…あ、主人公がタキオンっぽいのは変わってないです。性癖なので。
真夜中0時、ここではないどこかで
ザーザーと雨が降る。
雨は東京全体まで広がっており、血濡れた地面を流していく。
本来は人で賑わっているであろうスクランブル交差点の血から、逆に人なんて誰もいない路地裏まで。
しかし人から流れ出る血を止めてくれるわけではない。
…ある女が、自らから流れ出る血と、地面に溜まった雨に足を取られ、転ぶ。
血が止まらない。
最悪だ。まさか普段通り狩りをしていただけなのに、特等に見つかるとは。
まだ、私ではあの化け物どもには敵わない。やはり力をつけなくては。
だが…もう、無理かもな。
「…ぐっ」
体に大穴が空いている。いくら喰種であろうと、流石にこの怪我を何も無しに治すことはできない。
しかし彼女は孤高の存在だった。頼るあてもなく、ただ死を待つ他なかった。
そんな彼女の前に一人の人物が立つ。
「…はは、どうやら、天すらも私のことを見放したらしい、な。…隻眼の梟。」
「…」
彼女の前に降り立ったのは、喰種の中でも恐れられ、最強と名高い喰種、隻眼の梟であった。
彼女に怪我を負わせた特等。彼らですら複数人相手でないと押し負けてしまう化け物が、目の前に立っているのだ。
「もう、私は、逃げも隠れもできない、よ。食うなら食いたまえ。…贅沢を、言うなら、せめて死んでから…食われたいものだが、ね。」
「…」
「黙ってては…何もわからない、だろう。せめて、何か話し、たまえよ。」
「…では。」
ずっと黙っていた梟が、まともに体を起こせすらしない彼女の前でしゃがむ。
そして言った。
「A級喰種、ドクター。私は君を勧誘しに来た。」
「は、あ…? …珍しいことも、あるものだ。君、ならば…仲間なぞ、いらない、だろう…?」
「…今、決めろ。ここで死ぬか…私とともに行くか。」
「…はは、手厳しい、ね。」
彼女はぼやけて見えないフクロウの顔を見上げ、そして言った。
「まだ、生きていたい、ね。生きれる、ならば。」
「…そうか。」
梟が何故か彼女の体を持ち上げ、どこかに向かっていく。
「どこに、連れていく気、だい?」
「…君は、妻と似ている。」
「…はは、面白い…冗談、だ。」
そこで、彼女は意識を失った。
♢
「…それで? 梟…いや、店長。これはどう言うことなのかな。」
「似合っている、と思うんだがね?」
「いや、そうではなくてだね。」
1週間後。彼女は今、新品の店の前に梟とともに立っていた。
「君が私を生かしていることでさえおかしいと言うのに、何故私は君を店長と呼び、こんな制服を着ているんだ、と聞いているんだ。」
「…実は、妻の夢でね。いつかカフェをやりたいと言っていたんだ。」
そう言った梟は、どこか寂しそうに笑う。
その寂しそうな笑顔を見た彼女は、少し付き合ってやってもいいな、と思った。
「…ふむ。君はいつも私を君の妻と重ねてみるな。」
「…すまないね。君はあまりに似ている。」
「ま、付き合ってやらんこともない。私も狩りには疲れてしまったからね。コーヒーでも飲んで、ゆっくり過ごす時間も、いいだろう。」
そう言った彼女は、梟の前に振り返りながら立ち、そして言った。
「せいぜいよろしく頼むよ? 店長。」
「…ああ、よろしく。」
「では私は一足先に新築の匂いを嗅ぐとしよう。」
そう言って彼女は、新築のカフェの中へと入っていった。
プロローグってやつですね。