「で、あのシーンがめっちゃよくて!...って、聞いてます?」
「…ん?ああ。聞いてる。聞いているとも。」
「嘘つけ絶対聞いてないじゃないですかぁ!」
「やかましいなぁ…本に集中できないじゃないか。」
「ほらぁ!」
全く、カウンター役を代わってもらうべきだったか。
なんで今日に限ってこの金木君の友人がやってくるんだろうか。流石にうるさくて本に集中できないねぇ。
相手するのも面倒なので、視界に映らないように本を顔の位置に持って行く。
「だからさっき名前教えたでしょ!? 永近英良ですって! その友人っていうのやめてくださいよ!?」
「…ああ、すまない。声にまた出ていた。友人Aくん。」
「それわざとですよね!? てかせめてこっち見てよ!?」
ふむ。叩けばよく響くな。からかって遊ぶのは楽しいねぇ。
「ちょっとー!」
「その人興味ない話は徹底的に聞かないタイプだから気にしない方がいいよー。」
「ええ!? マジでトーカちゃん!? じゃあ今の話興味ないってこと!?」
まあ少なくとも私には響かない内容だったかねぇ。
そんなことを考えつつ次のページを開く。
「ウッソでしょ!? 何なら興味あるんですか!?」
「ああ、また声に出てたか…」
「少しは隠す努力してくださいよ。」
「すまないねぇ。どうも無意識のうちに声が漏れてしまうんだ。」
店長にもしょっちゅう怒られてしまうしねぇ。流石に隠す努力をしなければ。
そんなふうに考えていると、上から降りてくる音が聞こえる。
…ふむ。
「永近くん。お待ちかねの人が降りてきたらしい。」
私の声と同時に、スタッフルームのドアが開き、店長と金木君が降りてきた。
「おっ! よお金木!」
「ヒデ! なんでここに?」
「ばーか、トーカちゃんとドクターさんにお礼言いにきただけだっての。」
「お礼…?」
「事故に巻き込まれた俺たちを助けてくれたんだろ?」
「ええ?」
金木君がつぶやいた瞬間、彼の脛が蹴り上げられる音が聞こえる。
痛そうだねぇ。やはり彼女の前で失言をするのはやめた方がいいね。
「どうした?」
「ごめん、まだ怪我が治ってないみたいで。」
「おいおい大丈夫か?」
「だ、大丈夫…」
そんな金木君を見たヒデ君は、どこか心配そうな表情を見せる。が、それも一瞬で隠すと、笑顔に戻りながら話を続ける。
「…そっか。…西尾先輩はまだ入院してるみたいだからあれだけどさ、俺たちがかすり傷で済んだのは二人のおかげだよ。ありがとう!」
そう言いつつ、彼はリュックを背負い、「またな!」と言って店を出て行った。
「うん、また!」
「ありがとうございました。」
「また来たまえよ〜。」
そんなふうにヒデ君を見送る。
彼は暖かいねぇ。金木君はいい友達を持ったようだ。
「…ま、彼のためにもバレないようにしなければね。金木君。そうしなければいらない心配をさせてしまう。」
「…わかってます。」
「…すまないね、雰囲気を台無しにしてしまった。これだから店長に口下手だと言われてしまうんだ。」
「あはは…」
軽く冗談を言って金木君をほぐしておく。
口下手なのは事実だがね。
そんなふうに話していると、また店のドアが開く。
「いらっしゃいませー…おや。」
「…ドクターさん…トーカちゃん…」
「リョーコさん!?」
お店の常連のリョーコ君が、娘のヒナミ君を連れてやってくる。
何やら急いでいたらしく、ずいぶんびしょ濡れだった。
「金木君。タオル持ってきてくれ。」
「は、はい!」
「やれやれ。何があったかは店長君に言ってくれたまえ、面倒ごとは責任者にってやつだ。」
リョーコ君にそう言っておき、二人ようにコーヒーを淹れてやりながら、ヒナミ君に声をかける
「ヒナミ君もずいぶん久しぶりだねぇ。調子はどうだい?」
しかし彼女はそのまま母親に顔を埋めてしまう。
「…ふむ。襲われたと言ったところかねぇ。…奥に行きたまえ、後からコーヒーを持っていこう。」
「ありがとうございます…」
二人を奥に案内してやりつつ、濡れた店の床を拭く。
「二人は喰種…なんですか?」
「そうだねぇ。」
「今日から面倒見ることになった笛口さん。」
トーカ君が二人を拭いたタオルを投げ渡しつつそう言った。
ふむ。そういえば今朝店長が言っていたか。
「面倒を見る…?」
金木君は聞いていなかったようだ。
彼のことだから聞いていなかったということはないだろうが…。
「事情があるんだよ。」
「事情...って?」
「あー、金木君。それ以上はやめた方が…」
面倒くさそうなことになりそうなので止めに入る…が。
「にゃーにゃーにゃーにゃーうっせえんだよ! なんもできねえくせに!」
うーんどうやら間に合わなかったようだね。
まあ手が出なければいいか。
「そ、そんなこと…」
「…そうだ。あんた、店長からちゃんと聞いてる? 箱持ちのこと。」
「箱持ち…?」
「大きなアタッシュケース持った連中のこと。あんた、今朝何聞いてたの?」
「う…」
ふむ。迷える子羊金木君のために説明をしてあげようかね。
「箱持ちというのはね、クインケという喰種の赫子を使った強力な武器を装備しているCCG捜査官だ。だいたい変人か化け物しかいないからね、君のような力無い喰種は気をつけたまえよ?」
「は、はい。」
最近は本当に巡回が多くなってきたからね。私たちも気をつけなければ。
しかし笛口君たちは捜査官に襲われてしまったのか? そうであれば…
「少し、面倒なことになりそうだねぇ。」
「…? 何か言いました?」
「ああいや、なんでもない。それよりも後片付けをしなければね。」
アマプラとネットフリックス両方入会しとくのが一番ですねぇ。
ちょっと短めで申し訳ナスです。