真夜中0時、あんていくにて   作:黒プー

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だんだん日が傾いてきましたね。


16時、あんていくにて

…間違いなく、何か企んでいるだろうねぇ。そろそろやらかしそうだ。

 

金木君とアフタヌーンティーの時間を楽しんでいる月山君を見ながら考える。

彼にしては堪えている方だが、流石に限界が来ていそうだね。彼としては少しでも早く金木君を攫いたいだろう。

…そういえば今夜、月山家がバックにいる催しが開かれるとかいう話を聞いたな。

 

「…これはやらかしそうか。」

 

楽しそうに会話をしている金木君をみる。

油断していそうだ。…全く、警告したというのに。

 

「やはり彼は優しすぎるなぁ。ま、それが魅力でもあるんだが。」

「…あの、ドクター? 少し出かけてきます。夜には多分戻ると思うので…」

 

おや。

気がつくと金木君が私に話しかけてきていた。思考に耽りすぎたか。いかんいかん。

 

「…月山君とかい?」

「あ、はい。」

「…わかった。そもそも今日も君は非番だろう? 私に縛る権利はないさ。いってきたまえ。」

「あ、ありがとうございます。それじゃあ。」

 

そう言って金木君は、月山君と一緒に店を出て行った。

…さて。

 

「私も久しぶりにがっつり動くとするかねぇ。」

 

 

『皆さん、お待たせしました! 本日のメインディッシュです!』

「…やっとか。」

 

ここまで悪趣味な催しを見せられたが、ようやく出られそうだ。

私は人垣をかき分け、なるべく前の方に出る。

2階にいるからか、真下のステージがよく見えた。

 

『本日のメインは変わった食肉…なんと、喰種です!』

「喰種?」

「私、共食いはちょっと…」

 

周りから気持ち悪い声が聞こえてくる。

はあ。共食いじゃなければいいのか。やはり悪趣味だねぇ、あんていくに長いこといたせいで不快感が凄まじいよ。

 

『提供は…MM氏です!』

「ふむ。当然だが彼も来ているか。…しかしセンスないねぇ。」

 

偽名にしてももう少しいい名前があるだろうと思ってしまう。

とりあえずずっと2階にいても仕方がない。再び人だかりをかき分け、1階に降りる階段へと向かう。

 

 

 

「…全く、人が多いねぇ。」

 

人だかりが大きすぎて階段から降りるのでさえ一苦労だった。

全く、こんな悪趣味な会なのになぜこんなに人が来るんだか。上流階級とやらにはバカがずいぶん多いようだ。

 

「…いけない、すでに始まっていたか。」

 

何やら武器を持ったデカブツが、金木君を追い回していた。

赫子を出さないあたり喰種ではないのか? よくわからんな。

 

「…まあいいか。助けてから考えればいい。」

 

私は懐からお気に入りのペストマスクを取り出し、それをつけ、手すりから一気にステージへと飛び出す。

 

 

「やれぇ! 締め上げろ!」

「内臓をぶちまけておくれ!」

 

周りから歓声が聞こえる。

ああ、最悪だ。なんでこんなことに…

 

「たの…たのじい…?」

 

一気に強く首を絞められる。

まず…い…、意識…が…

走馬灯のように、ドクターさんの言葉を思い出す。

 

『…あまり彼を信用しない方がいい。彼は20区の厄介者だ。』

 

ああ、その言葉に従っておけば。

月山さんを信用せずに距離を置いておけば。

 

「あ…が…」

 

もうダメだと思った。けれど。

 

「ぐぼぉ!?」

「…少しおいたがすぎるな。…しかし君、何者なんだ? 喰種の匂いのくせに赫子がないとは。」

 

僕を締め上げていた大男がなぜか倒れ、僕は解放される。

 

「ゲホッ、ゲホッゲホッ…」

「やあ金木君。大丈夫かね? いくら喰種とはいえ締め上げられたら辛いだろう?」

 

見上げると、中世のマスク…いわゆるペストマスクに、白衣を着た小さな女性が立っていた。

もしかして…

 

「ドクター、さん?」

「せいかーい。全く、やっぱりこうなったか。だからあれを信用するなと言っただろう?」

 

