「さて、説明してもらおうか。どうして一之瀬にあそこまで言ったんだ?」
オレと軽井沢は昨日の作戦会議を見事にぶち壊し、一役、卯グループの大悪漢となった中禅寺を追い掛けて捕まえた。
「ん?ボクは何か間違っていたかね?」
「そうよ!昨日の話だと結果4を目指してあたかも綾小路君が優待者であるかのように持っていこう、ってことだったじゃない!わざわざSIMカード交換のためにPPも払ったのに!」
「そうは言うけどねえ、払ったのはボクじゃないか。」
まあ、そうだ。オレたち三人の中で一番金銭的に余裕があったのが中禅寺だったのだが、それにしても後で報酬が手に入ったら補填するというだけの話だ。
「もう!」
「いやね、思ったのだけど、わざわざボクを指名させるのも綾小路君を指名させるのもリスクが高いじゃないか。モンティ・ホール問題のように、変更した指名先のほうが確率が高いなんて。だったら
「それはそうだが、表面上だけでも一之瀬と共闘出来る余地は有ったほうが良かったのではないか。」
「あの中で一番リスクの高い人間が一之瀬さんだ。彼女を黙らせる為なら悪役でも何でも演じるね。それに手を組むなら初手でやっておかないと意味が無いが、まあ、あの様子だとBクラスは指名してこない。Cクラスは脅されている張本人であるところのキミがいるDクラスを攻撃することを本能的に避けている。Aクラスの坂柳派の何という名前だったか、彼ぐらいじゃないか、指名するのは。」
演じるという割には真に迫っていたように見えたが、中禅寺の言にも一理ある。
その時、ピロン、という音とともに学校からメールが届いた。結果が出たようだ。
「え、見て、綾小路君!卯グループは結果4ってことは――!」
「誰かが誤答したのだろうな。まあ、大方中禅寺の予想通りだろうが――良かった。オレたちの勝ちだ。」
軽井沢は肩の荷が下りたのか「良かったあ」と呟きヘナヘナと座り込んでいる。パンツ見えるぞ。
「軽井沢さん、報酬は経費を除いてキミのものにすると良い。」
「え!?いいの!?」
「そりゃあキミは頑張ったからね。ボクはPPに困っていないし、綾小路くんもいいだろう?だけど借金した子に返すのが先決だぞ?やらなかったら
「わ、わかったわよ――。」
「ああ。オレは堀北のところへ行ってくる。じゃあな。」
「待って!――その、綾小路君、それから中禅寺君も、あの――ありがとう。これからも宜しくね?」
顔を赤らめ、お礼を言う軽井沢。変わっていく人間を見るというのはこういうことなのかもしれないな。
こちらこそありがとう、軽井沢。また一つ、学びを得ることができた。
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ようやく
「綾小路君!待った?」
「おはよう、軽井沢。ほとんど待ってないぞ。待ったとしても、そこは男の甲斐性、というやつなんだろ?」
「その通りよ、分かってきたじゃない!――で、どう?」
「とてもよく似合っている。軽井沢の明るいイメージにぴったりな色合いで、かつ清楚さを魅せるワンピースだな。」
「惜しい!感情がこもっていれば満点だったのに――。」
軽井沢が顔を赤らめながらオレのコメントを批評する。オレに『デート』の予習としてあれやこれや雑誌を渡されたのを思い出し、嘆息する。
「それを教えてくれるんだろ?」
「まっかせなさい!――で、こんな辺鄙なところに呼び出して、何処へ行くの?」
「お前と二人でいると目立つからな。人に見られにくい場所へ移動しようか。今後はそこで話すことも多くなるだろう。」
「そ、それって、あ、あ、逢引ってヤツ――?」
「何を言ってるんだ。オレはお前を守る、お前はオレに人間性を教える。それだけの話だろう?あと『デートの予習』と言ってきたのは軽井沢の方じゃないか。」
「そうだけど、ちがーう!」
短時間でコロコロと表情が変わる。この矛盾性がオトメゴコロなのか?
ラチがあかないので、歩き出すと軽井沢もついてくる。晴明稲荷はすぐそこだ。
「神社?こんなところがあったの――。」
「ほとんど人が寄り付かないから、内緒で会うにはぴったりだ。まあ、ほとんど必ず一人は居るが。」
「え、それって大丈夫なの?」
「問題無い。中禅寺だ。」
オレはこの三ヶ月で開け慣れてしまったドアをノック無しに無遠慮に開ける。どうせいつもの仏頂面でアイツが居るだろう。
「――何回も言うがね、ドアが閉まっていたらノックして開けるのが人間の常識というものだ。匣では習わなかったのか?」
「聞いた覚えはあるな。」
「中禅寺君――普段から見ないと思ってたけど、こんなところに居たんだ。」
「いらっしゃい、軽井沢さん。」
なんだ、軽井沢には優しいじゃないか。今日は干し芋もお煎餅も無いのに。
「お邪魔しまーす。っていうか、狭っ!片付けなさいよ!」
「ボクが何処に何があるかわかっているからこれでいいのだ。それで、今日は何用だね?」
「特に何か用があるという訳ではないのだが、今後軽井沢の避難先というか、密談をするときに使わせて欲しいと思ってな。」
「どうせ断ると言っても来るんだろう?」
「まあな。」
「船にいるときからそんな気はしていたからな。汚したり勝手に本を動かしたりしなければいいよ。」
ぐびりと麦茶らしき液体を流し込みつつ中禅寺は言う。
「中禅寺君はここの管理人なの?」
「管理人というか、宮司をしている。」
「へぇ。意外と言うかお似合いというか。」
「――時間があるのならば、少し本殿を参って行くといい。」
「どうして?」
「この神社に祀られている猿田彦は、
何というか、中禅寺が初めて神職なんだと感じた。
軽井沢は
――こんな
第一部はこれにて御仕舞です。駄文お付き合い頂きまして誠にありがとうございました。最終話は短くてすみません。
なお、猿田彦は一説によると『巨根』の象徴(鼻が大きいから?)でもあるようですので、そういう意味でも綾小路君にぴったりですね。
さて、思い付きで始めた中禅寺君ですが、中々に書いていて楽しかったです。今後はオリジナル展開含めて謎解き要素も取り入れていけたらと思いますが――誰か才能を下さい。
次はアンケート結果を踏まえて夏休み編(ほぼ全編オリジナル)を挟み、体育祭をナレ死(予定)させ、ペーパーシャッフルになります。なお、夏休み編の第1話は既に完成していますが、投稿時期は未定です。
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あ、あと乱数の方もぜひぜひ宜しくお願いします。あちらは帆波ちゃんとのイチャイチャがメインですが。
《次回予告》
五徳猫の氷
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長さはいいから書けたとこから投稿せいや!