ようこそ伝説の特別試験を起こす教室へ   作:ハァート

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暗躍する4月
入学


 

「ここが高育か」

 

天然石の門をくぐり抜けながら俺は呟いた。周りには何十人か俺と同じ制服を着た生徒達が歩いている。ここが全寮制の学校であり基本的に卒業まで外に出られないこと、彼らのほとんどの足取りが周りを見ながら流れに合わせて歩いていること、制服に汚れやほつれやヨレも見られない新品らしい制服であること、などの様々な要因からこの場にいる全員が俺と同じ新入生であるだろう事が推測できる。その生徒達に着いていくように進んでいると、クラス分けの掲示板を発見し、自分のクラスを確認する。

 

『 1年Cクラス

  綾小路龍一郎

  伊吹澪

  ・・・・・』

 

 

どうやらCクラスみたいだ。ついでにここに入学する知り合いの名も探す。残念ながら別クラスか。ただ隣のクラスみたいだし、いつでも会えるだろう。

 

 

 

Cクラスの教室には既に十数人の生徒達がいた。基本、数人のグループに分かれて会話しているが、1人で読書している奴、突っ伏して寝てる奴、誰かに話しかける勇気がなくて1人で寂しそうにして奴なんかもいた。なんか不良っぽい奴もいるな。あまり関わらないようにしておくべきか。

 

自分の席を確認すると、隣の席の人は既に来ていた。黄緑のショートヘアの美少女。ちょっとギャルっぽいかも。ちょうど誰とも話してないみたいだし、挨拶しておくか。

 

「初めまして。俺、綾小路龍一郎。よろしく」

 

「私は真鍋志帆。よろしくね」

 

隣の人が可愛い女の子なんて幸先いいな。暇だし積極的に話してみよう。

 

「真鍋はさ、なんでこの学校を選んだんだ?」

「ええ〜。やっぱあれかな……。好きな進学先とか就職先に100%行ける、ってやつ」 

 

それは多分嘘だぞ。どうせ無理矢理志望下げさせたり、息が掛かった大学とか企業に強制的に入れたりさせてるだけだ。希望って言っても第一志望とは言ってないしな。しかし、ネットにこの学校を悪く言う卒業はいない、というよりそもそもこの学校の卒業生だと言う人を見た事が無いことが気になる。あったとしても、大体なんjの書き込みで信用し切れないことが多い。

 

「ああ〜確かに魅力的だな。でも凄いよな、100%なんて。何を教えたら、そんな事出来るんだろうな?」

「え〜でも言われてみたら確かに。どうやったら100%とかなるんだろう?国が運営してるんだから、流石に100%って本当だよね?」

 

今の政府なんか信用出来るか?適当に税率上げてその金で私腹を肥やすことしか考えない奴ばかりだろうに。政治家の何%が本当に国のために考えて行動してるんだ、って話だ。

 

「流石にそれは本当じゃない?じゃないと信用に関わるし。あるとしたら、実は絶対に入れてくれる企業か大学があって最悪そこに入れるようにしてる、とか」

「あー。なんかありそう。で、そこがブラックだったりFランだったり?」

 

そう言いながら、真鍋はケラケラと笑った。その表情を見て俺は一つの仮説が浮かんだ。ちょっと仕掛けてみるか。

 

「流石にここに入学出来たのに、そんな()()()に行くの最悪だな」

「分かる〜。そうなったら最悪すぎるよねー」

 

真鍋は笑いながら楽しそうに話している。やっぱりか。この子悪口とか好きだな。性格あんまり良くないかもしれない。まあ、可愛いから多少の言動には目を瞑るけど。どうしても無理だと感じたら、その時は自然に距離を置けばいい。

 

「とか言いながら、なんだかんだでシンプルにハイレベルな授業をしまくる、って感じだったらどうする?」

「ええ〜。それはそれで嫌。高校受験も終わったんだし、一息くらいつきたい。」

「だな。折角、高校になったし青春くらいしたいよな。全寮制だけど、施設内にカラオケとかあるらしいし」

「へえ、そうなんだ! 今度一緒に行かない?」

 

デートの誘い……ではないだろうな。特に意図もなく誘っている可能性が高いし、なんだったらただの社交辞令の可能性すらある。

 

「いいな。どんな歌を歌ったりするんだ?」

「ん〜。最近のだとAdoの歌とかかなあ」

「『うっせぇわ』とか?」

「そうそう! 綾小路君はどんな曲歌ったりするの?」

「え……と、ごめん。俺カラオケとか行った事なくてさ。あんまり歌とか詳しくないんだ」

 

ちょっと恥ずかしいけど、俺は素直に答えた。

実は、さっき言ってた『うっせぇわ』もたまたまユーチューブで見ただけで、ホント何も知らない。半分は興味無かったというのもあるが、もう半分は親父のせいにしたい。

 

「え〜!そうなんだ珍しい!じゃあさ、今度一緒に行った時に私が色々教えてあげるよ!」

 

真鍋の優しさをちょっと嬉しく思ってしまう。

 

これが……………心か…………

 

とかいう某施設の笑えないブラックジョークは置いておくが、カラオケ初心者の俺を拒否せず、受け入れてくれるのは素直に嬉しい。

 