あれっ…月山さんか。

僕はあの人をもう信用しないと、心に誓う。

 

「う…げ…」

「おや。まだ生きていたか。」

「べっ!?」

 

先ほどの大男がまだ生きていたらしく、ドクターはさらに彼の頭を踏み潰した。

 

「タロちゃーん!?...この、役立たずがぁ!」

「あれが飼い主か。全く、冷たいねぇ。彼は頑張っていただろうに。」

 

ドクターはそういうと徐に倒れた大男の体によじ登り、そして全員に聞こえる様な大声で言った。

 

「…諸君。久しぶりだね。私を覚えているかな?」

 

その言葉に、会場が少しざわつく。

「…まさか、あのマスク…」「バカな、奴は殺したはずだ!」などと。

…ドクターって、昔は有名だったのだろうか。

 

「そうだ。君たちが寄ってたかって殺そうとした私だよ。残念だけど、私は戻ってきてしまったんだ。…今私はあんていくにいる。そしてこの彼は、私の大事な部下だ。」

 

彼女は一度そこで言葉を切る。そして大男の死体を一撃で踏み抜き、その影響で地面にヒビが入る。

 

「…これ以上私の大事な部下をおもちゃにしようというなら、君たちにはもう一度地獄を見せてあげよう。されたくなかったら、私たちに関わらないことをお勧めするよ。」

 

彼女はそういうと、死体の上から降りてきて、僕を抱える。

…お姫様抱っこに。

 

「ちょっ、ドクターさん!?」

「こらこら。あんまり無理をするんじゃないよ。君、さっき死にかけたんだからね? …後これは、私の忠告を守らなかった罰だ。甘んじて受け入れたまえよ。」

 

そういうと彼女は堂々と観客席へとジャンプする。

 

「ほら君たち。どきたまえ。こっちは怪我人がいるんだ。」

 

人だかりが綺麗に別れ、彼女に道を作っていく。

彼女を見る視線は、どれもこれも恐れだった。

…いったい何をしたんだろうか。

 

そして彼女は出入り口に辿り着くと振り返り、

 

「では。二度と会わないことを祈るよ。」

 

と言ってドアを開いた。

 

 

ふー、やれやれ。あんな大立ち回りは久しぶりだ。

しかしこのマスク、残しておいて正解だったな。まだ私のことを忘れていないやつばかりだった。

 

「さ、では帰ろう。」

 

お姫様抱っこで抱えている金木君に声をかけつつ、帰り道の裏路地を駆け抜ける。

そんな最中、金木君が質問してくる。

 

「…ドクターって、なんであんなに怖がられてたんですか?」

「ん? ああ。 あんていくに来る前少しやんちゃをしていてね。彼らとは敵対してたのさ。」

「…そうですか。」

 

走るのをやめ、金木君を下ろしてやって、問いかける。

 

「怖いかい。」

「…少し。」

 

…まあ、当然か。あの場所から出る時、全員が私に怯えていた。

そんなものを目にしたら、流石の金木君だってわかるだろうね。

…君も、私から離れていくか。

 

「…だけど、僕は…あなたから逃げるつもりはないです。」

「…だろうね。そうした方が……へ?」

 

思わず驚いてしまう。

あれを見たばかりだというのに?

 

「あの大男を容赦なく潰したりしてるのが、その…少し、怖かっただけで。僕の中では、ドクターはあんていくの副店長なんです。そんな人から逃げるわけないじゃないですか。」

「…」

 

少し涙がこぼれてしまう。

…いけない。彼に見られたら恥ずかしいね。…マスクだからバレないかな?

 

「…あの? ドクター?」

「なんでもない。では帰るとしようか。」

「あ、はい。」

 

金木君を再び抱え、裏路地を走る。

ちなみに今度は普通に背負うだけだ。

…罰を与えるのはまた今度にしてやる。人たらしめ。




絆されるドクター君。可愛いですね。

評価、結局黄色になってしまった…まあ着くだけでもありがたいですがね。おちな様頑張るって言ったばっかりなのに…w
それでついでなんですが、おもんなって思った人はできればここが面白くなかったーとか明確に言ってもらえると大変ありがたいです。感想には全部目を通してますので、その意見をもとになるべく直していこうと思いますんでよろしくお願いします。
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