう思う脇から、忘れてはならないものが割り込んだ。
(……流……)
憎むべきかもしれない弟を、目障りに思えなかった。
弟への安否を案じようと思ったら、意識は闇に沈んだ。
「ほえー、これが例のアーム……」
深夜の整備ドックに入ってくる、小柄な少年。
白帽子の下から、アームをマジマジと見ている。
「んっ、コイツがアームとリンクしてるって奴ッスか」
白帽子少年は、すやすやと眠るワンドに目を向ける。
「こんないたいけのない面で大立ち回りをねぇ……」
「あ!! おいコラ、チビィ!!」
大声に肩を震わす白帽子。
「昼間っから仕事サボっておいて、こんな深夜に!!」
油臭い黒髪の黒人が走ってくる。
「ぎょへ~、バンダン師匠ッス! 逃げるッスよ~!」
少年と黒人の逃走劇の中、光は寝袋で熟睡中。
「全く、腕は良いクセに、怠け癖さえなかったら……」
廊下の中で、弟子を見失ったメカニックは、息を切らしていない。
「あの将軍様もボケるの遅かったら……はぁ」
将軍とは、バンダンの弟子を含めた新鋭達を連れてきたベテラン軍人のこと。高齢による痴呆による奇行によって左遷させられ、今は自らの新鋭達と共に馬鹿をやっている。
先達の堕落を嘆くバンダン、その視界は廊下の脇を映した。
パソコンの型落ちCPUパーツが落ちている。普通こういったものは廃棄倉庫にあるものだ。
「チビの落とし物ッスか? 倉庫でなにを遊んで……」
バンダンは思い起こす。チビが仲間と倉庫で遊んでる時に見た、大きな鉄のネズミを。
人間一人がギリギリ納まりそうなアレは、神機のパーツで出来てなかったか?
冷や汗を流すと、設置されたコンピューターに近づき、検索をかけるバンダン。
「……えーと、倉庫の管理状況、っと……」
廃棄倉庫のデータを見る、バンダン。その胸に不安が募っていく。
「……やけにジャンクの数が、少ないッスね……えーと、先月、いや今週中の在庫状況、っと……」
顔を青ざめていくバンダン。
「……えーと、確か燃えないゴミの日は……」
廃棄倉庫のジャンクを捨てる日を調べれば……その日より二日も前にジャンク品が著しく減少している。
「……誰かが勝手にゴミ捨てした……じゃなくて、沢山のジャンクを部品にしてなんかを作った……」
軍の許可なく神機を開発するのは、明らかな違法=犯罪行為。
青い顔を張り詰めたバンダンは急ぎ押しでコンソールを入力、通報専用の音声デバイスを立ち上げた。
「もしもし!? こちら整備のバンダンッス!! 至急倉庫に来てくださいッス!! 世界警察さんでも良いからー!!」
次回は、情緒不安定だった弟くんサイドです。
とはいえ、弟の流くんでは感情移入しづらいので、視点を変えてきますね。