始業のチャイムと共に教室前方の扉から痩せた眼鏡の男が現れた。おそらく教師だろう。このクラスにいる他の生徒達もすぐに会話を中断した。その男は、教壇につくと俺たちの方を見渡した。

 

「皆さん、おはよう御座います。そして、初めまして。今日からあなた達Cクラスの担任になる坂上、担当教科は数学です。この学校は学年ごとのクラス替えが無いので、卒業までの3年間、私があなた達の担任として共に学ぶことになると思います」

 

お。となると、3年間隣の真鍋と同じクラスなのか。そう思って真鍋の方を向くと、真鍋はよく分かってなさそうな顔を浮かべた後、はにかみながら俺にピースを向けてきた。

 

くっ……!これが……ギャル……!強い!!

 

「1時間後に入学式ですが、その前にこの学校における特殊なルールを説明します」

 

そう言って坂上先生は1番前の席の人にその列の枚数分の資料を渡し始めた。渡された資料を見てみると、合格発表の時に渡されたものと同じの資料だった。

 

軽くまとめるとこの学校は全寮制を義務付けられており、その上、在学中は原則外部との接触は出来ない。たとえ肉親でもだ。敷地外に出ることも禁止されているが、そのかわり敷地内には学校と寮だけでなくカフェやカラオケケヤキモールなど、数多くの娯楽施設も存在しているらしい。

 

「では次に学生証カードを配ります。これを使えば敷地内の全ての施設を利用したり、売店などで商品を買うことが出来ます。学校内においてこのポイントで買えないものはありません。そして学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能です」

 

ん?何で同じようなこと2回言った? ……学校内と敷地内は別物か?それに、ポイントを使えば何でも買える、だと?流石に比喩か?

 

俺の疑問をよそに説明はまだ続く。

 

「施設では機械にこの学生証を通すか、提示すれば使えます。シンプルなのですぐ分かると思いますが、もし分からなかったら、聞いてください」

 

丁寧に生徒に寄り添う先生だな。好感が持てる。

 

「それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれます。そして、既にあなた達全員に平等に10万ポイントが支給されている筈です。なお、レートは1ポイント=1円です」

 

一瞬、教室がざわつく。

 

「ポイントの支給額が多い事に驚きましたか? この学校は実力で生徒を測ります。入学を果たしたあなた達には、それだけの価値と可能性がある。改めて、入学おめでとう御座います」

 

いや待て。『おめでとうございます』じゃない。何褒めて誤魔化そうとしてんだ。

 

………示した実力に応じて毎月貰えるポイントが変わる、か。随分クセの強い学校だな。

 

『示した実力』か。………競争だな?わざわざ実力をポイントで可視化させているんだ。周囲と競い合わせた方が実力を高めさせられる。

 

実力ってのはなんだ?わざわざ学力と言わないあたり、学力以外の要素も含んでいるんだろう。勿論、ただの深読みで学力だけを求められる可能性も無くはないが、だとしたら特に対策も必要ないので、その可能性は一旦無視していい。

 

取り敢えず考え得る範囲では、授業態度やトラブルで減点、テストや行事で加減点、くらいか。行事の中で有りそうなのは、体力テスト、体育祭、文化祭、修学旅行、クラスマッチ、マラソン大会、合唱コンクール。…‥後はこの学校独自の試験もあり得えそうだな。

 

「なお、このポイントは卒業後には全て学校が回収しますので、後悔しないように使って下さい。譲渡も可能です。何か質問がある人はいますか?」

 

う〜ん。質問か。個人戦か、集団戦。どっちだ?それがどっちなのかで質問すべきかどうか、もしくは質問の内容が変わる。俺は一瞬、頭を回転させた。

 

………………!

 

ああ。学年ごとのクラス替えが無い、かつ卒業まで担任が俺たち全員と学んでいく=3年間担任とクラスメイトは変わらない。なら集団戦か。

 

もし個人戦で学年ごとのクラス替えが無いってだけなら、クラス自体がランクであり、中の生徒が月ごとに変わっていく可能性も考えられたが、『担任が変わらない』のだから、クラスの中身(=クラスメイト)は固定だろう。そうなると集団戦の可能性が高い。

 

個人戦なら学年ごとのタイミングで無いにしろ、クラスを変更して色んな人間と競い合えるようにした方が良いからな。

 

「質問はないようですね。では、1時間後の入学式まで雑談なり、読書なり自由にしていて下さい」

 

だが、そんな事を考えている間に質問タイムは利用されずに終わってしまった。まぁ、俺ならわざわざ質問なんてしなくても必要な情報に辿り着けるか。

 

………面白くなってきたな。

身体の内が興奮して、緊張して、昂って、震え上がるのを感じる。武者震いだ。俺はこれから巻き起こるクラス争いに想いを馳せずにはいられなかった。

 





主人公の名前は綾小路龍一郎。下の名前の由来は、Cクラスなので龍園に合わせました。2人が共闘した時に「双龍」みたいな感じで暴れさせる予定です。え? 名字? いやあ、綾小路なんてありふれた名字だと思いますよ? ねえ? 
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