真夜中0時、あんていくにて   作:黒プー

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今年の書き初めはこれになります。今年もよろしくお願いします。
少し駆け足。タイトル回収しなければですからね。


20時、あんていくにて

「…すまない、ね。少し失敗した。」

「…ドクター。無事でよかった。」

「無事に…見えるかい?」

 

頭の傷がこれ以上傷まないよう気をつけながら、近くの席に座る。

意識が飛びそうだ。それが原因で少しイラついているからか、思わず店長の言葉に皮肉で返してしまう。

しかし店長はそれを機にする様子もなく、金木君に包帯を持ってくるよう頼んでいた。

…流石に破いた服で作った包帯をずっとつけるのはまずいだろうからね…。

 

「…四方君。彼女を頼めるかい。」

「ああ。…すまない。」

 

いつの間に話が進んでいたのか、私の体を四方君が抱え上げる。体が小さいからか、すっぽり彼の腕におさまった。

彼はそのまま上の私の部屋へと向かっていく。

…少し、心地いい。

 

「…眠れるなら寝ておけ。」

 

それを察したのか、四方君がそういってくる。

 

「…では、お言葉に甘えると、しようか…。」

 

四方君の言葉に従い。彼に体を預けつつ、睡魔の流れに身を任せた。

 

「…おやすみ。よく頑張った。」

 

最後に何か声が聞こえた気がするが…気のせいだろう。

 

 

真夜中。突然目が覚めてしまう。

 

「…んん。」

 

頭の傷がまだ少し痛む。

もう一眠りしてもいいのだが、今は妙な胸騒ぎがする。…それに。

 

「匂うね…。悪趣味な武器と血の香りが。」

 

開いた窓から強い香りが漂ってくる。

やはり急いで向かうべきだ。

いつもの白衣を羽織り、そのまま店の外へと出る。

外は雨が降っているが…関係ない。急がなくては。

 

 

臭いによってたどり着いたのは、この街の電車路線の一部になっているトンネルであった。

どうやらこの中から匂うようだ。

耳を澄ますと、中からはすでに戦闘音がしていた。

 

「チッ、始まっているか。」

 

持ってきた仮面を付け、中へと走る。

 

少し線路に沿って走っていると、すぐにトーカ君の羽赫と…やはりというべきか、先日の捜査官のクインケが見えた。

どうやら機嫌よく振るっているらしい、崩落など考えず、全力で振るっていた。

 

「…あれは、止めた方がいいだろうねぇ。」

 

どうもあれは執念深い。他の捜査官とは一線を画すほどだ。殺さなければ間違いなく面倒ごとに巻き込まれる。

幸いこちらには気づいていない。一気に懐へ…

 

「おやぁ? 隠れていた獲物もいるようですなぁ!?」

「っっ!?」

 

急に赫子がこちらに向かってくる。

急いで避けたがやはりあれは速い。少し背中を切られた。

 

「ドクターさん!? どうしてここに!」

「妙な胸騒ぎと共に起きてみれば強い血の匂いが漂っているんだ、いやでも止めにくるものさ。しかし君たちこそなぜここに。特にヒナミ君。」

 

そう言いつつヒナミ君に目を向けると…何やら涙の跡が見えた。

これは…釣り上げられたといったところか。

 

「ふむ。クインケの正体を知ってしまった、といったところか。」

 

そういってやると、ヒナミ君の体が大きく揺れ…再び泣き始めてしまった。

…まずい。またやってしまった。

 

「…ドクター。」

「…すまなかった。…ともかくあれを殺さなければね。」

 

トーカ君の鋭い視線を避けつつ、再びあの捜査官に目を向ける。

どうやら見失っているようだ、クインケを振り回すのをやめていた。

 

「…あれは力押しで勝てるようなやつじゃない。やはり一撃で殺すしかないだろうねぇ。」

「…なら。私が気を引きます。」

「ほう?」

 

私は少し驚く。確かに一方が注意を引いてもう一方が裏から奇襲するというのが理想だとは思っていたが、まさか危険な方を志願するとは。

 

「ふむ。君はそれでいいのかね。死ぬかもしれない。」

 

トーカ君に尋ねる。一応聞いておかねばならないだろう。

 

「あの野郎は…絶対に生かして返しちゃいけない。絶対に。」

 

トーカ君はそう言いつつ、自らの羽赫を出す。

…どうやら杞憂だったようだ。これなら任せられるか。

 

「…ふむ。わかった、では任せよう。…いざとなったら私を見捨ててくれても構わないよ?」

「そんな選択肢、あるわけないです。」

「そうか。…よし。行こう。」

 

 

「だあああああっ!」

「ふはははは!」

 

少し離れた位置から、捜査官とトーカ君の戦いを見る。

…ふむ。

 

「やはり射程が長い分潜り込めれば隙は大きいか。そして先端も、強引に壊してはいるが支柱と干渉してる。隙は先日戦った時より大きいか。」

 

武器が今の環境では扱いにくいのは確かだ。ならばいけるか。

赫子の中の薬品を作り替え、先日使ったものと同じにし、それを打ち込む。

 

「…ふう。」

 

あのクインケの先端が支柱に絡みつくタイミングを見計らい…そして。

 

「…ふっ!」

 

一気に捜査官に近づき、赫子で毒を打ち込む。

 

「ぐ…しかし、ただの切り傷のようですな?」

「っ…」

 

ん? 思わず捜査官の反応に驚く。

彼は私のことを知っているように話していたが…。

 

「…何か勘違いしているらしいね。私の毒のレパートリーは麻痺だけじゃない。」

「…ごふ…!?」

「致死性のものもある。…今度から資料はしっかり読みたまえ。」

 

今回使ったものは私の体で作れる薬品の中で最も致死性が高い。

いくら身体能力が高くとも、すぐに毒が回って死ぬことだろう。

私の目論見通り、奴は口から血を吐いており、クインケを振り回す暇はもうなかった。

 

「動きさえ止めて仕舞えば簡単だ。……死ね。」

 

私の赫子を奴の頭に打ち込む。これで即死だ。

赫子を奴の頭から抜き取った時には、すでに物言わぬしたいと化していた。

 

「…さて。君たち。何があったかはゆっくり聞かせてもらおうかねぇ?」

 

そういって後ろを振り返るが。

トーカ君は死体を見下ろし、まるで仇を見るかのように。

ヒナミ君に至っては目にハイライトがなく、今にも死にそうな目をしていた。

…さっさと帰るべきだな。

 

「…さっさと帰ろうか。他の鳩が寄ってくる前に。」

「…」

「…はい。」

 

ヒナミ君を抱っこしてやりつつ、走ってトンネルから抜ける。

走りながらも、ちらりと抱き抱えている少女を見るが、トンネルから何も変わっていなかった。

 

…現実というのは、なかなか残酷なものだな。

少し声をかけてやるべきか、と口をひらこうとするが、その前にヒナミ君が私に問いかけてきた。

 

「…私、生きてて…いいのかな。」

 

…ふむ。

一度走るのをやめ、ヒナミ君をおろして目線を合わせる。

 

「…少なくとも、君が死んで喜ぶ人間はこの中にはいない。君の母親も、ましてや父親もね。」

「…そっか。」

 

そういってやると、彼女の目に少しハイライトが戻る。…よかった。

改めて彼女を抱き上げ、そしてまた走る。

 

帰るとしよう、あんていくに。

 




めちゃくちゃ難産だった。ちなみにお手製包帯はリョーコさん作です。
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