クラス争い過激派
橋本正義side
今日は5月1日。振り込まれたポイントを確認すると76,000ポイントだった。クラスメイトにも確認を取ると、皆76,000ポイントだったらしい。姫様の言っていたことは当たりだったようだ。
そんなことを考えていると電話が掛かってきた。着信元を確認すると『綾小路龍一郎』。
他クラスで目星を付けている内の1人。入学前から姫様と知り合いだったらしく、なんとチェスであの姫様を打ち負かした男だ。
相手のプロフィールを振り返りつつ、ワンコールで電話に出る。姫様に付いたものの、何かあった時のために綾小路の繋がりを持っておきたいからな。
仲良くしたい相手の電話はワンコールで出る。処世術の基本だぜ?
「おう綾小路。どうしたんだ?」
『おーす橋本。単刀直入に聞くけどさ、ポイントどれだけ振り込まれてた?』
「ああ、やっぱりそのことか。俺は76,000ポイントだったぜ。そっちはどうだった?」
『こっちは35,000ポイントだった。そっちは76,000ポイントか。へぇ〜。思ったより減らなかった、いや減らせなかったみたいだな』
おいおい随分気になることを言いやがったな。
「思ったより減らせなかった、か。どういう意味だ?」
突いていい薮か判断に迷ったが、本当に隠したことならわざわざ言わないだろ。俺としてはむしろ、聞かれたくてワザと隙を見せたんだと感じた。
『俺はこの1ヶ月間、
「!!」
確かにそれは覚えがある。Cクラスは不良が多くてよく挑発されたり、いちゃもんを付けられたり、そして反抗すると教師に報告されるってのはクラスメイトから何度も聞いた。
話を聞いた時は、イキがりたいだけの不良なんて適当に煽てて話合わせとけばいいだろ、なんて考えて軽く見ていたが、まさか綾小路の手の内だったって言うのか……!
「でもそんな事俺に言っても良いのか?」
『問題ない。全て計算通りだ』
「何が計算通りなんだか……」
『おっ?聞きたい?』
「い、いやいい。遠慮しとくぜ」
俺を怪物同士の争いに巻き込まないでくれ。そう心配したのも束の間、綾小路はとんでもない一言を放ちやがった。
『ついでに言うと、Dクラスの方にも攻撃を仕掛けてな。壊滅的なダメージを与えてやった。奴らは今月0ポイントだ』
「!!???」
はあ?!
ゼロポイント?!!
うっそだろ??!!
「そんなこと出来るのかよ?!」
『確かに疑いたくなるのは分かる。でも事実として成功したんだよな』
「マジかよ……」
ゼロって……。10万ポイントを0まで落とさせたってことだろ?1ヶ月で。そんなこと可能なのか? いやでも、Dクラスの奴に聞けばすぐに嘘か本当か確認できるような事で綾小路が嘘を吐くとは思えない。
『本当かどうか気になるなら、後で誰かDクラスの奴らに聞いてみたらいい。マジで0ポイントだ』
「お、おう。あ、いや別に疑ってわけじゃないぞ。ただちょっと衝撃すぎて飲み込めてないだけだ」
『そうか。まぁ、気持ちは分かるから大丈夫だ』
こいつはやばい。攻撃的とかそんなレベルじゃない。過激派だ。クラス争い過激派だ。綾小路と比べたら姫さんが保守派に見えるくらいだ。
『ところで』
「おう」
『そんな1ヶ月で1クラスを壊滅させた俺から提案がある』
「な、なんだ?」
なんでそこ念押しするんだよ!ちょっと聞くのが怖いだろ!
『スパイとして俺の部下にならないか?』
「!」
願ってもない提案。むしろこちらからするつもりだった提案。まるで俺の思考でも読めているかのような……いやマジで俺の心とか読めてるんじゃないだろうな?
