4月に入って3週間目になろうとする頃。
「そんな感じでずっとCクラスの奴らから難癖つけられていてな。正直困っている」
「いやぁ〜うちのバカがホント迷惑かける。マジで申し訳ない」
今日は葛城たちAクラスとカフェでお茶をしている。今は葛城たちから我がCクラスの不良に困らされてる、という愚痴を聞いてる最中だ。
うちの龍園が暴れてるみたいで俺も嬉しい。
「マジでウゼェんだよあいつら!」
「へぇ、戸塚も被害にあったのか」
そう叫んだのは戸塚弥彦。葛城にいつもくっ付いてる印象があるAクラスの男子だ。短気だし龍園にとっても狙い目だったのかもな。
「あっちからぶつかって来たくせに睨んできてよ。だから、ついカッとなって『そっちがぶつかって来た癖に睨んでくんなよ!』って言ったら『睨んでない。元々こんな顔だ。それなのに睨んでくるなんて言いがかり。顔差別とか今時流行らないぞ』とかイチャモン付けてくるしよぉ!」
「いやーホントうちのバカがごめんなー」
「全くだ! ちゃんと叱っとけよ綾小路」
「まぁ落ち着け弥彦。綾小路は何も悪くないだろう。綾小路にぶつけても仕方がない」
葛城が戸塚を宥める。確かに、一見すると俺は何も悪くないからなぁ。本当は黒幕もいいところなんだけど。
「でも……いや、そうっすね。悪かったな綾小路」
「いやいや気にしてないから大丈夫」
この程度、一々気にするほどの事じゃない。それにこいつらが不満をぶつけてくるのは、うちの龍園が上手くいってる証みたいで、むしろ誇らしいまである。
「実は俺もぶつかられたことあるんだよな」
被害者はまだまだ続くらしい。流石龍園。笑いが込み上げてくる。
「町田も被害にあったのか」
「ああ。俺の場合は、あっちがぶつかって来た癖に『ぶつかって来てんじゃねえよ!』ってキレてきたんだよ。イラついて言い返してたら、周りの生徒から『こんな所で騒ぐな』て怒られるし、それを先生にチクられてまた注意されるし、マジ最悪」
「不良のくせに先生にチクるとかだせぇな」
戸塚がCクラスの不良たちをバカにするように吐き捨てる。
「そりゃあ、俺も言い返してうるさくしてしまったかもしれないけどさ。元々の原因はその不良にあるし、何なら怒鳴って来た不良がうるさかっただけで、俺はそんなでも無かったと思うわ。そもそも俺ぶつかられただけの被害者だし。マジでいろいろ納得いかねー」
「うわー理不尽。運が悪かったなぁ」
多分その第三者もサクラだろうから、運がどうこうって話では無いと思うが、一応慰めておく。
「いやー聞けば聞くほどホント調子に乗ってるな。同じクラスの人間として恥ずかしい。あーあー。あいつらこのまま社会に出たらどうなるんだろーなー(チラッ)」
「そんなもん決まってるだろ! どうせ社会に出たら何の役にも立たねぇカスどもだ。 ヤクザとか土木とか社会の底辺になるに決まってらぁ!」
はいトラップ魔法発動。
職業差別をするとはなんてモラルの無い人間なんだ戸塚ぁ!
