ようこそ伝説の特別試験を起こす教室へ   作:ハァート

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清隆ぁ!!そこのオレオ取ってオレオ!


清隆

綾小路清隆 side

 

オレにとって龍一郎とはどんな人間か。

 

一言で言うなら、恨みは無いがぶつけたい恨み言はある。そんな感じだろうか。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ホワイトルーム。オレたちが5歳くらいの頃。

 

「龍一郎。筆記試験がトップの成績に合わせて難易度が引き上げられていることに気付いているだろ? 他の人間を蹴落とそうとするのはやめろ」

「へぇ。お前に他人を想う気持ちなんてあったんだな、清隆」

「手を抜け、とまでは言わない。でもお前はワザと授業の進度を早めさせて、他人を積極的に振り落とそうしているだろ」

 

1を知り、100を理解する。

1を知り、Aに転用する。

1を知り、全く別のαを思い付く。

そもそも1を教えてないのに、1を知る。

 

そんな"天才"である龍一郎は、教官を利用、誘導して授業の進度を明らかにおかしなモノにさせていた。

 

「それと言っておくが、オレとあの男を同じだと考えるな。オレはあの男と違って、自分の邪魔にしかならなくても周りを無為に払いのけたりしない」

 

"あの男"とはオレの父親の事だ。オレとあの男の本質は同じだが、今言ったように異なる所もある。

 

「フンどうせ清隆を落として安心したいだけだろ」

「は? 的外れなこと言うな志郎」

 

横から現れた志郎が、皮肉混じりの言葉を龍一郎に送る。

 

「だってお前、前の格闘試験70点だっただろ? それに対し、清隆は100点。筆記試験はお前が100点だったけど、清隆は80点だった。合計したら170対180で清隆の勝ちだ」

「ただの数値にこだわって何の意味がある? そもそも清隆は2回目以降じゃ無いと何も上手くできない。習った事しかは出来ないただの機械だ」

「逆に言えば、習ったことなら何でも出来るってことだな。お前なんかよりよっぽど学習能力が高いんじゃないか?」

「かの天才ノイマンはコンピュータを作って『俺の次に賢いやつが出来た』と言った。それと同じだ。卓越した天才はコンピュータやAIの能力なんて軽く上回る。その証拠に考えてもみろ。2回目だろうがなんだろうがそいつが俺に一回でも筆記試験で勝てたことがあったか?」

 

確かに龍一郎の言う通り、オレは一回も筆記試験で龍一郎に勝てた事はおろか、同率1位の100点すら取れた事はない。筆記試験の問題傾向やロジックを掴んでも、龍一郎が教官を利用して、その掴んだロジックを軽々と超える問題やオレの理解の及ばない問題が1部出題させるのだ。

 

そして、そんなテストでも常に100点を取るくらい龍一郎の学習速度、理解力、思考力、推察力は異常だった。

 

「もうやめようよ2人とも。どうせ何言っても聞いてくれないんだから」

「雪」

 

志郎と龍一郎のは口論に雪が止めに入ってきた。

 

雪は、龍一郎のせいでバカみたいに脱落していくホワイトルーム生の中、未だに生き残っている内の1人だ。でもそれもギリギリ。いつ落とされてもおかしくない状況にある。

 

「そんな奴に構うよりさ、勉強教えてよ清隆」

「分かった」

「おい止めるなよ雪! もうちょっとであいつに口喧嘩で勝てそうだったのに!」

「どうせ無理だからやめてた方がいいって」

「いーや絶対勝ってた!」

「無理だって。今までそう言って何度もコテンパンにされてきたじゃん」

 

その後、結局龍一郎がオレの話を聞き入れてくれることは無く、次の筆記試験で雪や他のWR生も脱落していった。残ったのは、龍一郎とオレ、志郎の3人だけだった。

 