「それは……俺にクラスを裏切れってことか?」
願ってもない提案。それは確かだ。だが、すぐに飛びついたりしない。ここで尻の軽い男だと思われ、使い捨てにされたらたまったもんじゃないからな。
『そんな事気にするタマじゃないだろ。それにお前の性格なんてとっくに分かってる。最後に勝者側に立てるように立ち回る。お前は、誰の下につくか、どのコミュニティに所属するかなんて気にしてないだろ』
そりゃそうか。相手はたった1ヶ月で1クラスを壊滅させた男。俺がどんな人間かなんて分析済みか。
「降参だ。OK。これからアンタのスパイとして働いてやる。よろしく頼むぜボス」
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あの後、櫛田にラインして本当にDクラスがゼロポイントだと確認出来た。やべえってうちのnewボス。
教室に着くと、話題は振り込まれたポイントのことで持ちきりだった。少しだが動揺している葛城派、事前にある程度姫さんに教えられていて、一切動揺していない坂柳派。今回の件で坂柳派がまた一歩リードしたと言っても良いだろう。もう俺には関係ない話だが。
「席につけ。HRを始める」
チャイムが鳴ると同時に担任の真嶋先生が教室に入ってくる。両手には大きな紙を2枚抱えていた。
「先生。今日振り込まれたポイントの件で聞きたいことがあるのですが……」
「そうだな。幾つか聞きたいことがある筈だろう。だが、まずはこの表を見て欲しい」
そう言って真嶋先生は手に持っていた紙の一枚を黒板に貼り付けた。
Aクラス 760 cl
Bクラス 520 cl
Cクラス 350 cl
Dクラス 0 cl
なるほど。これに100倍した数がそれぞれ振り込まれたってわけか。
「この表で大体理解出来たか?この1ヶ月で君たちは実力を測られていた。その結果がこの"クラスポイント(cl)"だ。これに100を掛けたポイント————通称"プライベートポイント(pr)"が今日君たちに振り込まれたわけだ」
「先生、質問よろしいでしょうか?」
「なんだ葛城?」
「僕たちのポイントは4月のうちにで1000 clから760 clに減少したということですよね。ポイントが減った理由は何でしょうか?」
「良い質問だ。主に授業態度、
他クラスとのいざこざ。ただのいざこざじゃないんだよなぁ。
いやいや。ホント当たりくじを引けたぜ。金輪際現れない一等賞だ。
「ポイント減少の詳細な内訳は教えてもらえるのでしょうか?」
「すまないがそれは無理だ。それは人事考課、つまり詳細な査定の内容はこの学校で教えられないことになっている。これは社会に出ても同じだ。君たちが企業に入ったとして詳しい人事の査定内容を教えるか否かは、企業が決めることだ」
「なるほど。失礼しました」
「真嶋先生、私からも聞きたいことが2つあります。」
葛城と真嶋先生のやり取りが終わるとすかさず姫様———いや坂柳が質問をする。
「なんだ坂柳?」
「まず、ポイントの並びがここまで綺麗なのには理由があるのでしょうか?」
「ふむ。良い着眼点だ。よし、坂柳の質問に合わせて本題に入ろうか。まず、君たちのクラス分けは小学校、中学校のようにランダムではない。この学校では優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。最も優秀な生徒はAクラスへ。その次はBクラス。そのまた次がCクラス。最後にDクラスへ。つまり君たちは現状、1番優秀な生徒たちだと認められたことになる」
その言葉にクラスが浮き足立つ。まぁ、こう言われて嬉しくならない奴はいないだろう。
「だか油断するなよ!正直、例年のAクラスと比べてお前たちのポイントは低い。いつBクラスに落ちてもおかしくない」
「Bクラスに落ちる?」
「その通り。クラスポイントは何も毎月もらえる金に連動しているだけじゃない。このポイントの数値がそのままクラスのランクに反映されるというわけだ」
つまりもし俺たちのクラスポイントが760 clじゃなく520 cl未満だったら、俺たちはBクラスに落ちてBクラスがAクラスに上がっていたというわけか。
「更に大切なことを伝えておく。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だ。しかし、レベルの低い人間がどこにでも進学、就職できるほど世の中は甘くない。この学校の恩恵を受けられるのは、3年後Aクラスで卒業した人間だけだ」
「そんな話聞いてないですよ!滅茶苦茶だ!」
戸塚が叫ぶ。そして戸塚に続いて他の生徒たちも非難の声を挙げる。
「確かに今聞かされた君たちには酷い話かもしれない。だが、先程も言ったように世の中は甘くない。それにAクラスで卒業するのは、クラスポイントを上げるだけが選択肢ではない」
「は? どういうことですか?」
相手のポイントも減らすのも戦いの内、という話だろうか? いやそれだと文脈的に少しおかしい……か?