後で先生に報告しておいてやろう。
内容は適当に『戸塚くんが社会で立派に活躍してる人たちをバカにしてました。土木は底辺、社会の役に立たない、って職業差別するんです。彼はとても酷い人ですよ』とかで良いか。
「おい弥彦。そうやって職業で差別するのはやめろ。どれもこれも誰かがやってくれないと社会が成り立たない立派な職業だ」
「いやでも不良どもが社会の底辺なのは事実でしょう?」
追加で『その後、友人の葛城くんに諌められてたんですけど一切反省の色を見せませんでした彼の差別意識はもう変わらないレベルで染み付いてます』とも言っておこう。
「俺はあくまで職業差別をやめろと言っている。Cクラスの人間は関係ない」
「…………うす。気を付けます」
あ、反省の色見せちゃってる。まぁどうでもいいか。
かくして日常は進んでいく。
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別の日。
「どう? 美味しい?」
「うんっ! すっごく美味しいよ!綾小路くん」
「よく見つけましたね、綾小路くん」
今日はDクラスの櫛田とみーちゃんと森さんの3人とカフェに来ている。女子3 男1。実質デートだな。
………冗談だ。
俺が先日、フラペチーノが美味しいこのカフェを見つけてそれを3人と一緒に来ることになっただけだ。
この3人の内、注目すべき人物は1人。それが櫛田だ。
櫛田はDクラスの女子で、可愛くてスタイルも良く、その上すごい優しくてコミュニケーション能力もバカ高い。まさに完璧美少女だ。
ただ、この優しさには裏があると思ってる。あれは櫛田と初めて会った日のことだった。
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『櫛田桔梗と言います! 学校中の人と仲良くなりたいと思ってます。 Cクラスの皆さん、良かったら私と連絡先を交換して下さいっ!』
ある日、櫛田は突然俺たちの教室に突撃してきた。しかし突然の部外者にも関わらずうちのクラスメイトたちは邪険にせず、むしろ櫛田の存在を歓迎していた。
男子たちが我先に、と連絡先の交換に乗り出る。勿論、俺も一緒に我先に、と飛び込んだ。当たり前だよな?
俺が櫛田に裏があると確信したのはこの後。
『じ、自分は石崎大地っす!中学では番長やってたから喧嘩は自信あるぜ!』
石崎のバカな自己紹介を見て周囲の生徒はこれでライバルが減った、と内心喜んでいた。勿論俺もその1人だった。当然だ。でも櫛田の対応は石崎をテキトーにあしらうでもなく、ましてや蔑ろにするものでもなかった。
『そうなんだっ! それなら何かあったら石崎くんに守ってもらおうかな』
『えっ!?も、勿論!櫛田ちゃんに手を出そうとする野郎がいたら俺がギッタギタのめちゃくちゃにしてやるよっ!』
『あはは。やんちゃも程々にね』
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もうこの会話だけで櫛田に裏があるのは明白だろ?
そう。
石崎が
いや、ちゃっと優しくされるくらいならまだギリギリ分からなくもない。でも、『何かあったら石崎くんに守ってもらおうかな』は絶対おかしい。だって"こんなの俺のこと好きじゃん"って勘違いしても仕方ないレベルの愛を初見で石崎に向けられるわけがないだろう?
他の奴らは『石崎にも優しく出来るとか櫛田ちゃん天使かよ……!!』と感動して惚れていた(もしくは一目惚れした状態から性格で更に惚れ直した)が、俺は違う。俺だけは櫛田の本性を分かっている。
「あ、そういえば」
「どうかした?」
櫛田から声を掛けられ一旦思考をストップする。
「綾小路くんに頼みたいことがあるんだよね〜」
「ん?何?」
「うちのDクラスに同じ苗字の『綾小路』くんって人がいるんだけどさ」
「えっ? そんな人いたっけ?」
「「…………………………」」
森が呟いた一言に場がシーンと静まり帰る。
「う、うんいるよ。その、ちょっと静かで目立たないだけで」
「俺も平田から聞いたことある。だから多分、森が知らないだけだと思うぞ」
『嘘だー心当たりないんだけどー?』 とボヤく森を尻目に櫛田が会話を続ける。