そして、志郎も途中で外の世界へ出る為に自ら脱落を選び、他人を振り落とし続けていた龍一郎も、何故か10歳くらいの時にこの施設を去ったのだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あいつのせいで筆記試験は大変だった。というか、チェスや将棋などの頭使う系全般はあいつのせいで難易度が上がっていた。あいつが去った後も何かと『龍一郎ならこんなものすぐ理解できた』と居ない存在と比べられてきた。

 

それを恨むほどオレは子供じゃないが、恨み言の1つや2つ言いたくなるってものだ。

 

それがオレにとっての龍一郎という存在だった。

そんな奴が今オレの目の前にいる。

 

もう一度言おうか。

 

そん(総合力ならともかく頭脳面ならオレより確実に上)な奴が今(ホワイトルームから脱走してこの学校に逃げ込んだ)オレの前にいる。

 

間違いなくオレを連れ戻しに来たんだろう。

 

この学校を見れば、ホワイトルームは倫理的な問題点を除けば教育的に最高級の機関であったと分かる。そんな最高峰の機関で最高傑作だったオレに勝てるかもしれない、"唯一"のカード。あの男の割には上手い配役だな。

 

だが逆に言えば、ワザワザ龍一郎を入学させているという事は、松尾の言っていた"この学校ならホワイトルームから逃げられる"という話は事実だったのだろう。オレを外から強制的に退学させるのは無理だったと見える。

 

「え、えーと2人とも知り合い……だったの?」

 

………ん? 

 

思考を現実に引き上げる。

そういえば、櫛田もいるんだったな。

久しぶりに龍一郎に会った衝撃で色々吹き飛んでいた。

 

「ああ。実は、な。確か"はとこ"だったっけ? 久しぶりすぎて正直存在すら忘れかけてたわ」

 

あはは、と笑いながら櫛田の疑問に素早く龍一郎が答える。

そして、"すまんすまん忘れてた"と手を合わせて謝罪のジェスチャーをこちらに向ける龍一郎。

………なんかコミュ力高くないか? オレはこんなに苦労しているのに?

 

「そう、なんだ?」

「そうそう。本当忘れてた。会うのいつ振りだっけ?5年振りくらい?」

「ああ。それくらいだと思う」

 

櫛田の目線や口調からして龍一郎は以前、『綾小路』の同級生の親戚がいるか、みたいなことを聞かれていたのだろう。オレも聞かれたことがある。そして『いない』と答えたのに、現在知り合いだったようなリアクションをされて櫛田が疑問に思った、といったところか。

 

一応、誤魔化そうとしている龍一郎に話を合わせておく。オレとしてもホワイトルームの事を一般人に知られるのは良くないと思ってるからな。

 

()()()龍一郎、か。ホワイトルームにいた時は名前で呼んでいたし、あいつの苗字は知らなかった。だが、とても偶然とは考えられない。

 

1番可能性が高いのは、龍一郎がホワイトルーム脱落後にあの男の養子になった、というもの。つまり、ホワイトルームを脱落する事になったものの、あの男がその能力を惜しんで自分の内側に抱き込んだということだ。

 

「あれからどうしてたんだ? 元気だった?」

「………ああ。特に病気や怪我は患っていない」

「そうか」

「「…………………」」

 

会話が止まる。オレのコミュ力のせいだな。もっと気の効いた返しを知っておくべきだった。  

 

いや、待て。相手は龍一郎。むしろ会話が止まってこちらを探りづらくしておいた方がいいんじゃないか? (決して言い訳ではない)

 

「あっ! ねぇねぇ2人とも! このパフェすごい美味しいよ!食べてみて!」

 

止まった会話を繋げようと頑張ってくれる櫛田。『はいっ!』と言いながらパフェを差し向けてくれる。流石天使。

 

…………そういえば櫛田がオレと龍一郎を引き合わせたんだったな。これは裏で2人が繋がってる? いや、龍一郎が一方的に利用しただけ?

 

いや、オレと会った時の龍一郎の第一声は『なんでここに?』だったよな。そして、あの時の龍一郎の様子に嘘は感じられなかった。もしかして、本当に櫛田がオレの友達を作ろうと動いてくれただけで、龍一郎がオレと会うのは予想外だった?