「入学式の日、この学校でポイントで買えないものはない、と説明したのを覚えているか?」
「!」
一瞬だが、坂柳が何か閃いたような表情を浮かべる。
「その中には"権利"など目に見えないモノも含まれる。"他クラスに移籍する権利"を2000万prで購入可能だ」
「いや2000万って……無理でしょ?」
なるほど。これを利用すればこのクラスを裏切ったとしても俺もAクラスで卒業できる訳か。
「確かにこの学校で他クラスへ移籍出来た人間は歴代にも存在しない。だがな、逆に言えばAクラスで卒業するのはそれだけ価値があるということだ。…………少し熱くなりすぎたか。すまん坂柳。2つ目の質問はなんだ?」
「確認したいのですが先生方はこの4月の間、いえもしかしたらこれからも『授業態度でポイントを測る』や『生徒の自主性を伸ばす』などの理由で授業中にどれだけ騒いでも注意しないよう決められていたのではないですか?」
「すまないが、その質問には答えられない」
「分かりました。では先程、『ポイントで買えないモノはない。その中には権利などの目に見えないモノも含まれる』と言ってましたよね。ポイントを使って『授業態度に問題がある生徒を注意する』よう先生に頼む、または
! これは……
「可能だ。質問はそれだけか?」
「はい。ありがとうございます」
「そうか。お前達も覚えておけ。今坂柳が聞いた事しかり、2000万 prでのクラス移動しかり、お前達が思っている以上にポイントが持つ能力は高い。そしてこの学校でどれだけ有用にプライベートポイントを使えるかががAクラスで卒業するための重要な
「では、最後にもう一つ伝えるべきことがある」
そう言って真嶋先生はもう一枚の紙を黒板に貼り付けた。
「これは先日受けてもらった小テストの結果だ」
うげ。テストの結果張り出されるのかよ。頭悪い奴にとっては最悪だろうな。
張り紙から自分や周りの点数を確認する。俺は……75点だな。そこそこって所か。1位はタイで坂柳と葛城の90点か。
「本番の中間テストや期末テストでは1教科でも赤点を取れば退学となる」
「「「はあああ?!」」」
クラス中から驚愕の声が上がる。いやこれは仕方ないな。赤点一つで退学は少し厳しすぎやしないか?
「赤点の基準は何でしょうか?」
「良い質問だ坂柳。赤点の基準は平均点の5割、小数点は四捨五入だ」
ならまだ行ける……か? 最低限は頑張らないとって話か。
「中間テストまで残り3週間。じっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前たちが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している。Aクラスに相応しい結果を残せるよう頑張りなさい。以上だ」
そう言って真嶋先生は教室を後にした。
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「早速だが、中間テストへの対策を立てたい」
葛城が壇上に立ち、音頭を取ろうとする。だが……
「待ってください。中間テストよりもまず決めることがあるのでは?」
「なんだよ坂柳!テストで赤点取ったら退学だぞ!中間テストの対策より大事なことがあるわけないだろ!」
「黙って下さい戸塚くん。赤点なんて取らなければいい話でしょう?その為には勉強すれば良いだけですし、極論全教科50点以上取れば赤点にはなりません。それにクラス全体で行える対策なんて勉強会くらいでしょう?」
完璧な理論武装で戸塚を論破する坂柳。
「そんなことより重要な事があるはず。それは………Aクラスで卒業する為にこのクラスのリーダーを決めること」
「リーダーなんて葛城さんしかいないだろ!」
再度、戸塚が噛み付く。やめれば良いのに。それがお前の大好きな葛城の首を締めてるって分からないもんかね。
「私の方がリーダーに相応しい、と言外に伝えたのが分かりませんでしたか? リーダーたる者攻めるべき。相手に逆転を許さないよう徹底的にBクラス以下を攻めるべき。私ならそれが出来ます。保守的な葛城くんにそんな手を打てますか?」
「思想の違いだな。俺たちはAクラス。わざわざ攻めに出ずともこの座を守りきればAクラスのまま卒業できる」
「ならばどちらがリーダーに相応しいか、これからの実績でクラスの方々に認めてもらうしかありませんね」
保守的な葛城と攻撃的な坂柳がクラス争いが明文化されたことで明確に対立する。
保守の葛城と過激な坂柳。………過激な坂柳?
あれ? 坂柳ってこの1ヶ月で何をした? 貰えるポイントが授業態度で変動することに気付いて自分の派閥に注意喚起しただけだよな。俺の知らない所で他にもやってる可能性もあるが、大きく動いては無いはず。
いや、坂柳の行動だって決して間違ってはいない筈。ただ……過激?
Dクラス0ポイントに誰の策略も関わってないという事実。
オリ主が4月に自クラスや他クラスのポイントを増やすのはよく見ますが、他クラスのポイントを減らしにいくのは初じゃないでしょうか?(少なくとも自分は見たことない)
それと今回の話、坂柳と龍一郎の関係などいくつか分からない所があると思います。そこは次回で説明しようと思います。
もし主人公がAクラスだったら、『どうも坂柳有栖です。保守派です』とかいう苦労人坂柳がメインのギャグ小説風になってました。(書いてほしいって人がいたら完結後に番外編短編で書くかも)
高評価、感想超超クレメンス!
君の力でこの作品を黄色バーからオレンジバーに戻して欲しいっす!そしてあわよくば赤バーまで上げて欲しいっす!