「それでその『綾小路』くんなんだけどね、今のでちょっと分かったかもしれないけど、クラスメイトにも認知されてないくらい目立たなくて」
めちゃくちゃ悲しい青春送ってるな。その『綾小路』ってやつは。
「正直、クラスに友達が1人も居ないくらい寂しい生活送ってるんだよね。だから、綾小路くんが友達になってあげてくれないかな? 同じ苗字繋がり、ってことで」
ふむ。この話、了承してもいいが少し懸念点もある。なので、一言確認しておく。
「櫛田は友達じゃないのか?」
櫛田が仲良くなれない人間と俺が上手くやれるとは思えない。それに櫛田が仲良くなれない人間は、そもそも誰とも仲良くする気がないような人間だろう。なので、そこだけは最初に確認しておく。
「いや私は友達だとは思ってるよ? ただ、向こうはどう思ってるか分からないし、それに私が居たとしてもやっぱり男友達は居ないわけだし」
「なるほど。そういうことなら分かった。喜んで友達にならせてもらう」
「ホント?ありがとうっ!」
懸念点が消えたため、俺は即答で了承した。
相手のポイントを減らすことを考えた時、交友関係が狭い人間と仲良くなるメリットは少ない。ただ、ある一点を見ればその考えは覆る。
それは洗脳。いや、洗脳というと少し大袈裟だが、要はボッチが友人を"欲する"心の隙間を突くことが出来るってことだ。
そんな打算100%の気持ちで俺は櫛田の頼みを了承した。
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綾小路清隆side
やぁ世界の皆おはよう。今日はとても素晴らしい日だ。何故って?
なんと今日はオレに友達が出来る(かもしれない)日だ。Cクラスの人らしく、なんでも同じ苗字らしい。これも縁ってやつだろうな。
池や山内、須藤と話したりもするが……………オレだけちょっと疎外感があるからな。オレだけ遊びにも昼食にも誘ってもらえないし。
でもオレは今日、本当の友達を作ってこの灰色の青春を終わらせる! ここからがオレの真の青春なんだ!
オレの友人事情を見兼ねて新しい友達を繋いでくれた櫛田にも感謝だな。やはり櫛田は天使だ。
オレなんかに優しくしていいのか櫛田。オレも池達みたいに櫛田の事を好きになってしまうぞ……!! なんてな。オレみたいな男が告白しても無惨に振られるのがオチだろう。
楽しいことがあると1日もあっという間だ。気がつくと放課後を迎えていた。
「じゃあ、行こっか綾小路くん。場所はパレットだから」
パレットって、学校内でも1、2を争う人気のカフェだった気がする。そんな場所にオレみたいな人間が行って浮かないだろうか。いや、真の友達を送るためならたとえ火の中、水の中でも行ってやるっ! 待ってろ、未来の親友!
そんなルンルン気分でカフェに入ったオレの気持ちは即座に打ち砕かれることになる。
「あっ! あの人だよ。あれが『綾小路龍一郎』くん」
カフェに付き、櫛田がある方向を指差した。『龍一郎』………懐かしい名前だが、まさかあいつとは関係ないだろう。
櫛田が指差した方向を見ると、1人の少年が席を取っていた。遠目からだが、何となくイケメンのオーラを感じる。
とりあえず注文して、その少年の向かいの席に座った。
「やっほー綾小路くん」
少年は櫛田の声でこちらの存在に気づき、スマホから顔を上げる。
そこでオレは初めて目の前の少年の顔を確認した。
「龍一郎……!?」
「清隆………!?」
「「なんでここに?!」」
龍一郎が櫛田の演技に気づく流れは、実は自分の体験談です。龍一郎と違う点は、自分は"俺がこんなに優しくされるのはおかしい!!"ってなって気づいた所くらいです(泣)
そしてちょっとそこの読者さん。ちょっとね、ちょっとで良いからこの画面を上にスクロールして『メニュー』を開いてみないかい? そこの『評価付与』って場所を押して"8"とか"9"の評価を是非、是非送ってみないかい?(クソ厚かましい)
いやぁ、ホント皆の評価や感想(どっちも凄い嬉しいよ!!)などのこの作品へのリアクションが私の血となり肉となる(モチベーションになるとも言う)ので、なにかこの作品に対するリアクションしてくれると嬉しいです!