 

いや、同じ『綾小路』苗字と会うって時点で少なくともオレと会うことは予想できていた筈。となるとあの反応は嘘。

そしてその嘘のリアクションを一瞬オレは信じ込まされた、という事になる…………本当にそうか?

 

まずい。思った以上に難敵。どう攻略すべきだ?

そもそも龍一郎が今日オレに接触してきた目的は?

オレを探ることが目的か?

いやその場合、オレを探る意味がないんじゃないか?

オレの情報が欲しいだけならあの男からいくらでもホワイトルームのデータが手に入るだろう。

 

じゃあ結局、龍一郎が今日オレに接触してきた目的は何なんだ?

…………ダメだ。何も分からない。堂々巡りになってしまう。

 

これは龍一郎の事を調べないとな。

たとえお前相手でもオレはこの手に入れた自由を手放すつもりはないぞ。

 

 

 

綾小路龍一郎 side

 

今日は思わぬ奴と遭遇した。綾小路清隆。親父(クソカス)の実子だ。俺がホワイトルームという名の監獄を脱獄して以来だから5年振りだろうか?

 

最初に出た疑問は『何故ここにいるのか?』という事。それはあいつも同じらしかったのは少し笑った。

 

『何故ここにいるのか?』つまり、いつホワイトルームを脱落したのか、ということ。俺は脱落してからこの学校に入学するまでずっと親父(クソカス)の家で暮らしてきた。だから、清隆が脱落したら、必然的に家に来るはずなので直ぐに分かるはずなのだ。

 

でも、清隆はあの家に帰ってきた事はない。しかし、いつの間にかホワイトルームを脱落して表社会のこの学校に入学している。

 

どういうことだ?

 

考えられる線は2つ。

 

1つ目は、清隆は大分前に脱落していたが、精神なりに問題が生じ、療養のために親父(クソカス)と関係ない場所で暮らしていた、という線。そして精神が回復できた為この学校に入学した、ということ。

 

2つ目は、そもそも清隆は脱落していない、という線。そして社会性を身につける、などの理由でこの学校に入学したということだ。

これはあり得そうだ。ホワイトルームには、少なくとも俺が脱落するまでのカリキュラムにはコミュニケーションを取るカリキュラムが無かった。そして実際、今目の前の清隆のコミュ力はかなり酷い。

 

()()()()()()()()、ホワイトルーム関係は脱落してから一切関わってこなかったから何も分からない。どちらの線も証拠や強い根拠も無いし、論じるだけ無駄だろう。

 

それにそんな背景はどうでもいい。大事なのは今この学校にあいつがいるという事実。クラス争いなんてモノがあるこの特殊な学校で違うクラス()

 

ただ、 俺はまだ始まってすらいないクラス争いの勝利方法を既に思いついている。"例の作戦X"。第1フェースは着々と進行している。清隆、お前は抗えるか?

 

しかしそう言えば、平田や櫛田からDクラスの状況を聞いた時やクラス争いのシステムと学校の意図を考えた時に『Dクラスは(何もしなくてもかなりポイントが減りそうだから)わざわざ手を出さなくていい』と判断を下したことがあったな。清隆がいるなら判断ミスになってしまった可能性もある。吉と出るか凶と出るか。面白くなりそうだ。

 

もうすぐ5月1日。そこで俺たちの現状が分かる。




はい、やっと4月編が終わりました。
ところで後書きまで読み込んでいる正当な読者ならお気付きかもしれません。前回で触れていた「次話で綾小路とある少女の話をやって5月に入ります」に。
ある少女出てこなかった……。これ実は坂柳の事なんですけど、近々別の機会にやります。4月の内に龍一郎と坂柳は会ってはいるのですが、そこら辺は回想としてお出しします。

後、0巻持ってないので余り詳しく知らないのですが、志郎の挿絵から勝手に志郎クソガキ概念を採用しました。

高評価、感想待ってます!!!!
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